670: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/08(日) 12:35:56.18 ID:5MWtUFJH0
強く抱きしめられて、少し苦しい。……だけど、嫌ではない。むしろ、この距離感が温かくて……なんだか幸せだった。
璃奈「……ねぇ、愛さん」
愛「んー?」
璃奈「……愛さんは、私の家族のこと……聞かないの……?」
愛「んー……気にならないわけじゃないけど……デリケートな話だから……。……でも、りなりーが話したいなら、いくらでも聞くよ」
璃奈「……うん。……聞いて欲しい……。……お父さんと……お母さんのこと……」
愛「わかった」
璃奈「……うん」
悲しくなっちゃうから……出来る限り思い出さないようにしていたけど……。
でも、きっと……これは忘れちゃいけないことだから……。
お父さんとお母さんの為そうとしていたことを……愛さんにも知って欲しかったから……。
私は、ぽつりぽつりと、話し始める。
📶 📶 📶
私のお父さんとお母さんは、お互いがもともと研究者の家系で、同じ研究所で出会い、結婚し、そのときに自分たちの研究所を持ち……その数年後に私が生まれた。
お父さんとお母さんは二人とも研究一筋な人たちで……家族の時間らしい時間がたくさんあったかと言われると、少し怪しかった気がする……。
だけど、間違いなく二人とも私を愛してくれていたし、私はお父さんもお母さんも好きだったし、子供心に研究者である二人を誇らしく思っていたことをよく覚えている。
だからかもしれないけど……私は小さい頃から、お父さんとお母さんの研究論文をよく読んでいた。
私が内容を理解出来るとお父さんもお母さんも喜んでいたし、褒めてくれたから、私は二人の研究結果をたくさん読んだ。
わからないことがあっても聞けばすぐに教えてくれたし、お父さんとお母さんの論文を読むために勉強をするのは楽しかった。
愛「──そのときから……りなりーのお父さんとお母さんは、高次元空間について研究してたの?」
璃奈「うん、ずっと研究してた。いつも私に『いつかこの研究が世界を救うから』って言ってたよ」
愛「世界を……救う……?」
愛さんは私の言葉に首を傾げる。
璃奈「あのね……お父さんとお母さんは、今の世界がどうしてこうなっちゃったのかが……わかってたみたいなんだ」
愛「……マジで?」
璃奈「うん……世界のエネルギーは……高次元空間にどんどん漏れ出して行ってるせいで……世界がどんどん委縮していっちゃってるんだって……」
愛「……じゃあ、世界のあちこちが急に崩落するのは……」
璃奈「……世界を維持するだけのエネルギーが……徐々に失われているから……。だから、私のお父さんとお母さんは、それが失われている先──高次元空間へアクセスする方法をずっと研究していた。……だけど、その研究の実験中に……事故が起きた」
愛「……」
いつもの昼下がりだった。
私は実験室の隅っこで、お父さんとお母さんの研究を見ていた。
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