僕は今宵、悪役貴族に恋をする

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33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 00:06:29.49 ID:yjPkX56vO
ただただキモい中年童貞の妄想
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 11:09:29.13 ID:z8teA88v0
ハルヒあたりで時間が止まってるんだろうな
それは若いという意味ではない
後戻りもできないが先に進む勇気もないという意味
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:16:38.55 ID:qL53ywGWO
「甘やかされてるだけじゃダメになる!」

僕の婚約者はとっても優しい。たぶん素直に甘えていれば無限に幸せを供給してくれるのだろう。だけどそれじゃあ幸せを見失ってしまう。そもそもあの悪役貴族は浮気者だ。昨夜だって委員長を抱いていた。浮気なんて大炎上の源である。人が背負う原罪と言っても過言ではない。だけど僕は寛大に、その痴態を見ながらメイドちゃんたちに慰められ……いや、そんなことよりも幸せは自分で掴む。

「奥様、甘いジャムはお嫌いでしたか?」
「バターやマーガリンもご用意してますが」
「僕は甘くてほろ苦いマーマレードが好きだから……って、そうじゃない。こほん。君たち何か欲しいものはある? 日頃のお礼がしたいんだ」

とある休日。朝食として焼いてくれたパンを食べながら、毎日甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるメイドたちにそう訊ねるも首を振り。

「奥様からは多くのものを頂いております」
「奥様と暮らすようになってから、私たちは毎日が楽しいですし、若様もお喜びです」

欲のない子たちだ。でも僕の気が済まない。

「委員長。城下行きの馬車を手配できる?」
「許嫁殿、まさか城下に"お出まし"するつもりか? もしもバレたら大騒ぎになるぞ」

あいつの許嫁だとバレてからも委員長は態度が変わらなかったからワンチャン僕の正体に気づいてないかと思ったけど違ったらしい。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:18:13.90 ID:QYRCb3gWO
「なんだ、知ってたの?」
「当然だ。そこで、私に妙案がある」
「また妙案?」
「ああ。さっと行って、ぱっと帰ればいい」

言いたいことはわかるけど、それが難しい。

「馬車でも行って帰るまでに夜になるよ」
「私が本国から乗ってきたバイクを使う」
「へーバイクかぁ……乗ってみたいかも」
「いけません、奥様」
「あまりに危険すぎます」

この国では、ほとんど見かけない乗り物だ。
お城にある何台かのクルマやバイクは全て、委員長の故郷である東の帝国からの贈り物である。あれ一度は乗ってみたかったんだよ。

「心配しなくても大丈夫だ。荷物を載せるための側車付きだから落っことすことはない」
「だったら安心だね。じゃあ、すぐ行こう」
「お、お待ちください、奥様」
「何かあったら若様になんと言えば……」
「へーきへーき。僕には秘策があるからさ」

というわけで、あいつがジョギングから帰ってくる前に、僕は委員長が駆るバイクの側車に飛び乗って、城下へと向けて走り出した。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:19:25.85 ID:QddK7AVGO
「うわぁー! すごーい! はやーい!」
「きちんと舗装されていたらもっと飛ばせるんだがな。もう少し走れば道もマシになる」

バイクは最高だった。もっと流行ればいい。

「僕の国でも馬車なんかやめて、バイクやクルマで移動する人が増えないかなぁ」
「彼はそんな未来を目指しているようだぞ」

言われてみればたしかにあいつが読んでる本は工業系の難しい内容のものが多い。時折、こうしたバイクやクルマの雑誌も読んでる。

「あいつの実家、帝国のすぐ近くだからね」
「聡明な人だからな。彼が跡を継げば帝国との交易も盛んとなり著しく発展するだろう」

そんな未来を語っていると城下へと着いた。

「うむ! いつ見ても立派なお城だな!」
「まあね。周りは畑ばっかだけど……ん?」

天高く聳えるお城の天守閣を眺めていると、ドンドン!と花火が上がった。バレてんな。
何が妙案だよ。そもそも僕よりバイクのほうが目立ってんじゃんか。ポンコツ委員長め。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:20:25.85 ID:mKiBUXrCO
「委員長、あのお店にいきたい。城の連中が来る前にさっさとお買い物を済ませないと」
「了解した。裏口に停めるからな。店内に入るまで、ヘルメットは脱がないほうがいい」
「うん。わかった」

まあ、ヘルメットなんてなくても今の僕の短い髪で、正体に気づく人なんてほとんどいないだろうけど。学園でも全然バレてないし。
とはいえ、このお店の主人にはわかる筈だ。
ヘルメットのまま店内に入ると、驚かれた。

「ひぃっ! ご、強盗!?」
「む。失礼な。僕の顔を忘れたの?」
「許嫁殿、きっとヘルメットのせいだ」
「ああ、そっか。ごめんね、すぐ取るよ」
「へ? ま、まさか、そのお声は……?」

ヘルメットを脱ぐ。すると真っ青になった。

「こ、これは大変失礼いたしました! まさか店に直々に"お出まし"になられるとは……」
「今日はお忍びなんだ。騒ぎになると困る」
「はあ、なるほど……かしこまりました。それではお連れ様とご一緒に店の奥へどうぞ」
「うむ! くるしゅうないぞ!」

無駄に偉そうな委員長と店の奥に通された。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:22:12.27 ID:P0TBYeTAO
「よし、買い物終わり。さっさと帰ろう」
「本当に支払いは良かったのか?」
「払うって言っても受け取ってくれないんだから仕方ないよ。なんか僕がこのお店のアクセサリーをつけてるだけで宣伝になるんだってさ。それじゃあ、帰りも運転よろしくね」
「うむ! 安全運転でかっ飛ばすぞ!」

運転のお礼に委員長にはチョーカーを贈呈した。デザインはベルトが黒のレザーで正面のリングにトルマリンと真珠のペンダントトップが垂れ下がっている。とってもかわいいけど、何故か僕までお揃いのものを用意され、委員長はこれで一緒に調教プレイが出来るとはしゃいでいた。いや、しないから絶対に。

「双子ちゃんたちも、喜んでくれるかな?」
「もちろん。許嫁殿が選んだのだからな!」

無意味に自信満々な委員長。僕もたまにそういうところがある。きっと喜んでくれる筈。
真珠とトルマリンの石言葉は、円満と寛大。

「委員長はさ、僕に嫉妬したりしないの?」
「当然するがそもそも浮気者は私だからな。それに母上も妾として私を産んでいるので、その性癖が受け継がれたのだと納得してる」
「性癖って、受け継がれるものなんだ……」
「昨夜の許嫁殿も、随分興奮してただろう」
「な、なんのことかさっぱりわからないよ」
「あっはっは! 理解ある本妻で私は嬉しい」

バカたれめ。これも悪役貴族の妻の役目か。
怒ったり喧嘩したりしながらもそんな関係でいれたらいいなと思いつつ、僕は帰宅した。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:23:04.70 ID:Kc1XYpybO
「ただいまー」
「ああ、奥様! よくぞご無事で」
「心配しておりました!」
「よしよし……これは日頃の感謝の気持ち」

帰ったら抱きつかれて泣かれた。そんな彼女たちに贈り物を手渡す。小包を手にして揃って小首を傾げる彼女たちの涙を拭い促した。

「開けてみて。気に入るといいけど……」
「あ、はい……失礼します」
「はわ〜かわいいイヤリングです」

双子メイドちゃんにはかわいいイヤリング。
赤いガーネットの石言葉は忠誠と真実の愛。
まるでウサギのおめめみたいに愛くるしい。
別々のものにするか最後まで悩んだけど、平等という観点から、まったく同じものした。

「つけてあげるね」
「あ、ありがとうございます」
「く、くすぐったいです……」

照れて真っ赤な2人につけると、想像通り。

「うん。とっても似合ってる。かわいい」
「ほんとですか? お姉ちゃん、見せて!」
「私も見たい……はぅ〜……かわいいです」

鏡がなくても互いに見せ合える双子は便利。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:24:26.54 ID:jEG/URbnO
「バイク初めて乗ったけど楽しかったよ」
「あァ……まァ、無事でなによりだなァ」

婚約者は少し元気ない。心配していたのだろうか。それとも、委員長のバイクに乗ってみたかったのだろうか。たぶんどっちもだな。

「はい、これ」
「あァン? 女からモノ貰う趣味はねェぞ」
「いいから、受け取って」

婚約者への贈り物はすぐ決まった。パッと見て、これだと思った。ロングのイヤーカフ。
箱から取り出しつけてあげると似合ってる。
これぞまさに悪役貴族って感じのアクセだ。
いろいろ種類があってチェーン付きもある。

「うん。思った通り、カッコかわいい」
「なンだそりゃァ……褒めてンのかァ?」

秘策である贈り物作戦は大成功と言えよう。

「見たらわかるよ。ほら、僕もお揃いだよ」

同じものをつけて見せると婚約者は笑って。

「ハッ! てめェがつけても可愛いだけだな」
「それって、褒めてるの?」
「当たり前だろォがァ。チョーカーも似合ってんな。 ハッハァ! 調教しがいがあるぜェ」
「ほらな、許嫁殿。私の言った通りだろ?」
「はあ。まったく……バカたれどもめ」

まるで耳を婚約者に齧られてるようで好き。


【僕は白昼、側車で城下にお出ましする】


FIN
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 22:40:46.27 ID:jbIKg2ExO
長編で副題付ける場合、最初に表記するのが常識。
アスペ丸出しで自分ルール曲げられないのは
マジでみっともないだけなんだけどなあ。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:10:40.59 ID:ix13/Z+gO
「あァン? 俺の手で、なァにしてンだァ?」
「今、爪を黒く塗ってるからじっとしてて」

イヤーカフ悪役貴族は学園内でも評判らしく、城下のアクセショップは大層儲かっているらしい。僕らのチョーカーも流行り、真似をする生徒が続出し、双子メイドのイヤリングまでもが隠れ双子ファン達に好評な模様。

「できた! はい、次は左手ねー」
「お前ェ……俺をどうしてェンだよ」

僕的にもこの名ばかり悪役貴族に箔をつけるべく、日夜デコレーションに勤しんでいる。
爪を黒く塗るのにも全部なのか何本かだけなのか、はたまた片手だけにするべきか悩む。

「うーん。とりあえず片手だけにしとくか」
「ちょっと手ェ貸せェ」
「うわ! なにすんのさ!?」
「うるせェ。じっとしてろォ」

悩んだ末に片手だけのアシンメトリーを選択した僕の手を取り、悪役貴族は邪悪にほくそ笑みながら、ペタペタとマニキュアを塗る。

「俺が右手ならァ、てめェは左手だァ」
「ひどい……汚された」

僕の綺麗な爪が、悪に染まってゆく。しかも無駄に丁寧で上手。あ、そんな……ふーふーすんな。やめろよ。ゾクゾクするじゃんか。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:11:51.16 ID:ix13/Z+gO
「で? どうなの? 似合うの? 可愛いの?」
「ハッ! 上出来だなァ……感謝しろよォ」
「ふん。そっちこそ僕とお揃いにしたかった癖にさ。感謝して欲しいのは僕のほうだよ」

売り言葉に買い言葉を的確に返しながら、思わずにやけてしまう。手、繋ぎたいな。でも自分からは恥ずかしい。さっさと繋いでよ。

「あ……なんでポッケに手入れんのさ」
「あァン? なンでもいいだろォがァ」
「まったく……せっかく塗ってあげたのに」

ほんとこの駄犬はこれだから、と思いきや。

「チッ。ほらよォ……やる」
「へ? なに、これ?」
「開けてみてのお楽しみだァ」

ポッケから取り出した小箱。手品だろうか。
恐る恐る開けてみるとかわいいピンキーリングが入っていた。慌てて閉じて、確認する。

「ちょ、ちょっとこれ……どうしたの?」
「かっぱらってきたに決まってンだろォ」
「やっぱり!? すぐに返してこないと!」
「おォい! ンな嘘を信じンじゃねェよ!? ちゃんと買ったに決まってンだろォがァ!!」

買ってきたらしい。ということは、つまり。

「もしかして……僕のために?」
「あァ……当たり前だろォがァ」

プレゼントだ。僕への。やばい。嬉しすぎ。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:13:30.03 ID:ix13/Z+gO
「なンだよ……気に入らなかったのかァ?」
「え、な、なんで……?」
「いつもの"バカたれ"はどォしたンだァ?」

言えるわけない。言えるわけないじゃんか。
普通に嬉しい。とびきり嬉しい。ありえないくらいに嬉しい。胸が高鳴ってる。大好き。

「だ……」
「だァ?」
「あ、う……な、なんでもない」

あっぶない。そのまま大好きって言うところだった。いや、言ってしまえば楽になれたのかもしれない。飲み込んだ好意が暴れてる。

「チッ……難しいモンだなァ」
「へ? な、なにが……?」
「俺ァ、そンなモン買ったことねェからさ」

まさかの初プレゼント。嬉しさが更に倍増。

「気に入らなかったら……悪かったなァ」
「ちがっ……僕は、そうじゃなくて!!」

言わないと。嬉しいって。大好きって早く!

「ま、まあ……せっかくだし、貰っとくよ」
「ハッ! そいつァ、安心したぜェ」
「はあ〜……もぉ」

ほっとすんな。自分にガッカリだよ、僕は。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:16:04.20 ID:ix13/Z+gO
「おォい、ついでだァ。てめェにもやるよ」
「え? もしかして……私にもくれるのか?」
「んん?」

おやおや? 同じ箱を委員長が受け取ったぞ。

「うわぁ〜なんてかわいいんだ!」
「チッ……うるせェ。騒ぎすぎだァ」
「ありがとう。一生大事にするからな!」
「要らなくなったら売っぱらっていいぞォ」
「何を馬鹿なことを……ほら、つけてくれ」
「めんどくせェなァ……これでいいかァ?」
「うむ! 本当にありがとう。大好……」
「う、うわああああああああんっ!!!!」
「うわ! 許嫁殿!? どうしたんだ!?」

限界だった。色々と。僕は叫んで、暴れた。

「お、奥様、どうかお気をたしかに……」
「大丈夫ですよ……奥様が1番ですから」
「でも! おんなじピンキーリング!!」
「先に貰ったのは奥様です。重要ですよ」
「落ち着いてください、正妻の余裕です」
「あ、ああ……ごめんよ、僕のメイドたち」

メイドたちに宥められて、落ち着いた僕に。

「ハッハァ! そンなに嬉しかったのかァ?」
「くっ……! こんのっ、バカたれぇえ!!」
「ああ、奥様……」
「おいたわしや……」

そんな極めて無神経な台詞を吐いた駄犬に飛びかかり、第2ラウンドのゴングが鳴った。
僕は勇敢に戦った。最終的に、悪役貴族に寝室へと強制連行され、泣き疲れて、眠った。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:17:19.58 ID:ix13/Z+gO
「肩と首と手足の歯形、ごめんね」
「あァ……こンなのかすり傷だァ」

朝起きて、いつかのように謝った。だいたいこいつが悪いと思う。だけど過ぎたことだ。
ひと晩経ったら忘れてやるのがきっと悪役貴族の妻としての勤めなのだと自分に言い聞かせる。昨夜も今朝も、変わらず好きだから。

「昨日は言えなかったけど、ありがとね。とってもかわいくて、とっても気に入ってる」
「だったら噛むンじゃねェよ」
「ぐっ……ごめんなさい」

ぐっと堪えて謝ると、悪役貴族は嘲笑って。

「てめェは歯向かってきたほうが可愛いな」
「……バカたれ」
「ハッハァ! そうこなくっちゃなァ!」

ため息と共に僕は小指の紫水晶を見つめる。
アメシストは、僕の婚約者の瞳と同じ色だ。
石言葉には誠実が含まれている。それが嘘か本当かなんてこの妖しい輝きの前にはどうでも良くなる。どうにでもして欲しいくらい。

「気に入った。もう絶対に返さないからね」
「ハッ! だったらてめェは一生持っとけェ」

僕の小指の赤い糸は悪役貴族と繋がってる。


【僕は明朝、悪役貴族と仲直りする】


FIN
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 07:38:07.44 ID:SsBg374ko
良ければ酉付けてくれ>>1だけ見たい
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 11:35:37.30 ID:2K1jDuDG0
つけるわけねーじゃん
R板に行けと再三言われてもここでスカトロ怪文書の投下続けてた荒らしなんだから
この駄文製造機は人間の話を聞く知能なんか持ち合わせてねえよ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 13:24:57.04 ID:gApAhEJ3O
悪役要素も貴族要素も全く作中に無いのが凄い
口調が悪い只のチンピラを自分の理想に見立てて
脳内TSからの自慰とか人前に出したらいけないレベルよ
51 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:45:38.74 ID:pnkw8d5yO
「さあ! 好きなだけ食べて飲んでくれ!」

その日、委員長が晩餐を用意した。メニューは帝国の郷土料理であるすき焼き。牛肉も帝国産のもので、わざわざ冷凍車という鮮度が悪くならない輸送手段で持ってきたらしい。
ちなみに調理したのは、双子メイドである。

「貰ってばかりでは帝国の名が廃ると、母上が送ってくれたのだ! さあさあ、遠慮せず」
「僕はそんなにお肉は好きじゃないし……」
「帝国の牛肉を甘くみるなよ? 許嫁殿はただでさえ痩せているのだからもっと肉を食え」

そこまで言うならとひとくち食べて驚いた。

「なにこれ……美味しすぎる。今まで僕たちが食べてきた牛肉は牛肉じゃなかったの?」
「あっはっは! そうだろう、そうだろう!」
「ほら、双子ちゃん。君たちもお食べ」
「ありがとうございます……これは確かに」
「ほっぺた落ちそうです〜」

帝国の牛肉マジやばい。柔らかくて溶ける。
あとこのスープも美味しい。割下というらしいけどこのレシピは欲しい。甘しょっぱい。

「あァ……この酒もいけるなァ」
「さすがお目が高い。このお酒は上等だぞ」
「ハッ! いくらでも飲めそうだぜェ」

帝国のお酒はワインとは違い、透明でピリッと辛かった。冷えた状態でも美味しいけど、温めて熱燗にするとポカポカして良い気分。

「ただお酒は控えめにな! メインイベントはこれからだから、楽しみにしていたまえ!」

今夜は委員長と出会えて良かったと思えた。
52 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:49:01.96 ID:pnkw8d5yO
「さて、諸君。いよいよメインイベントだ」

たらふくすき焼きをご馳走になり、委員長が女性陣を先導してほろ酔い気分でお風呂を済ませると、僕らの着替えがなくなっていた。

「僕らの着替えは?」
「諸君らにはこれを着て貰う!」

取り出したのは鮮やか模様で染められた布切れ。それを着るというのはどういうことか。
まさか、身体に巻き付けるつもりなのかな?

「着付けは得意だから安心したまえ」
「本当にそれ、服なの?」
「これは着物の一種で浴衣という、帝国の民族衣装だ。祭りの時や、寝巻きに着るのだ」

祭りは祭典だろう。なのに寝巻きにするの?

「百聞は一見にしかずだ。まず袖を通して、前で合わせて、丈を調整しながら腰紐を締めれば……ほーら完成だ! うむ! かわいいぞ」
「奥様……本当にお綺麗です」
「とてもよくお似合いです」
「本来ならもっと沢山紐を使って、外出時の着崩れを防ぐのだがな。寝巻きなら簡単だ」

パパッと着せられた。生地がサラサラで着心地が良い。でも大股を開いたら合わせ目から足が見えてしまいそう。これが慎みの秘訣か。ていうか、ちょっと待って。おかしい。
53 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:52:53.17 ID:pnkw8d5yO
「委員長、僕まだ下着をつけてない」
「ああ、これはそういう仕様なのだ」
「へ? どゆこと?」
「下着をつけたら透けるし、生地に下着の線が浮かぶからな。ほーら浴衣双子の完成だ」

説明しながら双子の着付けを終えた委員長。

「2人とも似合ってる。すごくかわいい」
「本当ですか!? お姉ちゃん、見せて!」
「本当にかわいい……でも少し恥ずかしい」
「あと、これはお前たちのご主人様に頼まれて用意した髪飾りだ。帝国では髪飾りをかんざしと言うんだ。これからも精進したまえ」
「わ、若様から……恐悦至極です」
「たんぽぽの髪飾り……光栄です」

双子ちゃんたちの浴衣の柄は紺地に白い百合の花が咲き乱れていて、一見すると派手に見えるが、一歩下がると落ち着いて上品にも見える。はにかむお姉ちゃんと、笑顔な妹ちゃんとのコントラストで双子の魅力が満点だ。
それにしても髪飾りなんて、悪役貴族も粋な計らいを。僕もまた髪が伸びたら欲しいな。

「うむ! 絶景だな!」
「委員長もさっさと着たら? 風邪引くよ」
「おっと、忘れていた。しかし許嫁殿はなんというか……慎ましい身体で着物がよく似合って羨ましいな。私は胸がデカすぎて……」
「黙れ、バカたれ」

あの牛肉いっぱい食べたら僕だってきっと。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:54:06.88 ID:PZiAiyZh0
マラソンのくだりを出しちゃってる時点で非現実やファンタジーの世界にはできないんだよなあ
それも具体的に42.195とか出しちゃってるんだから
55 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:55:04.07 ID:pnkw8d5yO
「刮目せよ! 壮観だろう!」
「ハッハァ! 悪役貴族冥利に尽きるぜェ!」

それなりに待たされたであろう悪役貴族は艶やかな僕たちの装いに上機嫌だった。酒瓶が何本も転がっているので酔っているらしい。

「ちょっと、飲みすぎだよ」
「あァン? いいじゃねェかァたまには」
「明日あたま痛くなってもしらないよ」
「そんときァ、てめェに介抱してもらうさ」

注意するも、何故か嬉しそう。普段の邪悪な笑みではなく、なんとなく甘い微笑み。もしかして甘えているのか。悪役貴族が。僕に。

「どうだ! 私の浴衣は!」
「ハッ! 馬子にも衣装たァこのことだなァ」

委員長の浴衣の柄は意外にも桃色の生地で、東の帝国に咲き誇ると言われる、桜の花びらが散りばめられていた。惚れ惚れしちゃう。

「そうだろう? 脱いだらもっとすごいぞ?」
「ハッハァ! そいつァ楽しみだなァ」

脱がなくてもすごいじゃん。それに比べて。

「あァン? なァにしょぼくれてンだァ?」
「ふん。どうせ僕はちっちゃいもん……」
「ああ、奥様。それが奥様の良さです」
「偉い人にはわからない希少価値です」
「はあ……同情するなら僕に胸をくれ」

せめて、双子ちゃんたちくらいあればなぁ。
56 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:56:39.18 ID:pnkw8d5yO
「こっち来て、もっとよく見せてみろォ」
「うわ! ちょ、ちょっと、歩きにくいんだから、あんま引っ張らないで……ああっ!?」

つんのめって、悪役貴族の胸に飛び込んだ。

「白地にひまわりたァ……てめェらしいな」

ひまわり柄はかわいい。気に入ってるけど。

「……どうせ僕はお子様だもん」
「あァン? ガキにはそンな色気出せねェよ」

色気なんてないし。でもちょっとだけなら。
勇気を出そう。まだちょっと酔っているし。
ちょっとだけなら頑張れる。今にみてろよ。

「実は僕ね……今、下着つけてないんだ」
「っ……てめェ、酔いが醒めんだろォが」
「ど、どう……? 脱がせたくなった……?」
「チッ……ンなこと、言わせンじゃねェよ」

チラリと悪役貴族の顔を見上げると耳まで真っ赤だった。僕も恥ずかしくて同じように真っ赤だろう。それでも悪戯心は湧き上がる。

「今夜は甘えていいよ……バ・カ・た・れ」

そう囁いて、真っ赤な耳たぶを噛んでやる。

「てめェ……ホント良い性格してるよなァ」
「ん? 参った? 降参? 負けを認めるの?」
「いつだって俺ァ……てめェに参ってるよ」
「えへへ……僕の勝ち」

よし勝った。恥ずかしかったけど僕の勝ち。
浴衣のおかげでもある。それとお酒のせい。
今夜の僕は酔ってるということにしとこう。


【僕は今夜、悪役貴族に酔い痴れる】


FIN
57 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 05:24:18.93 ID:xt7OG+M5O
「あァ……クソが……あたまが割れそうだァ」
「だから言ったのに……バカたれ」

昨夜酒池肉林の限りを尽くした悪役貴族は翌朝、絶賛二日酔いに見舞われていた。日課であるジョギングにすら行けない様子。せめてもの救いは、今日が休日だったことだろう。

「奥様、お水を持って参りました」
「ありがとう。こいつは僕が診とくからお仕事に戻っていいよ。朝食が出来たら呼んで」
「かしこまりました。若様をよろしくお願いします。何かありましたらお呼びください」

たんぽぽの髪飾りが可愛らしい双子メイドちゃんから吸い飲みを受け取りそれを口元に運んでやるも、どうもやりづらい。仕方ない。

「ほら、僕の膝にあたまを乗せな」
「うう……悪ぃなァ」
「はい、お水飲んで」

膝枕をしてお水を飲ませると薄目を開けて。

「てめェ……ドエロい格好してンなァ」
「ばっ……バカたれ! ジロジロ見るな!」

言われて浴衣の着崩れに気づいた。メイドちゃんたちもひと声かけてくれたら良いのに。
慌てて襟を正しながら、紫水晶の瞳を塞ぐ。

「おォい。手ェ、どけろ……何も見えねェ」
「だから見るなってば。そもそも見るに値するようなものは、持ち合わせてないし……」
「てめェの価値をてめェで決めンじゃねェ」
「……そんなこと言っても、見せないから」
「チッ……それならァ、寝るしかねェなァ」
「たまには二度寝も悪くないよ。おやすみ」
「あァ……ありがとなァ……愛してるぜェ」

そう言って悪役貴族は寝た。僕の膝の上で。
58 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 05:27:39.11 ID:xt7OG+M5O
「今朝は随分と優しいではないか、許嫁殿」
「あ、委員長。起きてたの?」
「朝からラブラブで羨ましいぞ」

声のほうを見やるとベッドの上で横たわる半裸の委員長が頬杖をかいていた。僕よりもドエロい格好だ。委員長は悪役貴族を膝枕する僕を羨ましげに眺めながらこう訊ねてきた。

「そう言えばこれまで訊かれたことはなかったが、私と彼との馴れ初めに興味ないか? 」
「興味ない」
「本当に聞かなくていいのか? もしかすると、意外な事実が判明するかもしれないぞ」
「委員長。僕はそれなりに理解しているよ」

僕のことを愛してると言う婚約者がどうして悪役貴族のように他の女に手を出したのか。
その理由に僕は薄々勘付いている。だけど、きっとそれは、僕が知るべきことではない。
59 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 05:29:50.80 ID:xt7OG+M5O
「帝国から来た委員長に、こいつがどんな条件を出されて付き合うことになったかなんて、僕が知るべきことじゃない。だから訊かないし、聞かない。何も言わなくていいよ」
「ほう……さすがのご慧眼と立ち回りだな」
「僕に嫌われようとしたって無駄だよ。こいつが傍に置くってことは委員長には害はないって証明だから。僕は、婚約者を信じてる」

それが妻の役目だ。それでも僕は妻として。

「だけどこれからも嫉妬はする。ヤキモチは焼く。僕はこいつを好きだし委員長もこいつが好きなんだから、遠慮せずにやり合おう」
「あっはっは! 勝てる気がまるでしないな」
「なに笑ってんのさ……バカたれ」

委員長の清々しい大笑につられて微笑むと。

「奥様、朝食のご準備ができました」
「わかった。委員長、今だけ貸してあげる」

婚約者を委員長の膝に乗せて僕は釘を刺す。

「朝食を食べ終わったら返して貰うからね」
「さて、それは約束できかねるな」
「だったら委員長は朝食抜きだよ」
「まったく……許嫁殿には敵わないな」
「えへへ……僕の勝ち」

部屋を出る前に、婚約者の額にキスをした。


【僕は朝イチで、浮気相手を打ち負かす】


FIN
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 09:41:38.24 ID:Rs46BFI1o
スカトロ怪文書への罵倒は散々無視してきたのに好意的な>>48の要望には応えて酉は付けてるの草
これが「お前の駄文は見たくないのでNG入れとくから酉付けろ」とかだったら無視してるんだろなぁ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 10:54:21.65 ID:/E0u8Isw0
おかげで不快なゴキブリをNG入れれるようになったな
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 11:05:09.06 ID:fD1wlzE40
>>48は有能やな
特別支援学校の職員や介護福祉士の素質あるわ
馬鹿とハサミは使いようで>>1の行動は制御可能だと知れたのはでかい
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 12:56:20.74 ID:2YUXwkt/O
マジで行動パターンがちゃおラジの頃から
全く進歩していないの草も生えんわ
64 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 21:05:52.69 ID:lB/PJQMeO
「奥様、ご入浴の準備が整いました」
「ありがと。じゃあ、すぐ入っちゃうね」
「脱いだお洋服はこのカゴの中にどうぞ」

その日、僕はいつも通り、忠実なる双子メイドちゃんが沸かしてくれたお風呂に入るべく、服を脱いで洗濯カゴに放り込んでいた。

「ん?」

靴下まで脱いで、最後にパンツを脱ごうとしたその時、シャッ!っと、目にも留まらぬ速さで妹メイドちゃんの手が動いた。正直、僕でなければ見逃しちゃうくらい素早かった。

「妹ちゃん、ちょっといいかな?」
「な、なんですか……?」
「ポケットの中身、出してごらん」

犯行現場を目撃した僕は、怒ってないことを示すために努めて優しく促した。すると、妹メイドちゃんのポッケから靴下が出てきた。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:07:45.07 ID:lB/PJQMeO
「靴下、片方だけになったら困るでしょ?」
「いえ、実は……」
「え?」

なんともうひとつの靴下の片割れが現れた。
僕ですら二足目は見えなかった。そのことに戦慄しながらも、咳払いをして仕切り直す。

「こほん。あのね、妹ちゃん。僕は別に怒ってるわけじゃないんだ。ただちょっとだけ想像してみて欲しい。もしも妹ちゃんが1日履いた靴下を、僕が嗅いでいたらどう思う?」
「奥様を不快にさせたくはありません……」

話せばわかる優しい子だ。ほっと安心する。

「うん。そうだね。僕も今、同じ気持ちさ」
「奥様の靴下は、全く不快ではありません」
「あの……ええと。妹ちゃんにとってはそうかもしれないけど僕としては妹ちゃんに1日履いた靴下を嗅がせるのは如何なものかと」
「むしろ嗅げと、お命じになってください」
「そんな、悪役貴族じゃないんだから……」
「いい加減にしなさい!!」

妹ちゃんの圧に負けて、後半しどろもどろになってしまった僕の代わりに、もう我慢の限界とばかりにお姉ちゃんメイドが怒鳴った。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:11:02.17 ID:lB/PJQMeO
「奥様に嫌われたらどうするの!?」
「まあまあ、そう怒らずに。僕は全然気にしてないからさ。むしろ詮索して悪かったね」
「奥様、本当に申し訳ありません。妹の不始末は姉の責任。なんなりと処分を頂きたく」
「いやいやそんな大事にするつもりは……」

お姉ちゃんメイドはちょっと固い考えの持ち主で、仕事の上では素晴らしいけれど、そんなに厳しくすると妹ちゃんが泣いてしまう。

「ううっ……嫌いに、ならないでください」
「大丈夫だよ。嫌いになんてならないから」
「もうこんなことしないって約束しなさい」
「う、うわあああんっ」

お姉ちゃんの追撃で涙腺が決壊してしまう。
ポロポロと大粒の涙が溢れる。泣いている妹ちゃんは可哀想で、たんぽぽの髪飾りも今日は元気がなかった。思わず駆け寄って、抱きしめる寸前に、妹ちゃんは爆弾発言をした。

「うっ……ぐすっ……お、お姉ちゃんだって……奥様が使い古して捨てた歯ブラシを拾って、夜中にこっそり使ってるくせに……」
「そ、それは言わない約束でしょ!?」
「んん?」

これは驚き。お姉ちゃんメイドの秘め事か。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:12:55.40 ID:lB/PJQMeO
「ううっ……いっつもお姉ちゃんに歯ブラシ貸して貰って悪いから、だから今日はお姉ちゃんのぶんも靴下を狩ろうって思ったのに」
「あれほどひとつだけにしなさいって言ったのに……馬鹿な子。奥様、本当に申し訳ありません。この責任は全て姉である私に……」

ダメだこの双子。いや、とっても良い子たちなんだけど僕への執着が強すぎる。きっと甘やかしすぎたせいだろう。大事にするって難しい。僕は悩みに悩んで苦渋の決断をした。

「暫く僕は、自分の部屋で過ごすべきかな」
「そ、そんな……それだけはお考え直しを」
「す、捨てないでください! なんでもします! だから私たちを捨てないでください!」
「ん? 今、なんでもするって言った?」
「へ? お、奥様……?」
「なぜ、まるで若様のような笑みを……?」

一緒にいると似てくるんだよね。まったく。不本意なことに。僕は悪役貴族のように邪悪に笑って、双子メイドたちへ沙汰を下した。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:15:33.49 ID:lB/PJQMeO
「君たちは罰として、寝るまで委員長と手を繋いで仲良くなること。これは命令だよ」
「お、奥様、それだけはご勘弁を……!」
「どうか、奥様の手で私たちに罰を……!」
「なんでもするって言ったよね?」

この機会に双子メイドたちと委員長の不仲を解消してしまおう。妻としての僕の役目だ。
ニッコリ邪悪に微笑むと双子たちはたじろいで背後から忍び寄る魔の手に全く気づいていない。委員長が双子2人を同時に捕獲した。

「無論、私は構わないぞ! ほーら捕まえた」
「きゃあっ!?」
「さ、触らないでください!」
「そんなつれないことを言うな。実はずっと許嫁殿と君たちの関係が羨ましかったんだ」
「あ、あなた様は奥様の敵です!」
「あなた様のせいで奥様がどれほど……!」
「知らんな。ほーら、こちょこちょこちょ」
「やめっ……手を入れないでください!」
「やだ! 奥様がいい! 奥様以外はイヤ!」

うーむ。さすがに止めるべきだろうかと、本来の主人である悪役貴族のほうに目を向けると、奴はこの目を背けたくなるような惨状をものともせず読書に耽っている。すごい集中力だなと感心していると、ふと目が合った。

「躾はァほどほどになァ」

まったく、悪役貴族の癖に優しいんだから。
69 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 21:16:55.72 ID:lB/PJQMeO

「委員長、手を繋ぐ以上のことは……ん?」

これ以上は危険と判断して委員長の刑を中止しようとしたその時。洗濯カゴの中にそれを発見した。僕は神速で掴んで背中に隠した。

「またつまらぬものをくすねてしまった」

今のは速かった。世界新記録かもしれない。
双子メイドたちはまだまだだ。僕クラスになると自分がくすねたことすら認識出来ない。
気がついたらそこにある。そんな現象として自然に溶け込む。故に誰も気づかないのだ。

「ていうか、僕ずっとパンイチじゃん……」

そう言えば、今の僕はパンツ一丁だった。乙女としてこの格好はありえない。何か着るものはないかと探すと、大きめのシャツがあった。きっとブカブカだろうけど、大は小を兼ねると言うし、ためしに着てみるとやはり僕には大きかった。けれどなんとも言えない心地良さを感じ、垂れた袖口をくんくんする。

「えへへ。まるで抱きしめられてるみたい」
「現行犯だ! 捕まえろ、双子メイドたち!」
「え? なになに!? なんで逮捕されんの!」

我に返ると双子メイドたちに捕まっていた。
70 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 21:18:44.81 ID:lB/PJQMeO

「奥様、今のはいけませんね」
「近頃、若様の洋服が減ってると思ったら」

まったく意味がわからない。濡れ衣である。

「若様、どうか奥様に寛大なるご沙汰を!」
「奥様は若様を思うがあまりに、罪を犯してしまいました。これは愛ゆえの罪なのです」
「よォし……沙汰をくだす。連れてこォい」

パタンと本を閉じた悪役貴族が判決を下す。

「罰として、てめェの下着を俺によこせェ」
「い、異議あり!」
「異議は却下とする。優等生、出番だぞォ」
「よし! どれ、早速私が脱がしてやろう!」
「ちょ! まさか今穿いてるのを取るの!?」
「ハッハァ! 当たり前だァ。鮮度が違ェ!」
「鮮度ってなんだよバカたれぇええっ!!」

その場で僕のパンツは悪役貴族に奪われた。


【僕は夕刻、悪役貴族に裁かれた】


FIN
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 21:31:38.18 ID:fiembG6Z0
怪文書ゴキブリやら自演スカトロマンやら呼ばれていたが
こいつの核心を突いていた呼び名は「青葉予備軍」だな
あの青葉だって最初はハルヒにハマッてそこからクリエイターを目指したけど
才能もなけりゃまともな努力もしてこなかったから箸にも棒にも引っかからず
最後は「京アニが自分のオリジナルをパクッた」という恥ずかしい妄想を拠り所に凶行に走って……

こいつも自己愛とみじめすぎる現実のギャップを何番煎じか分からない駄文では埋められなくなって
最後は「あのタイプのキャラに『フハッ』と言わせるのは俺のパクリだ!許せん!」と
言いがかり被害者モードで出版社に凸するかもしれん
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 22:04:33.23 ID:MfgaFO6d0
絵に描いたような「駄目な作品の見本」を
ここまで量産できるのが逆に凄い
マジで青葉の作品タイトルの方が
遥かにこいつよりは面白そうだもん
73 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:45:53.23 ID:8u3yC8i1O
「ハッハァー! 最ッ高ォだぜー!!」
「うむ! だいぶ上達したではないか!」

最近、悪役貴族は帝国から輸入したバイクを買い、寮の周辺で乗り回すようになった。気持ち良さそうに縦横無尽に駆け回っている。
委員長はバイクの教官として見守っていた。
そんな2人を僕とメイドは部屋の窓から眺めている。バイクはメイドたちに不評らしく。

「あんな危険な乗り物で遊ぶなんて……」
「奥様、そろそろ注意するべきかと」
「別にいいんじゃないの? 僕もバイクは楽しかったし。今度君たちも乗せて貰いなよ」
「何かあってからでは遅いんです!」
「見ててハラハラします……」
「まあまあ。何事も危険はつきものだよ」

メイドたちの非難を、やんわりと受け流す。
バイクはたしかに危険な乗り物かもしれないが、馬よりも速く爽快でとてもいいものだ。
74 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:47:27.11 ID:d0VHcyTJO

「やはり騎乗のセンスが抜群だな!」
「当たり前だろォ! 俺に乗りこなせねェじゃじゃ馬なンざ、この世には存在しねェ!!」
「うむ! 今晩も期待しているぞ!」
「あァ! 足腰立たなくしてやンよォ!」

よく言うよ。やたら上に乗せたがる駄犬のくせにさ。乗りこなしてんのはこっちだっての。さらっと浮気の約束すんなよな。まあ、子供みたいに目を輝かせる悪役貴族を見てると、そんな小言を言う気力も失せるけどさ。

「やはりあの方は好きになれません」
「今も若様と2人であんな楽しそうに……」

未だにメイドたちと委員長の仲は悪い。というよりも僕の代わりに怒っているのかもしれない。そんなことは僕の望むことではない。
75 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:49:25.69 ID:D5lrb/S9O
「いいかい、君たち。もしも僕とあの悪役貴族が結婚して、第二夫人として委員長を迎えることになったら、頻繁ではないにせよ、委員長を家に残して外出することがある筈だ。その時には、君たちはメイドとして委員長に従わないといけないんだよ。わかるかい?」
「そんなの嫌です……」
「家のことは私どもにお任せください」
「もちろん君たちのことは信用してる。だけど僕は君たちに責任を負わせたくない。何かあった時に君たちのせいにしたくないんだ」

僕はメイドたちに甘い。だから何かあった時に遠慮なく叱れる委員長が必要だ。もちろん何も起きないよう双子メイドたちにはくれぐれも目を光らせて貰うけど責任は委員長だ。
何かあったら委員長せいなら、心置きない。

「奥様はお優しすぎます……」
「奥様に叱られてみたいです……」

このようにメイドたちがどんどんおかしな趣味に目覚めかけているのでその点においても委員長のような第三者が必要不可欠なのだ。
ていうかあいつ、調子に乗ってスピード出しすぎじゃない? そのうち、きっとコケるぞ。

「気をつけろ! その辺りは砂利が多い!」
「ハッ! 楽勝ォ楽勝ォって、うわっ!?」

言ってる側から砂利で滑って転んだ。思わず身を乗り出す。大丈夫だろうか。あ、起き上がった。良かった。心配させんなバカたれ。
76 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:50:57.15 ID:g0c/RC5kO
「お、奥様! 早く助けにいきましょう!」
「わ、若様がお怪我を!」

わかってる。逸る気持ちを抑えて、命じた。

「君たち、早く助けに行ってあげて」
「お、奥様は……?」
「奥様も行きましょう!」
「僕はここで待ってるから早く連れてきて」
「奥様……わかりました。お任せください」
「早急に、若様を奥様の前にお連れします」

いま僕が助けに行けばこの部屋は誰もいなくなってしまう。それは良くない気がした。この考えはもしかすると、先進的な東の帝国では古臭い考えかもしれない。だけど僕は、本能的に残るべきだと思った。何故だろうか。

「僕が待ってるから早く帰れ……バカたれ」

たかがバイクで転んだだけ。大袈裟だとは思うけど、良い機会かもしれない。心構えだ。
これから先、肉体的にではないにせよ、あいつが傷を負って帰ってくることがあるかもしれない。とても辛いことがあって、やるせない気持ちで帰ってくることがあるかもしれない。心身ともに疲れ果て、クタクタになって、おまけにボロボロになったあいつの帰りを、僕はいつまでもじっと待ち続けるのだろう。もしかしたら、僕が待つ家に帰りたいという一心で、何かを成し遂げられるかもしれない。ならばそれが妻の役目だと僕は思う。
77 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:52:54.19 ID:Av/MYctOO
「なにやってんのさ、バカたれ」
「面目ねェ……」

双子たちに両脇から支えられながら悪役貴族は帰ってきた。肘や膝に擦り傷はあるものの見た感じは軽傷だ。僕は触診して確かめた。

「身体は? 大丈夫なの? 骨折れてない?」
「こんなのかすり傷だァ……痛つつ」
「双子ちゃんたち、どう?」
「恐らくは、大丈夫かと」
「頭も打っておられなく、幸いでした」

委員長が用意していた肘当てや膝当てをかっこ悪いからと着用拒否していたバカたれだけど、ヘルメットだけは被っていて良かった。

「申し訳ない……私の責任だ」
「委員長……なんて顔してんのさ」

真っ青な顔をした委員長が泣きながら語る。

「私は調子に乗っていたのだ……最近は毎日が楽しくて上手くやれていると……しかし、私は……いつも、行き当たりばったりで……母上からも「てめーはスマートじゃねえ!」と言われていて……これでも、上手くやろうとしたのだ。母上のように何でも見透すことの出来ない私でも、頑張ればきっと……でもダメだった。失敗した。許嫁殿の大切な人に怪我をさせてしまった……本当に申し訳ない」

反省はしているのだろう。でも僕は怒った。

「お母様と自分を比べんな! バカたれ!!」

委員長のお母様はきっとすごい人なのだろう。劣等感を抱かざるを得ないくらいの超人なのかもしれない。でもそんなの関係ない。
委員長は僕を嫉妬させるくらい、魅力的だ。
それなのに、自分は大したことないみたいに言われると、僕の沽券に関わる。腹が立つ。
78 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:54:37.54 ID:kLoijdWlO

「お、おォい……そんなに責めるこたァ……」
「黙れ! これは僕の仕事だ! 邪魔すんな!」

口を挟んだ悪役貴族を一括して僕はキレた。

「委員長は委員長でしょ!? 自分なりに出来ることをやった結果なら胸を張れ! 目を逸らすな! 僕に怒られても顔を上げて澄まし顔で押し通せ! それが出来ないなら出てけ!!」
「ああ……わかった……本当にすまなかった」

僕に怒られて、打ちひしがれた顔をして、委員長が部屋から出ていく。扉が閉まって、僕の怒りは、突っ立ってる木偶の坊に向いた。

「なにボサっと突っ立ってんのさ!?」
「あ、あァ? てめェがさっき黙れって……」
「何かあった時に庇ってやれない女と浮気すんな! さっさと追いかけろよバカたれ!!」

僕が惚れた男はそんな情けない男ではない。

「あァ……畜生ォ……わァってるよォ!!」

最低限の手当てをして、傷だらけで、悪役貴族は委員長を追いかけに部屋を出て行った。
その情けない背中を見送るのも妻の仕事だ。

「よし。こんなもんかな」
「お見事です、奥様」
「どうぞ、次のご命令をくださいませ」

正直バカたれって言いすぎて喉が痛い。怒るのは体力がいる。疲れたけどもうひと仕事。
僕は気合いを入れ直して双子たちに命じた。

「2人が帰ってくるまでに晩御飯を作る。今日は僕が厨房に立つから、手伝って欲しい」
「かしこまりました」
「仰せのままに」

さて。それじゃあ、腕に縒りをかけようか。
79 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:57:44.17 ID:Rsh+VL5eO
「よォ……連れて帰ったぞォ」
「……恥を忍んで帰宅を許して頂きたい」

丁度、料理が出来上がったタイミングで悪役貴族と委員長が帰ってきた。2人の乱れた着衣を見て怒りが湧き上がる。そうでもしないと委員長を連れて帰れなかったのかもしれないけど、そんなの僕の知ったことではない。

「遅い! 何をしていたか言ってみろ!」
「浮気してたに決まってンだろォがァ!!」
「委員長は!? 何してたの!? 言って!」
「う、浮気してた……な、何か文句あるか」

その開き直りっぷりに思わず笑ってしまう。

「はあ。文句なんて山ほどあるに決まってんじゃん。でもひとまず、ご飯にしよう。腹が減っては喧嘩も出来ないからね。今日はね、委員長の好きな肉じゃがだよ。お母様から貰ったレシピ通りに作ったから、食べてみて」

先日のすき焼きを頂いた際、委員長のお母様に割り下のレシピを手紙で教えてもらった。
その際に"肉じゃが"という委員長の好物のレシピも頂いた。どうやらこの肉じゃがも割り下で作れるらしい。味見したけど美味しかった。そんな肉じゃがを見て委員長は泣いた。
80 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:58:46.00 ID:2lAcrSHJO
「許嫁殿……私はこの恩を、生涯忘れない」
「このくらいこの先何度だってある。そのたびに喧嘩して仲直りしよう。さあ、お食べ」
「ああ……美味い……母上よりも、美味しい」

泣きながら肉じゃがを食べる委員長に、僕は何も言わなかった。委員長がいなかったらきっと、素直になれない僕は悪役貴族と上手くやれなかっただろう。こうして今、僕が偉そうに奥様面していられるのも委員長のおかげだ。その感謝を料理に込めて、僕は伝えた。

「どう? 怪我は? 痛む? 腫れてない?」
「大丈夫だァ……色々、ありがとなァ」

結局、あれからずっと委員長は泣き止まず、なんとか寝かしつけてから、改めて悪役貴族に怪我の具合を訊ねると、奴は殊勝な顔をして僕に感謝した。そんな情けない婚約者の耳元で、僕は言い聞かせるようにこう囁いた。

「乗りこなしてるのは僕だってわかった?」
「よォくわァったよ。これからも頼むなァ」
「……怪我が治ったら、また乗ってあげる」
「ハッ! なら、さっさと治さねェとな」
「それまで、安静にしとけ……バカたれ」

早く治してくれないと僕が欲求不満になる。


【僕はこの日、妻の心構えを理解した】


FIN
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/14(木) 23:42:33.27 ID:jAWFkQsQO
バカがバイク乗り回して転んだのを手当てしました。
そもそもこの一行で説明できるようなチンケな内容を
どれだけ頑張って膨らまそうとしても無駄だから。

あと青ババくんでも分かるように指摘しとくと
貴族ってのは平民がいなければ成立しないんだぞ?
今のところ悪役貴族が自分を悪役貴族と思い込んでいる
在日の底辺にしか見えないんだけど。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/15(金) 00:18:14.46 ID:mQYxd8YH0
ちゃおラジ君もそうだったけど薄っぺらいんだよな
wikiやあらすじや他人の描いたSSやらで知った浅い知識で得意になるだけならいいが
その程度の理解でSSなんて書いちゃうから怪文書と呼ばれるんだよ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/15(金) 07:47:22.73 ID:+tXyewbm0
実際二次ネタばかり書いてた奴がオリジナル書こうとすると陥りがちなんだが
作品の世界観や主要人物の説明を元ネタが如何にしっかりとやっていたのかを思い知るんだよな
こういう元ネタへのリスペクトが皆無な奴は根本的にその辺分かっていないせいで
読み手が全く感情移入とか支持とかができない自己投影丸出しのゴミみたいなキャラを量産することになる
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2023/12/15(金) 12:38:48.47 ID:5W7PZWsR0
スカトロマンのやってた二次創作はストーリー性のお粗末なお人形遊びだったが
少なくともキャラの最低限の形は保っていた
他人の作ったキャラを勝手に使ってるんだから当たり前なんだけどな

今はおよそキャラとも呼べない何かが気持ち悪くうごめいているだけ
人の形を成してもいない泥人形遊び。いや、スカトロマンなんだから糞人形遊びか
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/15(金) 12:51:53.28 ID:XE50IbQEO
バイクに乗ることを心配されるようなお子ちゃまなんて
文字通り三流以下の悪役貴族なんだよなあ
こんな馬鹿の何処に惹かれる魅力があるのか
86 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 21:53:43.34 ID:NYACIfXxO
「ただいま戻ったぞ」
「あ、委員長、おかえりって、ええっ!?」

その日、ふらっとどこかへ出かけた委員長の長い黒髪が、僕と同じくらい短くなって帰ってきた。びっくりすると、委員長は笑って。

「これは私なりのケジメだ。どうだ許嫁殿。短髪もなかなか似合うだろう?」
「いや……正直、違和感しかない」
「あっはっは! なに、じきに見慣れるさ!」

快活な委員長が更に溌剌となって、高笑いに磨きがかかった気がする。半ば呆然としていると、僕と同じく固まっている双子メイドたちのもとに委員長は歩み寄り、声をかけた。
87 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 21:57:36.35 ID:QYnfRSrXO
「君たち、少し時間はあるか?」
「は、はあ……どうしましたか?」
「な、なんでしょう……?」
「私は君たちと話がしたい。これから一緒に風呂にでも浸かりながら、ゆっくりとな」
「えっ……でもまだ、お昼すぎですし……」
「い、一緒にお風呂は、ちょっと……」

嫌そうな顔をする双子たちに拒否られながらも、委員長は食い下がる。両手を上げて、無害であることをアピールしながら約束した。

「安心したまえ。指1本、触やしないさ」
「ほ、本当ですか……?」
「ああ、本当だとも」
「嘘だったら奥様に言いつけますよ……?」
「構わない。私は嘘はつかん」

双子たちがこっちを見たので頷いておく。

「わ、わかりました……」
「で、では、浴室へどうぞ……」
「ありがとう。では許嫁殿、先に湯を貰う」
「あ、うん……ごゆっくり」

唖然としながら見送って、ふと悪役貴族に目を向けると、奴はぽかんと口を開けながら委員長を凝視していて、なにやら発情している匂いがした気がした。まったくこの駄犬め。
88 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 21:59:28.55 ID:4FUh6A0cO
「なに見惚れてんのさ。いやらしい」
「ちげェよ。そうじゃなくてだなァ」
「どうせ夜が待ち遠しいだけでしょ」

ようやく怪我が完治した悪役貴族の見え透いた劣情を指摘するも、どうやらそれは邪推だったらしく奴は真面目な顔で考えを述べた。

「だから違ェっての。俺ァただ、あいつもいつか、てめェみてェになンじゃねェかって思っただけだァ。別に悪い意味じゃねェぞォ」
「ばっかみたい……委員長は、委員長だよ」

短髪でも、本質は変わらない。僕とは違う。

「髪を切っても……僕が僕であるようにね」
「たしかに髪の長さなンざ……関係ねェか」

僕がもし少しでも変われたなら、それはきっと髪の長さのせいではない。この先、また髪が長くなったとしても今の僕はあり続ける。
89 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 22:01:24.79 ID:OPl6tlapO
「なァ……こっちに来たらどうだァ?」
「っ……そっちこそ、こっちに来たら?」

呼ばれてドキドキしながら、意地を張る僕。
髪を切っても伸びても、きっと変わらない。
たぶん少しの歩み寄りで変われるのだろう。

「チッ……しゃあねェなァ」
「面倒くさそうにこっちくんな、バカたれ」

とか言いつつも僕は嬉しさが隠しきれない。
最近、表情が上手く制御出来ない。嬉しかったらそれを隠せない。その変化が愛おしい。

「あァン? キスしたそォな顔してンぞォ?」
「は、はあ? それはこっちの台詞だし……」
「この瞬間は……あいつに感謝しねェとな」

奴に唇を奪いながらそう言われて、僕は委員長の心遣いに気づいた。きっと僕らを2人きりにしてくれたのだろう。悪役貴族との長い口付けを何度も交わしながら、僕は少しでも委員長たちが長風呂であるようにと祈った。


【僕は昼下がり、悪役貴族とキスに耽る】


FIN
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/12/15(金) 23:52:21.52 ID:+tXyewbm0
帝国から購入したバイクとか悪い意味でのトンデモワード良く書こうと思えるな
本人はオリジナル書いてるつもりなんだろうがギアスの世界観パクってるのバレバレだし
前回はハルヒのパクりだしでこれじゃオリジナルじゃなくてオシリアナルやん
91 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:06:59.18 ID:MpnHbCbhO
「お姉ちゃん、そろそろ交代してよ!」
「10分間で交代って決めたでしょ? まだ2分34秒しか経ってないから、我慢なさい」

現在、僕の膝はお姉ちゃんメイドに占領されていた。こうして定期的なスキンシップしてあげないとまた靴下事件や歯ブラシ事件のようなことが起きるので必要不可欠な触れ合いだ。双子じゃんけんに勝利して先着を勝ち取ったお姉ちゃんメイドは僕の胸元にほっぺたをくっつけてスリスリしている。かわいい。

「奥様、重くないですか……?」
「全然重くないよ。何時間だって平気さ」
「ああ、奥様……ずっとお傍にいたいです」
「ずっと傍にいて貰わないと僕が困るよ」
「ううっ……時間を飛び超えたいです……」

きゅっと抱きついてきたお姉ちゃんメイドを僕も抱き返す。妹ちゃんがそんな僕たちを凝視しながら爪を噛んで悔しがる。かわいい。
92 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:07:43.92 ID:kbKFon1PO
「本当なら2人同時に乗せたいところだけど僕がチビだから我慢させちゃってごめんね」
「はあ……奥様も双子なら良かったのに……」

もしも僕が双子だったらどうだろう。仲良く出来るだろうか。恐らく無理だ。何故ならば僕の婚約者は双子ではないからだ。きっと血で血を洗う、骨肉の争いに発展するだろう。
僕には確信がある。だってほら、目の前で。

「その髪……俺のせいで悪かったなァ」
「気にするな。私が許嫁殿に憧れた結果だ」
「ハッハァ! てめェはてめェで魅力的だァ」
「あっ、こら、だめ。許嫁殿が見てる……」
「アイツも見せつけてんだから、構うなァ」

双子ではないにせよ、僕と同じくらい髪が短くなった委員長が婚約者の膝に乗って、純白のスカートから伸びる艶かしい生足を撫でらている。それは男子生徒用のズボンの僕には出せない魅力だ。たとえ脱いだとしても僕の足は棒切れみたいに肉付きに乏しいけれど。

「私は許嫁殿よりも足が太くて申し訳ない」
「あいつにはあいつ、てめェにはてめェの魅力があンだよ。だからァもっと自信持てェ」
「そうか……気に入ってくれたなら嬉しい」

本当に双子じゃなくて良かった。キレそう。
93 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:09:13.34 ID:MeUz6tilO
「あっ……い、いけませんっ、奥様……!」
「ごめんよ。あいつが僕を挑発するんだ」
「あぅ……でしたら……仕方ありませんね」
「はい! 交代! お姉ちゃん、代わって!」
「まだ5分46秒しか経ってないでしょ!?」

気がつくと、無意識に僕のいけない手がお姉ちゃんメイドを弄り回していた。白タイツがサラサラしていて触り心地は抜群。そして妹メイドちゃんと喧嘩をし始める。かわいい。

「許嫁殿……そろそろ交代の時間だ」
「あれ? 委員長、早くない? もういいの?」
「ああ……これ以上は足腰が立たなくなる。それに私は学んだのだ。やりすぎは禁物と」

そのわりには切なそうな顔をしている。そんな我慢してまで僕に譲る必要はないのに。なにせこちらもこれからが良いところだし。まあ、交代するのはやぶさかではないけれど。
僕はお姉ちゃんを膝から降ろし立ち上がる。

「お、奥様! 私の番は!?」
「ごめんね。すぐ戻ってくるから待ってて」
「ううっ……はい……お待ちしております」

しゅんとした妹メイドちゃんの頭を、委員長が優しく撫でている。お姉ちゃんメイドも仕事のことやらを委員長に相談している。少しずつ打ち解けている様子だ。頑張れ委員長。
94 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:10:25.39 ID:QszWaTzCO
「で? さっきのなに? さすがに触りすぎ」
「そっちこそ、ベタベタしやがってよォ」
「まさか嫉妬したの? ヤキモチ焼いたの?」
「ケッ。それはてめェのほうだろうがァ」

ひょいと膝に乗って、いつも通り悪役貴族と口論をする。お互い嫉妬し合って、内心はムラムラして仕方ない。伸びてきた手を払う。

「なに勝手に触ろうとしてきてんの?」
「あァン? 俺が触ったら悪いのかァ?」
「触らせてくださいってお願いしろ」
「触ってくださいって言いやがれェ」

火照った顔を突き合わせて僕らは睨み合う。

「ふん。僕のことが好きなくせに」
「当たり前だァ。てめェはどォなんだァ?」
「っ……ひ、卑怯だぞ、バカたれ」

知ってる癖に。僕が言えないことを。好きだって。あの狸寝入りしていた時以降、僕は言えてない。それを知った上で挑発してくる。

「俺はてめェが好きだ。てめェのその生意気そうなツラも、てめェの細くてあったけェ身体も、てめェが罵詈雑言と共に吐き捨てた吐息すらも、全部俺の物にしてェと思ってる」
「あ、う……なに言ってんだよ、バカたれ」

悪役貴族は歯に衣着せない。乱暴な口調で思ったことをそのままストレートに僕にぶつけてくる。そのたびに僕の心臓が跳ねて、身体は熱くなり、脳内が支配されていく。嫌だ。
95 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:11:25.77 ID:nIRcknA1O
「その瞳で見つめないで……」
「あァン? どォしてだァ?」
「だって目、逸せなくなる。おかしくなる」

小指のピンキーリングを、親指で弄るのが癖になった。悪役貴族の紫水晶の瞳が、僕を捉えて離さない。支配されたくないと抗った。

「ハッハァ! てめェは勘違いしてんなァ?」
「へ? か、勘違いって、なんのこと……?」
「目を逸らせねェのは、俺のほうなンだよ」

僕の瞳にそんな魔力があるなんて知らない。
だけどもしそれが事実なら僕も奴を支配しているということになる。嬉しい。にやける。

「その瞳に映ってる自分の顔を見たくない」
「あァ、それなら簡単だァ。目を閉じろォ」
「っ……さっさとしろ、バカたれ……ぁむっ」

そうして僕らはようやくキスをする。たっぷりと時間をかけて瞬きをする間に終わるような刹那の時を共有する。最近キスばっかしてんな。でも全然飽きない。終わりは突然に。

「時間だ。妹メイドがお待ちかねだぞォ」
「ふん。もっとしたい癖に……強がんな」
「ハッ! お互い様だァ……また今度なァ」

また今度が待ち遠しい。時を飛び超えたい。


【僕は刹那、悪役貴族と時を超える】


FIN
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 20:50:43.90 ID:sBT1pKN30
このバカはずっと同じところで足踏みしてるだけなんだよな
本人は前進してるつもりなんだろうけど
試しに3年前に自分で書いた怪文書を見返してみるといい
一切の進歩がないことが分かるから。いや、このバカには分からんか
今は毎日怪文書を投下することしかこだわってないものな
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 21:34:56.34 ID:EgmkhOog0
そもそも自身で書いたゴミみたいな内容や形式を延々「セルフでパクってる」だけだからな

最近合点がいったが二次ネタもまとめサイトとかからパクれるような作品が無いと
一切書くことができないという。だからこういう匿名の掲示板で当時盛り上がっていた
アイマスとかハルヒとかを元にしないとゴミみたいなクオリティのものでさえ作ることすらできない

今流行ってるブルアカや原神とかここで全然書かれないからパクることもできないというね
普通に笛吹きとかいけば大量の作品があるのに。まあこいつの腐った脳みそじゃロクに検索すらできなそうだけど
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 21:45:57.31 ID:wl2Imjl90
向上心が無い構ってちゃんとか見たことも聞いたこともない珍獣じゃねーか
何が目的で延々とゾット帝国以下の文章みたいなゴミを量産しつづけるんだ?
そのモチベーションはどうやって維持してるんだマジで
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 21:48:58.33 ID:WfzS27v7O
>>97
最近の作品に関してはwikiや渋の百科事典とかの
情報量が多かったり複雑だったりでスカトロが
安易にパクれないのも大きいと思う
100 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 23:25:43.40 ID:MPCSXFx7O
「ああ、こんな姿を奥様が見られてる……」
「どうだ? なかなかに良いものだろう?」
「たしかに……これは想像以上です……はぅ」
「あっはっは! そうだろう、そうだろう!」

僕は一体、どこで教育を間違えたのだろう。
好奇心旺盛で積極的な妹メイドちゃんは、委員長に頼んで、僕の目の前で痴態を晒していた。どんどんおかしな趣味に目覚めている。

「なんて、はしたない……妹がすみません」
「いいんだよ。お姉ちゃんは興味ないの?」
「私は奥様一筋ですから、興味ありません」

お姉ちゃんメイドは痴態を晒す妹ちゃんを恥じているようだけど、きっと違う理由で顔が真っ赤になっている。たぶん無意識だろうけど僕の手を握りながら、妹ちゃんが喘ぐ姿をガン見していた。僕は優しくその手を離し、そっと背中を押して促して、耳元で囁いた。
101 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 23:26:37.92 ID:MPCSXFx7O
「君も僕にかわいいところを見せておくれ」
「っ……そんな……奥様はいじわるです……」
「恥ずかしがらずに、ほら、行っておいで」
「ううっ……これは奥様のためですからね」
「おや? 君も来てくれるとは、嬉しいぞ!」

僕に唆されて、お姉ちゃんも委員長のもとへ向かった。嬉しそうに彼女を迎える委員長。
勘違いしないで頂きたいがこれは別に僕の趣味ではなく、単に委員長との仲を深めて貰いたいだけである。それにしても良い眺めだ。

「ハッ! 良い趣味してんなァ」
「どの口が言うんだよ、バカたれ」

目の保養をしていると、お風呂あがりの悪役貴族が邪悪に嘲笑い、当然のごとく僕の隣に座った。いつもはこいつと僕の髪は双子メイドたちが拭いて乾かしてくれるのだが、彼女たちは今、手が離せない。というよりも手がつけられないことをしている真っ最中なので悪役貴族は濡れた髪を、自分で拭いていた。
態度次第では僕が拭いてやってもいいのに。
102 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 23:27:30.69 ID:MPCSXFx7O
「僕に拭いてくださいって言ってみれば?」
「あァン? 言ったら拭いてくれンのかァ?」
「別に……そんなつもりは更々ないけどさ」

僕がそう言うと悪役貴族はタオルを手渡し。

「てめェが拭け。くれぐれも丁重になァ」
「仕方ないから拭いてあげる。感謝しなよ」
「ケッ。常日頃から感謝してるだろうがァ」

悪役貴族の髪を拭きながら委員長とメイドたちの触れ合いを眺めて、僕はふと自覚する。
満たされている。僕は今、とっても幸せだ。
それを自覚すると、目の前の悪役貴族に抱きつきたくなった。抱きついて、耳元で「僕は今、幸せだよ。ありがとね」って言いたい。
けれど素直じゃない僕は言えず、代わりに。

「俺ァ今、幸せだァ……ありがとなァ」
「っ……なに言ってんのさ……バカたれ」

悪役貴族に言われて、涙が込み上げてくる。
僕が言いたいのに。口から出るのは罵倒だけで、情けない気持ちと同じくらい、嬉しい。
きっとこの世でこいつだけだ。僕みたいな女を愛してくれる男は。ずっと一緒に居たい。
103 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 23:28:36.79 ID:MPCSXFx7O
「僕に拭いてくださいって言ってみれば?」
「あァン? 言ったら拭いてくれンのかァ?」
「別に……そんなつもりは更々ないけどさ」

僕がそう言うと悪役貴族はタオルを手渡し。

「てめェが拭け。くれぐれも丁重になァ」
「仕方ないから拭いてあげる。感謝しなよ」
「ケッ。常日頃から感謝してるだろうがァ」

悪役貴族の髪を拭きながら委員長とメイドたちの触れ合いを眺めて、僕はふと自覚する。
満たされている。僕は今、とっても幸せだ。
それを自覚すると、目の前の悪役貴族に抱きつきたくなった。抱きついて、耳元で「僕は今、幸せだよ。ありがとね」って言いたい。
けれど素直じゃない僕は言えず、代わりに。

「俺ァ今、幸せだァ……ありがとなァ」
「っ……なに言ってんのさ……バカたれ」

悪役貴族に言われて、涙が込み上げてくる。
僕が言いたいのに。口から出るのは罵倒だけで、情けない気持ちと同じくらい、嬉しい。
きっとこの世でこいつだけだ。僕みたいな女を愛してくれる男は。ずっと一緒に居たい。
104 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 23:29:15.82 ID:MPCSXFx7O
「俺みてェなろくでなしと結婚出来るのはてめェしかいねェ。これからもよろしくなァ」
「ぐすっ……だから……なんで言うのさ……」
「あァン? てめェなんか鼻声じゃねェか?」
「っ!? こ、こっちを見るな、バカたれ!」

振り向こうとした婚約者に泣き顔を見られたくなくて、慌ててタオルを顔に被せて、そのまま抱きしめる。こんな形でしか抱きしめられない自分が嫌になる。堪らなく愛おしい。

「おォい……息ができねェよ」
「ふん……僕が人工呼吸するから安心しな」
「あァ? そォいう問題かァ?」

窒息するまで、僕は悪役貴族を、離さない。


【僕は寝る前、悪役貴族を窒息させる】


FIN
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 23:46:41.29 ID:EgmkhOog0
自分の中では雄大な世界観の中で色々なエピソードを経て
主要キャラが深い仲になっているんだろうけど
スカトロくん以外からすれば誰よりもこの主人公に全く魅力が無いんだよな
そもそも転生でもしなきゃ自分の相手が「悪役」であるかなんて分かるわけねーじゃん
語り口調もありがちな痛々しいダメな主人公の典型的そのものだもの
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 00:12:04.83 ID:NVuIFYqd0
帝国があって城があって牛肉料理が名物まではまあ分からんでもない
天守閣とか書いちゃう辺りが実にバカ丸出しで笑えない
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 02:25:17.07 ID:c2AAagi10
バカというか恥知らずなんだろ
だからこんなものをチラシの裏でやらずにここで投下できてしまう
108 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:12:17.37 ID:dM9BGluaO
「てめェ、なんか顔赤くねェかァ……?」
「おや? たしかに……風邪か? 許嫁殿?」
「別に……平気だし……ケホケホッ」

風邪引いた。きっとお風呂あがりに毎日えっちなことばかりしているせいだろう。身体が怠くてベッドから起き上がれない僕の異変にいち早く気づいた悪役貴族は自分の額と僕のおでこをくっつけてきた。近い。熱上がる。
心配そうにこちらを伺う委員長に見られて余計に恥ずい。きっと40℃を突破している。

「熱あンなァ……喉はどうだァ?」
「熱なんかないし……喉も痛くないし……」
「口開けろォ……赤く腫れてンじゃねェか」
「やはり風邪のようだな。薬を手配しよう」

顎を掴まれて強制的に口を開けさせられて、中を見られた。酷い。悪役貴族め。僕の身体を好きに出来ても、心までは奪われないぞ。
委員長はガサゴソと自分の荷物から風邪薬を探している。帝国の薬はよく効くと評判だ。
109 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:13:16.26 ID:XQPaO5feO
「てめェは今日、学校休めェ」
「全然行けるし……元気だし……」
「ダメだァ。大人しくしてろォ」
「そうだぞ、許嫁殿。無理は禁物だ」
「行けるもん……平気だもん」

有無も言わさぬ2人に対しむっとしてると。

「おォい、メイドどもォ! ちょっとこォい」
「はい若様、お呼びですか?」
「まさか奥様がご懐妊ですか!?」

そんなわけない。たしかに奔放な性生活を謳歌しているけれど委員長が大量に取り寄せてくれた東の帝国の"魔法の風船"のおかげで妊娠は免れており、月のものもこないだ来たばかりだ。僕は重めなので、その節は双子ちゃんたちに甲斐甲斐しく世話を焼いて貰って助かった。なんにせよ委員長のおかげで卒業まで僕が妊娠する心配はなく、感謝している。
110 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:14:26.24 ID:jX0jvZh9O
「風邪が治るまでこいつを見張ってろォ」
「ダメだよ……移したりしたら困るから」

メイドたちに指示する悪役貴族に待ったをかける。ただでさえ、彼女たちは忙しいのに、僕や委員長が来てからは仕事が増えている。
そんな彼女たちに、風邪を移したら大変だ。

「自分の部屋で寝てるから、誰も来ないで」
「そんなザマで部屋まで行けンのかァ?」
「許嫁殿、無理はしないほうが……」

懐疑的な悪役貴族と心配そうな委員長の不安を払拭するべく、僕はベッドから身を起こし、3秒間だけ耐えたのち、再び倒れ込んだ。

「ほらみろォ。無理すンじゃねェよ」
「言わんこっちゃない。絶対安静だぞ」

なんて不甲斐ない。でも絶対移したくない。
111 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:15:37.54 ID:NBzCcjIXO
「……運んで」
「あァン?」
「僕を早く、部屋まで運んで」

恥を忍んで悪役貴族に頼むと、奴は呆れて。

「こンな時まで意地張りやがって……」
「そんな僕が好きなんでしょ……?」
「あァ……好きだ。だから運んでやる」

ひょいと軽そうにお姫様抱っこする婚約者。

「お、落っことすなよ? 丁重に扱うんだぞ」
「わァってるよォ。ぜってェに落とさねェ」

委員長はハラハラしているけれど、僕は不思議と安心していた。きっとこいつなら安全にどこへでも連れて行ってくれる。根拠はないけど、そんな信頼と共に、僕は身を委ねた。
112 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:17:10.50 ID:mdJe/kJeO
「奥様、お食事はここに置きますね」
「ありがと……置いたらすぐに帰りなよ?」
「そんな……私たちは奥様と共に……」
「ダメ。これは命令。わかった?」
「はい……わかりました」
「ううっ……仰せのままに」

悪役貴族に部屋まで運ばれて、久しぶりに自分の部屋のベッドに寝かされたあと、奴と委員長が一緒に学校へと向かうと、それと入れ替わりで双子ちゃんたちが作った食事を持ってきた。そのままお世話をしそうだったので、僕にしては強く言い聞かせて帰らせた。

「……静かだな」

久しぶりに1人になった。前はこれが当たり前だったのに、何故か寂しく感じてしまう。
僕は弱くなったのだろうか。目を閉じると、心細くて、不安で、心配事ばかりを考える。
113 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:18:30.79 ID:srq15psGO
「僕は、上手くやれてるのかな……?」

あいつの許嫁として上手くやれているのだろうか。ある日突然、愛想を尽かされたりしないだろうか。お前なんか嫌いだと言われて、婚約破棄されて、それでも僕は意地を張り、こっちこそせいせいしたとか言って、そのまま卒業して、僕は誰とも結婚出来ずに、一生独りで孤独に生きていくのだろうか。嫌だ。

「ぐすっ……そんなの……嫌だ……」
「ん? なにが嫌なのだ、許嫁殿?」
「へ? あれ? い、委員長、なんで……?」
「おや? 許嫁殿、泣いているではないか。可愛い顔が台無しだぞ。ほら鼻をかみたまえ」

気がつくと、委員長がベッド脇の椅子に腰掛けていた。泣いてる僕に気づいた委員長は、ポケットから桜模様のハンカチを取り出し、優しく涙を拭い、そして僕に鼻をかませた。
114 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:21:06.45 ID:HOhMl3nGO
「どうだ? すっきりしたか?」
「ありがと……ごめん、ハンカチ汚して」
「あっはっは! そんなこと気にするな!」

溌剌とした高笑いで我に返る。何故いるの?

「委員長……授業はどうしたの?」
「そんなもの、サボったに決まっている」
「優等生なのに、そんなことしていいの?」
「許嫁殿の一大事とあれば構うことはない。ああ、そうだ。許嫁殿に、これをあげよう」

優しい微笑みを浮かべた委員長が何やら鞄から手渡した。ひとつは帝国のよく効く風邪薬が入った小瓶。もうひとつは紐のついた紙。

「薬、ありがと……あと、これはなに?」
「ああ、それは帝国製の高性能マスクだ」
「マスク……?」
「ああ。感染のリスクを下げ、それでいて呼吸を妨げない魔法のマスクだ。これを付けてさえいれば、誰が来たって平気だろう?」

帝国はすごいな。じゃあ、すぐにつけよう。

「ああ、その前に……まずはメイドたちが作ってくれた食事を食べて、薬を飲みたまえ」
「でも、委員長に風邪移しちゃう……」
「黙って食べれば問題ない。さあ、口を開けたまえ。私は不器用だから溢したらすまん」

小匙に食事少し乗せ、不器用ながらも丁寧に僕の口に運ぶ委員長。まだほんのりと温かいチキンスープは美味しかった。委員長の優しさと双子メイドたちの温もりで流れた涙がしょっぱい。移したら悪いから言えないけど、ありがとうの代わりに、泣きながら食べた。
115 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:22:04.55 ID:/ofIYd4tO
「うむ! 全部食べれたな。偉いぞ! あとはゆっくりと眠って休めば、すぐに良くなるさ」

きっと1人だと食べきれなかった。全部食べれたのは委員長のおかげだ。委員長は薬を飲ませたあとに、そっとマスクをつけて、手のひらを僕の目の上に乗せて、子守唄を歌う。
綺麗な歌声だ。帝国語の響きが、心地良い。

「ねえ、委員長……その歌、なんて曲?」
「昔、帝国で流行った【ハロ/ハワユ】という曲だ。私が小さい頃、風邪を引いて寝込んでいたり、母上に叱られて泣きべそをかいてる時に、父上がよく歌ってくれたのだ。この歌声だけは父上譲りでな。帝国で有名な歌い手である96猫に似ていて私の数少ない自慢だったりもする。もしやうるさかったか?」
「ううん……もっと歌って欲しい。お願い」
「お易い御用さ。心を込めて歌わせて頂く」

委員長はすごいな。美人で頭が良くて、隠れ巨乳でスタイルも良くて、愛想も良くて、素直で優しくて、おまけに歌も上手いなんて。
それにしても委員長のお父様か。どんな人なんだろう。きっと、素敵な人なんだろうな。
116 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:23:21.45 ID:vZsibqswO
「委員長には、敵わないや……」
「嫌味を言う元気があるならもう安心だな」
「別に、嫌味なんかじゃないし……」
「私は私だと言ったのは許嫁殿ではないか。同じように許嫁殿には許嫁殿の魅力がある」

そうだろうか。僕に魅力はあるのだろうか。

「少なくとも、私は許嫁殿に憧れて髪を切ったぞ。少しでも、許嫁殿に近づきたくてな」
「そんな……誰だって髪くらい切れるよ……」
「そうではなく、気持ちの話だ。許嫁殿と肩を並べてやっていくという私の決意なのだ」

並ばれて比較されたら困る。僕は勝てない。

「僕なんて……どうせ……かわいくないし」
「ふむ? どうやら体調が悪くて弱気になっているようだな。今は何も考えず休むがいい」

委員長の柔らかな手のひらを涙で濡らしながら心地良い歌声に耳を傾け、僕は何も考えずに眠りにつく。そして起きたら、奴がいた。
117 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:24:30.18 ID:M/YfgGYRO
「よォ……目が覚めたかァ?」
「おはよ……いま何時?」
「昼過ぎってとこだなァ」

もうお昼すぎか。薬のおかげかぐっすり眠れたらしい。朝よりは体調が良くなっていた。
それよりも、何故こいつがここに居るのか。

「授業はどうしたの?」
「ハッ! サボったに決まってンだろォがァ」

委員長に続いて悪役貴族までサボタージュ。

「1位取り続けないといけないんでしょ?」
「安心しろォ。俺が出てねェ授業は優等生がノート見せてくれるってよォ。ハッハァ! 持つべきものは、気が利く浮気相手だぜェ!」

寝起きで最低な台詞を聞かされて頭がクラクラする。あんな素敵な委員長を、あくまでも浮気相手として扱う悪役貴族に腹が立った。
118 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:25:27.91 ID:3qoq44YBO

「委員長を……大切にしてあげて」
「なら、第二夫人に格上げだなァ」

それでも第二夫人。なんでだ。わからない。

「僕のどこがそんなにいいの……?」
「沢山ありすぎて言葉では言い尽くせねェ。強いて言うならこの俺に歯向かってくるところが1番のお気に入りだなァ。そもそもてめェみてェな上玉、世界中どこを探したって見つかりやしねェよ。瞬く間にメイドを従え、心酔させるカリスマ性! この前、俺がバイクでコケたの時も痺れたぜェ! てめェは妻としての在り方と覚悟を示し、俺のせいで自信を喪失しちまった優等生を叱咤激励して、本来いがみ合う筈の浮気相手に憧憬すらをも抱かせたァ! この俺に口を挟む余地すら与えず、反論すら許さねェなンざ他の誰にも出来やしねェ! 俺ァ、心底てめェに惚れちまってる。今日だって片時もてめェのことを考えなかった時間はねェ。てめェさえいれば俺ァ、他の何もかも全て失っても構わねェとさえ……」
「む、無責任なことを言うな、バカたれ!!僕に全てをくれるって言ったじゃんか!?」

委員長も、双子メイドちゃんも、居なくなったら困る。かけがえのない存在だ。その全てを失ってもいいなんて、そんなの許さない。

「あァ、悪ぃ。撤回する。てめェが欲しいもんは全部俺が与えてやる。てめェのために全部守ってやる。もちろんてめェのこともな」
「僕より皆を優先してはくれないの……?」
「それは無理だなァ。最優先はてめェだァ」

そこは頑なに譲らないらしい。なんでだよ。
119 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:27:00.19 ID:EvH0hYsFO
「僕は本当に許嫁として相応しいの……?」
「あァ。当たり前だァ」
「僕はちっともかわいくない……」
「てめェはとびきりかわいいだろうがァ」
「スタイルだって良くない……」
「ハッ! それがどォしたァ?」
「歌も上手くない……」
「ンなこと、どォでもいいんだよォ」
「だって! 僕はっ……素直じゃないっ!!」
「チッ……落ちつけェ。水を飲めェ」

叫んだら喉が痛かった。悪役貴族が吸いのみを口に咥えさせる。怒ったせいで熱が上がったのか、吐き出す気力ももなく飲み込んだ。

「悪ぃなァ……俺ァ見舞いには向いてねェ」
「……だったら、さっさと帰れ。バカたれ」
「わァったよ……でも、これだけは言わせろォ。てめェがどれだけ自分を否定しても、俺が肯定してやる。てめェがどれだけ自分を嫌っても、俺はてめェを好きでいつづける。それは当たり前のことで、だから、てめェは俺の許嫁なんだよ。それだけは理解しとけェ」

言い聞かせるようにそう言って、婚約者は。

「あァ、そうだ……帰る前に、動くなよォ」
「は? え? なにするつもり……むぐっ!?」

マスクを取られてキスをされ、僕はキレた。
120 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/17(日) 17:27:58.72 ID:IgvAgi7CO
「な、なに考えてんだよ! 移るでしょ!?」
「あァン? 俺はただてめェの風邪を貰ってやろうとしただけだァ。文句言うんじゃねェ」
「バカたれ! さっさと帰れ! もうくんな!」
「ハッハァ! 来るなって言われても来るに決まってンだろォが。言うことを聞く筋合いはねェ。なンせ俺ァ、てめェの婚約者だからなァ……また必ず来るから大人しく寝てろォ」

そう捨て台詞を吐いて、僕の婚約者は立ち去った。本当にあのバカたれには困った。何が僕の風邪を貰うだ。頭がおかしい。でもきっと、あいつが風邪を引いたら、僕も同じことをするだろう。医学的にとか、理屈とかは関係ない。そのくらい愛しているから。そこでふと、テーブルに置かれた花瓶に気づいた。

「僕が好きなミモザの花……」

悪役貴族は僕が好きな花を花壇で育てているらしい。きっとこの幸せを運んでくれる黄色い花は奴の仕業だろう。ミモザの花言葉は"密かな愛"。素直になれない僕はこの恋心を直接は言えないままでいる。それでもいいと、そんな僕が好きだとあいつは言う。素直になれない僕を好きなあいつに嫌われたくないから、だからこの先もずっと秘めたる恋をするのだろう。ミモザは苗木のうちは鉢植えでも育てられるけど成長すると大きな木になる。
そこまで成長してしまえば、もう折れない。
たとえ密かな愛だとしても、必ず成就する。
それまで、風邪など引いてる場合じゃない。

「あんなキスじゃ足りないよ……バカたれ」

もっと長くて深いキスのために早く治そう。


【僕は昼過ぎ、悪役貴族に見舞われる】


FIN
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 19:22:58.78 ID:NVuIFYqd0
>>118みたいな日本語っぽい何かとか
自分で「人に見せるのも人に言わせるのも駄目」って
微塵にも思わないのかね
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 20:38:57.30 ID:ULYfoGHbO
「僕のどこがそんなにいいの……」
「沢山ありすぎて言葉では言い尽くせねェ。強いて言うなら……」

奴がすぅ、と一呼吸してから語りだす。

「この俺に歯向かってくるところが1番のお気に入りだなァ。そもそもてめェみてェな上玉、世界中どこを探したって見つかりやしねェよ。」
(歯向かうっていうか、単に意見してるだけなんだけど。)

というかこいつの上玉の定義って何?
それだけヒートアップしているのか…そう思っていると、奴が更に言葉を続けてくる。

「瞬く間にメイドを従え、心酔させるカリスマ性! 」

そこはむしろ、メイドさん達に信頼どころか心配される君が駄目なんじゃないかな?

「この前、俺がバイクでコケたの時も痺れたぜェ! てめェは妻としての在り方と覚悟を示し、俺のせいで自信を喪失しちまった優等生を叱咤激励して、本来いがみ合う筈の浮気相手に憧憬すらをも抱かせたァ!」

……旦那、いや、仮にも貴族……うん、更にそれ以前の1人の男としての在り方や覚悟が足りていない方が駄目なんだと思うよ。
それにいがみ合うって分かってるなら最初から浮気相手なんか作るなよ。

心の中でげんなりする僕を尻目に、まだまだ奴の言葉は止まらない。

「 この俺に口を挟む余地すら与えず、反論すら許さねェなンざ他の誰にも出来やしねェ! 俺ァ、心底てめェに惚れちまってる。今日だって片時もてめェのことを考えなかった時間はねェ。てめェさえいれば俺ァ、他の何もかも全て失っても構わねェとさえ……」
「無責任なことを言うなバカたれ。前にも僕に全てをくれるとか言っておいてさあ……」

そこは失うんじゃなくて捨てるって表現だろう。大体君の為なら何もかも……とか言うなら、その気持ちに気づいた時点で色々直してほしいんだけど。
そう思いつつ、更に続きそうな話に割り込んでおく。

「というか僕以外の全てを失うってことは、委員長やメイドちゃん達もいなくなっちゃうんだけど?」

委員長も、双子メイドちゃんも、居なくなったら困る。かけがえのない存在だ。その全てを失ってもいいなんて、そんなのは勘弁してほしい。

「あァ、悪ぃ。撤回する。てめェが欲しいもんは全部俺が与えてやる。てめェのために全部守ってやる。もちろんてめェのこともな」
「うーん、そういうところだよね。」

そこは『僕を守る>僕を守るために他の全部を守る>僕の欲しいものをくれる』であってほしいんだけどなあ。

「僕より皆を優先するみたいな言い方だけど……?」
「そうじゃねえ。最優先はてめェだァ」

一応そういうつもりみたいだけど、それなら今の状況を作り出さないでほしかったけどなあ……。




こんな感じかなあ
改めてチンピラの発言の支離滅裂っぷりと、それを完璧に理解する主人公の脳の頭ちゃおラジっぷりが際立つなこれ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 21:52:07.80 ID:omoLf3nr0
ちゃおラジも他作者から盗用したり無断借用したりオリジナリティの欠片もなかったが
投稿回数にだけは拘ってたな。数しか誇れるものがなかったんだろう
チリは積もってもゴミの山にしかならないのにな
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 23:59:53.98 ID:c7Lh7lPv0
他に同期のクソスレ並べてみると
【FGO/SS】本当はあったFGOハロウィン2023
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1699194788/
安価「転生系小説」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1701562131/
「安価で小説かくお」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1702253254/
があるかな

投稿数だけならここが一番多いな、投稿数だけは
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/18(月) 01:09:48.54 ID:hsRu+qO6O
最初にきちんと合わない人にブラウザバック進めているだけでも
FGOの奴がまともに見えるの凄いな
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/18(月) 01:44:58.98 ID:b42qC0zO0
続ければ続けるほど世界樹にもキャラの言動にも展開にも
矛盾が増えていくという点は面白いんだよなあ
「沢山ありすぎる」の根拠がたった数回分のエピソードとか失笑ものだし
127 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/18(月) 22:32:11.54 ID:BRHQME98O
「あァン? てめェ、なに読んでんだァ?」
「昔、悪役貴族から貰った求婚のお手紙」
「あァ!? てめェまだ持ってたのかよ!」

委員長から貰った帝国の高性能マスクのおかげて誰にも移すことなく、すっかり風邪が治った僕はその晩、皆が寝静まったあと、昔、悪役貴族から貰った手紙を部屋から持ち帰り月明かりに照らし読んでいた。懐かしいな。

「失くしたり捨てたりするわけないじゃんか。これは僕にとって初めての求婚の手紙なんだから。あ、勘違いすんなよ!? 別に僕は大事にしてるわけじゃないんだからね!?」

嘘である。なんならこれは帝国の印刷技術の粋を集めたコピー機でコピーした複製品であり、原本はお城の部屋に額縁に入れて飾るくらいに、大切に、厳重に、保管されている。
年頃になってからは立場上、こんな僕でも各地から求婚の手紙が届くようになったが、これは僕がまだ10歳にも満たない幼い頃に貰った初めての求婚のお手紙だから当然である。

「ンなもん、さっさと失くすか捨てちまェ」
「嫌だ。これは僕のものだ。口出しすんな」

人の思い出を踏み躙る悪役貴族をひと睨みしてから、もう何度読んだとも知れない文面に目を通す。内容は単純で明快。幼い文字で。

"てめーにほれた。おれとけっこんしろ"

これを幼いこいつが書いたと思うと、はあ。

「あァ? なンだよ、その顔はァ」
「時の流れは残酷だなと思ってさ」
「どォいう意味だァ……あァン!?」

きっとこれを書いた時にはまだ可愛げがあっただろうに。どうしてこうなった。そう言えばこの時のことを訊いたことはなかったな。
128 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/18(月) 22:32:56.29 ID:BRHQME98O
「どうしてこの手紙を書こうと思ったの?」

訊ねると、悪役貴族貴族は嫌そうに語った。

「あれはてめェの誕生日に城で開かれたパーティーでのことだァ。まだガキのてめェが会場に"お出まし"した瞬間、俺ァクソ親父に頭を掴まれて強制的にお辞儀させられたンだよ。俺ァ誰かに頭を下げるなンざ死んでもお断りな性格だからなァ……あの時の屈辱は忘れられねェ。ンで、どうにかこうにか親父の馬鹿力に抗って、てめェをひと目見た瞬間、俺ァ惚れた。遠くて顔がハッキリ見れたわけじゃねェが、そンなの関係ねェ。なにせ、この国のどの貴族の家にもてめェの写真は飾られてるからなァ。まァ、流石に直近の近影は出回ってねェが。ただ言えるのは実物のてめェは写真よりも100万倍、魅力的だったてェことだァ。ンで、俺ァ領地に戻ってすぐに親父が書いたお招きのお礼の手紙の束の中に、その拙い手紙を忍び込ませたってェわけだ」

なるほど。どうやってこの見る者が見れば不敬極まりないとも取れる手紙が僕の元へと届いたのかずっと不思議だったけど、こいつは幼い頃から悪知恵が働く子供だったらしい。
129 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/18(月) 22:33:30.56 ID:BRHQME98O
「当時は考えなしで愚かな真似をしたもンだと思ったがァ、後悔はしてねェ。おかげで意中のてめェの目に留まったわけだからなァ」
「良かったじゃんか。僕の目に留まってさ」

悪役貴族が忍び込ませた手紙は宰相が届けてくれた。その結果、僕がお城から出奔することになった時には泣いて後悔していたけど。

「てめェはなんで俺の求婚を受けたんだ?」
「こんな手紙を送ってきたのは悪役貴族だけだったから……どんな人か気になっただけ」

年頃になってから届いた山ほどの求婚の手紙はどれも定型文や歯の浮くような文面ばかりで、まるで興味が持てなかった。だから僕は1番最初に貰った、直球ど真ん中のこの素敵な手紙の差し出し人にしか興味はなかった。
気になったから僕は悪役貴族が通う学園に潜入調査することにした。正体を隠すため従者も付けずに単身乗り込んだ僕は愕然とした。

「まさかこの手紙をくれたのがこんな悪役貴族なんて、僕のときめきを返して欲しいよ」
「あァン? そンな手紙でときめいたのか?」
「む、昔の話だから! 今はガッカリだし!」

反射的に否定すると、悪役貴族は頭を掻き。

「これでも俺なりに頑張って好成績を残したり、毎朝ジョギングをしてそこらの貴族よりもマシな身体作りをしてきたンだがなァ……チッ。なかなか上手くいかねェもンだぜェ」
「そ、そんな嘘を真に受けんなバカたれ!」
「あァ? なら、ホントはどォなんだァ?」
「え、えっと……そ、それは……その……」

落ち込んだ悪役貴族に慌てて嘘だと言うと、いきなり窮地に立たされた僕。たしかにガッカリした面もあるが、それでも僕は今、こいつと結婚してもいいと……いや、こいつ以外と結婚するつもりはない。愛しているから。
130 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/18(月) 22:34:23.42 ID:wsYp4zw+O
「ケッ。今に見てろよォ? 学園を卒業する頃には、てめェを俺以外と結婚する気なんかなくなるくらいに惚れさせてみせるからなァ」
「ふ、ふん……せいぜい頑張ってみれば?」

もう惚れてますなんて言えないのが苦しい。

「あァ……頑張るから1番近くで見てろォ」
「はあ……仕方ないから、見ててあげるよ」

こいつはきっと僕がもう頑張らなくてもいいと言っても頑張り続けるのだろう。僕のために。僕が欲しい全てのものを与えるために。

「病み上がりなンだからそろそろ寝るぞォ」
「病み上がりって……もう大丈夫だってば」
「お袋は俺がまだガキの頃に病気で死んじまった。またてめェの弱った姿を見たらそン時のことを思い出しちまって悪夢でうなされそうだ。だから頼むから、さっさと寝てくれ」
「そっか……うん。わかったよ。もう寝る」

納得して今日だけは素直に目を閉じる間際。

「……お見舞いの時、追い返してごめんね」
「ンな些細なこともう覚えてなンかねェよ」
「お花も……ありがとね………嬉しかったよ」
「花なンざいくらでもくれてやるから寝ろ」
「うん……おやすみ」
「あァ……おやすみ」

手紙をくれた幼い悪役貴族に感謝して眠る。


【僕は微睡の淵、幼い悪役貴族に感謝する】


FIN
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/18(月) 23:30:52.41 ID:VMJO2mNfO
スカトロくんのオシリアナルが駄目な点
@世界観が無茶苦茶
委員長の故郷である、黒髪が特徴的な東の帝国ではバイクや車どころかスマホもあって、浴衣やすき焼きまであるのならほぼ現代日本みたいな地域だろう。しまいにはマスクやコピー機まで出てきてるし。

……で、未だに主人公達の国は道路もあまり整備されておらず馬車が交通手段、おまけに奴隷市場まであるような格差社会が残っているとか。

客観的に考えたら現代日本の近郊に中世の文化レベルの国が存在するとか、冗談も大概にしてほしい。そんな格差があるならば普通は文化の高い国がそうでない側を統治下に置く。
そういった無理な設定を更に無茶苦茶にするが如く、わざわざ優秀な女子が留学してくる意味が全くもって謎。普通優秀な奴はよりレベルの高い学びを求めて、留学ってするものよ?やってることが全くのあべこべ。

学園と城下町が離れているのも全くもって意味不明だが、極めつけはどうして東の帝国じゃない方の国の城に「天守閣」があるのか。こっちが実は江戸期の日本?かと思ったらクッキーやサブレ作っててもう何が何だか分からねえよ。
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/18(月) 23:32:27.40 ID:VMJO2mNfO
スカトロくんのオシリアナルが駄目な点
A書いてる奴が学園生活をまともに送っていない半生なの丸出しな日常描写
男が延々女4人のハーレムで好き勝手やってるだけの展開。それも学園内の寮で……と思いきや、珍しい筈のバイクを使用しても他の寮生とかが見に来る様子とかも一切無し。
あと風呂場のサイズが意味不明なことになっている。双子に手を出さずにいたならば大した大きさじゃない筈なのにいきなり女子を侍らせても平気なサイズになってるし、もしこれが寮の共同浴場とかなら他の寮生も入ってこないとおかしいんだけどな。

というか委員長とか氏名が「委 員長(イ・インチョ)」ってことなんじゃないのかってレベルで、名前に見合ったことやらないどころか職務放棄して男の部屋に入り浸るダメっぷり。
教師やモブの学生とかも全く出てこないし、学校生活とか行事とかをロクに書くことのできない奴が誤魔化して書いてるのが丸分かり。
舞台を学園じゃなくて貴族同士の領土や覇権争いみたいにしていれば、まだほんの少しでもマシだったんじゃないか。
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