モバP「そろそろいきましょうか」瑞樹「そうね」
↓ 1- 覧 板 20
1: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:43:05.45 ID:j2st42DJ0
モバマスSS
不謹慎鬱注意
人死注意
喫煙描写あり
以下に展開される諸行為はお願いですから絶対に真似しないでください。本当に取り返しがつきません。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:43:36.85 ID:j2st42DJ0
朝。始まりの朝。
人々は眠りから目覚め、陽の光を浴び、空の青さに目を潤わせる。
10月の金木犀の香りは、どこからか突然やってきて、またすぐに消えていく。
甘く爽やかな香りは、なんだか素敵なご馳走のようで、この匂いを嗅ぐと俺はちょっとだけ元気になる。
嗅げる時期はごくごく短いもので、来週には散っていることだろう。明日か明後日は雨らしいから、それで見納めだろう。
3: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:44:04.95 ID:j2st42DJ0
朝。決行の朝。
かねてより今日の準備を進めてきた俺は、ついにこの日が来たかと、起床一番に伸びをしては神妙に顔を整えた。
ああ、震える。恐れか、期待か。
4: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:44:41.64 ID:j2st42DJ0
それにしても布団とは意外にも重いものだと感じた。
3日間何も食ってないから、それで体力が落ちてるのだろう。だから重く感じるのだ。
一歩一歩。街路樹、すれ違う人、電信柱の広告、信号機。
これらも皆全て、ああ、今日限りのものだと思うと、なぜか途端に惜しいもののように感ぜられた。
5: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:45:18.40 ID:j2st42DJ0
体力が落ち気味とは言えども、体が軽いだけでこんなにも歩く速度は上がるものか。
いつもなら体感で20分ほどの道のりも、今日は10分で歩いてこれてしまったような気がする。
まあ、家にも持ち物にも時計がないから、ただの体感だが。
6: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:45:51.78 ID:j2st42DJ0
〜〜〜〜〜〜〜
しゃかりきになって歩いたからだろうか。先ほどからめまいがする。
銀と青の滲み出る幻色に抵抗しつつ、軽く頭をうつむかせてめまいが去るのを待った。
めまいが晴れてしばらくして顔を上げると、向かいの5番ホームに俺の姿を捉えた。
7: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:46:20.94 ID:j2st42DJ0
〜〜〜〜〜
パルルルルル!!
P「はっ!?」
8: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:46:57.24 ID:j2st42DJ0
4駅目で特急の追い越し待ちをした。ホームと川を跨いだその向こうにもビル群が見える。
赤い看板が目にとまる。今流行りの飲料水の広告。
その上に。
9: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:47:23.60 ID:j2st42DJ0
〜〜〜〜〜
パルルルルル!!!
電車の発車ベル。またしても俺は現実に呼び戻される。
10: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:48:00.37 ID:j2st42DJ0
〜〜〜〜〜〜
川島瑞樹の話をしよう。
川島瑞樹は俺の担当するアイドルの1人だった。
11: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:48:26.65 ID:j2st42DJ0
そして花は散るものだ。その季節が、遅からず彼女にもやってくる。
惜しまれて散るのが花という。
12: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:48:55.15 ID:j2st42DJ0
瑞樹さんがいつからだろう。
「疲れた」
しか言わなくなってしまったのは。
13: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:49:23.99 ID:j2st42DJ0
人間、生きるのに理由はいらない。
ただそう『在れば』いいだけの話。
14: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:50:05.85 ID:j2st42DJ0
話のきっかけを持ちかけてきたのは瑞樹さんからだった。
「プロデューサーくん。死にたい って、思う時、ない?」
「いきなり何を言いだすんですか」
15: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:50:41.51 ID:j2st42DJ0
「瑞樹さん、最近眠れてますか」
「その『瑞樹さん』って呼び方、そろそろ直らないのかしら」
苛立っていた様子だった。瑞樹さんは強い口調でそう言った後、弱々しく
16: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:51:09.60 ID:j2st42DJ0
長い間彼女を担当してきて、守るべき一線を超えないように努めてはきたが、ここ最近の彼女の言動は気にかかる。
そう思った俺は、多少強引にでも瑞樹さんを立ち直らせるために、彼女の家で酒盛りをしようと画策したのだった。
空腹と寒さは容易に死を誘引する。ならばその原因を絶ってやればいい。そう思っていた。
17: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:51:46.45 ID:j2st42DJ0
事務所からはそう離れていない彼女の自宅に、ありったけのいい酒といいつまみを持ち込んで、酒盛りを決めた。
早苗さんや楓さん、心さん美優さんなど、彼女と仲のいいメンツも誘おうと考えていたが、
都合がつかないのと、何より瑞樹さんが「やめて、呼ばないで」というものだから、結局2人きりの飲み会を瑞樹さんの家でやるだけになってしまった。
「……あの子達の前で『死にたい』なんて言っちゃったらどうするのよ」
18: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:52:27.19 ID:j2st42DJ0
「……ふぅ」
「体にしみるわね。やっぱりお酒はいいものだわ」
「ちゃんと食べるものも食べてくださいね。片付けは全部俺がやりますから」
19: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:52:56.62 ID:j2st42DJ0
「なんだかんだたくさん食べましたね」
「貴方が『あれも食えこれも食え』っていうから、許容量超えつつあるわ」
「瑞樹さんに食べて欲しかったので」
20: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:53:36.64 ID:j2st42DJ0
寝る準備をした。寝具は家から持参している。
「やたら大きい荷物持ってきたと思ったら、本当に泊まる気だったのね」
「泊まるって言ったんで」
21: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/10/07(土) 02:54:18.76 ID:j2st42DJ0
翌朝。俺よりも早く起きた瑞樹さんは、起き出した俺の目を見て開口一番に
「ごめん、やっぱり死にたいわ」
48Res/24.83 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20