247: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:00:45.86 ID:7K73HWKCO
美波「レシピは知ってるんです。元気になるレシピ……」
プロデューサーに呼ばれた寮母が手伝い、美波を部屋まで連れていった。ふらつきながら力なくこうべを垂れる美波の姿は、プロデューサーの内面に取り返しのつかない後悔を生み、いまでもその念が彼を悩ませている。
248: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:01:46.64 ID:7K73HWKCO
小梅「プロデューサーさん……」
ふたたび赤信号で停止したとき、後部席の小梅が身を乗り出し、ぼそぼそとしたしゃべりを聞き逃さないようプロデューサーの耳元に口を近づけた。
249: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:03:24.26 ID:7K73HWKCO
小梅が祝田通りのほうを指差した。プロデューサーは小梅の指の先にある建物に目を向けた。地上二十六階建てのビルがあった。中央合同庁舎第五号館。厚生労働省はこの庁舎に入居していた。
小梅「コ、コンビニに行くだけだから……大丈夫、だよね?」
250: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:04:23.89 ID:7K73HWKCO
武内P「白坂さん……ありがとうございます」
小梅の眼がすこしまるくなった。すこしの沈黙のあと、小梅は口を開いた。
251: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:06:38.64 ID:7K73HWKCO
誰もいないモニタールームは暗闇に包まれている。戸崎は機器が並ぶ空間へと続く階段に無言のまま腰をおろし、細く引き締まった眼をモニターに向けている。正面の巨大モニターには亜人擁護思想者の個人情報がリアルタイムで更新されていて、この二日間でその数は飛躍的に増えている。
下村「今日ですね」
252: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:08:37.30 ID:7K73HWKCO
省前に人々は集まらなかった。いるのは興味本位で携帯を片手に動画を撮ろうとする数人。閑散とした様子を見て、手に持っていた携帯はもう閉まっている。取材に来たテレビクルーも手持ち無沙汰だ。
戸崎「あんなことで人間は動かない。それに、ウェブ上には亜人の実験動画のフェイクなど山ほどある」
253: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:11:42.70 ID:7K73HWKCO
小梅は口を開きかけたが、なにも言わないまま車に乗り込んだ。通りの向こうでは頭にタオルを巻いた男が電話している。その男はなにかにぶつかったようによろめいた。男はうしろを確認したがなにもいない。男からすこし離れた位置に半袖パーカーの少年がいてフードをかぶっている。彼は男が前に向き直ったあとも首をめぐらしてなにかを目線で追うようにしていた。
窓から通りの様子を見ていた小梅は、フードの少年は自分の乗っている車を眼で追ったのかと思った。そのときだった。いつもそばにいる「あの子」がなにかに反応を示している。
254: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:13:34.81 ID:7K73HWKCO
なぜなら、黒い幽霊は亜人にしか見えないからだ。
この黒い幽霊は手の代わりに翼を持っていて、翼を広げたときの全長は五メートルにもなる。頭部は首の断面がそのままになったかのようで、先にいくにしたがって太くなっている。
255: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:14:45.57 ID:7K73HWKCO
田中の幽霊が厚労省の正面に立ち、ぞくぞくと集会にやってくる黒い幽霊たちを待ち受けている。田中は佐藤の言葉を思い出す。
佐藤 (田中君、この作戦は人間を集めるためのものじゃない。亜人を集めるためのものだ)
256: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/06/10(土) 22:16:27.84 ID:7K73HWKCO
田中の幽霊の周囲に集会参加者の幽霊たちが集まってくる。田中はかれらに話しかける。
IBM(田中)『よく来てくれた。これから本当の集合場所を教える』
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