26: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:35:53.45 ID:fLR/Lwcb0
「そんなら、目玉焼きには、なにかけとう?」
「醤油ですね」
「あ、うちも同じ。じゃあ、最近泣いたことある?」
27: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:37:20.62 ID:fLR/Lwcb0
「今まで夏目君とは、趣味の話でばっかし盛り上がってきようやろ?」
「やけん、こげなことも知りたいなあって、前から思っとったの」
28: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:38:13.65 ID:fLR/Lwcb0
そう言いながら彼女は、頬を真っ赤にさせていた。
照れくささや気恥ずかしさが綯い交ぜになって、自分の顔にも血が昇るのを感じた。
「なんにも迷惑じゃないですけど、それにしたって別に、今聞かなきゃいけないことでもないでしょ」
29: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:38:52.80 ID:fLR/Lwcb0
「じゃあね」
それまでは本当に、なんでもないような口調だった。
酒精も手伝ってか、普段よりも少し眠たげで、柔らかい話し方。
30: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:39:28.41 ID:fLR/Lwcb0
「彼女さん、おる?」
31: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:40:50.18 ID:fLR/Lwcb0
一転して、静かな声だった。
肌に朱が差した彼女が、水面に布を敷くように慎重に尋ねてきた。
暫くお互いに、見つめあう形になる。
彼女は至って真剣な表情だった。
32: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:41:57.45 ID:fLR/Lwcb0
暫くの間、おれと彼女は静かに酒を飲み、静かにナッツを齧った。
いつものように意味のない話題を投げかけて、沈黙を埋めることもしなかった。
今そうして有耶無耶にしてしまったら、この先ずっと後悔してしまうような気がした。
33: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:42:34.54 ID:fLR/Lwcb0
聞き逃してしまいそうなほど微かな咳払いが聞こえた。
「うち、好いとう人がおるんよ」
34: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:43:40.06 ID:fLR/Lwcb0
「優しくて、話が面白くて、一緒にいると安心できて」
「なんとか気持ちを伝えられたらって、思っとうと」
35: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:44:22.40 ID:fLR/Lwcb0
こんな時に、自分に豊富な語彙が備わっていればと思う。
伝えたいことを、なに一つの意味の損失もなく伝えることができないことが、もどかしかった。
だからおれは、思ったことを言うことしかできない。
36: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:46:41.57 ID:fLR/Lwcb0
言い切ってから、身悶えするほど恥ずかしくなった。
「……えっと、あくまでも、おれの意見なんですが」
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