15:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:33:19.23 ID:dW68xNSs0
ユーリ「てってんくらーと」
ざーざー。
チト「ケッテンクラート」
16:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:34:08.86 ID:dW68xNSs0
ユーリ「ケッテンクラート、ここに運ぼうよ」
覚えてたのか。そう思ったけど、細かいことをいちいち気にしてたら、ユーの全てが気になってしまう。そこは流しておいて、私は最後の一口を口に放り込む。
チト「ここ、狭くて運べない」
17:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:34:51.69 ID:dW68xNSs0
チト「どうやって」
ユーリ「ほら、燃料入れるところから」
18:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:36:52.65 ID:dW68xNSs0
チト「お前ガソリンの味しらないだろ」
ユーリ「ちーちゃんは知ってるの?」
19:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:38:00.33 ID:dW68xNSs0
ケッテンクラート。私たちが塔を目指す時に渡された乗り物。ずっと一緒だ。でも遅い。
ユーは私にこう言った。なんの前触れもなく。振り続ける雨を見ながら。
20:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:39:03.73 ID:dW68xNSs0
ユーリ「じゃあケッテンクラートも?」
チト「ケッテンクラートも」
ユーリ「このレーションも?」
21:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:40:06.54 ID:dW68xNSs0
ユーリは起動したままのカメラをいじる。絞りのピントを意味もなく、合わせては、ぼかしたり。
ユーリ「私達の代わりにケッテンクラートは歩いて、私達の代わりに、レーションが犠牲になって私達を生かしてる。それに、私達の代わりにこの服が寒さを受けてる。頭だって、このヘルメットが代わりに守ってくれてる」
22:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:41:10.17 ID:dW68xNSs0
魚のレーション。青空の下、冷たい川辺で洗濯をした時の、あの魚を真似た、レーション。
カメラ。カナザワの、カメラ。白くて板みたいなのに、使おうとすると中からレンズが飛び出してくる、器械。たくさんの記録が中には残っている。
23:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:42:55.57 ID:dW68xNSs0
いいや違う、物の元を辿れ。私たちがあてのない旅に出たのは、誰のおかげだ。ケッテンクラートを渡したおじいさんのおかげだ。
ふざけてカメラで遊んで、暇つぶしをできているのは、誰のおかげだ。カナザワのおかげだ。
こうしてレーションを食べて、生きていられるのは、誰のおかげだ。イシイのおかげだ。
24:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:45:53.71 ID:dW68xNSs0
ユーは椅子に大きく腕を広げ、たくさん白い息を吐いた。
ユーリ「私達より後に死んじゃうなら、別に問題ないよね」
25:名無しNIPPER[sage]
2017/12/08(金) 11:46:33.12 ID:dW68xNSs0
おしまいです。
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