671: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/08(日) 12:36:30.63 ID:5MWtUFJH0
璃奈「……そのとき……開いたんだ」
愛「……開いた……?」
璃奈「──高次元への……ホールが……」
愛「え……?」
璃奈「お父さんとお母さんは……そこに吸い込まれて……消えていった」
愛「……う、嘘……? じゃあ、りなりーはもうすでに……高次元空間へアクセスする瞬間を……目撃してたの……?」
璃奈「うん。私も……ニャスパーがサイコパワーで守ってくれなかったら……吸い込まれてたかもしれない……」
「…ゥニャ?」
愛「じゃあ、それを発表すれば……!」
璃奈「うぅん、発表したけど……誰も信じてくれなかった」
愛「な、なんで……!? 実際に見たんでしょ……!?」
確かに私は見た。お父さんとお母さんが、ホールに飲み込まれるところを……。ただ……。
璃奈「証拠が……何も残ってなかった。……記録機器も全部ホールに飲み込まれちゃったし……そのときに研究資料の大半も一緒にホールに飲み込まれちゃった……」
愛「でも、りなりーの証言があれば……! 事故直後なら、子供の言うことだとしても全く検証しないことなんて……」
璃奈「私ね、そのときのショックが原因で……声が出なくなっちゃって……4年間くらい、喋れなかったんだ」
愛「え」
璃奈「だから、あのときのことを人に言えるようになったのは……本当につい最近。その間に、お父さんとお母さんのことは……実験中に起きた爆発事故として片づけられちゃって……」
愛「……」
だから、発表をしても、子供の妄想で片付けられてしまった。
……でも、それはそうかもしれない。
資料もない、記録もない、証拠は5年前に私が見たという事実だけ。
そんなものを信じるのは──科学ではない。
璃奈「だから……私はお父さんとお母さんが気付いてたこと……世界に何が起きてるのかを突き止めなくちゃいけない……。お父さんとお母さんの理論を、研究を、完成させないといけない……」
愛「りなりー……」
璃奈「そうじゃないと……お父さんとお母さんが、報われないから……」
愛「…………」
愛さんは無言で私を抱きしめる。
強い力で……自分の胸に、私を抱き寄せる。
愛「…………りなりー……」
璃奈「……なぁに……?」
愛「…………研究、絶対に……完成させよう……」
璃奈「……うん」
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