19:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:54:40.86 ID:sxZEr0ye0
「ぴゃっ……!?」
小動物を思わせる声が耳に届いた。
お前そんな声も出せるのか。
20:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:55:25.20 ID:sxZEr0ye0
それでも、どうしても。
「なあ、何で神崎はアイドルをやろうと思ったんだ?」
蘭子は急な質問に対し少し目を泳がせてから、再度こちらに向き合う。
21:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:56:12.09 ID:sxZEr0ye0
やっぱり言ってることはよくわからない。
だけど見ればわかる。
同じ空間に居れば感じる。
22:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:57:05.92 ID:sxZEr0ye0
言ってることがよくわからないから?
蘭子のポテンシャルなら普通にやってればそこそこなんとかなると思ったから?
予算が取れないから無理だと言われたから?
23:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:57:53.42 ID:sxZEr0ye0
『妥当』とか『無難』とか、都合の良い言葉で飾られた責任放棄だ。
ただの思考停止の愚か者だ。
俺は『神崎蘭子担当プロデューサー』なんだ。
24:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:59:52.05 ID:sxZEr0ye0
言葉を口に出すのが怖かった。
覚悟を問われるのが嫌だった。
責任を負うのが面倒だった。
25:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:01:13.05 ID:sxZEr0ye0
そこからは怒濤の日々で、あまりよく覚えていない。
寝る間を惜しんで仕事をして、眠気を通り越して気絶するんじゃないかと思うときもスタドリで体に鞭を打ちながら、やるだけのことをやった。
先輩から段取りやスケジュール管理など基本的なノウハウのアドバイスを貰いに行った。
26:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:15:17.09 ID:sxZEr0ye0
蘭子と一緒にいる時間も長くなり、自然と会話も増えていった。
「学校ではどんな感じなんだ」
「聖獣が如く寵愛を受け、我が進軍に賛美歌の調べが響いているわ」
27:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:15:49.91 ID:sxZEr0ye0
少しずつわかってきたこともある。
蘭子の言葉にはちゃんと意味があり、要所要所を押さえれば会話にそんなに支障は出ないこと。
『闇に飲まれよ』が『お疲れ様です』という意味であること。
28:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:16:30.22 ID:sxZEr0ye0
真っ赤なリップを塗った唇をきゅっと結んで、ちらちらとこちらを見てから、ゆっくりと伝えてくれた。
「えと……その方が、話しやすい、から」
「……そっか。それならそれでいいんだ」
29:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:17:42.27 ID:sxZEr0ye0
「下界の者の言葉を使えとは言わないのか? 我が闇の言葉は、心の鎧だ。弱い心を強い幻想で覆う鎧だ」
「蘭子がその方がいいって言うなら、蘭子が蘭子らしくいられるなら、そのままでいいよ」
蘭子はかっこいい語句を使うのが好きで、でもそれは会話が成立しにくいことも自覚してて、それでもなお好きだからこのしゃべり方をする。
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