691: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:17:39.02 ID:z5kRHM0CO
メールを送信しスマートフォンをポケットにしまうと、永井は掌を上に向けた。掌に意識を向けると黒い粒子が立ち昇ってきた。粒子は一条の狼煙となって夜の空の星たちのあいだを通過して、宇宙の一部になっていくように見えた。
黒い粒子は一定の間隔で上昇していた。粒子は夜の暗さから独立していて、永井の視力が許すかぎりその上昇はどこまでも確認することができた。
692: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:18:36.62 ID:z5kRHM0CO
永井がオグラにIBMを披露した際、中野は自身の問題について──IBMの発現ができない──オグラに質問していた。
オグラ「IBMを出せるようになる方法? ないな、おれの知るかぎり」
693: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:19:38.30 ID:z5kRHM0CO
ロープの端を結んで輪を作り、首に掛けられる大きさまで広げると、輪になった方とは反対の端を太い幹から伸びた腕三本分はある頭上の枝に掛けた。永井はぎゅっと引きロープを固定した。
これで、縛り首の準備が整った。
694: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:20:32.07 ID:z5kRHM0CO
中野「なあ、永井」
中野はちらっと永井のほうを向いて言った。
695: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:21:25.93 ID:z5kRHM0CO
ロシア語のメールを見たとき、アナスタシアは奇妙に思った。考えてみたらロシアにいたときは携帯電話やパソコンは持ってなかったので、こうしてキリル文字の文面を読むのはずいぶん久しぶりだった。
文章は簡潔だったが、そのぶん明瞭で文法上の謝りはなかった。
696: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:22:14.45 ID:z5kRHM0CO
永井からの返信はすぐだった。返信メールには画像が添付されていた。
スマートフォンのカメラで撮影したとおぼしきその画像には、一枚のルーズリーフが写っていた。モールス符号を視覚的に表したキリル文字の一覧表がルーズリーフに記入してある。ふたたびメールの着信。ロシア語で、北西の方角を見ろという指示があった。
697: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:23:34.23 ID:z5kRHM0CO
アナスタシアはメールを送ろうとしたが考え直し、了解の旨を黒い粒子で伝えることにした。窓から手を伸ばし、粒子を放出する。
アナスタシアは舞い落ちる雪片を眺めるように、空に上がる粒子を見上げていた。
698: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:24:42.80 ID:z5kRHM0CO
田中がアジトの通路を進んでいると、棒立ちしている佐藤のIBMに出くわした。ちょうど報告のために佐藤を探していた田中はIBMに呼びかた。が、すぐにこの前言っていたことを思い出し、あげかけた手を引っ込めた。
田中「あれか、放任中か」
699: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:25:36.30 ID:z5kRHM0CO
ペンにキャップをし、田中は頬についた血を拭いもせず、佐藤に訊いた。佐藤はゲームをポーズ状態にして、ボタンから指を離した。そして、節々から力を抜きながら、佐藤はいった。
佐藤「三人くらいにしとけばよかったなあ」
700: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:26:32.66 ID:z5kRHM0CO
アジトの裏に積まれた廃品の山から鉄臭い臭いが漂ってきた。
何年も前に廃業した工場の裏手には、鉄材や木材、砕けたガラス、絡み付いた鉄線、キャビネット、スチールデスク、パソコン、カーペットや自転車や自動車のドア、扇風機にエアコン、はてはフォークリフトまで投棄されていた。
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