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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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1 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/15(金) 20:56:18.10 ID:V4qJYoLE0
 時は二世紀末、漢王朝の時代。
 四世三公の名家たる袁家に代々仕えし武家である紀家に生まれた一人の男児。
 諱(いみな)を霊、真名を二郎というこの男は様々な出会いや経験を重ねていく中で、やがて世を席巻していく。
 しかし、彼には誰にも言えない一つの秘密があった。
 彼の頭の中には、異なる世界における未来で生きてきた前世の記憶が納められていたのだ――。
 これは、三国志っぽいけどなんか微妙に違和感のある世界で英雄豪傑(ただし美少女)に囲まれながら右往左往迷走奔走し、それでも前に進もうとする凡人のお話である。


※リトライとなりますが大筋ではそんなに変わらない見込みで
※なろうにても投下しております。こっちで書いて推敲してからなろうに投稿って感じです
※合いの手長文歓迎です


前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526044205/
過去スレ
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480942592/
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445344769/

どんどこいくよ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1573818977
2 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/15(金) 21:03:41.04 ID:V4qJYoLE0
時は二世紀末、漢王朝の時代。
四世三公の名家たる袁家に代々仕えし武家である紀家に生まれた一人の男児。
諱(いみな)を霊、真名を二郎というこの男は様々な出会いや経験を重ねていく中で、やがて世を席巻していく。
しかし、彼には誰にも言えない一つの秘密があった。
彼の頭の中には、異なる世界における未来で生きてきた前世の記憶が納められていたのだ――。
これは、三国志っぽいけどなんか微妙に違和感のある世界で英雄豪傑(ただし美少女)に囲まれながら右往左往迷走奔走し、それでも前に進もうとする凡人のお話である。


        | / ィ/  /  / ∨ イ:|  | ト、 | ヽ  ∨  |
        ∨. //    ' !l /´    !|: ,ハ!| Y.  V  | ̄ ̄ ̄¨ヽ
        /乂 〃    |.l |! |    |イ::.ム仕≧!|  ∨ |       \
      , ィ´/¨7' i  | |::|:l !|:匕   //::/ィ'チ无勹 | | | \    /
     / .l.,'  ,'.| | ::! !::!从弍≧、/ レ' 弋::::::リ リ .,' | |ハ     /
     \ .|l  ! | | ::::いレ/「::::└!       `辷, イ / :: | |∧   i ←袁術
      \|  |ハ | ::::いト、弋‐リ_       ノイ:::: | | W  |
        W Vハ! | ハ \ ''"´   ′  '´´ l::::. | ト、| l\ l
         ヽク  ハ  ヽ >-     rヽ    ノ:::.  |   い! `┘
         /  /ハ   :::> 、     ┘  イ/:::.  :|   ヽヽ
        / _/:::::::::::\   ::::.≧ー ‐「 W7 レ::::.  ハ   \\
  _,, -iイ>'"..::::::::::::::::::::::≧: 、 .:::::マ‐┤ |ノ_!:::.   /:: ハ:..   ヽ > 、
./ , イ /  ..::::::::::::::::://    \ .:::} _| 「  ` く / ̄`ヽ:::::..   \:::::...> 、_
 / //  .:::::::::::::::::::::l ̄ ̄ ̄|⌒ヽ', .::「J      )     V::::::::... >、:::::::::..`>-
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.. / /  .::::::::::>' ̄`>_」―‐-、   い :| _>――-、j ! レ´ /  / 〉-┐:::::::::::::::\:::::::::::
:/ /  ..:::::::::└‐ '"´ノ |    \  !厂       \| /  /  | :::::::::::::::::::\:::::::
3 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2019/11/15(金) 23:02:00.19 ID:tkqH/Ehp0
わぁ。早くも4スレですか。早いですね。

新スレ突入おめでとうございます。

……袁術ちゃんかわええ。でも誰かさんに初めてを捧げちゃうんだろうな(憶測)
じ……き……誰かさんは爆発四散しろ(呪い)
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/16(土) 14:47:29.54 ID:1bLC/zqEo
建て乙
5 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/18(月) 21:17:36.81 ID:MAElKcUL0
>>3
どもです。
サラマンダーより早くありたいとは思っております!

>……袁術ちゃんかわええ。でも誰かさんに初めてを捧げちゃうんだろうな(憶測)
それもどうなるか分からないようなご時世になりそうです。ご期待くださいませませ。

>>4
どもです。
6 :赤ペン [sage]:2019/11/18(月) 21:56:13.34 ID:ib875aHT0
立て乙です
さて…明日になっても埋まってなかったら私が前スレの1000を頂こう
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/18(月) 22:45:37.78 ID:y7b2GEDWO
完結したら前スレを埋めよう
8 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:17:01.66 ID:trIZpCq90
「なん、だと……」

地面が崩れていくような感覚が俺を襲い、そしてよろめく。

「では、ボクはこれで失礼しますね。あ、流琉によろしくお願いします」

桃色の髪を二つに結い上げた少女が物凄いスピードで去っていく。
その少女――許?――がもたらしたのは一通の書状。華琳からの書状。そこには二つのことしか記されていなかった。
曰く。

――董卓、叛す。
――呂布、何進を誅す。

どういう、ことだ。いや、詮索は後だ。よりによって華琳からの急報だ。

「風と七乃を呼べ!」

室の外に控える侍女に声を張り上げる。多分これは、やばい。
ちり、と危機感。

「どうされましたの?お顔の色がすぐれませんわね」

風だか七乃だかの機転だろうか。それとも余程俺の様子がおかしかったのだろうか。
室には風と七乃だけではなく、麗羽様、美羽様に猪々子と斗詩までいる。

「何進が討たれた、と華琳が報せてきました。
 呂布の手によるとのことです。
 であれば、おそらく此方にも手の者が来るでしょう」

報告する俺――ぐったりである――に麗羽様は柳眉を逆立てる。
そこに口を挟んだのは七乃だ。

「それはまた……。
 信憑性はあるのですか?
 曹操さんのことですから、此方の軽挙妄動を誘うという意図はないですかねえ」

「ないな。こちらを騙すつもりならもっとありそうなことを言ってくるさ。
 そして華琳のことだからな。迷ってる時間も与えてくれてないに違いない」

恐らく董家軍は今にもこの屋敷に殺到するべく迫っているはずだ。
それくらいのギリギリ、でもどうにかならないわけでもないくらいのタイミングを華琳なら狙う。

「では、押し寄せる董家軍にどうしましょうかね。守りを固めるのは論外ですねえ。多勢に無勢です。
 まあ、降るか逃げるか、ですが」

洛陽での軍事力は月と、禁軍を統べる朱儁に集約されている。
即応性を考えれば董家軍の優越は明らか。恐らく朱儁のとこにも兵は差し向けられているだろう。
で、あるならば。

「――降伏は性に合わん。逃げるとしよう。
 それで、よろしいですか?」

麗羽様に問う。いやまあ、これでダメって言われたらどうしようとか今更ながらに思いながら。

「よろしくってよ。二郎さんがそうおっしゃるならばそうしましょう。
 ――委細、お任せいたしますわ」

即答。その信頼の篤さにぎしり、と肩が軋んだ。
が、今はそれどころじゃあない。脱出行の最中にとっ捕まるとか間抜けの極みだ。
俺のみならばともかく、麗羽様や美羽様に恥をかかすわけにはいかん。
風と七乃にざっくりでもいいから計画を、策を求めようと目を向ける前に、七乃は口を開く。

「はいはい。こんなこともあろうかと北部尉は買収済みです。既に日は落ちていますが、鼻薬を嗅がせてますので、北面の門扉は開け放たれるかな?」

は。さっすが七乃。手回しがいい。
だが、それに風が異を唱える。

「今現在洛陽の警備は董卓さんの手中にあります。それはあからさますぎやしませんかねえ。
 囲師には必ず逃げ道を用意すべしと申します。
 そちらは危うい道かと〜」
9 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:17:28.31 ID:trIZpCq90
むむむ。そこいらへんどうなのよ、七乃ってば。

「そうですねえ。正直洛陽に於いてはまだまだ情報網は整備できてないのが現状です。
 ……ただでさえ黄巾の乱と袁胤様の乱で腕利きの細作がいなくなりましたからねえ。
 ですから、私からはなんとも」

……多分それは七乃にとっては屈辱だろう。諜報がための張家であるのだから。
それでも、張り付いた笑みでこう言ってくる。

張家の面目なんて、勝ってからいくらでも立てますから、と。

つまり、それほどの窮地なのだ。今は。
だったら、逃げるにしても全力を尽くさんと不味いな。

「屋敷にある甕、壺、そして匣(はこ)を馬車で連ねて北面へ。
 風、頼んだ」

「囮ですね、任されました〜」

だが、それだけでは時間をそんなに稼げないだろう。あっちには地の利がある。

「時間稼ぎは任せてもらいやしょう」

うっそりと、それでも確たる意思を込めて雷薄が口を開く。

「皆々様、ごゆるりと。きっちり時間を稼いでみまさあ!」

呵呵大笑。
体中に走る傷跡。兵卒から紀家軍の副将まで登り詰めた運も実力もある古強者(ベテラン)が、ぶ厚い胸を叩く。

「なーに。董家軍とは知らぬ仲でもないですからねえ。
 いよいよとなったら降りますよ。
 ……ようやくにも授かった初孫の顔を拝むまでは死んでも死にきれないですから!」

「ああ、そうか。だったら任せる」

迷う暇なぞない。
俺の言葉に、いかつい顔を綻ばせて、どすどすと足音も勇壮に室を去る。戦の準備なのだろう。
いくら降ることが前提とは言え、時を稼ぐには武威が必要だからして。

「それでは、華麗に遁走するとしましょう。でも、その前に……」

麗羽様、そして美羽様に相対する。

「ええと、流石にそのままでは無理があるのです」

きょとんとしたお二人になんと切り出したものか。

いや、なんだ。

貴女達、煌びやかすぎて悪目立ちするから遁走とか無理っぽいんですよとか――!

◆◆◆
10 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:18:26.40 ID:trIZpCq90
「アニキー荷物こんなもんかな?」
「おう。金目のもんは置いてけ。時間稼ぎになる。時間が金で買えるなら安いもんさ。
 服も着替えろよ。絹の服とかいっぺんでばれるからな」

うっそりと言うと、えへへ、とばかりにすり寄ってくる。

「分かってるってばー。そこいらへん、アニキの分も含めて斗詩が用意してくれてるよ?
 それはともかく、姫にはアニキからよろしくなー」

やっほうとばかりに身を翻して駆けていく猪々子。いや、なんか元気をもらった気がする。というか。
あんな目で見られたら、へこんでられんわなあ……。

「もう、ごわごわしますわねえ。それにこう、安っぽいというか、無粋と言うか……。
 いやですわ二郎さん。そんな、見ないでくださいな。見れたモノではないと云うのはわたくし自身が一番分かっておりますの」

粗末な、つぎはぎだらけの衣服を身に纏って麗羽様と美羽様が。

「や、正直これほどまでとは思ってなかったですよ。
 こんなにも、纏う衣服に関わりなく光輝あるとは思いませんでした」

いや、隠密行動するためには本当に駄目なんだよ。なんか満足げな姉妹にこれを言うのは気が咎めるなあ。
でも逡巡する余裕もないしなあ。

「どうしましたの?」
「いや、そのですね。お二方の光輝が隠しきれないのですよ。主に、その輝く御髪(おぐし)で……」

麗羽様に至ってはくるくる縦ロール全開なのだ。
 なんでも専用のセットのための器具があるらしい。歴史考証仕事しろ。

俺の言葉に麗羽様は苦笑して美羽様に顔を向ける。

「美羽さん。時として美しさは罪なのです。どうやらわたくしたちはその存在だけで世界の注目を集めてしまうようですわ」
「むむ、麗羽ねーさま。よくわからんが、それはまずいのではないかや?」
「その通りですわ。ですから、こうするのです!」

ばさり、と金色の欠片が地に墜ちる。
手にした短刀で麗羽様が自らの御髪をばっさりと切り捨てたのだ。

「美羽さん、よろしいですわね?」

無言でこくりと頷く美羽様の、蜂蜜色に輝く御髪をいっそ無造作に。

「二郎さん、これで身軽になったでしょう?」

ええと。
お流石でございます麗羽様。
でも。

「あ、あんなにお見事な御髪でしたのに……」

そうするべしと思っていても、口から出るのはそんな言葉。いや、軟弱者!
そんな風に思うのは感傷なのだろう。それを覆い尽くすが如く、暴風が吹き荒れることになる。

「はいはーい。これでもくらえ!ですー!」

ぶはり!とばかりに視界が灰色に染まる。

「みなさん、もっと薄汚くないといけませんよー」

どっから集めたか知らんが、大量の灰を俺たちにぶつけて七乃はにこやかに笑う。

――抗議の声を上げられなかったのは。彼女が、七乃が。
普段は絶対に身に付けない黒装束に身を纏っていたからだ。

どうやら、本当に生きるか死ぬかの局面なのだな。

「それでは、参りましょうか」

「頼んだ」

そうして俺たちは、洛陽の夜闇に踏み出すのであった。
11 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:19:03.68 ID:trIZpCq90
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案は
「大脱走」

よさげなの、よろしくお願いします。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/21(木) 00:03:51.76 ID:NRPsOLXBo
乙です

さーて緊迫感が高まって参りました
しかしショートの袁姉妹とかそれはそれで見たいですよね、絶対美人さんですよ


題案は
『灰被り達の逃走』
などと。
13 :青ペン [sage]:2019/11/21(木) 03:29:49.37 ID:vK0h7L80o
>>11
新スレ乙からの乙なんだよ

むむむ…
今回は敢えて【run for survive】
14 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/21(木) 21:52:10.25 ID:2+Mbb2E/0
>>12
どもです。

>さーて緊迫感が高まって参りました
あと3-6シーンでこの章完結予定です

>しかしショートの袁姉妹とかそれはそれで見たいですよね、絶対美人さんですよ
俺になあ、絵心あればなあw
絶対美人さんなんだよなあ

>『灰被り達の逃走』
ミスリードもできそうでよいですね。遁走のほうがいいかもしれないまである。
ほむ。

>>13
どもどもです。

>今回は敢えて【run for survive】
オサレ!でも英字はよっぽどじゃないとやらんです
だってニュアンスが制御できないもの


しかし、今月中に終わらせて冬休みあたりにあっちで投下っていけそうやで!
15 :青ペン [sage]:2019/11/22(金) 03:09:11.81 ID:fCnhQmIWo
>>14
(後ろにに〜逃走中〜ってつけるか迷ったのは内緒だよ)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 06:36:33.66 ID:5pK+deHNO
「明日への転進」なんてどうでしょう
17 :赤ペン [sage saga]:2019/11/22(金) 18:07:08.10 ID:OHSFnRog0
乙でしたー
>>8
>>囲師には必ず逃げ道を用意すべしと申します。  意味は分かりやすいので良いと思いますが
○囲師には必ず闕(か)くと申します。      原文はこれかな?もしくは【囲師は周することなかれと】とか?なんかちょっと気取った言い方をするのはもはや習慣(そんな事するから後世の人が意味を解読しなきゃならなくなるんだよ…古文なんて嫌いだ!
>>9
>>うっそりと、それでも確たる意思を込めて雷薄が口を開く。 これって【うっとり】とほぼ同じ意味なんですよね
○のっそりと、それでも確たる意思を込めて雷薄が口を開く。 【のんびり】とはちょっと違うけど動きが遅い。と言う意味ならこれかな
>>きっちり時間を稼いでみまさあ!」   喋り言葉だと分かり難いけどこれって《時間を稼いでみますよ》になるのかな
○きっちり時間を稼いでみせまさあ!」  だとしたら《稼いでみせますよ》になる方が良さそうかな
>>10
>>うっそりと言うと、えへへ、とばかりにすり寄ってくる。 こっちは慌てないためにあえてそう振る舞ってる感じもするので
○おっとりと言うと、えへへ、とばかりにすり寄ってくる。 二郎らしくないか?あとは【のほほんと】とか【のんびりと】とか?

雷簿!約束だからな!!いよいよとなったら降るって紀霊も袁術も袁紹も聞いたからな!口約束だからって破ったりしたらのk…故郷の家族がどうなるか分かってるよな!?
その髪の毛ガチで金になりそうよね…昔の鬘の材料的に。なんとなく七乃が懐に忍ばせてそうだけどまさかね
18 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 21:57:22.31 ID:sTNFGTqg0
>>15

そういうことかw

>>16
よきです。
いい。こういうセンスは一ノ瀬にはないもので、嫉妬すらしてしまう。

>>17
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>雷簿!約束だからな!!いよいよとなったら降るって紀霊も袁術も袁紹も聞いたからな!口約束だからって破ったりしたらのk…故郷の家族がどうなるか分かってるよな!?
これ言った時にどういう覚悟を決めていたか、ということですよね。
故郷の家族は、雷薄が儚くなったら優遇されますよね?

>その髪の毛ガチで金になりそうよね…
そのネタは黄金拍車で割と効きます
多分無為に炎となるのではないかな(ネタバレ)
19 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 22:22:45.05 ID:sTNFGTqg0
七乃に先導されて俺たちは夜の洛陽をひた走る。足音一つ立てず――黒装束もあって――ともすれば見失いそうになるほど七乃は穏行していて。彼女の本領を改めて認識する次第である。
通りごとに足を止め、手鏡で先を慎重に確認しているのに追いつくのも一苦労である。
治安のよろしくないエリアを通っているので、そこいらのごろつきに絡まれそうになることもあるが、猪々子が瞬時に黙らせる(物理)。

七乃に続くのは猪々子、麗羽様が続いて美羽様を背負った俺を斗詩が後ろでフォローしてくれている。そんな構図(フォーメーション)である。

迷いなく進む七乃。いや、実際大したものである。
基本、何進という裏表に絶対的な影響力がある存在があった。その手前、洛陽では諜報活動を自粛していたのだが、美羽様入内が決まってからは精力的に動き回っていた、みたいです。
きっと、今進んでいる道だって彼女の地道な積み重ねがあってのルート選定なのだろう。
そして、目的地にたどり着く。そこは門扉……などではなく、洛陽を取り囲む防壁である。

「はい、到着しましたー。ひとまず私のお仕事はここまでですねー」

そ、と視線を外に向け、索敵を。いつ追手が来るか分かったもんじゃないしな。いや、雷薄や風がうまいことひきつけてくれているとは思うのだが。

「じゃあ、私達の出番ですね」

にこり、と斗詩は笑って準備運動を始める。背負った荷物を下ろし、ゆっくりと柔軟体操(ウォヲーミングアップ)を始める。
それは、いつも俺たちの鍛錬の前にやっていたルーチン。万全を期すためにもこれは外せない。

「頼むぜー、斗詩ー。アタイらの未来は斗詩にかかってんだからさー」

にひひ、とお気楽な口調で猪々子が煽る。

「うん。文ちゃん。そうだね。今、すごく気合いが入ってるよ。すっごく身体が軽い。怖いものなんてない。
 そう。絶好調、ってやつかな」

斗詩にしては珍しくそんな軽口を叩く。屈伸、そして伸び上がり、軽く跳ねる。
にか、と猪々子は笑ってこちらを見る。

「アニキ、アタイらはいつでもいいぜ」

軽く頷き、三尖刀を手にする。
俺の身体能力はこの二人に及ばない。だが、こいつの力を発動させることで俺の力は猪々子に匹敵するのである。
これを知るのは袁家でも限られた面子。そしてこの子らはずっとそれを知っていて。その上で俺を。

「よしこい!斗詩!」

三尖刀に何かが吸われ、全能感が身体に満ちる。筋肉の一筋、細胞の一つまでもが活性化されたようなそれに意識を馴染ませる。
俺と猪々子が並び立つその中央めがけて斗詩が全速力で走ってくる。一陣の風となり、踏み込む。
20 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 22:23:11.36 ID:sTNFGTqg0
「そおおおおおおおおおおおおおおおい!」

斗詩のその運動エネルギーを、ベクトルを上方に置換する。捕えた足からもたらされる運動エネルギーを全て上方に変換して跳ねあげる。いけ! 
ぶち、と筋肉の切れる音が内側から響くのも構わずに。

「ああああああああああああ!」

猪々子の絶叫がかすかに耳に入る。
そう、これは昔日によくやった遊びの延長。どれだけ高く飛べるかを競ったそれの延長。
違うのは、その行為にかかっているものが大きいということ。

見れば、ぎゅん、と斗詩は上昇を続ける。跳んでいく。斗詩の運足の妙あってのことだ。俺や猪々子ならば城壁にぶち当たってしまう。

ぐんぐんと上昇し、その最頂点に達しても流石に城壁の頂上には届かない。だがそれは織り込み済み。

ギン!と鋭い音が響く。いつの間にか手にしていた双剣を、見事詰まれた石の隙間にねじ込んだのだ。

「――ふう、うまくいったか」

「そう、みたいだね。
 よかったぁ」

ぎゅ、と猪々子が後ろから抱きついてくる。僅かに振るえているのはそれでもやはり心配なのだろう。
これからが斗詩に無茶振りした正念場である。

「きっと、大丈夫だよね?アニキ……」

双剣だけを頼りに、少しずつ斗詩が登り始める。石の隙間に双剣を突き立て、その身体をじり、じりと持ち上げていく。
突風の一つもあれば飛ばされそうなほどそれは危うくも見える。

「斗詩さん……」

心配そうに麗羽様が俺に縋り付いてくる。美羽様は無言でぎゅ、と。

ええい、見守るだけの身が情けない。
急速に力が抜けていく感覚に身を委ねながら、俺は無言で斗詩を見守ることしかできない。

どれだけの時間が過ぎたのだろう。永劫とも思えるそれは案外そうでもなかったのかもしれない。
じりじりと、それでも確実に上る斗詩。まあ、たまに剣が弾かれた時にはもう心臓がタップダンスを踊ったものだが。
それでも、ようやくに城壁の上に到達したのを見て。

「よ、よかったあ」

門扉が警戒されてるならば城壁を越えればいいじゃないというのを通しきったのだが、精神的に疲れた。いや、多分一番疲れたのは斗詩だろうけども。

「はいはーい。二郎さんは周囲の警戒お願いしますね。ここまできて捉えられたら意味がないですし」

にこりと笑って七乃が壁際に立つ。
――呆けていた俺たちに代わって周囲を警戒していてくれたのだと今更ながらに気づく。
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