33:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:50:38.03 ID:WUZ1iABd0
なんとなく、家に帰りたくなかった。
このまま帰っていつも通りの灰色な日常に戻るのは嫌だ。
何か、特別なことをしたい。
34:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:51:16.43 ID:WUZ1iABd0
がたんごとん、がたんごとん。
電車は音を立てて揺れながらを私を目的地へ運んでいく。
心地よい揺れが眠りの世界に誘おうとするが、そんな誘惑にこの天使が屈するわけ……
35:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:51:56.67 ID:WUZ1iABd0
海。
そう、一年生の夏休みの時に遊びに来たあの海だ。
36:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:52:40.97 ID:WUZ1iABd0
まだ春だし、泳ぐ人もいない。夕方だし、観光客も帰る時間だ。
ほとんど人のいない海辺は、一人でたそがれるには、すごく都合のいいシチュエーション。
どうせ誰も見ていないのだから、少々見てくれが悪くたっていいだろう。
37:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:54:02.31 ID:WUZ1iABd0
下界に降りて、天界では考えられないほどいろんなことがあって。
楽しいことも悲しいこともあって、全部乗り越えて成長したと思っていたけれど、本当の私は弱いままだったんだと実感する。
悲しみも痛みも、癒せるような天使になれればいいななんて思っていたけれど、一番みんなに癒されていたのは私なんだ。
38:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:55:25.30 ID:WUZ1iABd0
「……寂しいよ」
「みんなに、会いたいよぉ……」
39:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:58:44.25 ID:WUZ1iABd0
思わず声が漏れた。自分のものとは思えない、弱弱しくて小さな声。
最後のほうは、かすれてほとんど聞こえないほどだった。
声に出してしまったらだめだ。小さな穴が空いたダムのように、そこから感情があふれ出してしまう。
40:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:59:38.32 ID:WUZ1iABd0
「ガヴ、そろそろ帰らないと夜になっちゃうわよ?」
そう、夜。夜の月を見ると、こんな風な優しい声のあいつを思い出してしまう。
「そうよ、風邪でも引いたら勝負ができなくなるじゃないの!」
41:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:00:22.51 ID:WUZ1iABd0
「……で、いつから見てたんだよ」
私はむすっとして不機嫌を装って聞く。
「ガヴちゃんがタプちゃんたちと別れたところからですね。てっきりおうちに帰るものだと思ってましたが、ルートが逸れたので千里眼で続けて見ていました」
42:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:01:07.90 ID:WUZ1iABd0
「それで?どうしてみんなして私を監視してたのか、理由を聞かせてもらおうじゃん」
「監視だなんて……まあそう言われても仕方ないか。ごめんね、最初はもっと早く会いに行くつもりだったのよ」
「みんなで集まって、私の千里眼でガヴちゃんのいる場所を見つけて、久しぶりに顔をお見せするつもりでした」
57Res/36.49 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20