25: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:15:19.36 ID:86/EQe0g0
そう、彼女は言った。私が昨日のあの濃青のラナンキュラスが好きだからあの花束が作れた。それなら朋花は、どんな花でどんな花束を作るのだろうか。
「私、朋花がどんな花束を作るのか見たいな」
「はい〜?」
「ね、作ってみてよ。もちろん使った花のお金は、私が出すから」
最初は驚いた顔をした朋花だったが、すぐまたいつもの笑顔に戻って言った。
26: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:16:15.93 ID:86/EQe0g0
大ぶりのアジサイをベースにプロテアやトルコキキョウ、そしてビバーナムという構成だ。
朋花の好みだという淡いブルーが活きていて、はなやかだけど気品を感じる。
ただそれよりも私が強く思ったのは……
「さよなら、私の今月来月のおこずかい……」
「言い出したのは、凛さんですよ〜? それに〜」
27: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:17:10.91 ID:86/EQe0g0
「凛……これ、あなたが作った花束じゃないわよね」
配達から帰ってきたお母さんは、花束を目にするなりそう言った。
「うん。それは友達が……あ、ちゃ、ちゃんとお金は私が払うから」
「……それ、昨日言ってた娘? 友達になったの?」
28: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:17:49.36 ID:86/EQe0g0
「ずいぶんと、仲良くなったのね」
肩をすくめて苦笑しながらお母さんが言う。
「え? なんで?」
「これ生け花なら、四種いけでしょ? あなたの流儀にその娘が主義を曲げて作ってくれたのよ。いいお友達ね」
「あ……そうか」
29: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:18:31.99 ID:86/EQe0g0
校内で彼女、天空橋朋花を見つけるのはさほど難しいことではない。
人が集まっている場所を探し、その真ん中を見に行けばいいからだ。
たまに朋花ではない場合もあるが、それでも次の集団を探せばだいたい朋花がいる。
だが、見つけるのが容易いということと、彼女に話しかけられるかと言うことはまた別だ。
30: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:19:10.51 ID:86/EQe0g0
「そう言えばさ」
そうした私の心情を酌んでか、彼女も同じ気持ちなのか、朋花も週に1度ぐらいはうちの店に寄ってくれる。
「朋花は私のこと、知ってたんだよね。前から」
「孫子曰く」
「え?」
31: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:20:16.74 ID:86/EQe0g0
「凛さんのことは、J組まで伝わってきてますよ〜。残念ながらA組には、私のことは伝わっていなかったみたいですが〜」
「あ、それは違うよ。私の友達は知ってたよ、朋花のこと。私はそういうのに疎かっただけ……え? なんでJ組に私のことが伝わってるの?」
朋花は少しだけ、いつもの微笑を解いた。
「A組に、すごく綺麗な娘がいる。美人でスタイルもよくて靡くような綺麗な髪で、いつもクールな佇まいで少し近寄りがたいけど、笑うと目が離せない……そんな噂」
それは誰の話だろう。少なくとも私じゃないと思う……
32: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:21:20.55 ID:86/EQe0g0
そうなんだろうか?
「私の子豚ちゃんが、凛さんに魅了されてしまうんじゃないかと心配していたんですよ、私は〜」
そんなことはないだろうと私はわかっているけれど、朋花が心配しているというのもまた本当なんだと、彼女を見ているとわかる。
今の彼女は、嘘偽りなく真剣だ。
私は顔が赤くなるのを自覚した。
33: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:22:04.25 ID:86/EQe0g0
ちょっと泣きそうなぐらい、私には嬉しいことだった。
34: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:22:47.85 ID:86/EQe0g0
「どうしたんですか〜?」
「ご、ごめ、ちょっと……教室に戻るね!」
もう朋花の顔が見られなかった。
真っ赤になった顔を隠すように、私はその場を走り去った。
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