31: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:04:05.90 ID:zKrhlsv70
理由はわからない。ただ、それが何らかの能力によるものだというのは、大方の予想だった。俺だってそう思う。物理的な干渉は不可能で、落ちてくることもない代わりに、処理もできない。あれは死のモニュメントだ。
内乱の遺物として語り継がれると同時に、能力者側に対しても、政府側に対しても、行き過ぎた排除を制止させる――もう一度あんなことになってもよいのか? と。
今のこの平穏が仮初のものであったとしても、稀有といられる時間が最大限確保できるのならば、俺は大して不満はなかった。
32: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:04:35.81 ID:zKrhlsv70
俺は本を閉じた。タイトルは「陣内崎の半世紀」。大学の講義のために買ったやつを今更もう一度引っ張り出してきたのだ。
何でそんな本を読んでいるのかと言えば、端的に暇だからである。
我が探偵事務所の主であらせられる有田稀有女史は、陣内崎市の都市伝説をまとめたゴシップ誌を熱心に読み耽っている。仕事はない。稀有に来る依頼は基本真南を経由した殺人事件の捜査なので、仕事がないほうが嬉しくはあるのだけれど。
33: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:05:06.83 ID:zKrhlsv70
時計を見れば一時ももうすぐ回ろうとしていて、俺はすっかり空腹だった。
かといって勝手に食事を取ればやいのやいの言われるのは目に見えている。諦観を覚えたので、大人しくハウス。
「……」
34: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:05:37.49 ID:zKrhlsv70
百人規模で人が死んでいるはずの墜落事故に対して、そう言う物言いができるという時点で、やはり稀有もどこか螺子が外れているのだ。俺はそれを肯定こそしないが、否定もまたしない。
誰かをとやかく言えるほど、俺だってまともではないのだから。
「あとは……ほら、銀輪部隊が再結集ですって」
35: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:06:06.06 ID:zKrhlsv70
「とりあえず見せてみろ。少し不安になってきた。検閲だ」
「いやらしいページは見てませんよ」
36: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:06:33.28 ID:zKrhlsv70
それは依頼の電話である。このご時勢においても、俺と稀有は携帯電話を持ち歩いていない。だから全ての依頼はこの事務所の黒電話へとかかってくる。
電話が鳴るのは別段珍しいことではないはずだった。
だのにどうしてだろう。嫌な予感がして――あぁそうだ、この感覚は昔味わったことがある。自分より強い相手に戦いを挑まなければいけないときに酷似している。
37: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:07:35.38 ID:zKrhlsv70
――――――――――――――――
今回はここまでとなります。
38:名無しNIPPER
2017/08/23(水) 23:20:28.99 ID:2l/iPMWt0
生きてた!
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