361: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:18:02.00 ID:jvW3su8lO
戸崎はオグラに歩みよると、手錠が掛けられたオグラの左手を掴み、手を開いた状態でテーブルの上に押さえつけ、長方形と二等辺三角形が組み合わさったような五角形の薄いスチール製のこてをつき下ろした。オグラの小指が骨ごと切断された。テーブルに血が広がった。こてを抜いたとき、小指がもとあった位置からずれ、テーブルを覗きこめば手と指の断面が見えるようになった。
戸崎「それを見てみろ。死んだボディーガードの私物だ」
362: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:19:52.34 ID:jvW3su8lO
戸崎「この男の話は理論や根拠はともかく言っていることは偶然にも正しい。そしてそれはある分野で大いに役立った。すなわちIBM対策。こいつの情報は有益だ」
平沢「ぶっとんでるな」
363: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:21:42.18 ID:jvW3su8lO
戸崎は 「なんなんだ、おまえは。痛みに鈍いのか? 亜人にでもなったつもりか?」
表情にこそ表れていないが、戸崎は、激痛に苦しみ喘ぎはするものの、一向に話をしようとも拷問を止めるよう懇願しようともしないオグラの態度に苛立ちと困惑を覚え始めていた。
364: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:23:42.07 ID:jvW3su8lO
オグラ「そうさ……メガネ……こんなもんじゃあ、おれは……話す気分にならない。おれが話す条件はたったひとつ……たったひとつだけだ」
頭を上げたままの姿勢を維持するのに大きな苦労でもあるのか、オグラの首がまた下を向いていた。オグラの発言に戸崎の目が見開いた。耳に意識を集中させ、その内容によって拷問を続行するか瞬時に判断しようとしていた。オグラの頭と手が、ゆっくりと大変そうに戸崎に向かって上がっていく。震える右手が戸崎を指差し、大きく見開かれたオグラの目が、暗闇の中に灯るように浮かんだ。オグラははっきりと宣言するように、要求を口にする。
365: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:25:28.06 ID:jvW3su8lO
黒服が要求に従い、銘柄通り、マイルドセブンFKを部屋まで持ってきた。オグラは最低限の応急処置がされただけの左手で煙草を挟み、口に咥えると、右手に持ったライターで火をつける。口腔内の咬み傷に煙草の煙はひどく沁み入るはずだが、オグラは痛む素振りなど少しも見せず、満足するまで煙草を味わうと、ゆっくりと紫煙を吐き出して、言った。
オグラ「まずい」
366: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:27:14.01 ID:jvW3su8lO
オグラ「“アドバンス”……ああ、おまえらは“別種”と呼んでたな。
ここ数年、亜人は自分達のもうひとつの性質に気がつき始めた。自分以外にもう一つの肉体を作り出すことができたんだ。形状は個々によって変化することがあり、現れやすいのは手・口周辺。それは武器化する傾向にある。
おれはこれを『魂の痕跡器官』と呼んでる。人間の原始的な武器は爪と歯だからだ。
身体能力は人間と変わらない。が、人間の脳の制約を受けないため常に『火事場の馬鹿力』が出せる」
367: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:37:28.14 ID:jvW3su8lO
オグラ「先刻話した通り、IBMは崩壊し続けており、崩壊の際に特殊な電磁波を放っている。放射性同位体のようにだ。この電磁波でIBMと亜人は意思の疎通をしている。
ラジオが聞きづらくなることがあるだろう。雨の日なんかに。アレと同じ、雨の中でIBMは動かしづらくなる。
IBMは、パワフルだができそこないだ。やり合えそうな気がしてきただろ?」
368: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:39:34.60 ID:jvW3su8lO
戸崎「出血のせいだ。治療の手配を」
オグラ「健闘を祈るよ」
369: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:40:47.54 ID:jvW3su8lO
−−火曜日
戸崎「以上が警察への助言内容です」
370: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:42:36.79 ID:jvW3su8lO
すこし離れた位置に座って会議を静観していた曽我部は、委員会からの要求を受けてこう答えた。
曽我部「ダメです」
371: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/08/12(土) 22:44:11.47 ID:jvW3su8lO
ほかの委員会メンバーも、曽我部の問いかけに答えず、沈黙したままだった。曽我部はそういした場の空気に憤ったのか、一転して声を荒げて身を乗り出して言った。
曽我部「何もないなら、戸崎先輩の意見に従うのが最善じゃないですか!」
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