215:何事もなき夏の出来事(お題:ラムネ)6/8[sage]
2016/07/03(日) 22:18:03.58 ID:vx65kHWzo
僕は話しながら、ひっそり、手に持っている二本のラムネのことを思った。山岸が何度か、そのラムネをちら
と見た気がした。しかしこのラムネは……。
ひどく自分が貧乏くさく思えた。二本あるんだから、それを分けてやるのが普通じゃないか。
それに、彼に秘密で山岸の姉と親しくなろうと思っていたことが、後ろめたい気もした。頭のいい山岸はそう
いう全てを見透かしている気もした。
216:何事もなき夏の出来事(お題:ラムネ)7/8[sage]
2016/07/03(日) 22:18:39.96 ID:vx65kHWzo
喧嘩を見物しようとする連中が寄り集まってくる流れに逆らって僕らは歩いた。喧嘩している人以外の声も上
がり始めていた。
ちょっとの間黙って歩いていたが、山岸は「そろそろ姉ちゃんのところに行こうかな」と口を開いた。
それとほぼ同時に、絶えず空を覆っていた太鼓と笛の音を割くように雷が低く轟いた。はっとして空を見上げ
ると、雨の香りが吹いて辺りを満たした。次の瞬間に、なだれ込むようにして雨粒が一斉に降り注いだ。叩きつ
217:何事もなき夏の出来事(お題:ラムネ)8/8[sage]
2016/07/03(日) 22:19:21.04 ID:vx65kHWzo
ビニルの向こうから人影がやってくるのが見えた。黄色い雨ガッパを着ているその影が、ビニルシートを開け
て中に入った。下ごしらえか何かをしていたおじさんは顔を上げて「いらっしゃい?」と言った。
その人物がカッパのフードを脱いだ時、僕は声を上げた。
「お母さん!」
髪の毛を頬にはりつけた顔で、母は目を見開いた。
218:何事もなき夏の出来事(お題:ラムネ)9/8[sage]
2016/07/03(日) 22:20:13.81 ID:vx65kHWzo
以上です
219:何事もなき夏の出来事(お題:ラムネ) ◆W6mCFCW2q6[sage]
2016/07/03(日) 22:26:10.07 ID:vx65kHWzo
トリップつけてなかったんだけど大丈夫だろうか
ていうかこれトリつけられてるかな
220:夏が訪れる(お題:ななし,ラムネ) 0/8[sage saga]
2016/07/03(日) 23:19:44.93 ID:/c5Rqj1io
品評会のもの投下いたします
221:夏が訪れる(お題:ななし,ラムネ) 0/8[sage saga]
2016/07/03(日) 23:20:23.95 ID:/c5Rqj1io
夏は花火の如し。
終わってほしくないと願うのに消えてしまう。
それでも鮮明に、鮮烈に脳内へと焼き付く。
いや、夏ではなく"彼女"か。
222:夏が訪れる(お題:ななし,ラムネ) 0/8[sage saga]
2016/07/03(日) 23:21:08.42 ID:/c5Rqj1io
何か最後に一言と思い彼女の方へ振り向くと、彼女もじっとこちらを見ていた。
「あなたといると落ち着くわ。そう思わない?」
223:夏が訪れる(お題:ななし,ラムネ) 3/8[sage saga]
2016/07/03(日) 23:21:49.02 ID:/c5Rqj1io
風に誘われて草が舞い踊る畦道を、水滴を纏わせたラムネ瓶を片手に歩く。
鬱陶しい蚊柱を手で払いながら、神社のある山の麓を目指す。
去年までは親に従うがままに来ていたこの田舎に初めて進んでやってきた。
彼女に会うために。
224:夏が訪れる(お題:ななし,ラムネ) 4/8[sage saga]
2016/07/03(日) 23:22:30.51 ID:/c5Rqj1io
去年の頃のまんま、しかしずっと綺麗に見える彼女がやはり賽銭箱の前の階段に座っていた。
俺は思わず止めてしまった足を動かし近くまで行く。
そして隣へと腰を下ろし、ラムネを開ける。
玉押しを当てて力を入れてやると、ポンと音を立てて瓶の中に玉が落ちる。どうやら今日の玉は素直なようだ。
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