125: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:15:42.34 ID:hK/wqtGYO
二人の会話を聞く限りでは、書置きを残して出てすぐは、さなの家出を信じていなかったらしい。
だが、食事がまったく減らない日が続くうちに、ようやく本当だと気づいたようだ。それから実母は
徐々に変調をきたしたらしい。
そこへ扉が開く音が聞こえ、そちらへ移動すると、実母がさなの元・自室だった部屋の扉を開いていた。
126: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:19:28.84 ID:hK/wqtGYO
「まるで、透明人間にでもなったみたいだね」
「そんな非科学的なことがあるわけないだろう。あんな出来損ないでも、一応の分は弁えていた。
家に帰る時間が遅かった分、顔を合わせる可能性が少なくて助かった。今思えば、さなが家に
居たときのほうが、まだ面倒が少なかったかもしれん」
「もしかして姉さんの学費、まだ払ってるの?」
127: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:30:23.16 ID:hK/wqtGYO
家にいると仮定されたさなへの、食事の用意は平日は夜のみだが、休日は朝、昼、夜の
三食を用意していた。だが、何れもさなの元・自室に食事を運んでは、下げる前に自分で
平らげて片付けていた。
義父は神浜大学の医学部の教授に就いているが、自尊心の高さが災いしたのか、
128: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:31:24.01 ID:hK/wqtGYO
家にいると仮定されたさなへの、食事の用意は平日は夜のみだが、休日は朝、昼、夜の
三食を用意していた。だが、何れもさなの元・自室に食事を運んでは、下げる前に自分で
平らげて片付けていた。
義父は神浜大学の医学部の教授に就いているが、自尊心の高さが災いしたのか、
129: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:34:38.76 ID:hK/wqtGYO
それからしばらくして、義兄が林間学校で神浜市を離れ、不在の日が数日続いた。
その頃になると、さなは違和感の正体に気付き、自分の中で答えを出した。
この一家は一見すると完璧だが、一皮剥けば欠点がいくらでも存在している。
義父の理想を沿っている間は安定しているが、少しでも逸れた途端不安定になり、
130: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:37:43.12 ID:hK/wqtGYO
自身の中で違和感への折り合いが付き、未来へ渡ることへ考えもまとまった。
灯花とねむへ求める対価も決まったことで、みかづき荘に帰ろうとしたとき、
それは突然起こった。
義兄が林間学校から帰る前日だったその日、地震が起きた。
131: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:38:39.13 ID:hK/wqtGYO
本日はここまでです。続きは来週月曜日以降に。
132: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/15(月) 19:32:31.51 ID:KiQxSCGiO
>>130からの続き
鶴乃とさなが折り合いをつけている時と同じ頃、ねむが下した決断に思案を巡らせるため、
桜子は自身の居場所である、北養区の山の一角で静かに佇んでいた。目を閉じ、自分が
ウワサとして形を得る前の頃を思い出し、自身の記憶を追体験する。
133: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/15(月) 19:45:20.86 ID:KiQxSCGiO
交通機関は使わず、北養区から徒歩で向かい、山を下りて街へ出ると道中の景色を見渡す。
見慣れた景色が見納めとなる日は緩やかに、だが確実に近づいており、あと何度目にできるか分からない。
いろはたちが命を賭して守り抜いた街が、百年後には失われている可能性もある。
未来へ渡る要員として選ばれたことから、桜子は、鶴乃、さなと同じく、W−1、W−2からは
134: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/15(月) 19:51:39.23 ID:KiQxSCGiO
「|……令と郁美が好きだった花が何か分からない|」
「そうだなぁ……それなら、私が選んでもいいかな?」
「|いいの?|」
「これでも花選びには自信があるんだ。桜子ちゃんさえ差し支えなければ」
「|それなら、このみにお願いする|」
135: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/15(月) 19:59:54.82 ID:KiQxSCGiO
時間はあらゆる存在を押し流し、現実は無慈悲に通り過ぎていく。
あらゆる存在に平等に時間は流れ、それはウワサである桜子たちにも同じ同じことが言えた。
桜子たちは形を得た後、彼女以外のウワサは、危険な存在として外の世界に形を成してしまった。
かつて存在したマギウスの翼が掲げた「魔法少女の解放」、「魔法少女至上主義」。
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