新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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796: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:41:08.68 ID:ymR8HEsBO

個室の戸を閉め、肩にかけた大きめのメッセンジャーバックから小さく折り畳んだジャケットとスラックスを取り出して、着替える。パンツスーツとメッセンジャーの格好を比べ、とりあえずいまの姿の方が多少はましだと結論づける。アナスタシアは配達物の封を開け、中身を確認する。無線機と使用法と周波数が書かれたメモがあった。アナスタシアはメモに従って無線機の電源をオンにした。

コイル型イヤホンを左耳に入れた途端、野太い焦燥が色濃く混じった叫びが耳を貫いた。一階の検問ゲートを武装した亜人三人が突破し、ビルに侵入したと言うのだ。

無線を聞いたアナスタシアの全身が緊張で強張る。

そのとき、身体の麻痺を解くための如くジャケットの内ポケットに入れたスマートフォンが振動した。永井から見計らったように二通目のメールが届いた。指示があるまで待機との厳命。三通目のメールは、アナスタシアの聴覚が微かではあるが遠くで鳴る銃声を、アナスタシアのいる階で轟いたものだとわかるくらいの音量で捉えたときだった。内容は二通目と同様で、命令があるまで絶対に動くなと強い口調が聞こえてくるような書き方がされてあった。


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