24: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:09:05.13 ID:r5zFZECu0
神様の存在を信じるという感覚が、今一つ理解できない。
なぜって、その姿を見たことがないから。
頭の中で明確に像を結べないものに頼るということに、違和感を覚えてしまうからだった。
25: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:09:57.72 ID:r5zFZECu0
その日は朝から分厚い雲が垂れ込めていた。相も変わらず滲むような冷えが厳しかった。
プリントした地図を頼りにと思っていたが、大して迷うこともなく辿り着くことができた。
26: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:11:21.82 ID:r5zFZECu0
教会に入るなんて、初めてのことだった。
礼拝堂には平日の朝から自由に入れるとあったが、扉を開けるのには少なからず躊躇いがあった。
27: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:13:11.45 ID:r5zFZECu0
教会の中に入る。
外に比べて、遥かに空気が暖かい。
28: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:14:01.90 ID:r5zFZECu0
気が付けば、その声に聴き入っていた。
心が洗われるような感覚だった。
29: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:15:27.55 ID:r5zFZECu0
その存在は、その歌声は、教会の中に完全に溶け込んでいるような気さえする。
その声音からでも、心の底から気持ち良さそうに歌っているのがわかる。
僕の気配に気付いてか、不意にシスターがこちらを振り返り、歌声が止まった。
30: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:16:12.66 ID:r5zFZECu0
「あら、あなた様は」
顔を上げた彼女と目が合うと、向こうは口元に手を当てて、なにかを思い出しているようだった。
やがて、彼女の目尻が少しだけ下がる。
31: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:17:30.53 ID:r5zFZECu0
「この教会にくるのは、初めてですか?」
彼女が遠慮がちに尋ねてくる。
「教会にくること自体、初めてなんです」
32: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:21:35.58 ID:r5zFZECu0
「先ほどは拙いものをお聞かせしてしまいました」
彼女は照れを隠すように、自分の頬に触れた。
「とんでもない、綺麗な歌でした」
33: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:23:23.57 ID:r5zFZECu0
「ここでは、祈ることができます」
最初に彼女はそう言った。
「祈らず、座るだけでも構いません」
34: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:24:06.23 ID:r5zFZECu0
拒む理由はなかった。
「Pと申します」
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