669: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/08(日) 12:35:16.05 ID:5MWtUFJH0
璃奈「…………愛さん……変に思わないんだね……」
愛「ん?」
璃奈「……私が……甘えてきても……」
愛「まーね。……アタシも昔は、よく近所のお姉ちゃんに甘えてたから。なんとなく気持ち、わかるというかさ」
璃奈「そうなの……?」
愛「うん。……まあ、お姉ちゃん身体が弱くってさ……もう死んじゃったんだけど……。……今の世の中、身体が弱っちゃうと、なかなかね……」
璃奈「…………」
愛「って、こんな暗い話聞きたくないよね、ごめんごめん」
璃奈「うぅん……愛さんが嫌じゃなかったら……愛さんの家族のこと……知りたい」
愛「そう……? ……えっと、アタシね……生まれてすぐにお父さんもお母さんも病気で死んじゃったらしくってさ。顔も写真でしか見たことないんだよね。だから、おばあちゃんに育ててもらったんだ。そんで近所には美里お姉ちゃんって人が居て……よく一緒に遊んでもらってた」
璃奈「……うん」
愛「おばあちゃんもいい歳だったし、お姉ちゃんも身体が弱かったからさ、あんまり遠出とかできなかったんだけど……。……一度だけお姉ちゃんの調子がよくなった時期があってさ、そのときに陽光の丘に一緒に遊びに行ったんだ」
璃奈「陽光の丘……ベベノムが生息してる街はずれの暖かい丘だよね」
愛「そうそう。……あそこって今では世界一のどかな場所って言われてるらしくってさ。ポニータの乗馬体験とか出来るんだよ」
璃奈「そうなんだ……」
愛「うん。お姉ちゃんはね、ポケモンが好きな人だったから、ポニータを間近で見られてすっごく嬉しそうにしてたんだ……それに、すっごく楽しそうだったんだ。だから、もっともっとたくさんお姉ちゃんとこうして楽しいことが出来ればって思ってたんだけど……お姉ちゃん、またすぐに身体の調子悪くしちゃってさ」
璃奈「…………」
愛「でさ、そのときに丁度、ポケモンをボールに収めて持ち運ぶ研究をしてるって話をたまたま知ったんだ。……もし、そんな風に持ち運べたら、お姉ちゃんにいろんなポケモンを見せてあげられるんじゃないかって」
璃奈「……だから、愛さん……ビーストボールの研究を……」
愛「うん、始めた理由はそんな感じ。……だけど、アタシが研究所に入るための勉強をしてる間に……死んじゃったんだ。丁度、半年前……“闇の落日”のときにさ、薬とか食料が不足した時期があったでしょ? そのときにね……」
璃奈「……そっか……」
愛「んで、アタシが研究所に入所が決まったのとほぼ同時くらいかな……今度はおばあちゃんが倒れちゃってね……。そんで、おばあちゃんもそのまま……。だから、実はアタシも今は身寄りとかないんだよね。……だからある意味……研究所に入れてよかったよ。ここは寮もあって、住み込みで研究出来るし……」
私たちの住んでいる場所では、親を亡くして身寄りがない子は少なくない。
“闇の落日”でより増えたとは思うけど……元より病死率が高いため、小さい頃から天涯孤独になってしまう子供がすごく多い。
だから、孤児院は多くあるし……13〜4歳くらいになると、お金を稼ぐために働き始める子も多い。
私や愛さんみたいに、その働き口が研究者なのはレアケースだけど……。多くの子は、実入りがある警備隊に入ることが多いと聞く。
ただ……隊での仕事は危険が伴うため、そこで死んでしまう子供も多い。……今は……そういう、世の中。
危険な場所に赴かずとも……仕事と住む場所を与えられている私たちは……確かに恵まれているのかもしれない。
愛「……だから、自分を重ねちゃって……りなりーのことほっとけないなって思っちゃったところもあるんだけど……。……今考えてみると、寂しいのはアタシも同じだったのかも、なんて」
そう言って力なく笑う愛さん。
私は……そんな愛さんの頭を撫でる。
愛「……ありがと、りなりー……」
璃奈「私は……愛さんのお陰で……寂しくないよ……。むしろ……愛さんと会うまで……今まで、自分が寂しいって思ってたことにすら……気付いてなかったんだ……」
愛「そっか……ならよかった」
璃奈「もし……私も愛さんの寂しさを少しでも埋めてあげられてるなら……嬉しい」
愛「……あーもー……! りなりーってば、ホント可愛い〜!」
璃奈「わわっ……あ、愛さん……く、苦しい……」
愛「うりうり〜……♪」
璃奈「愛さん……」
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