晩夏にほどける
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32: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:41:57.45 ID:fLR/Lwcb0
 暫くの間、おれと彼女は静かに酒を飲み、静かにナッツを齧った。

 いつものように意味のない話題を投げかけて、沈黙を埋めることもしなかった。
 今そうして有耶無耶にしてしまったら、この先ずっと後悔してしまうような気がした。


 音楽のかけられていない店内は、俺と彼女以外に客の気配がない。
 店主らしき人物は、古ぼけた椅子に腰かけてペーパーバッグを開いている。

 空調の唸るような駆動音だけが、退屈な伴奏のように聞こえている。


「先輩」

「うん?」


「相談ごと、聞かせてくれますか」

 なんとなく彼女が誘ったこのきっかけに、きっと意味があるのだと思った。


 ナッツに伸びる手が止まる。
 彼女は小さく頷いて、もう一度だけグラスを煽って、くちびるを舐めた。



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