新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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792: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:37:14.94 ID:ymR8HEsBO

田中「永井か」


亜人にしか見えないIBM粒子が田中たちを飲み込んだ。並外れた量のIBM粒子を放出した永井は、何食わぬ顔で巨大送風機の前に座ったままだった。永井は無意識に視線をあげ、ふと閉じていた口を開け、つぶやいた。
以下略 AAS



793: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:38:09.31 ID:ymR8HEsBO


平沢が麻酔銃に換えのダートを装填しているあいだ、背後の若い黒服が高橋に狙いをつけた。


以下略 AAS



794: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:39:05.48 ID:ymR8HEsBO

「クリア」という声がコイル型イヤホンから聞こえたとき、アナスタシアにはその言葉が何を意味するのかすぐにはわからなかった。少ししてビルに侵入してきた田中たちがやっつけられたのだと思い当たった。

アナスタシアが正解に思い当たったのと同時にスマートフォンがブルブルと振動した。洋式トイレの蓋の上に置いていたのでびっくりするような大きな音が婦人用トイレに鳴り響いた。アナスタシアはビクッと肩を震わせ、そのときの動作によって人感センサーが働き、トイレの照明がパッと光った。

以下略 AAS



795: ◆8zklXZsAwY[seko]
2019/01/26(土) 22:40:09.19 ID:ymR8HEsBO

アナスタシアはいま黒のウィッグと茶色のカラーコンタクトを付け、ウィッグの色と同じ黒のパンツスーツに身を包んでいる。その姿は百六十五センチという高身長も相まって、キャリアウーマンのように見えるが、足元はレディースの革靴ではなく多少の使用感がある白いスニーカーだった。

火災警報によってセキュリティ・サーバー室の占拠を悟った永井は一通目のメールを送信し、アナスタシアにビル内に入るよう指示した。そのときのアナスタシアは自転車便のメッセンジャーに扮した格好をしていた。変装の精度がどのようなものか判然とせず、アナスタシアはこれまでの人生のなかで最も速く心臓をドキドキさせながらビルへと向かった。十五歳の子どもが隠し事をしたまま、たくさんの大人がいる場所に忍び込むというのだから、当たり前ともいえる反応だった。

以下略 AAS



796: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:41:08.68 ID:ymR8HEsBO

個室の戸を閉め、肩にかけた大きめのメッセンジャーバックから小さく折り畳んだジャケットとスラックスを取り出して、着替える。パンツスーツとメッセンジャーの格好を比べ、とりあえずいまの姿の方が多少はましだと結論づける。アナスタシアは配達物の封を開け、中身を確認する。無線機と使用法と周波数が書かれたメモがあった。アナスタシアはメモに従って無線機の電源をオンにした。

コイル型イヤホンを左耳に入れた途端、野太い焦燥が色濃く混じった叫びが耳を貫いた。一階の検問ゲートを武装した亜人三人が突破し、ビルに侵入したと言うのだ。

以下略 AAS



797: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:42:31.52 ID:ymR8HEsBO

この戦いにおいて、自分への期待が高くない ─それどころか、ほとんどない! ── ことはわかっていた。というのも、永井はリスクも手順も最小限の作戦を打ち立てていて、アナスタシアの役目といえば、せいぜい不測の事態が起きた場合にIBMで支援を行うことくらいだったからだ。活躍どころか、働きすらないかもしれないのだ。参戦を通告してから作戦の詳細を知らされるまでのあいだ、アナスタシアには不安と緊張の感情が心の中心に宙吊りになって存在していた。他者の安全、自分の正体の露見、十分な働きができるかどうか……ネガティブな未来が浮かぶたびに、美波やプロダクションのの仲間や学校の友だち(死んでしまった友たちも含めて)のことをイメージとして思い浮かべて戦いの意志を強固にし直していった。だから、永井から役目はほとんどないだろうと知らされたとき、戸惑い、もっと言えば後ろめたさすらおぼえた。密閉された空間に敵を誘い込み、IBM粒子を利用して視界を奪う。永井の作戦が効果的であるのは納得できたし、被害が出る可能性も最小限まで抑えられている点は安堵したほどだった。 でも、とアナスタシアは疑義を浮かべた。亜人であるわたしが、隠れているだけでいいの? 銃を撃ったりはできないとしても、盾になることはできるかもしれないのに……(この時点ではアナスタシアは警備員のことまでは想定していなかった。永井が意図的にその事実を隠したのは、アナスタシアが佐藤と戦う理由はナイーブなものだと予想していたからだった。かすかな銃声が耳に届いたとき、アナスタシアの意識に警備員の存在がはじめて浮上し、その欠落にいままで気づいていなかった自分に愕然とした。すぐに腰を上げたが、銃声はすでにはるか遠くに遠ざかっていた……研究所で見た凍結されていない生々しい滑り気を持った虐殺のイメージが蘇ってきた……「クリア」という声がイヤホンから聞こえ、アナスタシアは現実に戻ってきた)。



798: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:43:22.94 ID:ymR8HEsBO

永井はこの考えを、少年漫画の読みすぎだ、と黒い粒子の狼煙による返答で一蹴したが、銃弾の前に生の肉体を晒してたたかうといういざというときの心構えが完全に退けられることはなかった。この心構えは警備員の死に気づいてから具体的な細部を持ったイメージへと変わったが、いまでは空想の域にまで入り込んでいた。肉体に穿たれた孔と流れ出す血は勇者の赤いバッヂとなり勇敢さをたたえる、こうした空想は輪郭があいまいで現実的な苦痛から遠く隔たっていることをアナスタシアは自覚せざるをえなかった。空想は退けられた。だが、後ろめたさは残していた。永井に言わせれば後ろめたさを抱くこと自体見当はずれの感傷に過ぎないのだが、アナスタシアはそうとは思わない。死なないからこそ、死を他人事にしてはいけないのだと、アナスタシアは考えていた。

そしていま、暗闇の中に浮かび上がった四通目のメールを見つめながら、アナスタシアは命令通りに待機の時間の只中にいた。センサーが反応しないように最小限動きだけでスマートフォンや無線機を操作しながら、ただひたすら、佐藤が現れるまで待つ。後ろめたさを錘にしながら。

以下略 AAS



799: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:46:06.03 ID:ymR8HEsBO

コーヒーサーバーからカップにコーヒーを注ぐと黒い液体がにわかに泡立った。淹れたてで熱々のコーヒーから湯気があがり、カップの内側を水滴で濡らした。ほんのちいさな一ミリくらいの泡がはじけ、コーヒーの水面が完全に静まり黒い円形として停止すると、佐藤はソーサーにのせたカップを持ち上げ、キッチンから休憩室に戻っていった。

アジトの休憩室は雑然としていた。整理整頓はおざなりで、歩くスペースは確保してあったが、パンの袋やコピー用紙などが隅のほうに放置されたままになっていた。

以下略 AAS



800: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:47:02.77 ID:ymR8HEsBO
今日はここまで。

なかなか思うように進まない…


801:名無しNIPPER[sage]
2019/01/27(日) 15:21:29.42 ID:lGUhnR6s0

アーニャ関連には期待している


802:名無しNIPPER[sage]
2019/03/03(日) 02:09:25.72 ID:Zvp9ZrOr0
漫画と変わらないところは飛ばしても良いんじゃないか?


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