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僕は今宵、悪役貴族に恋をする
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102 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/16(土) 23:27:30.69 ID:MPCSXFx7O
「僕に拭いてくださいって言ってみれば?」
「あァン? 言ったら拭いてくれンのかァ?」
「別に……そんなつもりは更々ないけどさ」
僕がそう言うと悪役貴族はタオルを手渡し。
「てめェが拭け。くれぐれも丁重になァ」
「仕方ないから拭いてあげる。感謝しなよ」
「ケッ。常日頃から感謝してるだろうがァ」
悪役貴族の髪を拭きながら委員長とメイドたちの触れ合いを眺めて、僕はふと自覚する。
満たされている。僕は今、とっても幸せだ。
それを自覚すると、目の前の悪役貴族に抱きつきたくなった。抱きついて、耳元で「僕は今、幸せだよ。ありがとね」って言いたい。
けれど素直じゃない僕は言えず、代わりに。
「俺ァ今、幸せだァ……ありがとなァ」
「っ……なに言ってんのさ……バカたれ」
悪役貴族に言われて、涙が込み上げてくる。
僕が言いたいのに。口から出るのは罵倒だけで、情けない気持ちと同じくらい、嬉しい。
きっとこの世でこいつだけだ。僕みたいな女を愛してくれる男は。ずっと一緒に居たい。
103 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/16(土) 23:28:36.79 ID:MPCSXFx7O
「僕に拭いてくださいって言ってみれば?」
「あァン? 言ったら拭いてくれンのかァ?」
「別に……そんなつもりは更々ないけどさ」
僕がそう言うと悪役貴族はタオルを手渡し。
「てめェが拭け。くれぐれも丁重になァ」
「仕方ないから拭いてあげる。感謝しなよ」
「ケッ。常日頃から感謝してるだろうがァ」
悪役貴族の髪を拭きながら委員長とメイドたちの触れ合いを眺めて、僕はふと自覚する。
満たされている。僕は今、とっても幸せだ。
それを自覚すると、目の前の悪役貴族に抱きつきたくなった。抱きついて、耳元で「僕は今、幸せだよ。ありがとね」って言いたい。
けれど素直じゃない僕は言えず、代わりに。
「俺ァ今、幸せだァ……ありがとなァ」
「っ……なに言ってんのさ……バカたれ」
悪役貴族に言われて、涙が込み上げてくる。
僕が言いたいのに。口から出るのは罵倒だけで、情けない気持ちと同じくらい、嬉しい。
きっとこの世でこいつだけだ。僕みたいな女を愛してくれる男は。ずっと一緒に居たい。
104 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/16(土) 23:29:15.82 ID:MPCSXFx7O
「俺みてェなろくでなしと結婚出来るのはてめェしかいねェ。これからもよろしくなァ」
「ぐすっ……だから……なんで言うのさ……」
「あァン? てめェなんか鼻声じゃねェか?」
「っ!? こ、こっちを見るな、バカたれ!」
振り向こうとした婚約者に泣き顔を見られたくなくて、慌ててタオルを顔に被せて、そのまま抱きしめる。こんな形でしか抱きしめられない自分が嫌になる。堪らなく愛おしい。
「おォい……息ができねェよ」
「ふん……僕が人工呼吸するから安心しな」
「あァ? そォいう問題かァ?」
窒息するまで、僕は悪役貴族を、離さない。
【僕は寝る前、悪役貴族を窒息させる】
FIN
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/16(土) 23:46:41.29 ID:EgmkhOog0
自分の中では雄大な世界観の中で色々なエピソードを経て
主要キャラが深い仲になっているんだろうけど
スカトロくん以外からすれば誰よりもこの主人公に全く魅力が無いんだよな
そもそも転生でもしなきゃ自分の相手が「悪役」であるかなんて分かるわけねーじゃん
語り口調もありがちな痛々しいダメな主人公の典型的そのものだもの
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/17(日) 00:12:04.83 ID:NVuIFYqd0
帝国があって城があって牛肉料理が名物まではまあ分からんでもない
天守閣とか書いちゃう辺りが実にバカ丸出しで笑えない
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/17(日) 02:25:17.07 ID:c2AAagi10
バカというか恥知らずなんだろ
だからこんなものをチラシの裏でやらずにここで投下できてしまう
108 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:12:17.37 ID:dM9BGluaO
「てめェ、なんか顔赤くねェかァ……?」
「おや? たしかに……風邪か? 許嫁殿?」
「別に……平気だし……ケホケホッ」
風邪引いた。きっとお風呂あがりに毎日えっちなことばかりしているせいだろう。身体が怠くてベッドから起き上がれない僕の異変にいち早く気づいた悪役貴族は自分の額と僕のおでこをくっつけてきた。近い。熱上がる。
心配そうにこちらを伺う委員長に見られて余計に恥ずい。きっと40℃を突破している。
「熱あンなァ……喉はどうだァ?」
「熱なんかないし……喉も痛くないし……」
「口開けろォ……赤く腫れてンじゃねェか」
「やはり風邪のようだな。薬を手配しよう」
顎を掴まれて強制的に口を開けさせられて、中を見られた。酷い。悪役貴族め。僕の身体を好きに出来ても、心までは奪われないぞ。
委員長はガサゴソと自分の荷物から風邪薬を探している。帝国の薬はよく効くと評判だ。
109 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:13:16.26 ID:XQPaO5feO
「てめェは今日、学校休めェ」
「全然行けるし……元気だし……」
「ダメだァ。大人しくしてろォ」
「そうだぞ、許嫁殿。無理は禁物だ」
「行けるもん……平気だもん」
有無も言わさぬ2人に対しむっとしてると。
「おォい、メイドどもォ! ちょっとこォい」
「はい若様、お呼びですか?」
「まさか奥様がご懐妊ですか!?」
そんなわけない。たしかに奔放な性生活を謳歌しているけれど委員長が大量に取り寄せてくれた東の帝国の"魔法の風船"のおかげで妊娠は免れており、月のものもこないだ来たばかりだ。僕は重めなので、その節は双子ちゃんたちに甲斐甲斐しく世話を焼いて貰って助かった。なんにせよ委員長のおかげで卒業まで僕が妊娠する心配はなく、感謝している。
110 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:14:26.24 ID:jX0jvZh9O
「風邪が治るまでこいつを見張ってろォ」
「ダメだよ……移したりしたら困るから」
メイドたちに指示する悪役貴族に待ったをかける。ただでさえ、彼女たちは忙しいのに、僕や委員長が来てからは仕事が増えている。
そんな彼女たちに、風邪を移したら大変だ。
「自分の部屋で寝てるから、誰も来ないで」
「そんなザマで部屋まで行けンのかァ?」
「許嫁殿、無理はしないほうが……」
懐疑的な悪役貴族と心配そうな委員長の不安を払拭するべく、僕はベッドから身を起こし、3秒間だけ耐えたのち、再び倒れ込んだ。
「ほらみろォ。無理すンじゃねェよ」
「言わんこっちゃない。絶対安静だぞ」
なんて不甲斐ない。でも絶対移したくない。
111 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:15:37.54 ID:NBzCcjIXO
「……運んで」
「あァン?」
「僕を早く、部屋まで運んで」
恥を忍んで悪役貴族に頼むと、奴は呆れて。
「こンな時まで意地張りやがって……」
「そんな僕が好きなんでしょ……?」
「あァ……好きだ。だから運んでやる」
ひょいと軽そうにお姫様抱っこする婚約者。
「お、落っことすなよ? 丁重に扱うんだぞ」
「わァってるよォ。ぜってェに落とさねェ」
委員長はハラハラしているけれど、僕は不思議と安心していた。きっとこいつなら安全にどこへでも連れて行ってくれる。根拠はないけど、そんな信頼と共に、僕は身を委ねた。
112 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:17:10.50 ID:mdJe/kJeO
「奥様、お食事はここに置きますね」
「ありがと……置いたらすぐに帰りなよ?」
「そんな……私たちは奥様と共に……」
「ダメ。これは命令。わかった?」
「はい……わかりました」
「ううっ……仰せのままに」
悪役貴族に部屋まで運ばれて、久しぶりに自分の部屋のベッドに寝かされたあと、奴と委員長が一緒に学校へと向かうと、それと入れ替わりで双子ちゃんたちが作った食事を持ってきた。そのままお世話をしそうだったので、僕にしては強く言い聞かせて帰らせた。
「……静かだな」
久しぶりに1人になった。前はこれが当たり前だったのに、何故か寂しく感じてしまう。
僕は弱くなったのだろうか。目を閉じると、心細くて、不安で、心配事ばかりを考える。
113 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:18:30.79 ID:srq15psGO
「僕は、上手くやれてるのかな……?」
あいつの許嫁として上手くやれているのだろうか。ある日突然、愛想を尽かされたりしないだろうか。お前なんか嫌いだと言われて、婚約破棄されて、それでも僕は意地を張り、こっちこそせいせいしたとか言って、そのまま卒業して、僕は誰とも結婚出来ずに、一生独りで孤独に生きていくのだろうか。嫌だ。
「ぐすっ……そんなの……嫌だ……」
「ん? なにが嫌なのだ、許嫁殿?」
「へ? あれ? い、委員長、なんで……?」
「おや? 許嫁殿、泣いているではないか。可愛い顔が台無しだぞ。ほら鼻をかみたまえ」
気がつくと、委員長がベッド脇の椅子に腰掛けていた。泣いてる僕に気づいた委員長は、ポケットから桜模様のハンカチを取り出し、優しく涙を拭い、そして僕に鼻をかませた。
114 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:21:06.45 ID:HOhMl3nGO
「どうだ? すっきりしたか?」
「ありがと……ごめん、ハンカチ汚して」
「あっはっは! そんなこと気にするな!」
溌剌とした高笑いで我に返る。何故いるの?
「委員長……授業はどうしたの?」
「そんなもの、サボったに決まっている」
「優等生なのに、そんなことしていいの?」
「許嫁殿の一大事とあれば構うことはない。ああ、そうだ。許嫁殿に、これをあげよう」
優しい微笑みを浮かべた委員長が何やら鞄から手渡した。ひとつは帝国のよく効く風邪薬が入った小瓶。もうひとつは紐のついた紙。
「薬、ありがと……あと、これはなに?」
「ああ、それは帝国製の高性能マスクだ」
「マスク……?」
「ああ。感染のリスクを下げ、それでいて呼吸を妨げない魔法のマスクだ。これを付けてさえいれば、誰が来たって平気だろう?」
帝国はすごいな。じゃあ、すぐにつけよう。
「ああ、その前に……まずはメイドたちが作ってくれた食事を食べて、薬を飲みたまえ」
「でも、委員長に風邪移しちゃう……」
「黙って食べれば問題ない。さあ、口を開けたまえ。私は不器用だから溢したらすまん」
小匙に食事少し乗せ、不器用ながらも丁寧に僕の口に運ぶ委員長。まだほんのりと温かいチキンスープは美味しかった。委員長の優しさと双子メイドたちの温もりで流れた涙がしょっぱい。移したら悪いから言えないけど、ありがとうの代わりに、泣きながら食べた。
115 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:22:04.55 ID:/ofIYd4tO
「うむ! 全部食べれたな。偉いぞ! あとはゆっくりと眠って休めば、すぐに良くなるさ」
きっと1人だと食べきれなかった。全部食べれたのは委員長のおかげだ。委員長は薬を飲ませたあとに、そっとマスクをつけて、手のひらを僕の目の上に乗せて、子守唄を歌う。
綺麗な歌声だ。帝国語の響きが、心地良い。
「ねえ、委員長……その歌、なんて曲?」
「昔、帝国で流行った【ハロ/ハワユ】という曲だ。私が小さい頃、風邪を引いて寝込んでいたり、母上に叱られて泣きべそをかいてる時に、父上がよく歌ってくれたのだ。この歌声だけは父上譲りでな。帝国で有名な歌い手である96猫に似ていて私の数少ない自慢だったりもする。もしやうるさかったか?」
「ううん……もっと歌って欲しい。お願い」
「お易い御用さ。心を込めて歌わせて頂く」
委員長はすごいな。美人で頭が良くて、隠れ巨乳でスタイルも良くて、愛想も良くて、素直で優しくて、おまけに歌も上手いなんて。
それにしても委員長のお父様か。どんな人なんだろう。きっと、素敵な人なんだろうな。
116 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:23:21.45 ID:vZsibqswO
「委員長には、敵わないや……」
「嫌味を言う元気があるならもう安心だな」
「別に、嫌味なんかじゃないし……」
「私は私だと言ったのは許嫁殿ではないか。同じように許嫁殿には許嫁殿の魅力がある」
そうだろうか。僕に魅力はあるのだろうか。
「少なくとも、私は許嫁殿に憧れて髪を切ったぞ。少しでも、許嫁殿に近づきたくてな」
「そんな……誰だって髪くらい切れるよ……」
「そうではなく、気持ちの話だ。許嫁殿と肩を並べてやっていくという私の決意なのだ」
並ばれて比較されたら困る。僕は勝てない。
「僕なんて……どうせ……かわいくないし」
「ふむ? どうやら体調が悪くて弱気になっているようだな。今は何も考えず休むがいい」
委員長の柔らかな手のひらを涙で濡らしながら心地良い歌声に耳を傾け、僕は何も考えずに眠りにつく。そして起きたら、奴がいた。
117 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:24:30.18 ID:M/YfgGYRO
「よォ……目が覚めたかァ?」
「おはよ……いま何時?」
「昼過ぎってとこだなァ」
もうお昼すぎか。薬のおかげかぐっすり眠れたらしい。朝よりは体調が良くなっていた。
それよりも、何故こいつがここに居るのか。
「授業はどうしたの?」
「ハッ! サボったに決まってンだろォがァ」
委員長に続いて悪役貴族までサボタージュ。
「1位取り続けないといけないんでしょ?」
「安心しろォ。俺が出てねェ授業は優等生がノート見せてくれるってよォ。ハッハァ! 持つべきものは、気が利く浮気相手だぜェ!」
寝起きで最低な台詞を聞かされて頭がクラクラする。あんな素敵な委員長を、あくまでも浮気相手として扱う悪役貴族に腹が立った。
118 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:25:27.91 ID:3qoq44YBO
「委員長を……大切にしてあげて」
「なら、第二夫人に格上げだなァ」
それでも第二夫人。なんでだ。わからない。
「僕のどこがそんなにいいの……?」
「沢山ありすぎて言葉では言い尽くせねェ。強いて言うならこの俺に歯向かってくるところが1番のお気に入りだなァ。そもそもてめェみてェな上玉、世界中どこを探したって見つかりやしねェよ。瞬く間にメイドを従え、心酔させるカリスマ性! この前、俺がバイクでコケたの時も痺れたぜェ! てめェは妻としての在り方と覚悟を示し、俺のせいで自信を喪失しちまった優等生を叱咤激励して、本来いがみ合う筈の浮気相手に憧憬すらをも抱かせたァ! この俺に口を挟む余地すら与えず、反論すら許さねェなンざ他の誰にも出来やしねェ! 俺ァ、心底てめェに惚れちまってる。今日だって片時もてめェのことを考えなかった時間はねェ。てめェさえいれば俺ァ、他の何もかも全て失っても構わねェとさえ……」
「む、無責任なことを言うな、バカたれ!!僕に全てをくれるって言ったじゃんか!?」
委員長も、双子メイドちゃんも、居なくなったら困る。かけがえのない存在だ。その全てを失ってもいいなんて、そんなの許さない。
「あァ、悪ぃ。撤回する。てめェが欲しいもんは全部俺が与えてやる。てめェのために全部守ってやる。もちろんてめェのこともな」
「僕より皆を優先してはくれないの……?」
「それは無理だなァ。最優先はてめェだァ」
そこは頑なに譲らないらしい。なんでだよ。
119 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:27:00.19 ID:EvH0hYsFO
「僕は本当に許嫁として相応しいの……?」
「あァ。当たり前だァ」
「僕はちっともかわいくない……」
「てめェはとびきりかわいいだろうがァ」
「スタイルだって良くない……」
「ハッ! それがどォしたァ?」
「歌も上手くない……」
「ンなこと、どォでもいいんだよォ」
「だって! 僕はっ……素直じゃないっ!!」
「チッ……落ちつけェ。水を飲めェ」
叫んだら喉が痛かった。悪役貴族が吸いのみを口に咥えさせる。怒ったせいで熱が上がったのか、吐き出す気力ももなく飲み込んだ。
「悪ぃなァ……俺ァ見舞いには向いてねェ」
「……だったら、さっさと帰れ。バカたれ」
「わァったよ……でも、これだけは言わせろォ。てめェがどれだけ自分を否定しても、俺が肯定してやる。てめェがどれだけ自分を嫌っても、俺はてめェを好きでいつづける。それは当たり前のことで、だから、てめェは俺の許嫁なんだよ。それだけは理解しとけェ」
言い聞かせるようにそう言って、婚約者は。
「あァ、そうだ……帰る前に、動くなよォ」
「は? え? なにするつもり……むぐっ!?」
マスクを取られてキスをされ、僕はキレた。
120 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/17(日) 17:27:58.72 ID:IgvAgi7CO
「な、なに考えてんだよ! 移るでしょ!?」
「あァン? 俺はただてめェの風邪を貰ってやろうとしただけだァ。文句言うんじゃねェ」
「バカたれ! さっさと帰れ! もうくんな!」
「ハッハァ! 来るなって言われても来るに決まってンだろォが。言うことを聞く筋合いはねェ。なンせ俺ァ、てめェの婚約者だからなァ……また必ず来るから大人しく寝てろォ」
そう捨て台詞を吐いて、僕の婚約者は立ち去った。本当にあのバカたれには困った。何が僕の風邪を貰うだ。頭がおかしい。でもきっと、あいつが風邪を引いたら、僕も同じことをするだろう。医学的にとか、理屈とかは関係ない。そのくらい愛しているから。そこでふと、テーブルに置かれた花瓶に気づいた。
「僕が好きなミモザの花……」
悪役貴族は僕が好きな花を花壇で育てているらしい。きっとこの幸せを運んでくれる黄色い花は奴の仕業だろう。ミモザの花言葉は"密かな愛"。素直になれない僕はこの恋心を直接は言えないままでいる。それでもいいと、そんな僕が好きだとあいつは言う。素直になれない僕を好きなあいつに嫌われたくないから、だからこの先もずっと秘めたる恋をするのだろう。ミモザは苗木のうちは鉢植えでも育てられるけど成長すると大きな木になる。
そこまで成長してしまえば、もう折れない。
たとえ密かな愛だとしても、必ず成就する。
それまで、風邪など引いてる場合じゃない。
「あんなキスじゃ足りないよ……バカたれ」
もっと長くて深いキスのために早く治そう。
【僕は昼過ぎ、悪役貴族に見舞われる】
FIN
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/17(日) 19:22:58.78 ID:NVuIFYqd0
>>118
みたいな日本語っぽい何かとか
自分で「人に見せるのも人に言わせるのも駄目」って
微塵にも思わないのかね
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/17(日) 20:38:57.30 ID:ULYfoGHbO
「僕のどこがそんなにいいの……」
「沢山ありすぎて言葉では言い尽くせねェ。強いて言うなら……」
奴がすぅ、と一呼吸してから語りだす。
「この俺に歯向かってくるところが1番のお気に入りだなァ。そもそもてめェみてェな上玉、世界中どこを探したって見つかりやしねェよ。」
(歯向かうっていうか、単に意見してるだけなんだけど。)
というかこいつの上玉の定義って何?
それだけヒートアップしているのか…そう思っていると、奴が更に言葉を続けてくる。
「瞬く間にメイドを従え、心酔させるカリスマ性! 」
そこはむしろ、メイドさん達に信頼どころか心配される君が駄目なんじゃないかな?
「この前、俺がバイクでコケたの時も痺れたぜェ! てめェは妻としての在り方と覚悟を示し、俺のせいで自信を喪失しちまった優等生を叱咤激励して、本来いがみ合う筈の浮気相手に憧憬すらをも抱かせたァ!」
……旦那、いや、仮にも貴族……うん、更にそれ以前の1人の男としての在り方や覚悟が足りていない方が駄目なんだと思うよ。
それにいがみ合うって分かってるなら最初から浮気相手なんか作るなよ。
心の中でげんなりする僕を尻目に、まだまだ奴の言葉は止まらない。
「 この俺に口を挟む余地すら与えず、反論すら許さねェなンざ他の誰にも出来やしねェ! 俺ァ、心底てめェに惚れちまってる。今日だって片時もてめェのことを考えなかった時間はねェ。てめェさえいれば俺ァ、他の何もかも全て失っても構わねェとさえ……」
「無責任なことを言うなバカたれ。前にも僕に全てをくれるとか言っておいてさあ……」
そこは失うんじゃなくて捨てるって表現だろう。大体君の為なら何もかも……とか言うなら、その気持ちに気づいた時点で色々直してほしいんだけど。
そう思いつつ、更に続きそうな話に割り込んでおく。
「というか僕以外の全てを失うってことは、委員長やメイドちゃん達もいなくなっちゃうんだけど?」
委員長も、双子メイドちゃんも、居なくなったら困る。かけがえのない存在だ。その全てを失ってもいいなんて、そんなのは勘弁してほしい。
「あァ、悪ぃ。撤回する。てめェが欲しいもんは全部俺が与えてやる。てめェのために全部守ってやる。もちろんてめェのこともな」
「うーん、そういうところだよね。」
そこは『僕を守る>僕を守るために他の全部を守る>僕の欲しいものをくれる』であってほしいんだけどなあ。
「僕より皆を優先するみたいな言い方だけど……?」
「そうじゃねえ。最優先はてめェだァ」
一応そういうつもりみたいだけど、それなら今の状況を作り出さないでほしかったけどなあ……。
こんな感じかなあ
改めてチンピラの発言の支離滅裂っぷりと、それを完璧に理解する主人公の脳の頭ちゃおラジっぷりが際立つなこれ
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/17(日) 21:52:07.80 ID:omoLf3nr0
ちゃおラジも他作者から盗用したり無断借用したりオリジナリティの欠片もなかったが
投稿回数にだけは拘ってたな。数しか誇れるものがなかったんだろう
チリは積もってもゴミの山にしかならないのにな
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/17(日) 23:59:53.98 ID:c7Lh7lPv0
他に同期のクソスレ並べてみると
【FGO/SS】本当はあったFGOハロウィン2023
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1699194788/
安価「転生系小説」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1701562131/
「安価で小説かくお」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1702253254/
があるかな
投稿数だけならここが一番多いな、投稿数だけは
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/18(月) 01:09:48.54 ID:hsRu+qO6O
最初にきちんと合わない人にブラウザバック進めているだけでも
FGOの奴がまともに見えるの凄いな
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/18(月) 01:44:58.98 ID:b42qC0zO0
続ければ続けるほど世界樹にもキャラの言動にも展開にも
矛盾が増えていくという点は面白いんだよなあ
「沢山ありすぎる」の根拠がたった数回分のエピソードとか失笑ものだし
127 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/18(月) 22:32:11.54 ID:BRHQME98O
「あァン? てめェ、なに読んでんだァ?」
「昔、悪役貴族から貰った求婚のお手紙」
「あァ!? てめェまだ持ってたのかよ!」
委員長から貰った帝国の高性能マスクのおかげて誰にも移すことなく、すっかり風邪が治った僕はその晩、皆が寝静まったあと、昔、悪役貴族から貰った手紙を部屋から持ち帰り月明かりに照らし読んでいた。懐かしいな。
「失くしたり捨てたりするわけないじゃんか。これは僕にとって初めての求婚の手紙なんだから。あ、勘違いすんなよ!? 別に僕は大事にしてるわけじゃないんだからね!?」
嘘である。なんならこれは帝国の印刷技術の粋を集めたコピー機でコピーした複製品であり、原本はお城の部屋に額縁に入れて飾るくらいに、大切に、厳重に、保管されている。
年頃になってからは立場上、こんな僕でも各地から求婚の手紙が届くようになったが、これは僕がまだ10歳にも満たない幼い頃に貰った初めての求婚のお手紙だから当然である。
「ンなもん、さっさと失くすか捨てちまェ」
「嫌だ。これは僕のものだ。口出しすんな」
人の思い出を踏み躙る悪役貴族をひと睨みしてから、もう何度読んだとも知れない文面に目を通す。内容は単純で明快。幼い文字で。
"てめーにほれた。おれとけっこんしろ"
これを幼いこいつが書いたと思うと、はあ。
「あァ? なンだよ、その顔はァ」
「時の流れは残酷だなと思ってさ」
「どォいう意味だァ……あァン!?」
きっとこれを書いた時にはまだ可愛げがあっただろうに。どうしてこうなった。そう言えばこの時のことを訊いたことはなかったな。
128 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/18(月) 22:32:56.29 ID:BRHQME98O
「どうしてこの手紙を書こうと思ったの?」
訊ねると、悪役貴族貴族は嫌そうに語った。
「あれはてめェの誕生日に城で開かれたパーティーでのことだァ。まだガキのてめェが会場に"お出まし"した瞬間、俺ァクソ親父に頭を掴まれて強制的にお辞儀させられたンだよ。俺ァ誰かに頭を下げるなンざ死んでもお断りな性格だからなァ……あの時の屈辱は忘れられねェ。ンで、どうにかこうにか親父の馬鹿力に抗って、てめェをひと目見た瞬間、俺ァ惚れた。遠くて顔がハッキリ見れたわけじゃねェが、そンなの関係ねェ。なにせ、この国のどの貴族の家にもてめェの写真は飾られてるからなァ。まァ、流石に直近の近影は出回ってねェが。ただ言えるのは実物のてめェは写真よりも100万倍、魅力的だったてェことだァ。ンで、俺ァ領地に戻ってすぐに親父が書いたお招きのお礼の手紙の束の中に、その拙い手紙を忍び込ませたってェわけだ」
なるほど。どうやってこの見る者が見れば不敬極まりないとも取れる手紙が僕の元へと届いたのかずっと不思議だったけど、こいつは幼い頃から悪知恵が働く子供だったらしい。
129 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/18(月) 22:33:30.56 ID:BRHQME98O
「当時は考えなしで愚かな真似をしたもンだと思ったがァ、後悔はしてねェ。おかげで意中のてめェの目に留まったわけだからなァ」
「良かったじゃんか。僕の目に留まってさ」
悪役貴族が忍び込ませた手紙は宰相が届けてくれた。その結果、僕がお城から出奔することになった時には泣いて後悔していたけど。
「てめェはなんで俺の求婚を受けたんだ?」
「こんな手紙を送ってきたのは悪役貴族だけだったから……どんな人か気になっただけ」
年頃になってから届いた山ほどの求婚の手紙はどれも定型文や歯の浮くような文面ばかりで、まるで興味が持てなかった。だから僕は1番最初に貰った、直球ど真ん中のこの素敵な手紙の差し出し人にしか興味はなかった。
気になったから僕は悪役貴族が通う学園に潜入調査することにした。正体を隠すため従者も付けずに単身乗り込んだ僕は愕然とした。
「まさかこの手紙をくれたのがこんな悪役貴族なんて、僕のときめきを返して欲しいよ」
「あァン? そンな手紙でときめいたのか?」
「む、昔の話だから! 今はガッカリだし!」
反射的に否定すると、悪役貴族は頭を掻き。
「これでも俺なりに頑張って好成績を残したり、毎朝ジョギングをしてそこらの貴族よりもマシな身体作りをしてきたンだがなァ……チッ。なかなか上手くいかねェもンだぜェ」
「そ、そんな嘘を真に受けんなバカたれ!」
「あァ? なら、ホントはどォなんだァ?」
「え、えっと……そ、それは……その……」
落ち込んだ悪役貴族に慌てて嘘だと言うと、いきなり窮地に立たされた僕。たしかにガッカリした面もあるが、それでも僕は今、こいつと結婚してもいいと……いや、こいつ以外と結婚するつもりはない。愛しているから。
130 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/18(月) 22:34:23.42 ID:wsYp4zw+O
「ケッ。今に見てろよォ? 学園を卒業する頃には、てめェを俺以外と結婚する気なんかなくなるくらいに惚れさせてみせるからなァ」
「ふ、ふん……せいぜい頑張ってみれば?」
もう惚れてますなんて言えないのが苦しい。
「あァ……頑張るから1番近くで見てろォ」
「はあ……仕方ないから、見ててあげるよ」
こいつはきっと僕がもう頑張らなくてもいいと言っても頑張り続けるのだろう。僕のために。僕が欲しい全てのものを与えるために。
「病み上がりなンだからそろそろ寝るぞォ」
「病み上がりって……もう大丈夫だってば」
「お袋は俺がまだガキの頃に病気で死んじまった。またてめェの弱った姿を見たらそン時のことを思い出しちまって悪夢でうなされそうだ。だから頼むから、さっさと寝てくれ」
「そっか……うん。わかったよ。もう寝る」
納得して今日だけは素直に目を閉じる間際。
「……お見舞いの時、追い返してごめんね」
「ンな些細なこともう覚えてなンかねェよ」
「お花も……ありがとね………嬉しかったよ」
「花なンざいくらでもくれてやるから寝ろ」
「うん……おやすみ」
「あァ……おやすみ」
手紙をくれた幼い悪役貴族に感謝して眠る。
【僕は微睡の淵、幼い悪役貴族に感謝する】
FIN
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/18(月) 23:30:52.41 ID:VMJO2mNfO
スカトロくんのオシリアナルが駄目な点
@世界観が無茶苦茶
委員長の故郷である、黒髪が特徴的な東の帝国ではバイクや車どころかスマホもあって、浴衣やすき焼きまであるのならほぼ現代日本みたいな地域だろう。しまいにはマスクやコピー機まで出てきてるし。
……で、未だに主人公達の国は道路もあまり整備されておらず馬車が交通手段、おまけに奴隷市場まであるような格差社会が残っているとか。
客観的に考えたら現代日本の近郊に中世の文化レベルの国が存在するとか、冗談も大概にしてほしい。そんな格差があるならば普通は文化の高い国がそうでない側を統治下に置く。
そういった無理な設定を更に無茶苦茶にするが如く、わざわざ優秀な女子が留学してくる意味が全くもって謎。普通優秀な奴はよりレベルの高い学びを求めて、留学ってするものよ?やってることが全くのあべこべ。
学園と城下町が離れているのも全くもって意味不明だが、極めつけはどうして東の帝国じゃない方の国の城に「天守閣」があるのか。こっちが実は江戸期の日本?かと思ったらクッキーやサブレ作っててもう何が何だか分からねえよ。
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/18(月) 23:32:27.40 ID:VMJO2mNfO
スカトロくんのオシリアナルが駄目な点
A書いてる奴が学園生活をまともに送っていない半生なの丸出しな日常描写
男が延々女4人のハーレムで好き勝手やってるだけの展開。それも学園内の寮で……と思いきや、珍しい筈のバイクを使用しても他の寮生とかが見に来る様子とかも一切無し。
あと風呂場のサイズが意味不明なことになっている。双子に手を出さずにいたならば大した大きさじゃない筈なのにいきなり女子を侍らせても平気なサイズになってるし、もしこれが寮の共同浴場とかなら他の寮生も入ってこないとおかしいんだけどな。
というか委員長とか氏名が「委 員長(イ・インチョ)」ってことなんじゃないのかってレベルで、名前に見合ったことやらないどころか職務放棄して男の部屋に入り浸るダメっぷり。
教師やモブの学生とかも全く出てこないし、学校生活とか行事とかをロクに書くことのできない奴が誤魔化して書いてるのが丸分かり。
舞台を学園じゃなくて貴族同士の領土や覇権争いみたいにしていれば、まだほんの少しでもマシだったんじゃないか。
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/18(月) 23:35:57.38 ID:VMJO2mNfO
スカトロくんのオシリアナルが駄目な点
B登場人物の魅力が全く無い
メンヘラ池沼な主人公と、男が1人なのに「悪役」にされる奴。
そもそも男装がバレていなかった頃は意にも介していなかった相手に向かって、仮にも付き合ってる相手がいる横でいきなり「愛してる」「キレイ」という言葉を投げる男と、散々男を悪役貴族と銘打ってまで避けていながらその言葉で即墜ちする主人公。
いや、どちらもガイジ極まりすぎていて開いた口が塞がらない。
その悪役貴族の「悪役」要素もここまで「主人公が悪そうだと感じたから、口調が悪いから」とかいう下らなすぎる理由しか無いのがもうね。というか「悪じゃない役」の貴族どこだよ。むしろ主人公からすれば当初の委員長も悪役だろうが。
主人公も男の許嫁で、一応学園に入学できる程度の能力がある以外の情報全く無いし、性格も詰まるところ男を崇拝するだけの尻軽なビッチになってるしで、こいつの方が余程脇役の悪役にふさわしいんだよなあ。男に対する呼び方が悪役貴族だったり婚約者だったりコロコロ変わる様も頭おかしいとしか思えない要素だし。
何よりどう見ても世界観のパワーバランスとして「委員長の婿養子に男、その許嫁だった主人公が妾」にならないと国際問題になる程国のレベルが違ってることを誰よりスカトロくんが理解していない無知っぷり。
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/18(月) 23:40:13.07 ID:VMJO2mNfO
スカトロくんのオシリアナルが駄目な点
C不適切な内容を実力の無い奴が書こうとしている
意図的に延々不快なスカトロ要素を書き続けたような奴だし、根本的な目的として何か閲覧者に不快もしくは不適切な内容を意図的に書き続けるのが目的の可能性が高い。
そういう視点で考えた時、「VIPで書くには不適切な性的描写」を書こうとしているっぽいのが分かる。
ただまあ、ここまで一切そういう意見がないのも、「せいぜい地上波でも普通に流れることのあるような事後の様子」とかしか書かれていない(おまけに童貞感丸出しの薄っぺらさ)上、みんなが「こいつにまともなエロなんて書けるわけがない」って思われている点も大きなポイントかもしれない。
というか露骨に感じられるようなレベルの性的描写書いたところで、みんな文句言うどころか「あざーっす」ってなるだけなのをスカトロくんは理解しているのかな?
……じゃあこのカスみたいながまともな作品になる為に必要だったものは?
それを考えてみても多すぎて書ききれないけど、そもそもとしてスカトロくんが自分へのプライドを捨てて、作品へのプライドを持つことだよね。
あまりにも皆がけなすから、逆に良い部分もあるんじゃないか?と思って見てみたら、むしろ良い部分皆無で悪い部分ばかりが下痢便のように止まらない、想像以上のゴミでした。
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/19(火) 08:02:34.61 ID:pXW717Yr0
ID:VMJO2mNfOも
>>1
と同レベルの頭おかしい奴だろ、自分はマシだと思ってる分悪質かも
面白くもないオシリアナルって造語を本人はウケてると勘違いしてるのか連呼したり、説得力ゼロの読む気になれない長文を垂れ流すとか
>>1
と共通してるわ
加えて他人が立てたスレでそれらを連投する恥知らず、厚かましさなら
>>1
を上回ってるだろうねぇ
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/12/19(火) 08:37:12.21 ID:18bm2MyQ0
駄文スカトロマンはマゾなだけだ
「ボクの垂れ流した怪文書がみんなに罵倒されてるぅ!」でビクンビクンしてるだけだから
真面目に相手にするだけ時間の無駄なんだよ
基本はシカトしときゃいい。去年のクリスマスのようにな
自己愛の強いコイツには無反応が一番堪える
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/12/19(火) 13:02:04.96 ID:uYghA4LsO
>>135
はうんこマンの自演として
>>136
の言う通りよね
むしろ怪文書を読み込んだせいで気が狂った奴が現れてしまったか
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/19(火) 19:38:26.25 ID:pXW717Yr0
>>1
には
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1701770306/
を読んでどこを改善すべきかしっかり自己分析してもらいたい
他所のクソスレ読めば自分のスレもクソだと実感するだろう
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/19(火) 19:47:00.94 ID:pXW717Yr0
>>137
いや
>>1
の自演じゃないぞ
別のスレじゃ書き手が本文そっちのけで反論する場合もあるけどここは一気に書き溜め投下してトンズラする
多分誰が自演かって言い争う人狼ゲームもどきを高見の見物で眺めてるだろ
140 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/19(火) 21:00:57.59 ID:NWAuXqYUO
「委員長、なにしてんの?」
「見ての通り、耳かきをして貰っている!」
その日、悪役貴族の巣窟に帰宅して部屋着に着替えたら委員長がお姉ちゃんメイドに耳かきをされていた。当然のように膝枕である。
サラサラの白タイツに頭を乗せてご満悦だ。
「ふうん……気持ちいい?」
「ああ、最高だ! 私は不器用なので耳かきは下手くそなのだが、この子はとても上手い」
「だってさ。褒めて貰えて良かったね?」
「お、奥様、これは浮気などではなく……」
ちょっと嫌味っぽく囁くと、お姉ちゃんメイドが狼狽してかわいい。ああ、いけないな。そんなに僕の悪戯心を刺激しないでおくれ。
141 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/19(火) 21:02:07.67 ID:NWAuXqYUO
「君は誰のメイドなんだい?」
「わ、私はもちろん、奥様の忠実なメイドでございます。ですが……メイドとして、この方に対しても同様に忠義を尽くす所存です」
「うん……100点満点の答えだね。良い子」
僕の意地悪にもめげずに模範解答をしたお姉ちゃんメイドの頭をよしよしと撫でた。すると、なにやらウルウルと瞳を潤ませている。
「ん? なにか僕に言いたいことがあるの?」
「恐れながら……奥様の御手に口付けを……」
「ああ、いいとも……許そう」
僕が手の甲を口元に差し出すとおずおずとキスをするお姉ちゃんメイド。その触れ合いを頭上で見せつけられた委員長は不貞腐れて。
「許嫁殿はどんどん悪役貴族に染まってる」
「……僕のせいじゃないし」
これは全て婚約者である悪役貴族の影響だ。
142 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/19(火) 21:02:53.03 ID:NWAuXqYUO
「奥様も耳かきをしますか?」
「僕は昨日、自分でしたばかりだから……」
「なら、ちゃんと出来たか見てやるよォ」
妹メイドちゃんが耳かきを片手に訊ねてきたのでそう答えると、その耳かきを強奪して、悪役貴族が邪悪な笑みを浮かべて、ちゃんと耳掃除出来てるか確かめると抜かしてきた。
「やだよ。悪役貴族に膝枕されるなんて」
「たまにはいいだろォがァ」
「でも、恥ずかしいし……」
「あァン? そンなに耳ン中が汚ェのかァ?」
「き、汚くなんてないし! 見てみなよ!!」
失礼極まりない悪役貴族の膝に頭を乗せて、見せつける。奴はそっと僕の耳に触れ、中を覗きこんだ。妹メイドちゃんまで覗いてる。
「たしかに、キレイなもンだなァ」
「奥様はお耳もお美しいです……」
「耳が美しいってなんだよ……もぉ」
なんだこれ。めちゃくちゃ恥ずかしい。あとくすぐったい。声が出そうになる。女の子みたいな高い声なんて僕には似合わないのに。
「あっ……そ、そんなに奥まで挿れないで」
「まだ全然入り口だぞォ?」
「こ、これ以上は無理……もう入んない」
「なンだ、痛てェのかァ?」
「い、痛くはないよ……むしろ……はぅっ」
「奥様……えっちすぎます。ああ、鼻血が」
何故か鼻血を流す不思議な妹メイドちゃん。
143 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/19(火) 21:03:29.76 ID:NWAuXqYUO
「よォし、次は左耳だァ」
「もうやだ! 耳かきをよこせっ!」
あまりの羞恥に耐えきれなくなった僕は起き上がり、悪役貴族からいけない棒を奪い取った。この棒のせいで僕は女の子になるんだ。
「ほら、次は悪役貴族の番だよ」
「俺も昨日掃除したばかりなンだが……」
「ちゃんと耳掃除出来たか僕が見てあげる」
「チッ……しゃあねェなァ」
渋々僕の膝に頭を乗せる悪役貴族。復讐だ。
「おォい! どこまで突っ込むんだよ!?」
「ふん。まだまだ。僕の気持ちを思い知れ」
「痛ェっての! 全ッ然気持ちよくねェ!!」
「はい、次は左耳ねー」
文句を聞き流してコロンと首の向きを変えると奴の顔が僕のおへそを向いた。するとモゾモゾ顔を埋め、鼻先で器用に部屋着の裾をめくり、次の瞬間、僕のおへそに電撃が走る。
「ちょっと! 僕のおへそを舐めんな!」
「ちょうど良い位置にあったからなァ」
「やめろバカたれ! この変態悪役貴族!!」
「ハッハァー! 最ッ高の褒め言葉だぜェ!」
「はあー……おふたりのメイドで幸せです」
念の為、毎日おへその掃除をしといて良かった。僕らの喧嘩を眺めている妹メイドちゃんは鼻血を流しながら何故か幸せそうだった。
【僕は帰宅後、悪役貴族に女の子にされる】
FIN
144 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/20(水) 06:04:36.47 ID:7INkV0TsO
「あ、カフスのボタンが取れかけてるよ」
「え? あ……申し訳ございません。ご指摘されるまで、まったく気づきませんでした」
お姉ちゃんメイドの袖口のカフスのボタンが取れかけていた。慌てて恥じ入るようにそれを隠すと、委員長がこちらにやって来た。
「どれ、私が付け直してやろう」
「そんな、自分でやりますので……」
「へえ。委員長、お裁縫出来るの?」
「不器用ゆえ出来栄えは保証しかねるがな。妹ちゃん、裁縫道具を持って来てくれ」
「はい。かしこまりました」
妹メイドちゃんから裁縫道具を受け取り、外したカフスのボタンをチクチクと修繕する委員長。少々粗い仕上がりだけど付け終えた。
「すまないな。きっと君が自分で直したほうが、綺麗に付けられたかもしれないが……」
「いえ、そんな……ありがとうございます」
「なに、気にすることはないさ。裁縫もたまにやらないと更に下手くそになるからな!」
たまにどころか僕などやったことすらない。
「たいしたもんだよ、委員長は」
「許嫁殿は料理が得意ではないか」
「あれは、まあ……学園に来てからすることもなかったし、暇つぶしに覚えただけだよ」
従者もつけずに単身乗り込んだ僕は、当初は花嫁修行のつもりで料理を覚えた。しかし、婚約者に振る舞う機会はなかなか訪れることはなく、他にすることもなかったので、お城のシェフから貰ったレシピを片っ端から作っていたら、それなりに上達したに過ぎない。
145 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/20(水) 06:06:57.74 ID:C2HOFM9+O
「いいか、許嫁殿。将来、夫となる男の胃袋を掴むことは重要だ。帝国では昔から夫婦が結婚するにあたり、結婚式の場で人生における"3つの袋"について説く慣習があるのだ」
「人生における3つの袋? 何それ知りたい」
先進的な帝国の慣習ならきっと為になる筈。
「ならば教えよう。3つの袋とは、胃袋と、堪忍袋と、そして1番重要なのは玉袋だ!」
なるほど。僕は挙手して委員長に質問した。
「胃袋と堪忍袋はわかるけど、玉袋って?」
「ソレはだな、許嫁殿の婚約者の……」
「第二夫人様。ソレ以上は困ります」
「ソレは、奥様にはまだ早すぎます」
興味津々な僕に解説する委員長を何故か双子メイドたちが止めに入る。なんだろう、玉袋って。僕の婚約者に関することらしいけど。
146 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/20(水) 06:08:21.08 ID:C2HOFM9+O
「なにを今更。毎晩見ているではないか」
「奥様はアレが何かをご存知ないのです」
「奥様はアレを未だ直視出来ないのです」
「しかしアレこそがもっとも重要な……」
「アレに関しては第二夫人様の取り分です」
「奥様に代わって丁重に取り扱いください」
「ふむ……それは構わないが、私は許嫁殿と2人で力を合わせもっと気持ち良くだな……」
なにやら委員長とメイドが真剣な顔で話し合いを始めたら。僕は蚊帳の外だ。なんだよ皆して僕を除け者にしてさ。玉袋が気になる。
「ねえ、悪役貴族。玉袋ってなんのこと?」
「あァン? いきなり何言ってやがンだァ?」
「お、奥様! それを若様に訊くのは……!」
「わ、若様! どうか夢のある返答を……!」
「あっはっは! 許嫁殿は大胆不敵だなぁ!」
悪役貴族は騒ぐ僕らを見てため息を吐いて。
「玉袋ってのは玉のようなガキが生まれるために必要なもンで、俺が大切に保管してる」
「へえ! そっかなるほど! それは大切だね」
「さすがは若様……お見事です」
「奥様の夢が更に広がりました」
「うーむ……モノは言いようだな」
しかしそんな大切な物を預けるのは不安だ。
147 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/20(水) 06:09:54.54 ID:C2HOFM9+O
「悪役貴族、それは僕が預かっておくよ」
「てめェ……無茶を言うンじゃねェよ……」
「お城に保管しとけば、絶対に安全だよ」
なんなら幼い悪役貴族から貰った求婚のお手紙の隣に保管しておいてあげよう。そうすれば盗難の心配もなく、将来困ることはない。
「いいかァ、玉袋ってのはなァ……俺の手を離れたその瞬間に、効果がなくなンだよォ」
「そうなんだ……絶対に失くさないでね?」
「てめェ……俺をおちょくってんのかァ?」
「わ、若様、どうかお怒りをお鎮めに……」
「奥様には、まったく悪気はないのです!」
「メイドたち、君たちは許嫁殿を甘く見すぎだ。許嫁殿、そろそろ無知のふりはやめろ」
なんだ、バレてたか。委員長はさすが鋭い。
「僕と委員長以外に女作ったら没収だよ?」
「チッ。やっぱおちょくってやがったかァ」
「玉のような赤ちゃんは僕らのものだから」
「ハッハァ! 今すぐ産ませてやろォかァ?」
「ふん。お断りだよ。卒業までは我慢しな」
まんまと騙された婚約者とメイドを嘲笑う。
「バカたれども。僕を子供扱いしすぎだよ」
「お、恐れ入りました、奥様……お赦しを」
「奥様は大人の女性であらせられます……」
「うむ! さすがは私が憧れた許嫁殿だな!」
堪忍袋の緒が切れたら僕は玉袋を没収する。
【僕は無知のふりをして、悪役貴族を脅す】
FIN
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/20(水) 08:00:48.16 ID:azqcS2tu0
>>137
こそ
>>131-134
の正体だろうな
渾身の評論が怪文書扱いされて顔真っ赤っ赤なの見え見え
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/20(水) 08:39:08.64 ID:yObSzFRmo
長門有希「言語だけが意思疎通のツールではない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1692536812/
怪文書ってので↑のスレ思い出したわ
怪文書って言葉を使われて以降、フハッの人()の肩を持つキチガイが怪文書を連呼してたんだよな
本人の自演かもしれんがw
150 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/20(水) 22:53:33.42 ID:pXeTJs+IO
「うう……母様……」
「んぅ……どうしたの……?」
「嫌だ……死ぬな……くそっ……母様……」
「また怖い夢を見てるの……?」
悪役貴族はたまに悪夢にうなされる。いつも寝ぼけて僕を抱きしめるので、こうして夜中に起こされる。僕は抱き返して頭を撫でる。
夜中に起こされてもちっとも嫌じゃないのが自分でも不思議。僕にも母性があるらしい。
「お母様にはなれないけど僕が傍にいるよ」
「ああ……救えない……死んじまう……」
「大丈夫、大丈夫。死なないから安心して」
「母様……」
しばらく抱きしめてあげると、安心したように寝息を立て始めた。悪役貴族はお母様を病気で亡くしている。きっと、その時の記憶がフラッシュバックするのだろう。可哀想に。
151 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/20(水) 22:54:24.29 ID:pXeTJs+IO
「生きていたら、ご挨拶に伺えたのに……」
悪役貴族のお母様は有名だ。"悪役夫人"の異名を持ち、茶会よりも宴席でこそ、その猛威を振るったと聞いている。もちろん当時僕はまだお酒が飲めなかったため、人づてに耳に入る情報しか知り得ないが、にわかには信じられない伝説がいくつも残っている。曰く、酔った勢いで宰相の頭に酒をぶっかけたり、飲みすぎて宰相の靴の中に嘔吐したり、宰相の髪の毛を毟ったりと、やりたい放題だったらしい。現在、宰相の髪の毛が薄いのは悪役夫人のせいだとよく愚痴っていた。そんな宰相も、悪役夫人の葬儀の際には涙を流して悲しんだ。宰相の涙なんて、その時と、僕がお城を出奔した時しか見たことはない。きっとそれだけ、慕われていた人だったのだろう。
「僕の国も東の帝国と同じくらい医療が発達していれば……助かったかも知れないのに」
「……ああ。彼も、同じことを言っていた」
「あ、ごめん、委員長。起こしちゃった?」
「謝る必要はない。私も彼を支えたいのだ」
ひとりごちると委員長が目を覚まして語る。
「先代大帝の御尽力により、帝国は極短期間のうちに飛躍的に発展した。この国で暮らす者からすると、突如急成長した帝国は不気味で、脅威に感じるのだろう。そのせいで医療支援をはじめとした様々な援助、更には国交までもが滞ってしまうのも仕方ない話だと、私は帝国出身の者として理解している。無論、帝国に侵略や侵攻の意図や計画などは存在せず、それは先代大帝が退位した今でも変わらないのだが、それでも未だにこの国は帝国に対して積極的に関わろうとはしない。君の婚約者は母親を病で亡くした際、そんなこの国を変えたいと思ったらしい。その目的のために学園に入学してから勉学に励み、帝国からの留学生である私とも関係を……むぐ」
お喋りな優しい口をそっと手で塞いでおく。
152 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/20(水) 22:55:23.80 ID:pXeTJs+IO
「ストップ。さすがに喋りすぎだよ委員長」
「だがしかし許嫁殿には聞いて欲しいのだ」
口から手を離すと、反論されたので諭した。
「前にも言ったでしょ。どうしてこいつが委員長と付き合うことになったかなんて、僕は興味ない。僕が知る必要のないことだから」
「しかし君も彼の許嫁殿であるならば……」
そうとも。僕は許嫁だから知る必要はない。
「僕はこいつの許嫁だから、どんな理由であろうとこいつのすることを支える。委員長や双子メイドちゃんに手伝って貰いながらね」
どんな困難だろうと皆がいればきっと平気。
「やれやれ。やはり許嫁殿には敵わないな」
「一緒にこいつを支えていこうね、委員長」
「無論だ。きっとそのために私はこの国へ来たのだと、今ではそう信じて疑っていない」
力強く頷く第二夫人のおかげで僕は心強い。
「ありがと。そろそろ寝よう。おやすみね」
「ああ、おやすみ。優しくて素敵な許嫁殿」
優しくて素敵な第二夫人とともに僕は眠る。
【僕はたまに、夜泣きの悪役貴族をあやす】
FIN
153 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 06:05:27.95 ID:DtppqBXBO
「むう……」
「どうした許嫁殿。まるで親の仇を見るように私の胸を凝視するなんて……興奮するぞ」
僕がお風呂に入ろうと服をポイポイ脱いでいると、委員長もおもむろに服を脱ぎ始めた。
どうやら一緒にお風呂に入るつもりらしく、下着姿となった委員長は現在、普段制服の下に隠された巨乳を白日のもとに晒している。
恥じらいがない癖に興奮してる彼女に問う。
「どうやったら、そんなにデカくなるの?」
「これは恐らく遺伝だ。母上もデカいのだ」
「そっか……本人の努力次第じゃないんだ」
現実に直面した僕を、メイドたちが励ます。
「お、奥様はまだまだ発展途上です!」
「膨らみかけの蕾こそが、正義です!」
いつまで膨らみかけの蕾なんだ。咲きたい。
154 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 06:06:32.29 ID:DtppqBXBO
「ねえ、ちょっと触っていい? もしかしたら何かしらご利益があるかもしれないし……」
「ふむ……だがしかし、こちらだけ触って貰うのも忍びないので、僭越ながら私も、許嫁殿の膨らみかけのかわいい蕾ちゃんを……」
「蕾ちゃんって言うな、バカたれ」
「これは失敬。ならばその"シンデレラ・バスト"にこの私のハンドパワーを差し上げよう」
なにが蕾ちゃんだ。誰がシンデレラ・バストだ。なんだよハンドパワーって。そんな僕の憤りは、手のひらの感触により吹き飛んだ。
「ふぁ……なにこれ、すっごい。柔らかい」
「あっはっは! お気に召してくれたか?」
「これはいけない。思わず収穫したくなる」
「許嫁殿のも小さいながら美味しそうだぞ」
舌なめずりをする委員長。えっちすぎるよ。
「あ、こら! つまむな! 顔を近づけるな!」
「ふむ。どれひとつ、味見をしてみようか」
「やめろバカたれ! な、舐めるのもダメ!」
僕らがわーきゃー騒いでるとメイドたちが。
「奥様方! 私のもご賞味ください!」
「わ、私のも、もしよろしければ……」
なんて良い子たちだろう。献身に報いたい。
155 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 06:07:19.81 ID:DtppqBXBO
「じゃあ、今日は皆でお風呂に入ろっか?」
「「「わあい!」」」
僕の提案に喜び勇んで浴室へと向かう女性陣たち。そして僕は、仲間はずれで部屋に1人だけ取り残された悪役貴族をせせら笑った。
「ふん。残念だったね、女に生まれなくて」
「ケッ。俺が女だったら、てめェらなンか比べモンになんねェくらい、良い女だっての」
つい想像してしまった。女の子の悪役貴族。
いや、それはもはや悪役令嬢である。乱暴な口調と粗雑な振る舞い。そして旺盛な性欲で片っ端から男どもを寝所に招き……あわわわ。
「あァ? なんだァてめェ。顔が赤ェぞォ?」
「き、気のせいだし! 別に悪役貴族が悪役令嬢になって毎日えっちなことしてる姿なんて妄想してないし! なに考えてんのさ!?」
「なに考えてんだって言いてェのは俺だァ」
僕の全否定に悪役貴族は溜息を吐いて呟く。
156 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 06:08:04.80 ID:DtppqBXBO
「てめェがなに考えてんのか、わからねェ」
「あ、う……ご、ごめん」
「あァン? チッ……なンでそこで謝んだよ」
「だ、だって……悪役貴族が呆れるから」
悪役貴族からしたら、僕は理解不能で情緒不安定な奴に見えるのだろう。愛想を尽かされてもおかしくない。僕がしゅんとしてると。
「ハッ! なに考えてンのかわかんねェからこそ、俺ァてめェのことが気になンだよ。いつか洗いざらい全部、吐かせてやるからなァ」
「ふん……あんまり、僕を待たせないでよ」
ふわっと気持ちが軽くなる。嬉しくなった。
「ンなことより、てめェ……」
「え? なに? どうかした?」
「目に毒だから、さっさと風呂に行けェ」
「へ? ……あっ」
言われて気づく。僕は今、パンイチだった。
「きゃあ!? も、もっと早く言ってよ!?」
「ハッハァー! なるべくじっくりと、てめェの"蕾ちゃん"とやらを見たかったからなァ」
「つ、蕾ちゃんて言うなっ! バカたれ!!」
今更、僕の貧相なヌードなんて見飽きただろうに。なのに何故か突然発情するから困る。
悪役貴族が劣情を催すスイッチが知りたい。
【僕はいつの日か、蕾を花開かせたい】
FIN
157 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 23:24:39.85 ID:X58/3olHO
「ちょっと。まだ足りない。やめないでよ」
「このままシてたら朝になっちまうっての」
言われて気づく。すっかり夜も更けていた。
「はあ……もぉ」
「あァン? どォかしたのかァ?」
その夜、僕はいつも通り、お互いに悪態を吐き合う儀式を終えたのちに、悪役貴族とキスをした。けれどこのままでいいのだろうか。
このキスはとても気持ちがいいけれど、心の距離は縮まらない。それが僕はもどかしい。
「なンだよ、やっぱりおかわりかァ?」
「そうじゃなくて……もっとこうさぁ」
「ハッキリ言わねェとわかンねェぞォ」
わかってる。だけど僕は、素直になれない。
158 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 23:25:40.48 ID:X58/3olHO
「……もっと僕のことを煽って」
「はァ? どォいう意味だァ?」
「僕を罵って、もっと苛つかせて」
本能的にそんなおかしなことを口走ってしまった。羞恥と後悔が襲ってくる。こ、こんなのまるで僕が変態みたいじゃん。顔が熱い。
一応、ちゃんと理屈らしきものはある。素直になれない僕は、悪役貴族に反抗することで言いたいことを言える。しかし伝わらない。
「てめェはホント、わけわかんねェなァ」
「あ、う……き、嫌いにならないで……」
「なるわけねェだろォが。ンで、てめェは俺にどォして欲しいンだ? わかるように言え」
嫌われたくなくて、僕はわかるように言う。
「僕のダメなところを指摘して欲しい……」
「そりゃ無理だ。ダメなところなンざねェ」
「うう〜……だ、だったら、悪役貴族が自分自身のダメなところを、僕に言ってみてよ」
これもきっと本能だ。意味不明なお願いだ。
この提案に関しては僕自身もさっぱり意味がわからない。それでもなんとなく言いたいことが言える気がしていた。妻の直感である。
159 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 23:26:45.46 ID:X58/3olHO
「そうだなァ……まず俺ァ、とにかく口が悪ぃ。それにてめぇという許嫁がいるのに他の女に手を出しちまうような最低な糞ヤローだ。あと酒癖もお袋に似て悪ぃな。自他共に認めるドスケベでいつもてめェをやらしい目で見ちまう。1番最悪なのは、てめェの気持ちをわかってやれねェところだ。だから、嫌わないで欲しいってのはこっちの台詞……」
「そんなことないっ!! ふざけんなっ!!」
気づくと僕は叫んでいた。全てを否定する。
「口が悪くても悪役貴族は優しい! 委員長に手を出したのも悪役貴族なりに考えがあってのことでしょ!? お酒を飲み過ぎるのを制御するのは僕の役目だし、やらしい目で見られるのは女として嬉しい! 悪役貴族はいつも僕のことを理解してくれる! だからっ……ぐすっ……それはダメなところじゃないっ!!」
ダメなのは僕だ。自分で言わせた癖に、全部否定するなんて。でもこうでもしないと肯定してやれない。そんな自分が情けなくて、卑怯な涙が出てきた。嫌だ。泣くな。止まれ。
160 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 23:27:42.95 ID:X58/3olHO
「あァ……畜生……また泣かせちまったなァ」
悪役貴族はその涙を自分のせいだと捉える。
「俺が悪かった……だからもう泣くなァ」
「悪役貴族は悪くない……僕が全部悪い」
なにも悪くない。悪いのは僕で、ダメなのも全部僕だ。それなのに悪役貴族は紫水晶の瞳で見つめてそっと僕の涙を拭い、こう諭す。
「てめェは俺の許嫁で、俺のもンだ。だから、てめェの悪いところも全部、俺のもンで、俺のせいなンだよ。わかったかァ?」
わからない。言葉じゃ全然何も伝わらない。
「わからない……わからないからキスして」
「ハッハァー! その発想は俺と同じだなァ」
弱気な僕を鼓舞するように、卑怯な涙を笑い飛ばすように、邪悪に嘲笑った悪役貴族は僕の顎を持ち上げて、首を傾ける。早くしたいと急かす、逸る気持ちを抑えながら、囁く。
161 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/21(木) 23:28:36.31 ID:X58/3olHO
「僕から目を逸らさないで……見つめてて」
「あァン? 前は見るなって言ってたろォが」
「もういい……もうおかしくなってるから」
「おかしくなってんのは俺のほうなンだよ」
「僕に反論すんな……バカたれ……ぁむっ」
悪役貴族のキスは、僕がびっくりしないように、怯えて怖がらせないように、いつも優しい。それが物足りなく感じてしまうのはきっと僕に負い目があるからで、もっと乱暴に、血が出るくらいに唇を噛んで、僕を懲らしめて欲しいとさえ思うけれど、優しい悪役貴族は僕を傷つけたり、痛がることをしてくれない。だけどきっと僕らはそれでいい。それがいいんだ。キスをしながら確信する。誰がなんと言おうと、これが僕たちの在り方だと。
「はあ……まだ足りない。もっとしたい」
「ハッ……いつまで経っても寝れねェな」
その夜、少し悪役貴族との距離が縮まった。
【僕はその夜、悪役貴族と距離を縮めた】
FIN
162 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 06:33:11.24 ID:E6WUPmW9O
「あー……恥ずい」
朝起きて、昨晩の自分の言動を思い返して悶えるのが日課になった。おかしい。こんな筈ではなかったのに。悪役貴族に僕が女で、しかも許嫁であるとバレたあの夜、教室にお弁当箱を忘れた僕は悪役貴族の体操服が椅子にかけてあるのをたまたま発見して、ちょっと着てみようと思い立ったのが大失敗だった。
どうして上着を脱いでワイシャツの上から着ただけで満足せずに、素肌に着てみようなんて愚かなことを思いついたのか。変装用のダサいデカメガネを外して、肌着を脱ぎ捨てたその時、体操服を取りに来た悪役貴族と鉢合わせて、女だということがバレてしまった。
「だって仕方ないじゃん……経験上、シャツの上からじゃ何の意味もないってわかるし」
それ以前もあいつが体操着を忘れた時に、たびたび拝借していたのは秘密だ。お弁当箱を忘れて取りに戻ったのは全くの偶然であり、断じて、体操服目当てだったわけではない。
僕は決して常習犯ではないったらないのだ。
163 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 06:35:03.55 ID:E6WUPmW9O
「寝起きなら、素直になれるのになぁ……」
今朝もちゃんとジョギングに出かける悪役貴族に行ってらっしゃいを言えた。でも夜は全然ダメだ。昨晩は我ながら頑張ったほうだと思う。代わりにすごく恥ずかしかったけど。
「昨晩は随分とお盛んだったな、許嫁殿」
「ふぇっ!? ま、まさか聞いてたの!?」
「隣であんなに激しくされたら丸聞こえに決まっているだろう。妹メイドなんてその光景をガン見しながらモゾモゾしはじめて、姉メイドに口を押さえて貰って喘ぎ声を出さないようにしていたくらいだぞ。私も興奮した」
なんてこったい。僕は妹メイドちゃんのオカズにされていたらしい。キスに夢中で全然気づかなかった。恥ずかしくて赤面しながら絶句している僕を見て委員長は高笑いをして。
「あっはっは! 許嫁殿と知り合った当初はこんな素直じゃない天邪鬼が相手ならすぐに私が正妻になれると踏んでいたのだがな。今となっては私にも許嫁殿の良さがよくわかる。その奥ゆかしさは私には持ち得ない魅力だ」
「ふん……僕は奥ゆかしくなんかないやい」
気恥ずかしさを誤魔化すために口を尖らせて拗ねて、ふと気になった。あの夜、委員長はどうして教室を訪れたのか。訊いてみよう。
164 :
◆dudxOFJ8aA
[sage ]:2023/12/22(金) 06:37:00.71 ID:E6WUPmW9O
「そう言えば今更だけど僕が女だってバレた夜、どうして委員長はあの教室に来たの?」
「あの晩、私は遅くまで図書室で勉強していてな。そろそろ帰ろうかと思ったその時、教室へ向かう彼を見かけた。そこで私は閃いたのだ。教室で致したら気持ち良さそうだと」
「訊いて損したよ! このバカたれ委員長!」
何が優等生だ。純白の制服を返上しておけ。
「我ながらバカな思いつきだったと思うが、そのおかげで今があるというなら感慨深い」
「美談みたいにまとめるなよ……バカたれ」
とは言いつつも感慨深いのは僕も同じだ。ただ単純に身バレしただけなら僕は悪役貴族の部屋に通うこともなく学園をやめていたかも知れない。委員長に対抗して、ノコノコと悪役貴族の巣窟に通った結果、今があるのだ。
165 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 06:38:20.07 ID:E6WUPmW9O
「奥様方、朝食のご用意が出来ました」
「昨晩は大変、興奮させて頂きました」
朝から甲斐甲斐しく僕らの世話を焼いてくれるお姉ちゃんメイドも、ちょっぴりえっちで困り者の妹メイドちゃんも、あの夜があって今、こうして関わってくれている。感謝だ。
「ありがとう。君たちに出会えて、僕は嬉しいよ。でも、あいつとのキスを盗み見られるのは恥ずかしいから、今後は控えるように」
「奥様……いやらしい私を罵倒して下さい」
「はあ……何を言ってるんだか……バカたれ」
「ありがとうございます! 今夜も期待してますのでもっともっと乱れてくださいませ!」
「まったく……本当にどうしてこうなった」
怒られて嬉しがる妹ちゃんも可愛いけどね。
「委員長もありがとね。出会えて嬉しいよ」
「やれやれ。その素直さを彼に見せたまえ」
「今は無理だけど……そのうち、きっとね」
第二夫人の諫言をいつの日か聞き入れたい。
【僕は朝方、あの夜を回想し、感慨に浸る】
FIN
166 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 20:18:09.86 ID:5JX+KFKHO
「奥様、奥様。私の告白を聞いてください」
「ん? どうしたの、妹ちゃん。顔赤いけど」
「実は本日、私は下着を穿いてないんです」
その日は休日で僕は委員長から貰ったお化粧道具でメイクに挑戦していた。すると妹メイドちゃんが僕の耳元で爆弾発言をしてきた。
「……ここにお座り」
「はい。かしこまりました」
ひとまずリップを塗り終えてから、僕は妹メイドちゃんを隣に座らせた。思わず彼女のスカートを凝視してしまいそうになるのをぐっと堪えながら、咳払いをしつつ、説教した。
「いいかい。君も女の子なんだからそんなはしたないことをしたらいけないよ。だいたいそんなことに一体なんの意味があるのさ?」
「スリルが味わえます。それと奥様の反応を伺うのが楽しみでした。あわよくば奥様にお叱りを頂けるかとワクワクしておりました」
ダメだこのメイド。早くなんとかしないと。
167 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 20:21:26.87 ID:Frtkw9NJO
「あのね……僕の気を引きたいのはわかるけどそんなことしたらダメ。穿いてきなさい」
「それなら奥様に穿かせて欲しいです……」
何言ってんだこの子。でもそのくらいなら。
「はあ……わかったよ。パンツ持って来て」
「やったぁー! 今すぐにお持ちしますね!」
何やってるんだろう僕は。すぐ戻って来た。
「それでは、こちらをお願いします!」
「ちょ、なんだよこれ! 紐じゃん!?」
「はい! 帝国の下着を、第二夫人様に取り寄せて頂きました! まだ新品未使用品です!」
こ、こんなのおかしい。解けたら丸見えだ。
「まだ君には早いよ。別の下着にしなさい」
「ですが、せっかく穿かせて頂くのに……」
「僕はこんな下着を穿いたことないし穿かせたこともないんだから、無茶言わないでよ」
「ならば、この私の出番というわけだな!」
お手上げな僕を見かねて委員長が進言する。
「許嫁殿に代わり私が穿かせてしんぜよう」
「委員長はこの下着をつけたことあるの?」
「無論だ。なんなら奇遇なことに、実は今、私もパンツを穿いてない。ノーパンなのだ」
「バ、バカたれがここにもう1匹いた!?」
「帝国にはノーパン健康法という画期的な健康法があってだな……許嫁殿、そんなに疑わしい眼差しで睨むな。興奮する。わかったわかった。ひとまず穿かせるからそう怒るな。この紐パンは本格的でな。飾り紐ではなく本当に結んであるので解けると大惨事になる」
「えへへ。実は私もどうやってこれを穿くかわからなかったんですよね……助かります」
そんなもんを買うなよ。委員長は慣れた手つきでスカートの下から穿かせている。不器用なくせに、こうした作業だけは得意らしい。
168 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 20:22:57.33 ID:xYY31mmVO
「よーし、出来た! うむ! とても可愛いぞ」
「ほんとですか!? 奥様、どうでしょう?」
「ああ……うん。たしかにかわいいけど……」
「けど、なんですか?」
「君には黒より白のほうが似合うと思うよ」
あまりにえっちすぎるので所感を述べると。
「でもほら、お姉ちゃんだって黒ですよ?」
「きゃあっ!? いきなりなにをするの!?」
マジかよ。てことはお子様は僕だけなの?
「そんな……お姉ちゃんメイドの裏切り者」
「わ、私は決して裏切るような真似は……」
「ふん……どうせ皆して僕の下着は子供っぽいって嘲笑ってたんでしょ。はいはい。どーせ僕はお子様だよ。化粧しても意味ないさ」
委員長に教わりながら、ちょっとでも大人っぽくなれるように努力しているのが馬鹿みたいだ。僕は下着なんてまったく無頓着だし。
「許嫁殿も上手に化粧出来てるではないか」
「テキトーだよこんなの。拘りもないしさ」
「ん? なんだァ、てめェ……そのツラはァ」
僕が拗ねていると読書していた悪役貴族が顔を上げて化粧に気づく。奴は席を立ってこちらに歩み寄り、値踏みするように見定めた。
169 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 20:24:53.82 ID:fcTJrfECO
「わ、笑ったら僕はキレるぞ。そして泣く」
「笑わねェよ。ちょっと見惚れてただけだ」
「あ、う……そ、それで、どうなのさ……?」
「悪くねェ。てめェは元が良いから薄化粧程度で充分だなァ。そのリップも似合ってる」
めちゃくちゃ嬉しい。挑戦して良かったよ。
「ただし、キスをしづらいのが難点だなァ」
「せっかく化粧したのに我慢出来ないの?」
「ハッ! 俺は我慢なンざ大ッ嫌いなンだよ」
困った奴め。僕の苦労を少しは理解しろよ。
「気が向いたら、またお化粧してあげる」
「ンなことより、女らしい服を着やがれ」
「ふん……誰が悪役貴族のためなんかに」
チラリと委員長に目をやると何やら頷いた。
「ちょうど、帝国から取り寄せた衣装があるのだ。私にはどうしても似合わないので、許嫁殿に贈呈したいのだが……着てみるか?」
「先進的な帝国の衣装なら……着てみたい」
「あいわかった! メイドたち手伝ってくれ」
「はい、かしこまりました!」
「仰せのままに、第二夫人様」
委員長が用意した服は淡い青色のシフォンプリーツキュロットスカートというもので、構造上、僕の子供下着が見えることのない素晴らしい代物だった。パステルイエローのブラウスと合わせると、女の子感がマシマシだ。
170 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/22(金) 20:27:39.42 ID:aA4a3Ft/O
「ど、どうかな……?」
女の子の格好を悪役貴族に披露すると突然。
「おォい! メイドどもォ!!」
「はい! 若様!」
「なんなりとご下命を!」
「しばらくこいつと寝室にこもるから邪魔すんなよォ!! 優等生ェ、てめェも付き合え」
「はっ! かしこまりました。仰せのままに」
「やれやれ……巻き添えで役得をするとはな」
僕と委員長の肩を抱き、寝室へ向かう悪役貴族に深々と一礼するお姉ちゃんメイド。対照的に妹メイドちゃんは涙目で懇願してきた。
「そんなぁ……若様ぁ……見学だけでも……」
「あァ言ってるが、てめェらどうだ?」
「私は無論、構わないぞ! 興奮マシマシだ」
「ぼ、僕も……仲間はずれは可哀想だから」
「ハッハァー! なら全員、寝室に来ォい!」
「「わあい!」」
その後、僕らをめちゃくちゃにする様子をメイドたちに見せつけた悪役貴族は、やはり正真正銘の悪役貴族なのだと改めて実感した。
【僕は休日、女の子感をマシマシにする】
FIN
171 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 06:41:24.89 ID:8elE+t1NO
「いいかァクソども。この公式はなァ……」
悪役貴族は意外と人望がある。所謂、不良たちのまとめ役で番長として君臨していた。こうしてたまに教壇に立って学園中から集まったチンピラたちに勉強を教えてあげている。
「赤点取りやがったらぶっ飛ばすかンなァ」
「うす! ありがとうございやしたッ!!」
「閣下がお帰りだ! 道を開けやがれっ!」
ガラの悪い連中が作った花道を悪役貴族は肩で風を切って歩く。箔をつけるために僕が持たせたステッキがいかにも悪役貴族らしくて良い感じだ。杖材は強靭な樫で、純銀で杖頭にあしらわれた獅子と鴉の意匠はこの国の貴族であるなら誰でも知っているもので、僕の婚約者であることを示している。城下の杖職人を褒めてあげたい。
「あァン? なァに見てやがンだァ?」
「別に……さっさと帰って来てね」
「あァ……先に部屋で待ってろォ」
物陰からこっそり眺めていたら見つかってしまったので、そそくさと逃げる。僕みたいな善良な生徒が関わっていたらおかしいから。
「はあ〜……カッコ良すぎるよ」
あれが僕の婚約者だなんて。最高に素敵だ。
172 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 06:44:04.00 ID:1BvajdrNO
「おかえりなさいませ、若様」
「上着とステッキをお預かりいたします」
悪役貴族が帰ってきたのは日が沈んでからだった。何やら花束やら贈り物の箱を沢山抱えている。それを見て、僕はまたかと呆れた。
「今日も女の子たちに群がられたの?」
「あァ、そのせいで帰りが遅くなっちまった。いらねェって言っても、不要なら捨ててくれって色んなもンを持たせやがって……」
悪役貴族はモテる。学園のゴロツキが善良な生徒に迷惑をかけないように目を光らせているおかげで、助けられた女の子たちは多い。
「くんくん」
「あァン? なに匂い嗅いでンだァ?」
「浮気の匂いがしないかと思って……」
念の為にチェックするとシロ。ほっとする。
173 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 06:46:23.72 ID:1BvajdrNO
「そンなに心配なら、てめェが露払いしろ」
「へ? 僕が? なにそれ、どういう意味?」
「てめェが女の制服で隣にいれば解決だろ」
たしかに僕が女生徒として悪役貴族の隣に立てばこいつを慕う女の子たちは諦めるかもしれない。だけどそれは出来ない。何故なら。
「正体を明かしたらこの学園にいれないよ」
きっと大騒ぎになる。だって、ただでさえ。
「それに……悪役貴族の許嫁がこの学園にいたら、余計な敵が増えるかも知れないしさ」
「ハッ! ンな雑魚ども蹴散らしてやンよォ」
立場上、僕と結婚したい貴族は多い。悪役貴族と僕が婚約してることは知れ渡っているので、様々な嫌がらせを受けた結果、こいつは今のような振る舞いを身につけたのだろう。
「僕のせいで苦労をかけてごめんね」
「俺が望んだ結果だ。謝ンじゃねェ」
僕と悪役貴族の関係には、しがらみが多い。
174 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 06:47:56.60 ID:1BvajdrNO
「委員長が彼女として露払いしたらどう?」
「出来ることならばそうしたいが、一介の留学生にすぎない私如きが貴族の令嬢を追い払うことは難しい。力になれずに申し訳ない」
委員長は学年次席だし、きっとその美貌で周囲を威圧は出来ると踏んだが、それでも立場上、貴族令嬢を追い払うのは難しいようだ。
「まあ、僕は気にしてないから大丈夫だよ」
「ホントかァ? 無理してねェだろうなァ?」
そもそもこんなのこの学園に入学してからすっかり慣れた。許嫁としての自信を喪失した過去はあれども今は婚約者と同棲してるし。
「あっ……またこのようなモノを……」
「なんて、無礼な……許せませんっ!」
何やら贈り物の仕分けをしているメイドたちが騒がしい。まさか贈り物の中に小賢しい貴族が嫌がらせ目的で何か混ぜたのだろうか。
「どうしたの? 何が入ってたの?」
「これは奥様はご覧にならないほうが……」
「こんな穢らわしいもの早急に燃やします」
そう言われると気になる。覗き込んで後悔。
175 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 06:56:56.24 ID:DrA63C9kO
「なんで……女の子の下着が入ってんだよ」
丸めて小包に収められた下着。新品ではなく着用した痕跡が見て取れる。怒りが湧いた。
婚約者がモテるのは僕としても鼻が高いし、悪役貴族が慕われているのは嬉しい。妖しく輝く紫水晶の双眸の魔力に抗えず、あわよくば一夜限りでも悪役貴族に抱かれたいという劣情を抱く者もいるだろう。だけどこれはやりすぎだ。許嫁として、許せない。
「なに考えてんだよ! 頭おかしいでしょ!」
「お、奥様のお怒りはごもっともです……」
「一部の貴族の方の性癖は歪んでいるので時折こんなものも混ざってますが、我々がきちんと処分していますので、ご安心ください」
怒り心頭な僕をメイドたちが宥めるけれど。
「あーイライラする。学園取り潰そうかな」
「それは困る。本国に強制的に送還される」
「あ……ごめんね、委員長。軽率だったよ」
僕らしくない。基本的に権力を使うことはしたくなかった。物心がついてから何度もそれで失敗しているのだ。僕の顔色ひとつで奏上してくる大臣たちの首が飛ぶ。何か疑問を口にすると大問題に発展する。挙句の果てに、腹を切るだの馬鹿なことを言い始めるのだ。
せっかくそんな窮屈なお城から出奔したのに癇癪でこの学園生活を台無しにしたくない。
落ちつけ。クールにいこう。深呼吸すると。
「俺のせいで嫌な思いさせた悪かったなァ」
「悪役貴族は悪くない。これは僕の……あ」
僕の問題だと言いかけて僕は名案を閃いた。
176 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 07:01:17.57 ID:Pld9NjKLO
「ちょっと待ってて。委員長、ついて来て」
「何か考えがあるのだな? 無論、協力する」
僕は委員長を連れて寝室に入り、すぐ戻る。
「お待たせ。はい、これ」
「あァン? なんだァ、こりゃあ……?」
「それは我々の下着だ!」
脱ぎたての下着をあげると悪役貴族は一瞬ポカンとしたあと、まるで地の底を震わすように低い笑い声を喉の奥から鳴らし、吠えた。
「クックックッ……ハッハァー!てめェらはホント面白れェことを考えやがンなァ! おォいメイドどもォ! 酒を持ってこォい! 今日はとことん飲むぞォ! 最ッ高の気分だぜ!!」
目には目を。下着には下着を。貴族令嬢の下着には見向きもしなかった悪役貴族は僕らの下着を握りしめて、拳を突き上げ、大喜びではしゃいでいた。スースーする価値はある。
「見事な振る舞いだな、許嫁殿」
「ふん。このくらい朝飯前だよ」
獅子と鴉の僕らにかかれば、造作もないさ。
【僕は激怒して、悪役貴族に下着をあげる】
FIN
177 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 20:07:36.36 ID:j/w0avTiO
「おいで」
「あァン? なンのつもりだァ……てめェ」
あの下着事件で僕の独占欲が大きくなった。
僕と委員長だけでこの悪役貴族を独占する。
何されても平気なようにこいつを支配する。
僕は考えた。悪役貴族との接し方について。
いつも喜ぶのは僕だけ。それだと、ダメだ。
様々な方面からのアプローチを、脳内で山程シミュレーションしてみた。最終的に僕が導き出した結論はたまに甘やかすことだった。
「別に照れなくていいから……早くおいで」
「てめェ、いよいよイカレちまったかァ?」
ふん。とっくの昔に悪役貴族にイカレてる。
両手を広げて僕がおいでと繰り返すと悪役貴族は怪訝そうな顔で警戒している。野良犬並みの警戒心を解くために、僕は手を繋いだ。
「ほら、こっちにおいでってば」
「チッ……なんなんだっつーの」
繋いだ手を引き寄せると僕の胸に収まった。
178 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 20:08:39.57 ID:1NyLcZjLO
「よーしよーし……良い子、良い子」
「おォい……俺ァ、動物じゃねェぞ」
抱きしめて頭を撫でてあげる。僕の胸の中で悪役貴族はモゴモゴと文句を言う。口調とは裏腹に体温が上がっていて耳まで真っ赤だ。
思った通り、素直になれなくても大丈夫だ。
所有物のように扱うと支配欲は満たされた。
こちとら何度も夜泣きする悪役貴族をあやしているのだ。今更、照れる必要なんかない。
「これから僕がおいでって言ったら来てね」
「いちいちてめェの許可が必要なのかァ?」
「ぎゅっとして欲しい時はお願いしなさい」
「俺ァ、てめェのペットか何かなのかァ?」
まさしくこれは飼育というペットの扱いだ。
「良い子にしてたら、なんでもしてあげる」
「てめェに与えられるだけなンざ御免だァ」
まあ、そうだろう。僕には強い味方がいる。
179 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 20:09:35.25 ID:utrKMnQ3O
「はい。今度は委員長の番だよ」
「うむ。では、お預かりするぞ」
「あァ? 優等生まで何を……もがっ」
委員長とバトンタッチ。彼女の豊満な胸に顔を埋める悪役貴族にイラッとするけど、僕だけではこの駄犬は満足しない。僕の平らな胸では大して心地良くないからだ。僕に足りない巨乳成分を委員長から定期的に補給させる。不甲斐ない思いはすれども、それでも、他所の貴族令嬢なんかよりは100倍マシだ。
「ふふ。まるで授乳してる気分だ……」
「バカたれ。母乳なんか出ないでしょ」
アホなことを抜かす委員長を睨みながら、僕は両脇に双子メイドたちを侍らせる。お姉ちゃんメイドの脚を膝に乗せて白タイツに包まれた太ももを撫でながら、妹メイドちゃんの最近急成長している胸に、頬を擦りつける。
そうするとドロドロした気持ちが洗われる。
「協力してくれて助かるよ……ありがとね」
「はぅ……私も奥様に授乳したいです……」
「んっ……存分に、我々を愛でてください」
これこそが導き出した結論。桃源郷である。
180 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/23(土) 20:10:35.44 ID:V/xWR+hrO
「あ、どうやら委員長終わったみたいだね」
「はい。今宵はまた一段と……」
「あんなにお乱れになって……」
「君たち、委員長を浴室まで運んであげて」
「かしこまりました」
「仰せのままに」
事が終わった委員長をメイドたちに任せる。
「どうだった? 僕に管理されるのは」
「チッ……ムカつくが、悪くはねェな」
「これから僕がずっと飼ってあげるよ」
満足そうな悪役貴族に腕枕をさせて、囁く。
お前は僕のものだと。僕が全て支配すると。
それが悪役貴族のためになると、洗脳する。
「僕に支配されたらきっと幸せになれるよ」
「それでも俺ァてめェの想像を超えてやる」
「あ……なんでまだ元気なんだよバカたれ」
いま終わったばかりなのにもう回復してる。
こんなの想定外だ。結局、悪役貴族は僕の思い通りにはならない。その反抗的な眼差しにゾクゾクした。もっともっと、好きになる。
無意識に、小指の指輪を口元に引き寄せる。
僕はあの夜から悪役貴族に夢中で恋してる。
小指の指輪に口付ける僕を、奴は口説いた。
「てめェが俺を満たすつもりなら、俺もてめェを満たしてやるよ。それが夫婦だろォ?」
「ふん……余計なお世話だよ……でも、まあ」
「あァン? 今夜は自分で服を脱ぐのかァ?」
「僕を満たすのは悪役貴族の役目だからね」
「ハッハァー! 望みどォり満たしてやるよ」
終わったら今度は僕がメイドに運んで貰う。
【僕はついに、悪役貴族の洗脳を開始した】
FIN
181 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 06:31:41.48 ID:7mgzoxbVO
「よーしよーし……良い子、良い子」
「ケッ……動物扱いすンじゃねェよ」
この前に洗脳してから、悪役貴族と僕の間でアイコンタクトが交わされるようになった。
勉強の合間や読んでる本から顔を上げた際に悪役貴族は紫水晶の瞳でこちらを見つめる。
それが合図で、僕はおいでと手招きをする。
こちらに来て膝立ちになった奴を僕は抱く。
「ん? あァ……すまん。今、気づいた」
「気づくのが遅いんだよ……バカたれ」
逆に僕が悪役貴族を見つめて、その視線に気づいた奴がこちらを呼ぶこともある。その際には、かなり根気よく見つめる必要がある。
僕は悪態を吐きながら奴の腕の中に収まる。
「もう僕がいないと生きていけないね」
「ハッ! たしかにそうかも知れねェな」
こいつには僕が必要で、僕にはこいつが必要だった。最近、僕は変に焦って、早く結婚したいとか、早く子供が欲しいなどと考えるようになっている。僕はたぶん、この幸せが突然壊れてしまうことを恐れているのだろう。
落ち着かない僕は委員長に相談をしてみた。
182 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 06:32:21.31 ID:7mgzoxbVO
「委員長はさ、怖くなったりとかしない?」
「ん? もう少し具体的に言ってくれないか」
「たとえばある日突然、関係が壊れるとか」
「許嫁殿が彼を手放すとは思えないし彼もまた絶対に許嫁殿を手放すことはないだろう」
「いや、委員長だって、僕らには必要だよ」
「どうだろうな。私なんていなくても……」
「必要だよ。委員長が居てくれないと困る」
悪役貴族を失うことを恐れるのと同じく、委員長や双子メイドたちを失うのを僕は恐れている。この前の下着事件で僕は考えなしに学園を取り潰そうなんて口走った。その時に止めてくれたのは委員長だ。委員長は僕が誰でどんな立場であっても客観的に指摘してくれる貴重な存在だ。しかし、帝国からの留学生である委員長はいつ帰国してもおかしくない身の上だから余計に喪失するのが怖かった。
「嫌なことがあったら、いつでも言ってね」
「あっはっは! 心配はご無用だ! 双子メイドたちともすっかり打ち解けて、なにより正妻殿がこれほど気にかけてくれるのだから、何も不満はない。むしろ今、帝国に戻れと言われても戻りたくないくらい居心地がいいぞ」
委員長は着実に第二夫人としての立場を確立している。双子メイドちゃんたちも近頃は率先して委員長と関わろうとしてくれている。
183 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 06:33:09.61 ID:7mgzoxbVO
「しかし、やはりというか、君と婚約者の絆には敵わないと痛感するな。よくもまあ、言葉も交わさずに、意思疎通が出来るものだ」
「僕と悪役貴族は喋ると喧嘩しちゃうから」
「だから互いに目で語り合う術を身につけたというのなら、私としては羨ましい限りだ」
ここまで洗脳するのに僕はかなり頑張った。
「僕と委員長の間にだって絆はあるよ。チョーカーとピンキーリングもお揃いだしさ。髪型も一緒で、同じ奴のことが好きじゃんか」
「私はバイク事件の際に、許嫁殿には生涯忘れぬ恩が出来たからな。それも絆と言える」
「そんな昔のこと……もう忘れちゃったよ」
過去を水に流すも、委員長は首を振りつつ。
「どうか忘れてくれるな。あの一件があったからこそ、今の私はここに在るのだからな」
そう頑なに言われてしまっては仕方ないな。
あの件で僕が委員長を責めたのは、在り方についてであって、それはたしかに、忘れるべきではないのだろう。僕も含めてだけどさ。
184 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 06:35:08.93 ID:7mgzoxbVO
「もしも帝国に帰っても絶対連れ戻すから」
「あっはっはっは! 国際問題に発展するぞ」
構わない。きっと、宰相がなんとかするさ。
基本的に権力を使わない僕だけど、いざという時には思う存分使う。だって家族だから。
そのために僕が出来ることはなんでもする。
「今のところ帰国命令は出ていない。それに私には私の意思がある。心配せずともいい」
「さっきからすごく良い台詞なんだけどさ」
「ん? なんだ? どうかしたのか、許嫁殿?」
「目隠しされて縛られたままだと台無しなんだよね。最近どんどん過激になってない?」
「あっはっは! 許嫁殿には出来ないプレイをこなすのが第二夫人としての役目なのだ!」
目隠し緊縛委員長が、全裸で高笑いをする。
ガッカリだ。悪役貴族だってそんなにキツく縛ってないんだから自分でほどけるのにさ。
まあ、そんなところも委員長の良さだけど。
「ほんとに委員長が第二夫人で助かったよ」
「今度、許嫁殿も一緒に縛られてみたまえ」
「バカたれ。僕は普通に愛されたいんだよ」
このプレイをあの夜されていたら今はない。
【僕は時折、悪役貴族と視線で誘い合う】
FIN
185 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 20:01:33.01 ID:faZCfFGaO
「てめェは俺に何も訊いてこねェよなァ?」
「はあ? そんな薮から棒に、なんのこと?」
「双子メイド共のことだ。気になンだろ?」
とある深夜。皆が寝静まったあとに、いつも通り悪役貴族と反省会をして、僕がパジャマの前のボタンを留め直していると、ふいにそんなことを悪役貴族が口にした。身構える。
「突然なに? この子たちがどうかしたの?」
「こいつらの過去や経緯に興味ねェのか?」
「この子たちは大好きだけど、過去や経緯については、詮索したくないと思っているよ」
「ケッ。てめェはホント、良い女だよなァ」
この子たちが昔、奴隷市場で悪役貴族に買われたらしいということは1番最初に聞いた。
訳ありだということは、なんとなくわかる。
ただ根掘り葉掘り訊く気にはなれない。きっとそれはこの双子にとって辛い記憶だから。
「俺の視点からすると、単純な話だァ。ただ泣き喚いてる双子の奴隷を両方まとめて買い取った。ただそれだけのシンプルな話だァ」
「ふうん。きっとその双子たちが泣き喚いていた理由は、それぞれ別の客に買われそうになってお互いに離れ離れになりたくなかったからみたいな、そんなところじゃないの?」
「まるであの場を見てたかのようだなァ?」
見なくてもわかる。双子をまとめて買うような金持ちは悪役貴族しかいなかったのだ。この子たちが今こうして、同じところで働いているのは、彼女たちの願いだったのだろう。
186 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 20:04:07.85 ID:jIXHELGZO
「この国には奴隷が欠かせねェ。てめェなら当然、それがどうしてか知ってるよなァ?」
「誰に訊いてるのさ。僕の国の産業は農業が主体だからね。奴隷を働かせないと大陸の食糧庫としての生産力は確保出来ない。とはいえ一概に、必ずしも、この子たちがそんな農奴になっていたとは限らないけれどさ……」
なにせこの可愛らしさだ。農奴ではなく、愛玩用として買われていたかも知れない。もちろんそんなことは違法だが、可能性は高い。
努めて冷静に話したつもりだけど悪役貴族は見抜く。上機嫌でこちらの胸中を理解した。
「ハッハァー! やっぱりてめェも、そんなこの国のやり方が気に食わねェようだなァ?」
「当たり前じゃん……何が言いたいのさ?」
「俺ァいつか、この国の奴隷共を解放する」
それは悪役貴族の夢で絶対に叶えるという意思を感じた。この夜僕は、これまでのように委員長を通して断片的な情報を得るのではなく悪役貴族に直接、願望を打ち明けられた。
「じゃあ、僕は何をすればいいかを教えて」
「ハッ! てめェは何もすンな。俺の隣で見てろォ。てめェの国が変わっていく様をよォ」
思わず勇み足になった自分を恥じ入る。なんてはしたない。夫の前を先導しようとするなんて。悪役貴族に呆れられてしまったかも。
187 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 20:05:58.24 ID:eWMJuH9dO
「ごめんなさい……余計なこと言って」
「あァン? 俺に遠慮すンじゃねェよ」
妻になる者として、行き過ぎた発言に関してはいかに僕であろうと素直に謝った。反省して、落ち込んでいる僕を悪役貴族は抱き寄せて、気にするなと頭を撫でながらこう諭す。
「てめェは立場上、直接あれこれ国政に口出し出来ねェだろォからなァ。てめェがやりたくても出来ねェことは俺がやってやる。てめェが叶えたくても叶えられねェ願いは、全部俺が叶えてやる。だから、よォく見てろォ」
「うん……わかった。この目に焼き付ける」
立場上、僕が奴隷制度に口を挟むと、国政が乱れてしまう。僕の望みを叶えるために、僕に気に入られたい連中が手段を問わずに、めちゃくちゃなことをやり始めるだろう。その結果、国民が飢えて、飢饉が発生する未来は想像に難くなかった。悪役貴族なら安心だ。
「悪役貴族なら何も心配ない。信用してる」
「ハッ! 俺がめちゃくちゃなやり方で、この国を大混乱に陥れるとは思わねェのかァ?」
「思わない。だって悪役貴族はこの子たちに一度も手を出してない。悪役貴族はこの子たちに奴隷の烙印を押していない。そんな悪役貴族なら、きっと、より良い未来を作れる」
この子たちの身体は清くて、生まれたままだった。焼きゴテや刺青で奴隷の烙印を押されていない。メイドとして、保護されている。
そんな優しい婚約者を僕は信じて疑わない。
188 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/24(日) 20:07:20.25 ID:QrvQlpyhO
「僕こそ、知らず知らずのうちにこの子たちを愛玩用にしてしまっていないか、不安になるよ。その時は悪役貴族に注意して欲しい」
思い当たる節は多い。僕なりに愛情をこめて可愛がってるつもりだけど、捉えようによってはセクハラかもしれない。もしそうなら僕のほうがよっぽど悪役貴族になってしまう。
「余計な心配してンじゃねェよ。俺ァこいつらを買った時に、てめェらは将来、俺の妻に仕えることになると言った。そン時は俺よりも妻のことを優先しろってなァ。だが、メイドの仕事を辞めたけりゃいつでも辞めていいとも言っている。離れ離れにすることなく、別な仕事を斡旋してやるとも言った。それでもこいつらは今、ここに居て、てめェに仕えている。それはこいつらの意思だから、邪推すンな。てめェに侮辱されたら悲しむぞォ」
僕が直接根掘り葉掘り訊かなくて良かった。
そうしていたらきっと、彼女たちの意思を侮辱してしまっていただろう。ただ優しいだけではダメなのだ。彼女たちにとって、尊敬されるような奥様にならないと。燃えてきた。
「僕はこの子たちや悪役貴族に相応しい妻になりたい。いや、絶対になってみせるから」
「俺もてめェに相応しい旦那になるぜ」
「ふん。格好良すぎだよ……バカたれ」
今宵は僕から悪役貴族に誓いのキスをする。
【僕は夜半、悪役貴族に誓いのキスをする】
FIN
189 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 06:34:52.60 ID:kEo40iKLO
「何か僕に直して欲しいところはある?」
「奥様……? 突然なにを仰るんですか?」
「私たちは奥様に不満なんてありません」
その日の朝。朝食を食べ終えてからのこと。
単刀直入に僕は双子メイドたちに問いかけてみた。本当は自分でダメなところに気づいて直すべきなんだろうけど、あらかた自分でもダメなところはわかっているのに直せないのが僕なので、双子たちにビシッと言って貰えれば変われるんじゃないかと期待していた。
しかし、困惑する双子から、僕への不満を引き出すのはなかなかに骨が折れそうだった。
「些細なことでもいいんだ。僕はもっともっと、君たちに相応しい奥様になりたいんだ」
「そんな……奥様は素晴らしいお方ですし」
「むしろ変わって欲しくなんてありません」
ちょっと堅苦しいな。砕けた調子でいこう。
「えーでも僕、最近君たちにセクハラしすぎじゃない? すこし控えたほうがいいかな?」
「いいえ。そんなことは断じてありません」
「奥様に毎晩愛でられるために我々は日々、仕事に励んでいるのです。お忘れなきよう」
どうも美化されすぎてる。現実の僕は違う。
190 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 06:36:01.27 ID:kEo40iKLO
「でも僕も人間だからね。自分自身でさえ、嫌なことを数えたらキリがないくらいだよ」
「全てを含めて私たちはお慕いしています」
「奥様のメイドとして日々尊敬しています」
うーむ。押してダメなら、引いてみようか。
「僕に尊敬できるようなところあるかな?」
「もちろんです。まずそのお美しさだけで、恥ずかしながら我々はひと目惚れしました」
「奥様の作るお料理は味もさることながら、愛情がこもっていてとっても美味しいです」
「奥様は若様の妻としての在り方を、私どもに示してくださいました。あの日のことを思い出すと我々は日々やる気が漲ってきます」
「奥様は奴隷だった私たちを、憐れんだり」
「変に気を遣うことなく、接してくれます」
「そんな奥様のお優しさに我々は尊敬して」
「その振る舞いに我々は憧れを抱いてます」
となると、これまでの僕の立ち居振る舞いや双子たちへの接し方は完璧だったということになる。そんなことありえるのか? 僕は自分に対して、自信を持てない。理由は明白だ。
191 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 06:37:33.56 ID:OfPwuVEcO
「いや、僕なんて全然だよ。1番直したいのは素直になれないところなんだけど、悪役貴族はそのままでいいって言うんだ。君たちはその点についてどう思う? 意見を聞かせて」
「若様がそうお望みなら、焦ることはないかと存じます。きっと一緒に過ごせば、無理なく素直になれる瞬間が訪れることでしょう」
「無理してご自分を変えてしまえば若様はきっとお悲しみになります。ご自愛ください」
この子たちもありのままの僕でいろと言う。
悪役貴族を悲しませるのは、たしかに嫌だ。
当初の目的とは違い恋愛相談になってきた。
「君たちには常に素直でいられるんだけど、なかなか難しいね。僕は恋をするのが初めてだから、感情が上手く制御出来ないんだよ」
「そうしたところも、奥様の魅力なのです」
「若様もきっとそこがお気に入りな筈です」
鵜呑みにするのは危うい。何せ悪役貴族だ。
「そうかなぁ。あいつはちょっと趣味が変わってるから単に面白がってるだけかもよ?」
「よろしいではありませんか。若様の変わったご趣味に合う女性は奥様と、あとは恐らく、第二夫人様以外存在しないでしょうし」
「そのほうが余計な虫がつかずに済みます」
なるほど。考えかた次第かもね。納得した。
192 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 06:38:42.46 ID:ib/AtpApO
「ありがとう。君たちと話すと元気が出る」
「勿体なきお言葉。感謝感激、感無量です」
「もしよろしければご褒美をくださいませ」
「ちょっと! 対価を望むなんてやめなさい」
「お姉ちゃんは真面目すぎ。きっと大丈夫」
喧嘩を始めた双子たちを宥めて望みを訊く。
「もちろんいいとも。何が望みなんだい?」
「やったー! じゃあじゃあ、いま履いてる靴下とそれからお使いの歯ブラシを……むぐ」
「こら! お黙り! 奥様、大変失礼しました」
「むー! むー!」
靴下と歯ブラシは、中毒性があるので却下。
あと単に恥ずかしいし。妹メイドちゃんがこれ以上、道を踏み外さないようにしてあげるのも奥様の勤めだ。僕は委員長に目配せをして、もともと用意していた贈り物を手渡す。
「じゃあ僕らから君たちに、これを贈ろう」
「奥様、これは……?」
「いったい、なんですか……?」
双子の手のひら乗る機械。不思議な形状だ。
知識のない僕では説明の出来ない魔法の品なので、あとは委員長に詳しく解説して貰う。
193 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 06:40:41.32 ID:u+YLF5ezO
「これは許嫁殿に頼まれて、帝国から取り寄せた"トランシーバー"だ。太陽光で発電出来る充電器もセットで用意した。この国では携帯電話は使えないが、トランシーバーならば問題なく使える。無論、電波が届く距離には限りはあるがこの寮周辺くらいならば何かあった時にすぐさま連絡を取り合えるだろう」
「はえ? とらん、しーばー……?」
「これで、奥様方とご連絡を……?」
「論より証拠だ。許嫁殿、話しかけてみろ」
促されて、僕は教わった手順で通話をする。
《あー、あー、どう? 聞こえるかな?》
「ふあっ!? す、すごいです、これ!」
「奥様のお声が手元で……興奮します!」
お姉ちゃんメイドまで飛び上がって驚くとは思わなかったけど、妹メイドちゃんは相変わらずだな。反応が良くてとても嬉しくなる。
194 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 06:43:30.95 ID:u+YLF5ezO
「これからこれを使って言いたいことや、報告したいことがあったらいつでも言ってね」
「りょ、了解しました! あ、それなら……」
「早速ですが、お耳に入れたいことが……」
「この距離で? なんだい? 言ってごらん?」
なんだろうと機械に耳を傾けると囁かれた。
《《これからもずっとお慕いしています》》
それは、どんな贈り物よりも嬉しい真心で。
思わず泣きそうになった。なんて良い子たちなんだろう。僕には勿体ないくらい、素晴らしいメイドたちだ。溢れ落ちそうになる涙を堪えて、僕は毅然と、奥様として振る舞う。
感謝を労いに変え、より尊敬されるように。
「了解。これからも慕われるように頑張る」
《どうぞ、ありのままで魅了してください》
《第二夫人様にも、一層の忠誠と、尊敬を》
「うむ! 大義である! これからも頼むぞ!」
「僕より奥様らしいじゃんか……バカたれ」
やたら偉そうな委員長に破顔して、憧れた。
【僕は朝食後、改めて双子たちに感謝する】
FIN
195 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 23:10:02.74 ID:A/fXjWa9O
「こちら僕、こちら僕。そろそろ帰るよー」
《かしこまりました。お待ちしております》
この"トランシーバー"はとても便利だ。寮に着く前に事前に帰宅を知らせられるので僕が帰ると紅茶やお菓子が既に用意されている。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ、奥様」
「妹ちゃんは?」
《はいはーい、奥様。お風呂掃除中でーす》
「お疲れ様。いつもありがとね」
《いえいえー! ちゃちゃっと終わらせます》
身につけたトランシーバーから伸びるイヤホンによって直接耳に音声が伝わり、袖口に仕込んだマイクのおかげで仕事や作業に支障することなく意思疎通や確認が可能となった。
「すみません、奥様。妹がご無礼を……」
「いーよいーよ。なんかこの機械を使うと話しやすい気がするし。僕としても気楽だし」
メイドたちは僕の前だとやや緊張するのか、どうもかしこまってしまう。機械を通しての声だけのやり取りは僕としても楽しかった。
196 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 23:11:31.86 ID:A/fXjWa9O
「お姉ちゃんも、もう操作には慣れた?」
「はい、第二夫人様のおかげでなんとか。ですが私は奥様と直接お話しするほうが……」
「おかえりなさいませ奥様! お風呂掃除完了世界新記録です! 褒めて愛でてください!」
「あ! ちょっと!? お風呂掃除している間は、私と奥様の時間って決めたでしょ!?」
「もう終わったもんねー! 残念でしたー!」
妹ちゃんは今日も元気だな。あ、紅茶美味しい。茶葉変えたのかな。あーでも、ミルクとハチミツを垂らしたらもっと美味しいかも。
「奥様、その紅茶はお気に召しませんか?」
「ああ、いや。ミルクとハチミツをね……」
「わかりました! すぐにお持ちしますね!」
僕が自分で取って来ようかと腰を上げる前にびゅんっ!と妹ちゃんがキッチンへと向かうとすぐにトランシーバーから通信が入った。
《お姉ちゃん、ハチミツどこー?》
「この前買って戸棚に入れておいたでしょ」
《えー? 戸棚の何段目ー?》
「たしか3段目だったと思うけど……」
《あっ! あったあった! 持っていくねー》
このように仕事の面においても極めて実用的である。帝国のお屋敷の使用人や護衛官が、この機械を常用しているのも納得の性能だ。
197 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 23:13:30.75 ID:A/fXjWa9O
「まったく。この機械はとても便利ですが、どんどん妹が横着になるのではと不安です」
「便利なことはいいことだよ。わざわざ時間や手間暇をかけたい気持ちはわかるけど、君たちは忙しいし、僕との時間を作るためだと思って、お姉ちゃんにも活用して欲しいな」
「ああ、奥様……そのような隠されたご配慮にも気づかず、愚かなこの私をお赦し……」
《ちなみにお姉ちゃんは本日、紐パンです》
「よ、夜まで内緒って約束したでしょ!?」
紐パンかぁ。お姉ちゃんメイドがあれを穿いてるなんてえっちだなぁ。今度、僕も穿いてみようかな。よし、あいつに訊いてみるか。
「あーこちら僕。悪役貴族は紐パン好き?」
《帰って早々何言ってやがンだてめェ……》
「早く答えな。僕に紐パン穿いて欲しい?」
《そうだなァ……脱がせるのが楽しみだな》
「バカたれ。委員長に頼んどく。じゃあね」
メイドちゃんたちのついでに物欲しそうな顔をする悪役貴族にトランシーバーを恵んでやったら、奴は大はしゃぎで喜び、この頃は書斎にこもって予備機を分解して調べている。そんな機械オタクの悪役貴族に対しても気兼ねなく話せるのは便利だ。顔を突き合わせると喧嘩してしまう僕にとって非常に助かる。
さすが帝国の発明品だ。委員長によると、帝国ではこの機械が更に便利になったものを、国民のほとんどが日常で使ってるとのこと。
198 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 23:16:12.90 ID:A/fXjWa9O
「いやーほんと帝国ってすごいよね」
僕が帝国を誉めると委員長が得意げな顔で。
「それを言うなら"ぱない"だぞ、許嫁殿」
「へ? ぱない? なにそれ、帝国語?」
「半端ないの略だ。短縮して"ぱない"だ」
「へえー帝国は日常会話も先進的だね」
言葉すらも新しいなんて。若者である僕らの感受性とっては刺激になる。参考にしたい。
良い機会だし帝国の文化を勉強してみよう。
「他には変わった言い方みたいなのある?」
「うーん、そうだな……たとえば、エグすぎてレベルが違うことを"エグち"と言ったり、落ち着くことを"チル"と言ったり、ありがとうございますを"あざまる水産"とか言ってたりするかな。会話の中でその説があり得る場合は"説あるコアトル"で、見た目が良ければ"ビジュ完璧"とか。許嫁殿の"好きピ"などはまさにビジュ完璧なイケメンと言えるな」
なにそのワード集。めっちゃ気分アガるわ。
199 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/25(月) 23:18:16.70 ID:A/fXjWa9O
「共感した時はハイタッチでうぇーい!だ」
「う、うぇーい?」
「うむ! ほら、メイドたちも、うぇーい!」
「「うぇーいでございます」」
「ああ……尊いな! 私だけで独り占めするのは申し訳ないから、彼にも聞いて貰おう!」
「「「うぇーい!」」」
《うるッせェなァ……作業の邪魔だァ》
「この慈しみ、わかりみが深くないか?」
《わかるかァ! そンなもン!》
うは。なんか楽しい。委員長は勢いづいて。
「いいか? こうやって、Vサインを下に垂らせば、ほーら、"ギャルピース"の完成……」
《おォい、優等生ェ……地が出てンぞォ》
「君も書斎にこもってないで出てきたまえ」
《あとで行くから、ほどほどにしとけェ》
「あ、マズイそうだった。君たち、今のは忘れてくれ! 何事もやりすぎは禁物なのだ!」
「「「うぇーい!」」」
「ああ、私としたことが手遅れだった……」
帝国の先進的な日常会話は学園で流行った。
【僕は帰宅早々、ギャル語を覚えた】
FIN
200 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/26(火) 03:49:15.10 ID:TH6yVTMkO
「うぇーい! 悪役貴族、チルしてる?」
「苛つくからやめろォ……その喋り方」
「じゃあ、息してる?」
「当たり前だろォがァ」
悪役貴族はこの頃、狭い書斎にこもり、予備のトランシーバーを分解しては組み直す作業を繰り返してる。何やら各部の寸法を測ったり、色んな検査記録を取ったりしていて、難しそうな作業なのに、なんだか楽しそうだ。
「それ、予備なんだから壊しちゃダメだよ」
「あァ……わかってる」
「わかりみ深い?」
「あァ……深ェ深ェ」
作業してる時は集中しているのか生返事ばありで僕はつまらない。別に相手にされないから拗ねてるわけじゃない。ただちょっとくらい構うべきだ。だって僕はこいつのお嫁さんになるんだから。別にわがままではない。僕はおもむろに背後から抱きつき耳を噛んだ。
「あむ」
「うォい!? 耳を噛むんじゃねェよ!?」
「耳も息してるかなって思って」
「てめェ……酔っ払ってンのかァ?」
「んー……ちょっとだけね」
たまには僕だってお酒を飲むさ。別に構って貰えない寂しさを紛らわせるためじゃない。ちょっとだけなら健康にも良いんだからね。
201 :
◆dudxOFJ8aA
[saga]:2023/12/26(火) 03:50:30.65 ID:TH6yVTMkO
「悪役貴族のぶんもあるよ! 飲む?」
「あァ……この作業が終わってからなァ」
「むー……僕のお酒が飲めないのかよぉ」
「チッ……わァッたよ。ほら、酒を注げ」
「ふん……素直に僕に従ってればいいのさ」
悪役貴族がお気に入りの帝国の透明なお酒を小さいカップに注いであげた。晩酌をしてあげるなんて亭主思いの奥さんだよ僕は。
「ほら! ぐっといって! ぐーっと!」
「あァ……美味ェ。次だァもっと寄越せェ」
「まったく、仕方ないなぁ……もぉ」
おかわりを注いであげて、とりあえず満足。
ようやく作業をやめた悪役貴族の膝の上に滑り込んで、バラバラになったトランシーバーの部品を手に取りながら、質問をしてみた。
「これ分解してどうすんの?」
「内部の構造を理解してンだよ」
「なんのために理解するの?」
「解放した奴隷たちが仕事に困ンねェように、工業製品の工場が沢山必要だからなァ」
「ふうん。理解できた? 趣き深い?」
「全部は無理だ。だが、一部だけなら俺でもわかる。たとえば、この音が鳴る仕組みは人体における鼓膜や声帯と同じ仕組みで……」
悪役貴族が説明を始めるが、僕にはちんぷんかんだ。ただ楽しそうに語る悪役貴族を眺めていると、僕まで楽しくなる。いつもの不機嫌そうな表情ではなく、子供みたいに機械に夢中になっている悪役貴族はかわいかった。
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