僕は今宵、悪役貴族に恋をする

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/04(月) 22:58:12.31 ID:6Pd4JEq9O
「ケッ……一度抱いたくらいで恋人気取りかァ? てめェなンざ、俺とは釣り合わねェよ」
「だから私は努力している。成績だってあなたに次いで学年次席だし毎日お弁当だって作っている。あなたは食べてくれないけど」
「炭が詰まった弁当なンざ食えるかァ!!」
「口ではそう言いつつも、あなたはその炭を花壇に撒いて、私の好きなお花の肥料にしてくれる。そんな優しいあなたを、私は……」
「勘違いすンじゃねェ! あの花は俺の許嫁が好きな花なンだよ!! まさかその許嫁が同じ学園に通ってるとは思わなかったがなァ」
「なに? ま、まさか! 君が彼の許嫁……?」
「ヒトチガイデスヨー?」

もうなんなのこの状況。修羅場ってやつだろうか。別に束縛するつもりはないから好きに恋愛して、僕との婚約を解消して貰いたい。

「やれやれ。これでは私はとんだ道化だな。浮気相手は私のほうだったとは……覚悟は出来てる。後は煮るなり焼くなり好きに……」
「ちょっと待てェ……魔が差して抱いちまったのは俺の落ち度だ。すまん……悪かった」

どうでもいいっての。ほっといてくれない?

「彼もこう言ってることだし、私が言うのもなんだが……許してやってはくれないか?」
「は?」

なに言ってんのこの女。虫が良すぎない?

「君が怒るのも無理はない。彼はたしかに良い殿方だ。彼以上の傑物は存在しない。だからこそ、今回のような諍いが生じてしまう。だからどうだろう? 独り占めするのではなく分かち合うというのは? そうするべきだよ」
「いや、僕はそもそもこんな奴いらないよ」
「はぁ〜やれやれ。まったく素直じゃないな。君がそんなだから浮気されるんだぞ?」

あーイライラしてきた。殴りたい。心から。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/04(月) 23:03:00.69 ID:6Pd4JEq9O
「おい、お前ェ……そもそもなンで、そンな格好してこの学園に通ってんだァ?」

なんでも何も今みたいな状況に陥りたくないから。確かに僕の婚約者は顔立ちが整ってるので、こうなることは予想の範疇だったし。

「あァン? ほっぺた膨らんでンぞォ?」

触んなし。ツンツンすんなし。ほっとけし。

「チッ……安心しろォ。抱いたつっても最後までしてねェっての。当たり前だろォ?」
「知らないし。興味ないし。あっち行けし」
「やれやれ。本当に素直じゃないね、君は」

うるさいぞ、浮気女。どうせ土壇場になって怖くて腰が引けたんだろ。そもそもお前が僕の婚約者を誘惑したんじゃないのか? 絶対そうだ。そうに決まってる。でも残念でした。

「俺が愛してンのはお前だけだ。ンな当たり前のことなンざ、言わなくてもわかンだろ」
「……バカたれ」

知ってるし。言うなし。照れるし。アホめ。
くそ。だから嫌なんだ。どれだけ嫌っても。
どれだけ距離を置いても一言で落とされる。

「ンな格好してても、てめェはキレイだな」
「っ……もぉ」

最終的に。僕は今宵、悪役貴族に恋をする。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/04(月) 23:04:33.14 ID:6Pd4JEq9O
「あーあ……振られてしまったか。しかし、私は諦めないぞ。まだ我々は学生の身分。チャンスはいくらでもある……では、またな」

もう来んなし。てゆーか、震え声じゃない?
ちょっと泣いてるし。負けて悔しい癖にさ。
惨めすぎるから慈悲を与えたくなるじゃん。

「委員長。この先の学園生活で僕を守ってくれるなら……こいつの近くに居てもいいよ」

どのみちボディガードは必要だ。卒業するまでに孕まされたら困る。だから委員長が身代わりになってくれたらいい。卒業するまで。

「でも卒業したら……返してね」
「さて……約束は出来かねるな」

まあ、そういうものだろう。約束なんて当てにならない。破られるのが怖いから、僕はこれからも悪役貴族とは距離を置いて過ごす。


【僕は今宵、悪役貴族に恋をする】


FIN
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/04(月) 23:08:12.61 ID:TMc09Pebo
おつおつ
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2023/12/04(月) 23:29:45.14 ID:+n5Na7nz0
何度か続けたら
僕は今宵、悪役貴族にうんこをする になるんだろ
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/05(火) 00:07:54.13 ID:3Zrurdtq0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1699519196/
まだお前が立てたスレ残ってんだろ
クソスレ乱立すんな
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/05(火) 02:54:31.76 ID:32BOP2QsO
最初に依頼スレに書き込んだらまとめサイトじゃ
その後の内容はまとめて貰えないんやで
単発のスカトロスレばかり投げてたせいで
そんな基本も知らないんやなあ
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/05(火) 12:55:20.28 ID:Ge25W1THO
スカトロパイの実くんは暫くの間
毎日深夜にパクりまみれの薄くて痛い内容を投げ続けて自己満足に浸るんだろうねえ
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/05(火) 22:00:37.33 ID:OjqdnO+qO
「んぅ……あれ? どこいくの……?」
「あァン? なんだ、起きたのかァ。俺は毎朝走ってンだよ。お前はそのまま寝とけェ」
「うん……気をつけて。行ってらっしゃい」
「あァ……じゃあな」

朝、目が覚めると隣には誰もおらず室内を見渡すと僕の婚約者がジョギングに出かけるところだった。寝室を出る前に優しく頭を撫でてから額にキスしてくれた。幸せな気分だ。

「結婚したら毎朝こんな感じなのかな……」

そう独りごちて思わずにやける。そのまま二度寝しようとしてようやく僕は我に返った。
待て待て待て。なんだ今のは。夢か現実か?

「くかー……んふふ……まったく甘えん坊め」
「げ。委員長……なんでいるんだよ」

ベッドの反対側に何故か僕のクラスの委員長が寝ていた。いつもの凛々しさとはかけ離れた、だらしない笑みを浮かべている。どんな夢を見ているのやら。あ、おへそが出てる。

「ていうか、僕も何も着てないし……」

恐る恐る掛け布団の中を覗くとすっぽんぽんだった。何やってんだ僕は。最近こんな目覚めしかしていない。距離を置くって決めたのに。なんだかんだ婚約者の部屋に通ってる。

「これも全て、このポンコツ委員長が全然役に立たないせいだ。なんだよ、着痩せするとかさぁ。どこにそんな凶器隠してたんだよ」

委員長は意外と発育が豊かだった。鶏ガラみたいな僕とは雲泥の差だ。普段は高い位置で結んでいる黒髪もツヤツヤで魅力的だった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/05(火) 22:01:55.15 ID:OjqdnO+qO
「おはようごさいます、奥様」
「おはよ。まだ奥様じゃないけど」
「これは失礼しました、若奥様」

とりあえず服を着て寝室を出ると2人のメイドが出迎えた。この子たちは僕の婚約者が奴隷市場で仕入れてきた双子らしく判別が困難なほどによく似ている。てか誰が若奥様だ。

「お食事にしますか? お風呂にしますか?」
「若様からはもうしばらく寝かせるようにと言付かっておりますが……」
「もう目が覚めちゃったからさ。あいつって毎朝どのくらい走ってるの?」
「若様は1時間はお戻りになられません」
「ふーん。ちなみに朝食はもう出来てる?」
「申し訳ございません。すぐに取り掛かりますので、今しばらくお待ちくださいませ」
「ああ、いいよ。僕が作るから」
「ええっ!?」
「わ、若奥様が、直々に!?」

なんかめちゃくちゃ驚かれた。まあ、貴族の女の子は料理しないからね。まあ、この子たちの仕事を奪ってしまうから、本来ならば控えるべきなんだけど、たまにはいいだろう。

「君たちは寝坊助委員長を起こしてきて」
「かしこまりました」
「しかしあの方はどうも寝起きが悪く……」
「手荒でも構わないよ。ベッドから叩き落とせばいくら委員長でも起きるでしょ」
「仰せのままに」

恭しく手渡されたエプロンを巻いて、髪を結おうとして切ったことを思い出す。長かった髪が懐かしい。そう考えると、今の僕を許嫁だと認識できた婚約者はたいしたもんだな。

「ま、今回はそのご褒美ってことで」
「ふぎゃっ!?」

寝室から、寝起きの委員長の悲鳴が響いた。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/05(火) 22:02:53.82 ID:OjqdnO+qO
「おォい、ちょっとツラ貸せェ」

お手軽にサンドイッチを作ってから同じ寮内の自分の部屋へと帰宅して、男子用の学生服に着替えてから登校した僕は、お昼休みに、いかにも悪役貴族な婚約者に絡まれていた。

「なに? 学園内では絡んで来ないでよ」
「てめェ……いつの間に料理なンざ……」
「ああ、あれ? あれは委員長が作ったんだよ。本人からそう聞かなかった?」
「ケッ。あの優等生が嘘をつけるわけねェだろォが。ハッハァ! 人選を誤ったなァ?」

つくづく使えないポンコツ委員長め。だったらあの双子メイドが作ったことにしとけば良かっただろうか。しかし、あの2人の手料理なんて食べ慣れてるわけで結局はバレたか。

「そもそも俺ァ朝は食わねェんだよ」
「あっそ。余計なことして悪かったね」
「あァン? ちげェなァ。そうじゃねェ」

何が言いたいんだと訝しむと抱きしめられ。

「最ッ高ォに美味かった。ありがとなァ」
「……バカたれ」

こいつは本当に。悪役貴族の癖に軽々しくお礼を言うなよな。暫くはこいつの部屋に行くつもりはなかったのに。朝食なんて、結婚するまではお預けのつもりだったのに。もぉ。

「そォいやあの優等生の弁当も少しはマシになってたが……あれもてめェの仕業かァ?」
「しーらない」

婚約者に炭を食べさせ続けるのは阻止した。


【僕は黎明、悪役貴族に餌付けする】


FIN
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/06(水) 01:34:04.09 ID:Sjjltse60
>>8
自演バレバレやぞ
文章が意味不明すぎるでw
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/06(水) 17:06:20.21 ID:gJtpXjuyO
>>13
「まだ書きかけなのにこのスレが既に>>1によってHTML化依頼に出されてるから、これ以降の内容はまとめてもらえないよ?>>1馬鹿なの?」
って意味やで
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/06(水) 22:19:50.96 ID:cOn33GSDO
「許嫁殿、これで本当に大丈夫なんだな?」
「うん、大丈夫。あとは焼くだけだからさ」

その日、僕と委員長は休日ということもありお菓子作りに精を出していた。個人的に普通のクッキーよりもサブレのほうが好きなのでバター多めの焼き菓子である。良い匂いだ。

「よし! 5時間くらい焼けば完成だな!」
「5時間焼けば立派な炭の出来上がりだね」

この通り、委員長は壊滅的に料理が出来ない。なので生地はもちろん僕が作り、委員長は形を整えただけだ。大きさにやたら拘り、巨大なサブレ1枚だけが、委員長の造形だ。
ちなみに僕はなんとなく、鳩の形に作った。

「楽しみだな。喜ぶ顔が目に浮かぶ」
「どうだか」

あいつの喜ぶ顔なんて、どうせ邪悪に決まっているだろうけど、悪党特有の無駄に爽快感がある笑い声は嫌いではないかも知れない。

「奥様、お迎えにあがりました」
「だから奥様じゃないってば」
「これは失礼しました、若奥様」

ちょうどサブレが焼き上がった頃、悪役貴族の使いである双子メイドが現れた。何度言っても奥様扱いするメイドたちに連れられて、焼きたてのサブレを手土産として、あいつの部屋に向かうと、当然のように呼ばれてもない委員長がついてくる。たいしたもんだよ。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/06(水) 22:21:32.13 ID:cOn33GSDO
「若様、若奥様とお客様をお連れしました」
「おォ、来たか。まァ、テキトーに座れェ」

悪の巣窟に足を踏み入れると、悪役貴族は読書をしていたようで本から顔をあげて僕らを出迎えた。いや、出迎えてない。しかし、小難しそうな本に目を通している姿を見ると、怠惰なのか勤勉なのか判断がつかなかった。

「今日はえーと、なんだったか……」
「サブレ」
「そう! サブレを焼いてきたんだ!」
「ハッ! 焼き菓子ってことは、まさか5時間も焼いて炭化してねェだろォなァ?」
「ギクッ! あ、はは……なんのことやら」

ご明察。だけど大丈夫。時間指定で焼いた。

「おォい、焼き菓子に合う紅茶を出せェ」
「かしこまりました」
「すぐにお出しします」

双子メイドがテキパキと上等な茶葉を取り出して紅茶を淹れる。すっきりとした香りと甘いバターの香りだけで、もう美味しそうだ。

「ほら、委員長」
「ほ、本当に私でいいのか? きっと許嫁殿がやってあげたほうが喜ぶと思うが……」
「いいから、やって」

サブレ作りを教える代わりに、委員長には司令を与えていた。内容は簡単で単純。手作りサブレを、僕の婚約者にあーんする役目だ。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/06(水) 22:22:40.69 ID:cOn33GSDO
「あ、あーん」
「あァン? 何のつもりだァ?」
「きゅ、急に振り向くな! あっ……」

意を決して、あーんを敢行した委員長だったが前のめりすぎたのか、振り向いた悪役貴族とサブレが接触。無駄にデカいサブレが割れてしまった。本当にポンコツ委員長で困る。

「あぅ……せっかく上手に出来たのに……」
「拾えェ」
「え? でも、床に落ちたぞ……?」
「いいからさっさと拾えェ!!」

言われるがまま、委員長が床に落ちたサブレを拾い集めると、そのひと欠片をつまんで口に放り込んだ。そのまま咀嚼して催促する。

「次だァ。もっとよこせェ!」
「あ、うん……えへへ、美味しいか?」
「あァ……そうだなァ。ハッハァー! てめェが作ったとは思えないくらい美味いなァ」

何もかもお見通しみたいな顔をして。思った通りの邪悪な笑みを浮かべて。僕の婚約者は委員長にあーんされてご満悦だ。むかつく。

「ぐぬぬぬ……!」
「お、奥様……?」
「お顔色が優れませんが……?」

僕の計画では委員長があーんするも婚約者は食べず、仕方なく僕があーんしてやる予定だった。サブレが割れるアクシデントがあったとはいえ、他の女の手から餌を貰うなんて言語道断。これは完全に浮気だ。だ、駄犬め。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/06(水) 22:26:00.65 ID:cOn33GSDO
「メイドちゃんたち、あーん」
「へ? お、奥様……?」
「わ、私たちにくださるのですか……?」
「僕はそもそも君たちのために作ったんだ」

待ても出来ない駄犬にお仕置きするためにメイドにご褒美を与える。この子たちはなんだかんだ甲斐甲斐しく僕の世話をしてくれる。
この部屋に来ると、まるで僕が主人のよう。

「ほら、遠慮しないで僕の隣にお座り」
「は、はあ……では、失礼します」
「お、仰せのままに」

素直にソファに座ったメイドたちにサブレを差し出して交互にあーんしてあげた。口が渇くだろうからついでに紅茶も注いであげる。

「美味しい?」
「はい! とっても!」
「でも、これは若様のために奥様が……」
「いーのいーの。僕らだけで食べちゃおう」

あんな駄犬は、床に落ちたのだけで充分だ。

「やれやれ。だから最初から素直に自分で食べさせてあげたら良かったのに……」
「なんか言った? 浮気女」
「そもそも許嫁殿が素直になれば……!」
「ほっとけェ、もっと近くに寄れェ」
「わわっ!」

口答えしてきた委員長を睨みつけると、駄犬が肩を引き寄せて膝に座らせた。そのまま抱き寄せて、邪悪に嘲る。あったまにきたぞ。

「メイドちゃん! もっとそばに寄って!」
「は、はい!」
「こ、こうですか?」
「もっと! 僕に抱きついて!」
「お、奥様……あったかい」
「いい香りがします……」

へへーん。こっちは両手に花だ。参ったか!
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/06(水) 22:30:13.31 ID:cOn33GSDO
「チッ……掴まってろォ、河岸変えンぞォ」
「へ? うわっ! ど、どこに行くんだ!?」
「寝室に決まってンだろォがァ」

あいつめ。分が悪いと察したか、尻尾を巻いて逃げようとしてるぞ。しかも委員長をお姫様抱っこして、最後まで僕を挑発してきた。

「ハッ! てめェはそこでメイドと戯れてろ」

バタンと扉が閉まる。最低の駄犬だ。屑め。

「お、奥様……?」
「謝って許して頂いたほうが……」
「僕は絶対に謝らない」

そもそもあいつが他の女から食べ物を恵んで貰った時点で悪い。なのにアクシデントのせいで美談みたくなってるのがおかしいんだ。

「寝室に突撃する」
「ふぇええ!?」
「お、奥様、お考え直されたほうが……」
「君たちも連れていくよ」
「わ、私たちもですか!?」
「たしかに、若様よりいつ何時も奥様を最優先するように仰せ使っておりますが……」

余計なお世話だ。でも、嬉しいのが悔しい。

「じゃあ、僕の決定は絶対だね」
「はい……どこまでも」
「いつまでも、お供いたします」
「ならば、悪役貴族の寝室にいざゆかん!」

ドアを開けると委員長が全裸で縛られてた。
現行犯であり御用だ。悪役貴族を退治する。
緊縛委員長を押し倒している浮気者の背中にのしかかり、メイドちゃんたちが委員長をベッドの上から排除して、婚約者の首を絞め、メイドちゃんたちに必死に止められて、僕は泣き喚き、そこから先はよく覚えていない。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/06(水) 22:32:18.53 ID:cOn33GSDO
「んぅ……おはよ」
「おォ……起きたかァ。ハッハァ! てめェはこの俺よりも悪役貴族みてェだなァ!」

朝起きると僕は両脇に全裸の双子メイドたちを抱いていた。わざわざ確認するまでもなく僕も全裸である。よもや悪役貴族に悪役貴族呼ばわりされる日が来ようとは。世も末だ。

「肩とか首、ごめんね。痛くない……?」
「あァン? こンなのかすり傷だっての」

日課のジョギングに出かけるために着替えている婚約者の肩や首筋にくっきりと歯形がついている。言うまでもなく僕の歯形だった。

「この子たち、いい子だね……」
「どォやら気に入ったようだなァ」

両脇のメイドちゃんたちはすやすや寝てる。
結構無茶をした気がするけど最後までついてきてくれた。2人とも僕より発育が良いな。

「大事にしてあげなよ?」
「あァン?」

婚約者は何言ってんだこいつみたいな顔で。

「俺のもンはいずれ全て、てめェのもンになる。だからてめェが大事にしてやれ」
「うん……わかった」

朝だからだろうか。僕は素直に頷き従った。

「ハッ……やけに素直じゃねェか」

揶揄うようにくしゃくしゃと僕の短い髪を撫でる婚約者がたまらなく愛おしい。思わず袖を通したジャージの裾を引き、引き寄せて。

「ん……いってらっしゃい」
「ハッハァ! マラソンでも走れそうだなァ」

僕のキスには、42.195キロのパワーがある。


【僕は昨夜、悪役貴族を退治した】


FIN
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/07(木) 00:17:13.04 ID:jzxXRj0z0
最後ひっどいなあ
キロメートルとキログラムの区別もついていない池沼なん?
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/07(木) 22:57:28.73 ID:bg1X56IiO
「ねえ、双子ちゃんたち、なんかあった?」
「だいたいてめェのせいだァ」

その日、双子メイドちゃんたちの様子がおかしかった。いつもは肩を寄せ合うくらいにくっついるのに、この日は距離が離れていた。

「僕のせいってどういうこと?」
「ケンカしたんだとよォ」
「ケンカ? なんで?」
「なンでも、てめェがどっちが好きかで揉めたらしいぜ。ハッ! モテモテじゃねェか」

どっちが好きって、どっちも好きだけど。でもまあ、モテることは素直に嬉しい。ただケンカはよくないから早く仲直りするべきだ。

「2人とも、ちょっとおいで」
「はい、奥様」
「なんでしょう、奥様」

機敏に僕の前にきたメイドたち。近頃はどっちが姉でどっちが妹かわかるようになった。
ひとまずはお姉ちゃんのほうから聴取する。

「妹ちゃんと何かあったの?」
「妹は奥様に甘えすぎなんです」

たしかに妹ちゃんのほうが甘え上手かもしれない。お姉ちゃんのほうは控えめというか、常日頃から我慢しているのだろう。手招く。

「お姉ちゃんも甘えていいんだよ?」
「ですが、私どもはあくまでメイドで……」
「建前なんかどうでもいいよ。君はきっと、お姉さんという立場だから妹ちゃんのことを思って遠慮してるんでしょ? 優しいもんね」

お姉ちゃんのほうはしっかりしている。立場や建前を重視しているのだろう。とはいえ、僕はやっぱり、平等に接するべきだと思う。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/07(木) 22:58:41.65 ID:bg1X56IiO
「僕に出来ることならなんでも言ってよ」
「なんでも……ですか」
「うん。遠慮はいらないよ」

するとお姉ちゃんはチラチラ妹を見ながら。

「ぎゅっと……抱きしめて欲しいです」
「お易い御用だよ。はい、ぎゅー」
「はぅ……ありがとうございます」

ぎゅっと抱きしめると、身体が熱かった。

「妹ちゃんもぎゅーする?」
「私はほっぺに口付けを……」
「ちょっと! いい加減にしなさい!」
「そうやって我慢ばかりして。お姉ちゃんだって奥様にちゅーして欲しい癖に」
「私は、たまに……気が向いた時にでも……」

素直な妹ちゃんと素直になれないお姉ちゃん。なんて可愛いんだろうか。でもケンカは良くない。だから僕は2人にキスをしよう。

「はい、これで仲直り」
「奥様……幸せです」
「お姉ちゃんを甘やかして頂き嬉しいです」
「僕のほうこそ懐いてくれてありがとね。君たちと一緒にいられてとても幸せ……ん?」

これにて一件落着と思いきや、ふと隣を見ると委員長と婚約者が口付けを交わしていた。
静かだなと思ったら、こいつら浮気してた。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/07(木) 22:59:45.70 ID:NqBdHAY3O
「なにやってんの?」
「あァン? 見せもンじゃねェぞォ」
「許嫁殿の代わりにお勤めを果たしてる」
「へー。ふーん。まあいいけどさ」

この浮気者どもは完全に開き直っていた。
僕の隣でよくもまあそんな真似が出来る。
とはいえ、僕は大人なので気にしないぞ。

「あっ……そんな、服に手を入れたら……」
「どうせ脱がすンだから気にすんなァ」

馬鹿みたい。そんなんで僕は乗せられない。

「ひぅっ……お、奥様……手が……」
「もっとしてください……」

ああ、悪い手だ。恥ずかしがり屋のお姉ちゃんと積極的な妹ちゃんを無意識に弄ってしまった。いけないな。悪役貴族になっちゃう。

「先にベッドを借りるよ」
「好きにしろォ。俺らは先に風呂だァ」

婚約者を睨みつけて、ふんっと鼻を鳴らす。
すると奴はハッと鼻で笑ってきた。本当にむかつく。でも、何故かムラムラする不思議。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/07(木) 23:00:49.02 ID:FiPLuEiwO
「おォい、寝ちまったかァ……?」
「……まだ起きてるよ」
「寝れねェんだろォ?」
「そっちこそ」

色々と終えたあとに、僕らは反省会をする。
みんな寝静まり、ようやく2人きりだから。
溜まりに溜まった鬱憤を、発散する時間だ。

「で? 委員長のキス、そんなに良かった?」
「てめェとのほうが格別に決まってンだろ」
「……したいならしてあげる」
「ハッ……こっちの台詞だァ」

ずっとしたかった。いつまでもしてられる。
僕はどうしても素直になれない。でもだからこそ、このひと時が格別に感じるのだろう。

「んっ……はぁっ……僕が支配したい」
「ハッハァ! てめェはそれだからたまらねェ……お前だけが、俺の理想的な許嫁だァ」
「あんっ……はあはあ……バカたれ」

いつの日か悪役貴族を犬みたいに従えたい。


【僕は深夜、悪役貴族とキスに耽る】


FIN
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/08(金) 23:08:09.03 ID:x5BJorTLO
「ただいまー」
「おかえりなさいませ、奥様」
「お食事はもう少々お待ちください」

この頃はわざわざ自分の部屋を経由するのが面倒で悪役貴族の部屋に直帰している。途中、何人かの下級生の女の子に告白された。
なのでその件でマウントを取ろうとしたら。

「おォ……帰ったかァ」
「ん? なんでお風呂上がりなの?」

婚約者は、濡れた髪をタオルで拭いていた。

「ハッ! てめェの帰りが遅いからだァ」
「あ、そう……そういうことね」
「お、お待ちください奥様!」
「寝室にはまだお入りにならないほうが!」

メイドたちの制止を振り切って寝室の扉を開けると全裸の委員長が疲れ果てて寝ていた。
まあ、予想通りさ。万年発情期の駄犬めぇ。

「浮気女の委員長は晩御飯抜きで」
「かしこまりました」
「仰せのままに」

メイドたちに指示を出して、ふんと鼻を鳴らして扉を閉めようとした直前。"ソレ"に目が留まった。委員長の証。純白の制服である。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/08(金) 23:09:53.09 ID:UREF9f0sO
「じゃーん! どう?」
「あァン? って、お前ェ、その格好……」

久しぶりの女子の制服。足がスースーする。

「かわいい?」
「チッ……言わなくてもわかンだろォがァ」

ほう。言わないつもりか。なら考えがある。

「よいしょっと」
「っ……てめェ、なンのつもりだァ?」

婚約者の膝に乗り、胸に片耳を当ててみる。

「心臓の音を聞いてるの」
「だァからァ、それになンの意味が」
「シッ……お黙り。静かにして」

ドクンドクンがドクドクと速くなってきた。

「……気がすんだかァ?」
「ん……もうちょっとだけ」
「俺ァ気が短けェんだよ」

顎を掴まれてキスされそうになったけれど。

「はい、ストップ」
「もがっ!?」

手のひらで婚約者の口を押さえて、囁いた。

「残念でした……バ・カ・た・れ」
「てめェ……俺よりも性格悪いよなァ」

はーすっきりした。悪役貴族へのお仕置きを終えて膝から降りる。純白の制服の袖口を嗅ぐと、当然ながら委員長臭かった。すると。

「奥様、お風呂の準備は出来ております」
「どうか早急にお召し替えくださいませ」
「ありがと。さすが僕のメイドちゃんたち」
「はぅ……お褒めの言葉、恐悦至極です」
「奥様のために、これからも尽くします」

ポイポイっと下着まで脱ぎ捨て、チラッと婚約者を振り向くと口元を押さえて赤面していたので気分が良い。さ、お風呂お風呂っと。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/08(金) 23:17:59.23 ID:E7xQmPjmO
「勝手に私の服を持ちだすな、許嫁殿」
「勝手に僕の婚約者に抱かれるな、浮気女」

広い湯船に浸かりリラックスしていると、目を覚ました委員長が殴り込んできた。当然ながら、浴室なので全裸である。デ、デカい。

「今日は許嫁殿の帰りが遅いのが悪い」
「満足そうに寝てた癖に……」
「どこかの許嫁殿のせいで服がなく、寝起きは最悪だったが……やれやれ。まあいいさ、水に流してやろう」
「うわっ……ちょっと近くにこないでよ」
「ふぅ〜極楽極楽」

掛け湯をしてから湯船に浸かる委員長は、やたら近い。スベスベの肌が肩に触れる距離。
お団子にまとめた黒髪。うなじがやらしい。

「委員長……えっちすぎ」
「許嫁殿だって、なかなかではないか」

は? どこがだよ。僕なんてぺったんこだぞ。

「許嫁殿は知らないのだ」
「知らないって、何がさ」
「彼が私を抱く時は毎回許嫁殿の名を囁く」
「げほっ……は、はあ!? なんだよそれ!」
「それがまた堪らんのだ。ゾクゾクする」

ちょっとでも気の毒に思った僕が馬鹿だった。委員長はある意味すごい。えっちな委員長を求めてやまない男どもは大勢居るだろうけど当の委員長が求める背徳感はきっとあの悪役貴族にしか与えられない。数奇な運命。

「まあ……浮気相手が委員長で良かったよ」
「うむ! 私に感謝するがいい! あっはっは」
「なに笑ってんのさ……バカたれ」

その清々しい愚かさに免じ夕食を与えよう。


【僕は夕刻、浮気相手と湯船に浸かる】


FIN
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/09(土) 23:29:43.63 ID:3NrJFa0PO
「どうしたの、委員長? 具合悪いの?」

ある日のこと。今日は期末テストの答案が返ってきてクラスメイトは一喜一憂していた。
そんな中で、委員長は机に突っ伏している。

「うう……テストの順位が……」
「どれどれ……おお! また2番じゃん」
「母上に叱られる……どうしよう」

委員長はこんなんでも優秀だ。順位は2位。
ちなみに1位は入学してからずっと僕の婚約者である。こいつらいつ勉強してんだろう。

「2番じゃだめなの?」
「私の母上は厳しくてな……1番になれねーならさっさと国に帰ってこい!って怒るんだ」

委員長のお母さんかぁ。見ての通り、黒髪の委員長は外国からの留学生だ。東の帝国の人たちは黒髪が特徴である。強制送還は困る。

「お母様に僕からお願いしてあげようか?」
「それは本当か、許嫁殿!?」
「うん。委員長がいなくなったら大変だし」

まず間違いなく僕は秒で妊娠するだろう。それに委員長なしだとあいつとの距離感が掴み難い。そうした意味では良い緩衝材である。

「ならば早速、スマホでメッセージを……」
「すまほ?」
「ああ、この国では圏外だったな……では手紙にしよう。やはり持つべきものは友だな」
「別に、友達じゃないし……ま、いいけど」

とか言いつつも満更ではない。というかどのみち、手紙には友達を転校させないでくださいと書くほかないのだ。仕方ないなーもぉ。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/09(土) 23:31:22.89 ID:gS6GJueMO
「ただいまー」
「おかえりなさいませ、奥様」
「たのもー! 今日も邪魔するぞ!」
「若様がお休みなのでお静かに願います」

ポストにお手紙を投函して悪役貴族の巣窟へと帰った。道中、何故か委員長が手を繋いできて恥ずかしかった。僕がやめてって言っても仲良しは手を繋ぐものだとか言って離してくれないし。カップルだと思われるじゃん。

「あいつ、寝てるの?」
「はい。恐らくは勉強疲れかと」
「ふむ。それなら許嫁殿、私に妙案がある」
「お耳を貸さないほうがよろしいかと」
「このメイド……失礼すぎないか?」
「聞くだけ聞いてあげる。妙案ってなに?」

僕の忠実なるメイドたちに冷たくあしらわれて涙目の委員長の妙案とやらを聞くことに。
どうせろくでもない妙案だろうと思いきや。

「許嫁殿、これは素直になるチャンスだぞ」
「チャンスって何が?」
「彼が寝てる時なら素直になれるだろう?」

ふむ。なるほど、確かに……って、いやいや。

「そもそも、なんで僕がそんなことを……」
「彼は君のために1番を取り続けてるんだ」
「へ? なにそれ、どゆこと?」
「それが婚約の条件らしいぞ」
「そんなの初耳。君たちは知ってた?」
「はい……実はその通りでございます」
「若様からは口止めされておりました」

メイドたちに確認すると事実らしい。僕は別に1番じゃなくたっていいのに。でも僕のために頑張ってるなら、ご褒美をあげないと。

「でも、いきなり素直にって言ったって」
「なに、思いの丈をそのまま言えばいい」
「簡単に言うけどさ……まあ、頑張るよ」
「奥様、ご武運を」
「美味しいお食事をご用意しておきます」

僕はドキドキしながら寝室へと踏み入れた。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/09(土) 23:32:43.97 ID:rA0Wf9bbO
「おーい……寝てる?」

返事はない。僕の婚約者は学生服のまま、ベッドの脇のテーブルに突っ伏して寝ていた。
肩にかけられたタオルケットはメイドちゃんたちが用意したのだろう。そっと寝顔を覗き込むと、改めて、端正な顔立ちだと思った。
普段のような邪悪な笑みも、鋭い眼光も鳴りを潜めて、僕の婚約者は若干幼くも見えた。

「えーと……とりあえず、テストお疲れ様」

返事はない。これでいいのか。もっと何か。

「あとは……その……あ、ありがとう」

違う。僕が言いたいのは、そうじゃなくて。

「……好き」

思えば初めて言ったかも。込み上げてくる。

「僕はその、なかなか素直になれなくて……この学園に入学したのも、会ったこともない婚約者がどんな人か気になって……そしたらめちゃくちゃ怖そうで、女の子にモテモテで。だから僕は、結婚する自信がさ……すっかりなくなっちゃって。それでこんな格好して、陰から見てるしかなくて……ごめんね」

そんなつもりはなかったのに。言葉と共に涙も止まらなかった。寝てる人に言い訳したって、謝ったって意味ないのに。だけど僕は。

「ぐすっ……だけど僕は……素直になれない」
「ハッ……別に良いンじゃねェのかァ?」
「へ? は、はあっ!? お、起きてたの!?」

むくりと身を起こした悪役貴族。でもいつものように嘲笑うでもなく優しい眼差しで見つめてくる。そっと涙を拭う手つきも優しい。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/09(土) 23:34:07.49 ID:M/wh8oxsO
「てめェが素直だろうが、素直じゃなかろうが……俺ァ、てめェを愛してる。だから、そンなどうでもいいことで泣くンじゃねェよ」

ずるい。卑怯だ。むかつく。全然上手くいかない。何がチャンスだ。ポンコツ委員長め。
嫌だ。優しくすんな。素直になりたいのに素直になれない自分が、嫌いでしょうがない。

「僕を……憐れまないで」
「ハッ! ちげェなァ。欲情してるだけだァ」
「……バカたれ」

本当に最低だ。僕はこんなに優しくされて、こんなことしか言えない。同情や憐憫を誘う涙は、枯れ果てることがない。悔しかった。

「……キスさせてよ」
「泣いてる女を抱くのは趣味じゃねェ。まずは飯が先だァ。その前に、顔ォ洗ってこい」
「……いじわる」
「ハッハァ! なンせ俺ァ悪役貴族だからな」

僕の婚約者は甘く優しい素敵な悪役貴族だ。


【僕は夕食後、悪役貴族にキスをせがむ】


FIN
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 00:06:29.49 ID:yjPkX56vO
ただただキモい中年童貞の妄想
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 11:09:29.13 ID:z8teA88v0
ハルヒあたりで時間が止まってるんだろうな
それは若いという意味ではない
後戻りもできないが先に進む勇気もないという意味
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:16:38.55 ID:qL53ywGWO
「甘やかされてるだけじゃダメになる!」

僕の婚約者はとっても優しい。たぶん素直に甘えていれば無限に幸せを供給してくれるのだろう。だけどそれじゃあ幸せを見失ってしまう。そもそもあの悪役貴族は浮気者だ。昨夜だって委員長を抱いていた。浮気なんて大炎上の源である。人が背負う原罪と言っても過言ではない。だけど僕は寛大に、その痴態を見ながらメイドちゃんたちに慰められ……いや、そんなことよりも幸せは自分で掴む。

「奥様、甘いジャムはお嫌いでしたか?」
「バターやマーガリンもご用意してますが」
「僕は甘くてほろ苦いマーマレードが好きだから……って、そうじゃない。こほん。君たち何か欲しいものはある? 日頃のお礼がしたいんだ」

とある休日。朝食として焼いてくれたパンを食べながら、毎日甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるメイドたちにそう訊ねるも首を振り。

「奥様からは多くのものを頂いております」
「奥様と暮らすようになってから、私たちは毎日が楽しいですし、若様もお喜びです」

欲のない子たちだ。でも僕の気が済まない。

「委員長。城下行きの馬車を手配できる?」
「許嫁殿、まさか城下に"お出まし"するつもりか? もしもバレたら大騒ぎになるぞ」

あいつの許嫁だとバレてからも委員長は態度が変わらなかったからワンチャン僕の正体に気づいてないかと思ったけど違ったらしい。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:18:13.90 ID:QYRCb3gWO
「なんだ、知ってたの?」
「当然だ。そこで、私に妙案がある」
「また妙案?」
「ああ。さっと行って、ぱっと帰ればいい」

言いたいことはわかるけど、それが難しい。

「馬車でも行って帰るまでに夜になるよ」
「私が本国から乗ってきたバイクを使う」
「へーバイクかぁ……乗ってみたいかも」
「いけません、奥様」
「あまりに危険すぎます」

この国では、ほとんど見かけない乗り物だ。
お城にある何台かのクルマやバイクは全て、委員長の故郷である東の帝国からの贈り物である。あれ一度は乗ってみたかったんだよ。

「心配しなくても大丈夫だ。荷物を載せるための側車付きだから落っことすことはない」
「だったら安心だね。じゃあ、すぐ行こう」
「お、お待ちください、奥様」
「何かあったら若様になんと言えば……」
「へーきへーき。僕には秘策があるからさ」

というわけで、あいつがジョギングから帰ってくる前に、僕は委員長が駆るバイクの側車に飛び乗って、城下へと向けて走り出した。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:19:25.85 ID:QddK7AVGO
「うわぁー! すごーい! はやーい!」
「きちんと舗装されていたらもっと飛ばせるんだがな。もう少し走れば道もマシになる」

バイクは最高だった。もっと流行ればいい。

「僕の国でも馬車なんかやめて、バイクやクルマで移動する人が増えないかなぁ」
「彼はそんな未来を目指しているようだぞ」

言われてみればたしかにあいつが読んでる本は工業系の難しい内容のものが多い。時折、こうしたバイクやクルマの雑誌も読んでる。

「あいつの実家、帝国のすぐ近くだからね」
「聡明な人だからな。彼が跡を継げば帝国との交易も盛んとなり著しく発展するだろう」

そんな未来を語っていると城下へと着いた。

「うむ! いつ見ても立派なお城だな!」
「まあね。周りは畑ばっかだけど……ん?」

天高く聳えるお城の天守閣を眺めていると、ドンドン!と花火が上がった。バレてんな。
何が妙案だよ。そもそも僕よりバイクのほうが目立ってんじゃんか。ポンコツ委員長め。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:20:25.85 ID:mKiBUXrCO
「委員長、あのお店にいきたい。城の連中が来る前にさっさとお買い物を済ませないと」
「了解した。裏口に停めるからな。店内に入るまで、ヘルメットは脱がないほうがいい」
「うん。わかった」

まあ、ヘルメットなんてなくても今の僕の短い髪で、正体に気づく人なんてほとんどいないだろうけど。学園でも全然バレてないし。
とはいえ、このお店の主人にはわかる筈だ。
ヘルメットのまま店内に入ると、驚かれた。

「ひぃっ! ご、強盗!?」
「む。失礼な。僕の顔を忘れたの?」
「許嫁殿、きっとヘルメットのせいだ」
「ああ、そっか。ごめんね、すぐ取るよ」
「へ? ま、まさか、そのお声は……?」

ヘルメットを脱ぐ。すると真っ青になった。

「こ、これは大変失礼いたしました! まさか店に直々に"お出まし"になられるとは……」
「今日はお忍びなんだ。騒ぎになると困る」
「はあ、なるほど……かしこまりました。それではお連れ様とご一緒に店の奥へどうぞ」
「うむ! くるしゅうないぞ!」

無駄に偉そうな委員長と店の奥に通された。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:22:12.27 ID:P0TBYeTAO
「よし、買い物終わり。さっさと帰ろう」
「本当に支払いは良かったのか?」
「払うって言っても受け取ってくれないんだから仕方ないよ。なんか僕がこのお店のアクセサリーをつけてるだけで宣伝になるんだってさ。それじゃあ、帰りも運転よろしくね」
「うむ! 安全運転でかっ飛ばすぞ!」

運転のお礼に委員長にはチョーカーを贈呈した。デザインはベルトが黒のレザーで正面のリングにトルマリンと真珠のペンダントトップが垂れ下がっている。とってもかわいいけど、何故か僕までお揃いのものを用意され、委員長はこれで一緒に調教プレイが出来るとはしゃいでいた。いや、しないから絶対に。

「双子ちゃんたちも、喜んでくれるかな?」
「もちろん。許嫁殿が選んだのだからな!」

無意味に自信満々な委員長。僕もたまにそういうところがある。きっと喜んでくれる筈。
真珠とトルマリンの石言葉は、円満と寛大。

「委員長はさ、僕に嫉妬したりしないの?」
「当然するがそもそも浮気者は私だからな。それに母上も妾として私を産んでいるので、その性癖が受け継がれたのだと納得してる」
「性癖って、受け継がれるものなんだ……」
「昨夜の許嫁殿も、随分興奮してただろう」
「な、なんのことかさっぱりわからないよ」
「あっはっは! 理解ある本妻で私は嬉しい」

バカたれめ。これも悪役貴族の妻の役目か。
怒ったり喧嘩したりしながらもそんな関係でいれたらいいなと思いつつ、僕は帰宅した。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:23:04.70 ID:Kc1XYpybO
「ただいまー」
「ああ、奥様! よくぞご無事で」
「心配しておりました!」
「よしよし……これは日頃の感謝の気持ち」

帰ったら抱きつかれて泣かれた。そんな彼女たちに贈り物を手渡す。小包を手にして揃って小首を傾げる彼女たちの涙を拭い促した。

「開けてみて。気に入るといいけど……」
「あ、はい……失礼します」
「はわ〜かわいいイヤリングです」

双子メイドちゃんにはかわいいイヤリング。
赤いガーネットの石言葉は忠誠と真実の愛。
まるでウサギのおめめみたいに愛くるしい。
別々のものにするか最後まで悩んだけど、平等という観点から、まったく同じものした。

「つけてあげるね」
「あ、ありがとうございます」
「く、くすぐったいです……」

照れて真っ赤な2人につけると、想像通り。

「うん。とっても似合ってる。かわいい」
「ほんとですか? お姉ちゃん、見せて!」
「私も見たい……はぅ〜……かわいいです」

鏡がなくても互いに見せ合える双子は便利。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/10(日) 22:24:26.54 ID:jEG/URbnO
「バイク初めて乗ったけど楽しかったよ」
「あァ……まァ、無事でなによりだなァ」

婚約者は少し元気ない。心配していたのだろうか。それとも、委員長のバイクに乗ってみたかったのだろうか。たぶんどっちもだな。

「はい、これ」
「あァン? 女からモノ貰う趣味はねェぞ」
「いいから、受け取って」

婚約者への贈り物はすぐ決まった。パッと見て、これだと思った。ロングのイヤーカフ。
箱から取り出しつけてあげると似合ってる。
これぞまさに悪役貴族って感じのアクセだ。
いろいろ種類があってチェーン付きもある。

「うん。思った通り、カッコかわいい」
「なンだそりゃァ……褒めてンのかァ?」

秘策である贈り物作戦は大成功と言えよう。

「見たらわかるよ。ほら、僕もお揃いだよ」

同じものをつけて見せると婚約者は笑って。

「ハッ! てめェがつけても可愛いだけだな」
「それって、褒めてるの?」
「当たり前だろォがァ。チョーカーも似合ってんな。 ハッハァ! 調教しがいがあるぜェ」
「ほらな、許嫁殿。私の言った通りだろ?」
「はあ。まったく……バカたれどもめ」

まるで耳を婚約者に齧られてるようで好き。


【僕は白昼、側車で城下にお出ましする】


FIN
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 22:40:46.27 ID:jbIKg2ExO
長編で副題付ける場合、最初に表記するのが常識。
アスペ丸出しで自分ルール曲げられないのは
マジでみっともないだけなんだけどなあ。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:10:40.59 ID:ix13/Z+gO
「あァン? 俺の手で、なァにしてンだァ?」
「今、爪を黒く塗ってるからじっとしてて」

イヤーカフ悪役貴族は学園内でも評判らしく、城下のアクセショップは大層儲かっているらしい。僕らのチョーカーも流行り、真似をする生徒が続出し、双子メイドのイヤリングまでもが隠れ双子ファン達に好評な模様。

「できた! はい、次は左手ねー」
「お前ェ……俺をどうしてェンだよ」

僕的にもこの名ばかり悪役貴族に箔をつけるべく、日夜デコレーションに勤しんでいる。
爪を黒く塗るのにも全部なのか何本かだけなのか、はたまた片手だけにするべきか悩む。

「うーん。とりあえず片手だけにしとくか」
「ちょっと手ェ貸せェ」
「うわ! なにすんのさ!?」
「うるせェ。じっとしてろォ」

悩んだ末に片手だけのアシンメトリーを選択した僕の手を取り、悪役貴族は邪悪にほくそ笑みながら、ペタペタとマニキュアを塗る。

「俺が右手ならァ、てめェは左手だァ」
「ひどい……汚された」

僕の綺麗な爪が、悪に染まってゆく。しかも無駄に丁寧で上手。あ、そんな……ふーふーすんな。やめろよ。ゾクゾクするじゃんか。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:11:51.16 ID:ix13/Z+gO
「で? どうなの? 似合うの? 可愛いの?」
「ハッ! 上出来だなァ……感謝しろよォ」
「ふん。そっちこそ僕とお揃いにしたかった癖にさ。感謝して欲しいのは僕のほうだよ」

売り言葉に買い言葉を的確に返しながら、思わずにやけてしまう。手、繋ぎたいな。でも自分からは恥ずかしい。さっさと繋いでよ。

「あ……なんでポッケに手入れんのさ」
「あァン? なンでもいいだろォがァ」
「まったく……せっかく塗ってあげたのに」

ほんとこの駄犬はこれだから、と思いきや。

「チッ。ほらよォ……やる」
「へ? なに、これ?」
「開けてみてのお楽しみだァ」

ポッケから取り出した小箱。手品だろうか。
恐る恐る開けてみるとかわいいピンキーリングが入っていた。慌てて閉じて、確認する。

「ちょ、ちょっとこれ……どうしたの?」
「かっぱらってきたに決まってンだろォ」
「やっぱり!? すぐに返してこないと!」
「おォい! ンな嘘を信じンじゃねェよ!? ちゃんと買ったに決まってンだろォがァ!!」

買ってきたらしい。ということは、つまり。

「もしかして……僕のために?」
「あァ……当たり前だろォがァ」

プレゼントだ。僕への。やばい。嬉しすぎ。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:13:30.03 ID:ix13/Z+gO
「なンだよ……気に入らなかったのかァ?」
「え、な、なんで……?」
「いつもの"バカたれ"はどォしたンだァ?」

言えるわけない。言えるわけないじゃんか。
普通に嬉しい。とびきり嬉しい。ありえないくらいに嬉しい。胸が高鳴ってる。大好き。

「だ……」
「だァ?」
「あ、う……な、なんでもない」

あっぶない。そのまま大好きって言うところだった。いや、言ってしまえば楽になれたのかもしれない。飲み込んだ好意が暴れてる。

「チッ……難しいモンだなァ」
「へ? な、なにが……?」
「俺ァ、そンなモン買ったことねェからさ」

まさかの初プレゼント。嬉しさが更に倍増。

「気に入らなかったら……悪かったなァ」
「ちがっ……僕は、そうじゃなくて!!」

言わないと。嬉しいって。大好きって早く!

「ま、まあ……せっかくだし、貰っとくよ」
「ハッ! そいつァ、安心したぜェ」
「はあ〜……もぉ」

ほっとすんな。自分にガッカリだよ、僕は。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:16:04.20 ID:ix13/Z+gO
「おォい、ついでだァ。てめェにもやるよ」
「え? もしかして……私にもくれるのか?」
「んん?」

おやおや? 同じ箱を委員長が受け取ったぞ。

「うわぁ〜なんてかわいいんだ!」
「チッ……うるせェ。騒ぎすぎだァ」
「ありがとう。一生大事にするからな!」
「要らなくなったら売っぱらっていいぞォ」
「何を馬鹿なことを……ほら、つけてくれ」
「めんどくせェなァ……これでいいかァ?」
「うむ! 本当にありがとう。大好……」
「う、うわああああああああんっ!!!!」
「うわ! 許嫁殿!? どうしたんだ!?」

限界だった。色々と。僕は叫んで、暴れた。

「お、奥様、どうかお気をたしかに……」
「大丈夫ですよ……奥様が1番ですから」
「でも! おんなじピンキーリング!!」
「先に貰ったのは奥様です。重要ですよ」
「落ち着いてください、正妻の余裕です」
「あ、ああ……ごめんよ、僕のメイドたち」

メイドたちに宥められて、落ち着いた僕に。

「ハッハァ! そンなに嬉しかったのかァ?」
「くっ……! こんのっ、バカたれぇえ!!」
「ああ、奥様……」
「おいたわしや……」

そんな極めて無神経な台詞を吐いた駄犬に飛びかかり、第2ラウンドのゴングが鳴った。
僕は勇敢に戦った。最終的に、悪役貴族に寝室へと強制連行され、泣き疲れて、眠った。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/11(月) 22:17:19.58 ID:ix13/Z+gO
「肩と首と手足の歯形、ごめんね」
「あァ……こンなのかすり傷だァ」

朝起きて、いつかのように謝った。だいたいこいつが悪いと思う。だけど過ぎたことだ。
ひと晩経ったら忘れてやるのがきっと悪役貴族の妻としての勤めなのだと自分に言い聞かせる。昨夜も今朝も、変わらず好きだから。

「昨日は言えなかったけど、ありがとね。とってもかわいくて、とっても気に入ってる」
「だったら噛むンじゃねェよ」
「ぐっ……ごめんなさい」

ぐっと堪えて謝ると、悪役貴族は嘲笑って。

「てめェは歯向かってきたほうが可愛いな」
「……バカたれ」
「ハッハァ! そうこなくっちゃなァ!」

ため息と共に僕は小指の紫水晶を見つめる。
アメシストは、僕の婚約者の瞳と同じ色だ。
石言葉には誠実が含まれている。それが嘘か本当かなんてこの妖しい輝きの前にはどうでも良くなる。どうにでもして欲しいくらい。

「気に入った。もう絶対に返さないからね」
「ハッ! だったらてめェは一生持っとけェ」

僕の小指の赤い糸は悪役貴族と繋がってる。


【僕は明朝、悪役貴族と仲直りする】


FIN
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 07:38:07.44 ID:SsBg374ko
良ければ酉付けてくれ>>1だけ見たい
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 11:35:37.30 ID:2K1jDuDG0
つけるわけねーじゃん
R板に行けと再三言われてもここでスカトロ怪文書の投下続けてた荒らしなんだから
この駄文製造機は人間の話を聞く知能なんか持ち合わせてねえよ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 13:24:57.04 ID:gApAhEJ3O
悪役要素も貴族要素も全く作中に無いのが凄い
口調が悪い只のチンピラを自分の理想に見立てて
脳内TSからの自慰とか人前に出したらいけないレベルよ
51 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:45:38.74 ID:pnkw8d5yO
「さあ! 好きなだけ食べて飲んでくれ!」

その日、委員長が晩餐を用意した。メニューは帝国の郷土料理であるすき焼き。牛肉も帝国産のもので、わざわざ冷凍車という鮮度が悪くならない輸送手段で持ってきたらしい。
ちなみに調理したのは、双子メイドである。

「貰ってばかりでは帝国の名が廃ると、母上が送ってくれたのだ! さあさあ、遠慮せず」
「僕はそんなにお肉は好きじゃないし……」
「帝国の牛肉を甘くみるなよ? 許嫁殿はただでさえ痩せているのだからもっと肉を食え」

そこまで言うならとひとくち食べて驚いた。

「なにこれ……美味しすぎる。今まで僕たちが食べてきた牛肉は牛肉じゃなかったの?」
「あっはっは! そうだろう、そうだろう!」
「ほら、双子ちゃん。君たちもお食べ」
「ありがとうございます……これは確かに」
「ほっぺた落ちそうです〜」

帝国の牛肉マジやばい。柔らかくて溶ける。
あとこのスープも美味しい。割下というらしいけどこのレシピは欲しい。甘しょっぱい。

「あァ……この酒もいけるなァ」
「さすがお目が高い。このお酒は上等だぞ」
「ハッ! いくらでも飲めそうだぜェ」

帝国のお酒はワインとは違い、透明でピリッと辛かった。冷えた状態でも美味しいけど、温めて熱燗にするとポカポカして良い気分。

「ただお酒は控えめにな! メインイベントはこれからだから、楽しみにしていたまえ!」

今夜は委員長と出会えて良かったと思えた。
52 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:49:01.96 ID:pnkw8d5yO
「さて、諸君。いよいよメインイベントだ」

たらふくすき焼きをご馳走になり、委員長が女性陣を先導してほろ酔い気分でお風呂を済ませると、僕らの着替えがなくなっていた。

「僕らの着替えは?」
「諸君らにはこれを着て貰う!」

取り出したのは鮮やか模様で染められた布切れ。それを着るというのはどういうことか。
まさか、身体に巻き付けるつもりなのかな?

「着付けは得意だから安心したまえ」
「本当にそれ、服なの?」
「これは着物の一種で浴衣という、帝国の民族衣装だ。祭りの時や、寝巻きに着るのだ」

祭りは祭典だろう。なのに寝巻きにするの?

「百聞は一見にしかずだ。まず袖を通して、前で合わせて、丈を調整しながら腰紐を締めれば……ほーら完成だ! うむ! かわいいぞ」
「奥様……本当にお綺麗です」
「とてもよくお似合いです」
「本来ならもっと沢山紐を使って、外出時の着崩れを防ぐのだがな。寝巻きなら簡単だ」

パパッと着せられた。生地がサラサラで着心地が良い。でも大股を開いたら合わせ目から足が見えてしまいそう。これが慎みの秘訣か。ていうか、ちょっと待って。おかしい。
53 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:52:53.17 ID:pnkw8d5yO
「委員長、僕まだ下着をつけてない」
「ああ、これはそういう仕様なのだ」
「へ? どゆこと?」
「下着をつけたら透けるし、生地に下着の線が浮かぶからな。ほーら浴衣双子の完成だ」

説明しながら双子の着付けを終えた委員長。

「2人とも似合ってる。すごくかわいい」
「本当ですか!? お姉ちゃん、見せて!」
「本当にかわいい……でも少し恥ずかしい」
「あと、これはお前たちのご主人様に頼まれて用意した髪飾りだ。帝国では髪飾りをかんざしと言うんだ。これからも精進したまえ」
「わ、若様から……恐悦至極です」
「たんぽぽの髪飾り……光栄です」

双子ちゃんたちの浴衣の柄は紺地に白い百合の花が咲き乱れていて、一見すると派手に見えるが、一歩下がると落ち着いて上品にも見える。はにかむお姉ちゃんと、笑顔な妹ちゃんとのコントラストで双子の魅力が満点だ。
それにしても髪飾りなんて、悪役貴族も粋な計らいを。僕もまた髪が伸びたら欲しいな。

「うむ! 絶景だな!」
「委員長もさっさと着たら? 風邪引くよ」
「おっと、忘れていた。しかし許嫁殿はなんというか……慎ましい身体で着物がよく似合って羨ましいな。私は胸がデカすぎて……」
「黙れ、バカたれ」

あの牛肉いっぱい食べたら僕だってきっと。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:54:06.88 ID:PZiAiyZh0
マラソンのくだりを出しちゃってる時点で非現実やファンタジーの世界にはできないんだよなあ
それも具体的に42.195とか出しちゃってるんだから
55 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:55:04.07 ID:pnkw8d5yO
「刮目せよ! 壮観だろう!」
「ハッハァ! 悪役貴族冥利に尽きるぜェ!」

それなりに待たされたであろう悪役貴族は艶やかな僕たちの装いに上機嫌だった。酒瓶が何本も転がっているので酔っているらしい。

「ちょっと、飲みすぎだよ」
「あァン? いいじゃねェかァたまには」
「明日あたま痛くなってもしらないよ」
「そんときァ、てめェに介抱してもらうさ」

注意するも、何故か嬉しそう。普段の邪悪な笑みではなく、なんとなく甘い微笑み。もしかして甘えているのか。悪役貴族が。僕に。

「どうだ! 私の浴衣は!」
「ハッ! 馬子にも衣装たァこのことだなァ」

委員長の浴衣の柄は意外にも桃色の生地で、東の帝国に咲き誇ると言われる、桜の花びらが散りばめられていた。惚れ惚れしちゃう。

「そうだろう? 脱いだらもっとすごいぞ?」
「ハッハァ! そいつァ楽しみだなァ」

脱がなくてもすごいじゃん。それに比べて。

「あァン? なァにしょぼくれてンだァ?」
「ふん。どうせ僕はちっちゃいもん……」
「ああ、奥様。それが奥様の良さです」
「偉い人にはわからない希少価値です」
「はあ……同情するなら僕に胸をくれ」

せめて、双子ちゃんたちくらいあればなぁ。
56 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/12(火) 22:56:39.18 ID:pnkw8d5yO
「こっち来て、もっとよく見せてみろォ」
「うわ! ちょ、ちょっと、歩きにくいんだから、あんま引っ張らないで……ああっ!?」

つんのめって、悪役貴族の胸に飛び込んだ。

「白地にひまわりたァ……てめェらしいな」

ひまわり柄はかわいい。気に入ってるけど。

「……どうせ僕はお子様だもん」
「あァン? ガキにはそンな色気出せねェよ」

色気なんてないし。でもちょっとだけなら。
勇気を出そう。まだちょっと酔っているし。
ちょっとだけなら頑張れる。今にみてろよ。

「実は僕ね……今、下着つけてないんだ」
「っ……てめェ、酔いが醒めんだろォが」
「ど、どう……? 脱がせたくなった……?」
「チッ……ンなこと、言わせンじゃねェよ」

チラリと悪役貴族の顔を見上げると耳まで真っ赤だった。僕も恥ずかしくて同じように真っ赤だろう。それでも悪戯心は湧き上がる。

「今夜は甘えていいよ……バ・カ・た・れ」

そう囁いて、真っ赤な耳たぶを噛んでやる。

「てめェ……ホント良い性格してるよなァ」
「ん? 参った? 降参? 負けを認めるの?」
「いつだって俺ァ……てめェに参ってるよ」
「えへへ……僕の勝ち」

よし勝った。恥ずかしかったけど僕の勝ち。
浴衣のおかげでもある。それとお酒のせい。
今夜の僕は酔ってるということにしとこう。


【僕は今夜、悪役貴族に酔い痴れる】


FIN
57 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 05:24:18.93 ID:xt7OG+M5O
「あァ……クソが……あたまが割れそうだァ」
「だから言ったのに……バカたれ」

昨夜酒池肉林の限りを尽くした悪役貴族は翌朝、絶賛二日酔いに見舞われていた。日課であるジョギングにすら行けない様子。せめてもの救いは、今日が休日だったことだろう。

「奥様、お水を持って参りました」
「ありがとう。こいつは僕が診とくからお仕事に戻っていいよ。朝食が出来たら呼んで」
「かしこまりました。若様をよろしくお願いします。何かありましたらお呼びください」

たんぽぽの髪飾りが可愛らしい双子メイドちゃんから吸い飲みを受け取りそれを口元に運んでやるも、どうもやりづらい。仕方ない。

「ほら、僕の膝にあたまを乗せな」
「うう……悪ぃなァ」
「はい、お水飲んで」

膝枕をしてお水を飲ませると薄目を開けて。

「てめェ……ドエロい格好してンなァ」
「ばっ……バカたれ! ジロジロ見るな!」

言われて浴衣の着崩れに気づいた。メイドちゃんたちもひと声かけてくれたら良いのに。
慌てて襟を正しながら、紫水晶の瞳を塞ぐ。

「おォい。手ェ、どけろ……何も見えねェ」
「だから見るなってば。そもそも見るに値するようなものは、持ち合わせてないし……」
「てめェの価値をてめェで決めンじゃねェ」
「……そんなこと言っても、見せないから」
「チッ……それならァ、寝るしかねェなァ」
「たまには二度寝も悪くないよ。おやすみ」
「あァ……ありがとなァ……愛してるぜェ」

そう言って悪役貴族は寝た。僕の膝の上で。
58 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 05:27:39.11 ID:xt7OG+M5O
「今朝は随分と優しいではないか、許嫁殿」
「あ、委員長。起きてたの?」
「朝からラブラブで羨ましいぞ」

声のほうを見やるとベッドの上で横たわる半裸の委員長が頬杖をかいていた。僕よりもドエロい格好だ。委員長は悪役貴族を膝枕する僕を羨ましげに眺めながらこう訊ねてきた。

「そう言えばこれまで訊かれたことはなかったが、私と彼との馴れ初めに興味ないか? 」
「興味ない」
「本当に聞かなくていいのか? もしかすると、意外な事実が判明するかもしれないぞ」
「委員長。僕はそれなりに理解しているよ」

僕のことを愛してると言う婚約者がどうして悪役貴族のように他の女に手を出したのか。
その理由に僕は薄々勘付いている。だけど、きっとそれは、僕が知るべきことではない。
59 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 05:29:50.80 ID:xt7OG+M5O
「帝国から来た委員長に、こいつがどんな条件を出されて付き合うことになったかなんて、僕が知るべきことじゃない。だから訊かないし、聞かない。何も言わなくていいよ」
「ほう……さすがのご慧眼と立ち回りだな」
「僕に嫌われようとしたって無駄だよ。こいつが傍に置くってことは委員長には害はないって証明だから。僕は、婚約者を信じてる」

それが妻の役目だ。それでも僕は妻として。

「だけどこれからも嫉妬はする。ヤキモチは焼く。僕はこいつを好きだし委員長もこいつが好きなんだから、遠慮せずにやり合おう」
「あっはっは! 勝てる気がまるでしないな」
「なに笑ってんのさ……バカたれ」

委員長の清々しい大笑につられて微笑むと。

「奥様、朝食のご準備ができました」
「わかった。委員長、今だけ貸してあげる」

婚約者を委員長の膝に乗せて僕は釘を刺す。

「朝食を食べ終わったら返して貰うからね」
「さて、それは約束できかねるな」
「だったら委員長は朝食抜きだよ」
「まったく……許嫁殿には敵わないな」
「えへへ……僕の勝ち」

部屋を出る前に、婚約者の額にキスをした。


【僕は朝イチで、浮気相手を打ち負かす】


FIN
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 09:41:38.24 ID:Rs46BFI1o
スカトロ怪文書への罵倒は散々無視してきたのに好意的な>>48の要望には応えて酉は付けてるの草
これが「お前の駄文は見たくないのでNG入れとくから酉付けろ」とかだったら無視してるんだろなぁ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 10:54:21.65 ID:/E0u8Isw0
おかげで不快なゴキブリをNG入れれるようになったな
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 11:05:09.06 ID:fD1wlzE40
>>48は有能やな
特別支援学校の職員や介護福祉士の素質あるわ
馬鹿とハサミは使いようで>>1の行動は制御可能だと知れたのはでかい
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 12:56:20.74 ID:2YUXwkt/O
マジで行動パターンがちゃおラジの頃から
全く進歩していないの草も生えんわ
64 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 21:05:52.69 ID:lB/PJQMeO
「奥様、ご入浴の準備が整いました」
「ありがと。じゃあ、すぐ入っちゃうね」
「脱いだお洋服はこのカゴの中にどうぞ」

その日、僕はいつも通り、忠実なる双子メイドちゃんが沸かしてくれたお風呂に入るべく、服を脱いで洗濯カゴに放り込んでいた。

「ん?」

靴下まで脱いで、最後にパンツを脱ごうとしたその時、シャッ!っと、目にも留まらぬ速さで妹メイドちゃんの手が動いた。正直、僕でなければ見逃しちゃうくらい素早かった。

「妹ちゃん、ちょっといいかな?」
「な、なんですか……?」
「ポケットの中身、出してごらん」

犯行現場を目撃した僕は、怒ってないことを示すために努めて優しく促した。すると、妹メイドちゃんのポッケから靴下が出てきた。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:07:45.07 ID:lB/PJQMeO
「靴下、片方だけになったら困るでしょ?」
「いえ、実は……」
「え?」

なんともうひとつの靴下の片割れが現れた。
僕ですら二足目は見えなかった。そのことに戦慄しながらも、咳払いをして仕切り直す。

「こほん。あのね、妹ちゃん。僕は別に怒ってるわけじゃないんだ。ただちょっとだけ想像してみて欲しい。もしも妹ちゃんが1日履いた靴下を、僕が嗅いでいたらどう思う?」
「奥様を不快にさせたくはありません……」

話せばわかる優しい子だ。ほっと安心する。

「うん。そうだね。僕も今、同じ気持ちさ」
「奥様の靴下は、全く不快ではありません」
「あの……ええと。妹ちゃんにとってはそうかもしれないけど僕としては妹ちゃんに1日履いた靴下を嗅がせるのは如何なものかと」
「むしろ嗅げと、お命じになってください」
「そんな、悪役貴族じゃないんだから……」
「いい加減にしなさい!!」

妹ちゃんの圧に負けて、後半しどろもどろになってしまった僕の代わりに、もう我慢の限界とばかりにお姉ちゃんメイドが怒鳴った。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:11:02.17 ID:lB/PJQMeO
「奥様に嫌われたらどうするの!?」
「まあまあ、そう怒らずに。僕は全然気にしてないからさ。むしろ詮索して悪かったね」
「奥様、本当に申し訳ありません。妹の不始末は姉の責任。なんなりと処分を頂きたく」
「いやいやそんな大事にするつもりは……」

お姉ちゃんメイドはちょっと固い考えの持ち主で、仕事の上では素晴らしいけれど、そんなに厳しくすると妹ちゃんが泣いてしまう。

「ううっ……嫌いに、ならないでください」
「大丈夫だよ。嫌いになんてならないから」
「もうこんなことしないって約束しなさい」
「う、うわあああんっ」

お姉ちゃんの追撃で涙腺が決壊してしまう。
ポロポロと大粒の涙が溢れる。泣いている妹ちゃんは可哀想で、たんぽぽの髪飾りも今日は元気がなかった。思わず駆け寄って、抱きしめる寸前に、妹ちゃんは爆弾発言をした。

「うっ……ぐすっ……お、お姉ちゃんだって……奥様が使い古して捨てた歯ブラシを拾って、夜中にこっそり使ってるくせに……」
「そ、それは言わない約束でしょ!?」
「んん?」

これは驚き。お姉ちゃんメイドの秘め事か。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:12:55.40 ID:lB/PJQMeO
「ううっ……いっつもお姉ちゃんに歯ブラシ貸して貰って悪いから、だから今日はお姉ちゃんのぶんも靴下を狩ろうって思ったのに」
「あれほどひとつだけにしなさいって言ったのに……馬鹿な子。奥様、本当に申し訳ありません。この責任は全て姉である私に……」

ダメだこの双子。いや、とっても良い子たちなんだけど僕への執着が強すぎる。きっと甘やかしすぎたせいだろう。大事にするって難しい。僕は悩みに悩んで苦渋の決断をした。

「暫く僕は、自分の部屋で過ごすべきかな」
「そ、そんな……それだけはお考え直しを」
「す、捨てないでください! なんでもします! だから私たちを捨てないでください!」
「ん? 今、なんでもするって言った?」
「へ? お、奥様……?」
「なぜ、まるで若様のような笑みを……?」

一緒にいると似てくるんだよね。まったく。不本意なことに。僕は悪役貴族のように邪悪に笑って、双子メイドたちへ沙汰を下した。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/12/13(水) 21:15:33.49 ID:lB/PJQMeO
「君たちは罰として、寝るまで委員長と手を繋いで仲良くなること。これは命令だよ」
「お、奥様、それだけはご勘弁を……!」
「どうか、奥様の手で私たちに罰を……!」
「なんでもするって言ったよね?」

この機会に双子メイドたちと委員長の不仲を解消してしまおう。妻としての僕の役目だ。
ニッコリ邪悪に微笑むと双子たちはたじろいで背後から忍び寄る魔の手に全く気づいていない。委員長が双子2人を同時に捕獲した。

「無論、私は構わないぞ! ほーら捕まえた」
「きゃあっ!?」
「さ、触らないでください!」
「そんなつれないことを言うな。実はずっと許嫁殿と君たちの関係が羨ましかったんだ」
「あ、あなた様は奥様の敵です!」
「あなた様のせいで奥様がどれほど……!」
「知らんな。ほーら、こちょこちょこちょ」
「やめっ……手を入れないでください!」
「やだ! 奥様がいい! 奥様以外はイヤ!」

うーむ。さすがに止めるべきだろうかと、本来の主人である悪役貴族のほうに目を向けると、奴はこの目を背けたくなるような惨状をものともせず読書に耽っている。すごい集中力だなと感心していると、ふと目が合った。

「躾はァほどほどになァ」

まったく、悪役貴族の癖に優しいんだから。
69 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 21:16:55.72 ID:lB/PJQMeO

「委員長、手を繋ぐ以上のことは……ん?」

これ以上は危険と判断して委員長の刑を中止しようとしたその時。洗濯カゴの中にそれを発見した。僕は神速で掴んで背中に隠した。

「またつまらぬものをくすねてしまった」

今のは速かった。世界新記録かもしれない。
双子メイドたちはまだまだだ。僕クラスになると自分がくすねたことすら認識出来ない。
気がついたらそこにある。そんな現象として自然に溶け込む。故に誰も気づかないのだ。

「ていうか、僕ずっとパンイチじゃん……」

そう言えば、今の僕はパンツ一丁だった。乙女としてこの格好はありえない。何か着るものはないかと探すと、大きめのシャツがあった。きっとブカブカだろうけど、大は小を兼ねると言うし、ためしに着てみるとやはり僕には大きかった。けれどなんとも言えない心地良さを感じ、垂れた袖口をくんくんする。

「えへへ。まるで抱きしめられてるみたい」
「現行犯だ! 捕まえろ、双子メイドたち!」
「え? なになに!? なんで逮捕されんの!」

我に返ると双子メイドたちに捕まっていた。
70 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/13(水) 21:18:44.81 ID:lB/PJQMeO

「奥様、今のはいけませんね」
「近頃、若様の洋服が減ってると思ったら」

まったく意味がわからない。濡れ衣である。

「若様、どうか奥様に寛大なるご沙汰を!」
「奥様は若様を思うがあまりに、罪を犯してしまいました。これは愛ゆえの罪なのです」
「よォし……沙汰をくだす。連れてこォい」

パタンと本を閉じた悪役貴族が判決を下す。

「罰として、てめェの下着を俺によこせェ」
「い、異議あり!」
「異議は却下とする。優等生、出番だぞォ」
「よし! どれ、早速私が脱がしてやろう!」
「ちょ! まさか今穿いてるのを取るの!?」
「ハッハァ! 当たり前だァ。鮮度が違ェ!」
「鮮度ってなんだよバカたれぇええっ!!」

その場で僕のパンツは悪役貴族に奪われた。


【僕は夕刻、悪役貴族に裁かれた】


FIN
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 21:31:38.18 ID:fiembG6Z0
怪文書ゴキブリやら自演スカトロマンやら呼ばれていたが
こいつの核心を突いていた呼び名は「青葉予備軍」だな
あの青葉だって最初はハルヒにハマッてそこからクリエイターを目指したけど
才能もなけりゃまともな努力もしてこなかったから箸にも棒にも引っかからず
最後は「京アニが自分のオリジナルをパクッた」という恥ずかしい妄想を拠り所に凶行に走って……

こいつも自己愛とみじめすぎる現実のギャップを何番煎じか分からない駄文では埋められなくなって
最後は「あのタイプのキャラに『フハッ』と言わせるのは俺のパクリだ!許せん!」と
言いがかり被害者モードで出版社に凸するかもしれん
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 22:04:33.23 ID:MfgaFO6d0
絵に描いたような「駄目な作品の見本」を
ここまで量産できるのが逆に凄い
マジで青葉の作品タイトルの方が
遥かにこいつよりは面白そうだもん
73 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:45:53.23 ID:8u3yC8i1O
「ハッハァー! 最ッ高ォだぜー!!」
「うむ! だいぶ上達したではないか!」

最近、悪役貴族は帝国から輸入したバイクを買い、寮の周辺で乗り回すようになった。気持ち良さそうに縦横無尽に駆け回っている。
委員長はバイクの教官として見守っていた。
そんな2人を僕とメイドは部屋の窓から眺めている。バイクはメイドたちに不評らしく。

「あんな危険な乗り物で遊ぶなんて……」
「奥様、そろそろ注意するべきかと」
「別にいいんじゃないの? 僕もバイクは楽しかったし。今度君たちも乗せて貰いなよ」
「何かあってからでは遅いんです!」
「見ててハラハラします……」
「まあまあ。何事も危険はつきものだよ」

メイドたちの非難を、やんわりと受け流す。
バイクはたしかに危険な乗り物かもしれないが、馬よりも速く爽快でとてもいいものだ。
74 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:47:27.11 ID:d0VHcyTJO

「やはり騎乗のセンスが抜群だな!」
「当たり前だろォ! 俺に乗りこなせねェじゃじゃ馬なンざ、この世には存在しねェ!!」
「うむ! 今晩も期待しているぞ!」
「あァ! 足腰立たなくしてやンよォ!」

よく言うよ。やたら上に乗せたがる駄犬のくせにさ。乗りこなしてんのはこっちだっての。さらっと浮気の約束すんなよな。まあ、子供みたいに目を輝かせる悪役貴族を見てると、そんな小言を言う気力も失せるけどさ。

「やはりあの方は好きになれません」
「今も若様と2人であんな楽しそうに……」

未だにメイドたちと委員長の仲は悪い。というよりも僕の代わりに怒っているのかもしれない。そんなことは僕の望むことではない。
75 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:49:25.69 ID:D5lrb/S9O
「いいかい、君たち。もしも僕とあの悪役貴族が結婚して、第二夫人として委員長を迎えることになったら、頻繁ではないにせよ、委員長を家に残して外出することがある筈だ。その時には、君たちはメイドとして委員長に従わないといけないんだよ。わかるかい?」
「そんなの嫌です……」
「家のことは私どもにお任せください」
「もちろん君たちのことは信用してる。だけど僕は君たちに責任を負わせたくない。何かあった時に君たちのせいにしたくないんだ」

僕はメイドたちに甘い。だから何かあった時に遠慮なく叱れる委員長が必要だ。もちろん何も起きないよう双子メイドたちにはくれぐれも目を光らせて貰うけど責任は委員長だ。
何かあったら委員長せいなら、心置きない。

「奥様はお優しすぎます……」
「奥様に叱られてみたいです……」

このようにメイドたちがどんどんおかしな趣味に目覚めかけているのでその点においても委員長のような第三者が必要不可欠なのだ。
ていうかあいつ、調子に乗ってスピード出しすぎじゃない? そのうち、きっとコケるぞ。

「気をつけろ! その辺りは砂利が多い!」
「ハッ! 楽勝ォ楽勝ォって、うわっ!?」

言ってる側から砂利で滑って転んだ。思わず身を乗り出す。大丈夫だろうか。あ、起き上がった。良かった。心配させんなバカたれ。
76 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:50:57.15 ID:g0c/RC5kO
「お、奥様! 早く助けにいきましょう!」
「わ、若様がお怪我を!」

わかってる。逸る気持ちを抑えて、命じた。

「君たち、早く助けに行ってあげて」
「お、奥様は……?」
「奥様も行きましょう!」
「僕はここで待ってるから早く連れてきて」
「奥様……わかりました。お任せください」
「早急に、若様を奥様の前にお連れします」

いま僕が助けに行けばこの部屋は誰もいなくなってしまう。それは良くない気がした。この考えはもしかすると、先進的な東の帝国では古臭い考えかもしれない。だけど僕は、本能的に残るべきだと思った。何故だろうか。

「僕が待ってるから早く帰れ……バカたれ」

たかがバイクで転んだだけ。大袈裟だとは思うけど、良い機会かもしれない。心構えだ。
これから先、肉体的にではないにせよ、あいつが傷を負って帰ってくることがあるかもしれない。とても辛いことがあって、やるせない気持ちで帰ってくることがあるかもしれない。心身ともに疲れ果て、クタクタになって、おまけにボロボロになったあいつの帰りを、僕はいつまでもじっと待ち続けるのだろう。もしかしたら、僕が待つ家に帰りたいという一心で、何かを成し遂げられるかもしれない。ならばそれが妻の役目だと僕は思う。
77 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:52:54.19 ID:Av/MYctOO
「なにやってんのさ、バカたれ」
「面目ねェ……」

双子たちに両脇から支えられながら悪役貴族は帰ってきた。肘や膝に擦り傷はあるものの見た感じは軽傷だ。僕は触診して確かめた。

「身体は? 大丈夫なの? 骨折れてない?」
「こんなのかすり傷だァ……痛つつ」
「双子ちゃんたち、どう?」
「恐らくは、大丈夫かと」
「頭も打っておられなく、幸いでした」

委員長が用意していた肘当てや膝当てをかっこ悪いからと着用拒否していたバカたれだけど、ヘルメットだけは被っていて良かった。

「申し訳ない……私の責任だ」
「委員長……なんて顔してんのさ」

真っ青な顔をした委員長が泣きながら語る。

「私は調子に乗っていたのだ……最近は毎日が楽しくて上手くやれていると……しかし、私は……いつも、行き当たりばったりで……母上からも「てめーはスマートじゃねえ!」と言われていて……これでも、上手くやろうとしたのだ。母上のように何でも見透すことの出来ない私でも、頑張ればきっと……でもダメだった。失敗した。許嫁殿の大切な人に怪我をさせてしまった……本当に申し訳ない」

反省はしているのだろう。でも僕は怒った。

「お母様と自分を比べんな! バカたれ!!」

委員長のお母様はきっとすごい人なのだろう。劣等感を抱かざるを得ないくらいの超人なのかもしれない。でもそんなの関係ない。
委員長は僕を嫉妬させるくらい、魅力的だ。
それなのに、自分は大したことないみたいに言われると、僕の沽券に関わる。腹が立つ。
78 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:54:37.54 ID:kLoijdWlO

「お、おォい……そんなに責めるこたァ……」
「黙れ! これは僕の仕事だ! 邪魔すんな!」

口を挟んだ悪役貴族を一括して僕はキレた。

「委員長は委員長でしょ!? 自分なりに出来ることをやった結果なら胸を張れ! 目を逸らすな! 僕に怒られても顔を上げて澄まし顔で押し通せ! それが出来ないなら出てけ!!」
「ああ……わかった……本当にすまなかった」

僕に怒られて、打ちひしがれた顔をして、委員長が部屋から出ていく。扉が閉まって、僕の怒りは、突っ立ってる木偶の坊に向いた。

「なにボサっと突っ立ってんのさ!?」
「あ、あァ? てめェがさっき黙れって……」
「何かあった時に庇ってやれない女と浮気すんな! さっさと追いかけろよバカたれ!!」

僕が惚れた男はそんな情けない男ではない。

「あァ……畜生ォ……わァってるよォ!!」

最低限の手当てをして、傷だらけで、悪役貴族は委員長を追いかけに部屋を出て行った。
その情けない背中を見送るのも妻の仕事だ。

「よし。こんなもんかな」
「お見事です、奥様」
「どうぞ、次のご命令をくださいませ」

正直バカたれって言いすぎて喉が痛い。怒るのは体力がいる。疲れたけどもうひと仕事。
僕は気合いを入れ直して双子たちに命じた。

「2人が帰ってくるまでに晩御飯を作る。今日は僕が厨房に立つから、手伝って欲しい」
「かしこまりました」
「仰せのままに」

さて。それじゃあ、腕に縒りをかけようか。
79 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:57:44.17 ID:Rsh+VL5eO
「よォ……連れて帰ったぞォ」
「……恥を忍んで帰宅を許して頂きたい」

丁度、料理が出来上がったタイミングで悪役貴族と委員長が帰ってきた。2人の乱れた着衣を見て怒りが湧き上がる。そうでもしないと委員長を連れて帰れなかったのかもしれないけど、そんなの僕の知ったことではない。

「遅い! 何をしていたか言ってみろ!」
「浮気してたに決まってンだろォがァ!!」
「委員長は!? 何してたの!? 言って!」
「う、浮気してた……な、何か文句あるか」

その開き直りっぷりに思わず笑ってしまう。

「はあ。文句なんて山ほどあるに決まってんじゃん。でもひとまず、ご飯にしよう。腹が減っては喧嘩も出来ないからね。今日はね、委員長の好きな肉じゃがだよ。お母様から貰ったレシピ通りに作ったから、食べてみて」

先日のすき焼きを頂いた際、委員長のお母様に割り下のレシピを手紙で教えてもらった。
その際に"肉じゃが"という委員長の好物のレシピも頂いた。どうやらこの肉じゃがも割り下で作れるらしい。味見したけど美味しかった。そんな肉じゃがを見て委員長は泣いた。
80 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/14(木) 22:58:46.00 ID:2lAcrSHJO
「許嫁殿……私はこの恩を、生涯忘れない」
「このくらいこの先何度だってある。そのたびに喧嘩して仲直りしよう。さあ、お食べ」
「ああ……美味い……母上よりも、美味しい」

泣きながら肉じゃがを食べる委員長に、僕は何も言わなかった。委員長がいなかったらきっと、素直になれない僕は悪役貴族と上手くやれなかっただろう。こうして今、僕が偉そうに奥様面していられるのも委員長のおかげだ。その感謝を料理に込めて、僕は伝えた。

「どう? 怪我は? 痛む? 腫れてない?」
「大丈夫だァ……色々、ありがとなァ」

結局、あれからずっと委員長は泣き止まず、なんとか寝かしつけてから、改めて悪役貴族に怪我の具合を訊ねると、奴は殊勝な顔をして僕に感謝した。そんな情けない婚約者の耳元で、僕は言い聞かせるようにこう囁いた。

「乗りこなしてるのは僕だってわかった?」
「よォくわァったよ。これからも頼むなァ」
「……怪我が治ったら、また乗ってあげる」
「ハッ! なら、さっさと治さねェとな」
「それまで、安静にしとけ……バカたれ」

早く治してくれないと僕が欲求不満になる。


【僕はこの日、妻の心構えを理解した】


FIN
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/14(木) 23:42:33.27 ID:jAWFkQsQO
バカがバイク乗り回して転んだのを手当てしました。
そもそもこの一行で説明できるようなチンケな内容を
どれだけ頑張って膨らまそうとしても無駄だから。

あと青ババくんでも分かるように指摘しとくと
貴族ってのは平民がいなければ成立しないんだぞ?
今のところ悪役貴族が自分を悪役貴族と思い込んでいる
在日の底辺にしか見えないんだけど。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/15(金) 00:18:14.46 ID:mQYxd8YH0
ちゃおラジ君もそうだったけど薄っぺらいんだよな
wikiやあらすじや他人の描いたSSやらで知った浅い知識で得意になるだけならいいが
その程度の理解でSSなんて書いちゃうから怪文書と呼ばれるんだよ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/15(金) 07:47:22.73 ID:+tXyewbm0
実際二次ネタばかり書いてた奴がオリジナル書こうとすると陥りがちなんだが
作品の世界観や主要人物の説明を元ネタが如何にしっかりとやっていたのかを思い知るんだよな
こういう元ネタへのリスペクトが皆無な奴は根本的にその辺分かっていないせいで
読み手が全く感情移入とか支持とかができない自己投影丸出しのゴミみたいなキャラを量産することになる
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2023/12/15(金) 12:38:48.47 ID:5W7PZWsR0
スカトロマンのやってた二次創作はストーリー性のお粗末なお人形遊びだったが
少なくともキャラの最低限の形は保っていた
他人の作ったキャラを勝手に使ってるんだから当たり前なんだけどな

今はおよそキャラとも呼べない何かが気持ち悪くうごめいているだけ
人の形を成してもいない泥人形遊び。いや、スカトロマンなんだから糞人形遊びか
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/15(金) 12:51:53.28 ID:XE50IbQEO
バイクに乗ることを心配されるようなお子ちゃまなんて
文字通り三流以下の悪役貴族なんだよなあ
こんな馬鹿の何処に惹かれる魅力があるのか
86 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 21:53:43.34 ID:NYACIfXxO
「ただいま戻ったぞ」
「あ、委員長、おかえりって、ええっ!?」

その日、ふらっとどこかへ出かけた委員長の長い黒髪が、僕と同じくらい短くなって帰ってきた。びっくりすると、委員長は笑って。

「これは私なりのケジメだ。どうだ許嫁殿。短髪もなかなか似合うだろう?」
「いや……正直、違和感しかない」
「あっはっは! なに、じきに見慣れるさ!」

快活な委員長が更に溌剌となって、高笑いに磨きがかかった気がする。半ば呆然としていると、僕と同じく固まっている双子メイドたちのもとに委員長は歩み寄り、声をかけた。
87 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 21:57:36.35 ID:QYnfRSrXO
「君たち、少し時間はあるか?」
「は、はあ……どうしましたか?」
「な、なんでしょう……?」
「私は君たちと話がしたい。これから一緒に風呂にでも浸かりながら、ゆっくりとな」
「えっ……でもまだ、お昼すぎですし……」
「い、一緒にお風呂は、ちょっと……」

嫌そうな顔をする双子たちに拒否られながらも、委員長は食い下がる。両手を上げて、無害であることをアピールしながら約束した。

「安心したまえ。指1本、触やしないさ」
「ほ、本当ですか……?」
「ああ、本当だとも」
「嘘だったら奥様に言いつけますよ……?」
「構わない。私は嘘はつかん」

双子たちがこっちを見たので頷いておく。

「わ、わかりました……」
「で、では、浴室へどうぞ……」
「ありがとう。では許嫁殿、先に湯を貰う」
「あ、うん……ごゆっくり」

唖然としながら見送って、ふと悪役貴族に目を向けると、奴はぽかんと口を開けながら委員長を凝視していて、なにやら発情している匂いがした気がした。まったくこの駄犬め。
88 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 21:59:28.55 ID:4FUh6A0cO
「なに見惚れてんのさ。いやらしい」
「ちげェよ。そうじゃなくてだなァ」
「どうせ夜が待ち遠しいだけでしょ」

ようやく怪我が完治した悪役貴族の見え透いた劣情を指摘するも、どうやらそれは邪推だったらしく奴は真面目な顔で考えを述べた。

「だから違ェっての。俺ァただ、あいつもいつか、てめェみてェになンじゃねェかって思っただけだァ。別に悪い意味じゃねェぞォ」
「ばっかみたい……委員長は、委員長だよ」

短髪でも、本質は変わらない。僕とは違う。

「髪を切っても……僕が僕であるようにね」
「たしかに髪の長さなンざ……関係ねェか」

僕がもし少しでも変われたなら、それはきっと髪の長さのせいではない。この先、また髪が長くなったとしても今の僕はあり続ける。
89 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/15(金) 22:01:24.79 ID:OPl6tlapO
「なァ……こっちに来たらどうだァ?」
「っ……そっちこそ、こっちに来たら?」

呼ばれてドキドキしながら、意地を張る僕。
髪を切っても伸びても、きっと変わらない。
たぶん少しの歩み寄りで変われるのだろう。

「チッ……しゃあねェなァ」
「面倒くさそうにこっちくんな、バカたれ」

とか言いつつも僕は嬉しさが隠しきれない。
最近、表情が上手く制御出来ない。嬉しかったらそれを隠せない。その変化が愛おしい。

「あァン? キスしたそォな顔してンぞォ?」
「は、はあ? それはこっちの台詞だし……」
「この瞬間は……あいつに感謝しねェとな」

奴に唇を奪いながらそう言われて、僕は委員長の心遣いに気づいた。きっと僕らを2人きりにしてくれたのだろう。悪役貴族との長い口付けを何度も交わしながら、僕は少しでも委員長たちが長風呂であるようにと祈った。


【僕は昼下がり、悪役貴族とキスに耽る】


FIN
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/12/15(金) 23:52:21.52 ID:+tXyewbm0
帝国から購入したバイクとか悪い意味でのトンデモワード良く書こうと思えるな
本人はオリジナル書いてるつもりなんだろうがギアスの世界観パクってるのバレバレだし
前回はハルヒのパクりだしでこれじゃオリジナルじゃなくてオシリアナルやん
91 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:06:59.18 ID:MpnHbCbhO
「お姉ちゃん、そろそろ交代してよ!」
「10分間で交代って決めたでしょ? まだ2分34秒しか経ってないから、我慢なさい」

現在、僕の膝はお姉ちゃんメイドに占領されていた。こうして定期的なスキンシップしてあげないとまた靴下事件や歯ブラシ事件のようなことが起きるので必要不可欠な触れ合いだ。双子じゃんけんに勝利して先着を勝ち取ったお姉ちゃんメイドは僕の胸元にほっぺたをくっつけてスリスリしている。かわいい。

「奥様、重くないですか……?」
「全然重くないよ。何時間だって平気さ」
「ああ、奥様……ずっとお傍にいたいです」
「ずっと傍にいて貰わないと僕が困るよ」
「ううっ……時間を飛び超えたいです……」

きゅっと抱きついてきたお姉ちゃんメイドを僕も抱き返す。妹ちゃんがそんな僕たちを凝視しながら爪を噛んで悔しがる。かわいい。
92 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:07:43.92 ID:kbKFon1PO
「本当なら2人同時に乗せたいところだけど僕がチビだから我慢させちゃってごめんね」
「はあ……奥様も双子なら良かったのに……」

もしも僕が双子だったらどうだろう。仲良く出来るだろうか。恐らく無理だ。何故ならば僕の婚約者は双子ではないからだ。きっと血で血を洗う、骨肉の争いに発展するだろう。
僕には確信がある。だってほら、目の前で。

「その髪……俺のせいで悪かったなァ」
「気にするな。私が許嫁殿に憧れた結果だ」
「ハッハァ! てめェはてめェで魅力的だァ」
「あっ、こら、だめ。許嫁殿が見てる……」
「アイツも見せつけてんだから、構うなァ」

双子ではないにせよ、僕と同じくらい髪が短くなった委員長が婚約者の膝に乗って、純白のスカートから伸びる艶かしい生足を撫でらている。それは男子生徒用のズボンの僕には出せない魅力だ。たとえ脱いだとしても僕の足は棒切れみたいに肉付きに乏しいけれど。

「私は許嫁殿よりも足が太くて申し訳ない」
「あいつにはあいつ、てめェにはてめェの魅力があンだよ。だからァもっと自信持てェ」
「そうか……気に入ってくれたなら嬉しい」

本当に双子じゃなくて良かった。キレそう。
93 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:09:13.34 ID:MeUz6tilO
「あっ……い、いけませんっ、奥様……!」
「ごめんよ。あいつが僕を挑発するんだ」
「あぅ……でしたら……仕方ありませんね」
「はい! 交代! お姉ちゃん、代わって!」
「まだ5分46秒しか経ってないでしょ!?」

気がつくと、無意識に僕のいけない手がお姉ちゃんメイドを弄り回していた。白タイツがサラサラしていて触り心地は抜群。そして妹メイドちゃんと喧嘩をし始める。かわいい。

「許嫁殿……そろそろ交代の時間だ」
「あれ? 委員長、早くない? もういいの?」
「ああ……これ以上は足腰が立たなくなる。それに私は学んだのだ。やりすぎは禁物と」

そのわりには切なそうな顔をしている。そんな我慢してまで僕に譲る必要はないのに。なにせこちらもこれからが良いところだし。まあ、交代するのはやぶさかではないけれど。
僕はお姉ちゃんを膝から降ろし立ち上がる。

「お、奥様! 私の番は!?」
「ごめんね。すぐ戻ってくるから待ってて」
「ううっ……はい……お待ちしております」

しゅんとした妹メイドちゃんの頭を、委員長が優しく撫でている。お姉ちゃんメイドも仕事のことやらを委員長に相談している。少しずつ打ち解けている様子だ。頑張れ委員長。
94 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:10:25.39 ID:QszWaTzCO
「で? さっきのなに? さすがに触りすぎ」
「そっちこそ、ベタベタしやがってよォ」
「まさか嫉妬したの? ヤキモチ焼いたの?」
「ケッ。それはてめェのほうだろうがァ」

ひょいと膝に乗って、いつも通り悪役貴族と口論をする。お互い嫉妬し合って、内心はムラムラして仕方ない。伸びてきた手を払う。

「なに勝手に触ろうとしてきてんの?」
「あァン? 俺が触ったら悪いのかァ?」
「触らせてくださいってお願いしろ」
「触ってくださいって言いやがれェ」

火照った顔を突き合わせて僕らは睨み合う。

「ふん。僕のことが好きなくせに」
「当たり前だァ。てめェはどォなんだァ?」
「っ……ひ、卑怯だぞ、バカたれ」

知ってる癖に。僕が言えないことを。好きだって。あの狸寝入りしていた時以降、僕は言えてない。それを知った上で挑発してくる。

「俺はてめェが好きだ。てめェのその生意気そうなツラも、てめェの細くてあったけェ身体も、てめェが罵詈雑言と共に吐き捨てた吐息すらも、全部俺の物にしてェと思ってる」
「あ、う……なに言ってんだよ、バカたれ」

悪役貴族は歯に衣着せない。乱暴な口調で思ったことをそのままストレートに僕にぶつけてくる。そのたびに僕の心臓が跳ねて、身体は熱くなり、脳内が支配されていく。嫌だ。
95 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 19:11:25.77 ID:nIRcknA1O
「その瞳で見つめないで……」
「あァン? どォしてだァ?」
「だって目、逸せなくなる。おかしくなる」

小指のピンキーリングを、親指で弄るのが癖になった。悪役貴族の紫水晶の瞳が、僕を捉えて離さない。支配されたくないと抗った。

「ハッハァ! てめェは勘違いしてんなァ?」
「へ? か、勘違いって、なんのこと……?」
「目を逸らせねェのは、俺のほうなンだよ」

僕の瞳にそんな魔力があるなんて知らない。
だけどもしそれが事実なら僕も奴を支配しているということになる。嬉しい。にやける。

「その瞳に映ってる自分の顔を見たくない」
「あァ、それなら簡単だァ。目を閉じろォ」
「っ……さっさとしろ、バカたれ……ぁむっ」

そうして僕らはようやくキスをする。たっぷりと時間をかけて瞬きをする間に終わるような刹那の時を共有する。最近キスばっかしてんな。でも全然飽きない。終わりは突然に。

「時間だ。妹メイドがお待ちかねだぞォ」
「ふん。もっとしたい癖に……強がんな」
「ハッ! お互い様だァ……また今度なァ」

また今度が待ち遠しい。時を飛び超えたい。


【僕は刹那、悪役貴族と時を超える】


FIN
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 20:50:43.90 ID:sBT1pKN30
このバカはずっと同じところで足踏みしてるだけなんだよな
本人は前進してるつもりなんだろうけど
試しに3年前に自分で書いた怪文書を見返してみるといい
一切の進歩がないことが分かるから。いや、このバカには分からんか
今は毎日怪文書を投下することしかこだわってないものな
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 21:34:56.34 ID:EgmkhOog0
そもそも自身で書いたゴミみたいな内容や形式を延々「セルフでパクってる」だけだからな

最近合点がいったが二次ネタもまとめサイトとかからパクれるような作品が無いと
一切書くことができないという。だからこういう匿名の掲示板で当時盛り上がっていた
アイマスとかハルヒとかを元にしないとゴミみたいなクオリティのものでさえ作ることすらできない

今流行ってるブルアカや原神とかここで全然書かれないからパクることもできないというね
普通に笛吹きとかいけば大量の作品があるのに。まあこいつの腐った脳みそじゃロクに検索すらできなそうだけど
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 21:45:57.31 ID:wl2Imjl90
向上心が無い構ってちゃんとか見たことも聞いたこともない珍獣じゃねーか
何が目的で延々とゾット帝国以下の文章みたいなゴミを量産しつづけるんだ?
そのモチベーションはどうやって維持してるんだマジで
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 21:48:58.33 ID:WfzS27v7O
>>97
最近の作品に関してはwikiや渋の百科事典とかの
情報量が多かったり複雑だったりでスカトロが
安易にパクれないのも大きいと思う
100 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 23:25:43.40 ID:MPCSXFx7O
「ああ、こんな姿を奥様が見られてる……」
「どうだ? なかなかに良いものだろう?」
「たしかに……これは想像以上です……はぅ」
「あっはっは! そうだろう、そうだろう!」

僕は一体、どこで教育を間違えたのだろう。
好奇心旺盛で積極的な妹メイドちゃんは、委員長に頼んで、僕の目の前で痴態を晒していた。どんどんおかしな趣味に目覚めている。

「なんて、はしたない……妹がすみません」
「いいんだよ。お姉ちゃんは興味ないの?」
「私は奥様一筋ですから、興味ありません」

お姉ちゃんメイドは痴態を晒す妹ちゃんを恥じているようだけど、きっと違う理由で顔が真っ赤になっている。たぶん無意識だろうけど僕の手を握りながら、妹ちゃんが喘ぐ姿をガン見していた。僕は優しくその手を離し、そっと背中を押して促して、耳元で囁いた。
101 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2023/12/16(土) 23:26:37.92 ID:MPCSXFx7O
「君も僕にかわいいところを見せておくれ」
「っ……そんな……奥様はいじわるです……」
「恥ずかしがらずに、ほら、行っておいで」
「ううっ……これは奥様のためですからね」
「おや? 君も来てくれるとは、嬉しいぞ!」

僕に唆されて、お姉ちゃんも委員長のもとへ向かった。嬉しそうに彼女を迎える委員長。
勘違いしないで頂きたいがこれは別に僕の趣味ではなく、単に委員長との仲を深めて貰いたいだけである。それにしても良い眺めだ。

「ハッ! 良い趣味してんなァ」
「どの口が言うんだよ、バカたれ」

目の保養をしていると、お風呂あがりの悪役貴族が邪悪に嘲笑い、当然のごとく僕の隣に座った。いつもはこいつと僕の髪は双子メイドたちが拭いて乾かしてくれるのだが、彼女たちは今、手が離せない。というよりも手がつけられないことをしている真っ最中なので悪役貴族は濡れた髪を、自分で拭いていた。
態度次第では僕が拭いてやってもいいのに。
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