藤原肇「ナイトフィッシングイズグッド」
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29:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:10:15.45 ID:2O49l66V0
 しばらく、俺の竿には当たりもなく。

 三十分ほど投げては巻き、投げては巻きを繰り返している。

 一方肇の竿には何度か当たりがあったらしく、合わせを入れては首を傾げていた。
以下略 AAS



30:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:12:35.44 ID:2O49l66V0
「黒鯛?」

「いえ、たぶん根魚ですね」

 彼女はギュルギュルとリールを巻く。「美味しいやつだ」
以下略 AAS



31:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:13:35.94 ID:2O49l66V0
 わあわあと二人で盛り上がり、バケツにカサゴを入れる。

 カパカパとエラ蓋を開き呼吸をしているが、君は明日の味噌汁になる運命であるよ。

 彼女は再びルアーを投げた。
以下略 AAS



32:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:14:22.37 ID:2O49l66V0
 しかし、彼女は表情を少し暗くする。

 俺は竿を動かすのをやめて、「どうかした」と聞いた。

 彼女は顔を横に振った。
以下略 AAS



33:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:15:38.38 ID:2O49l66V0
 思うに、俺は彼女のそんな目に「夢」を見たのだ。

 一度夢破れ、ぼんやりとした目的でプロデューサーになり、なったといえど音楽の知識が活きたことも多くなく。

 丁度、色々と忘れそうになった頃に、彼女に出会えた。去年、あの日着ていた服を着ているから、これほど彼女との出会いを思い出しているのかもしれない。
以下略 AAS



34:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:17:15.78 ID:2O49l66V0
 そう、俺はあの時の夢をまだ半分も叶えちゃいなくて、彼女は夢の先で待っているのだ。

 俺はまたルアーを投げた。何も当たりがなかったけれど、負けじともう一度投げる。二度、三度。

 朝が随分と近くなっていた。
以下略 AAS



35:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:18:25.51 ID:2O49l66V0
 直後の、ゴン! という重さと、急激にしなる竿。ギリギリとハリスを吐き出そうとするリールに、俺は悲鳴を上げた。

「は、肇っ! なんか、うお、すげぇ引くんだけど!」


36:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:19:42.95 ID:2O49l66V0
「チヌですかっ⁉︎ ドラグ……ドラグを緩めてください!」

 わかんねえよ、俺釣り初心者だもの! ドラグってどこだ、肇助けてえ、と、さんざ情け無いことを言った。

「大丈夫ですよ、大丈夫です……。私がいますから」
以下略 AAS



37:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:21:18.51 ID:2O49l66V0
 俺と肇は、魚をゆっくりと手繰り寄せる。

「いつも、これまでも二人でなら出来たんです。なんだって」

 それはだいぶ近づいたと思いきや、すぐさま逃げようと走る。
以下略 AAS



38:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:22:50.97 ID:2O49l66V0
 彼女は歓喜の声を上げた。

 俺も上げていたと思う。

 俺たちは確かに、伸ばせば届くところまで手繰り寄せてきた。
以下略 AAS



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