21:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:30:47.11 ID:emsexCaj0
その後、トレーナーの容態は持ち直して、嘘のような小康状態を保った。
ただ、いつ急変してもおかしくない状態でもあった。
見舞いのたびに、トレーナーはしつこく、新しいトレーナーと上手くいっているか確認してきた。
トレーニングの内容を詳しく聞きたがった。
22:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:31:58.94 ID:emsexCaj0
「じゃあ、また来るよ」
タキオンはそう言って、パイプ椅子から立ち上がった。
「トレーニングで忙しくなるから、これからは頻繁に来られなくなるが」
23:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:33:51.12 ID:emsexCaj0
新しいトレーナーは優しそうな人間だった。
結果を何度もあげている優秀なトレーナーだと理事長に紹介された。
新しいトレーナーはタキオンのことを気遣わしげに見て、
君の事情は聞いているし、前任からタキオンについての共有は受けている、
24:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:34:58.40 ID:emsexCaj0
そして、夜に抜け出して、追加のトレーニングをした。
睡眠時間を削って、自分を痛めつけるようなトレーニングを、毎日行った。
絶対に一着をとらないといけない。
トレーナのために、絶対に一着をとらないといけない。
25:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:36:05.43 ID:emsexCaj0
脚に少し違和感を覚えるようになった。
冷却スプレーをかけながら、誰かにこのことを気付かれたら面倒だなと思った。
前に同様のことで、少し気取られかけたことがあるから、注意しないといけない。
あの新しいトレーナーには大丈夫だろうと思った。
26:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:37:11.54 ID:emsexCaj0
新しいトレーナーは、病室をたまに訪ねているらしい。
不愉快に感じながら何をしに行っているのかときくと、トレーニングの進捗具合の報告をして、
タキオンのことを褒めちぎって、次のレースは一着間違いないですよとのたまっているらしい。
相性バッチリだもんなと笑うこいつの姿はこの上なく不愉快だったが、
27:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:38:32.28 ID:emsexCaj0
今日、トレーニングの前に、胃の内容物を吐き出した。
よく分からない色の液体がトイレの中に落ちた。
どうやら身体の不調は深刻らしい。
薬の量を増やすことにした。
28:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:40:07.18 ID:emsexCaj0
追加の自主トレーニングの途中、脚が妙にむずがゆかった。
タキオンは苛立たし気に、脚を叩きつけるように、何度も、地面を勢いよく踏みつけた。
「タキオン」
29:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:41:16.43 ID:emsexCaj0
ルドルフは、少し逡巡したが、タキオンに向かって言った。
「…ハードワークは、非効率的だと思わないか?」
「…場合による」
30:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:42:31.25 ID:emsexCaj0
苛々とする。
どうしてしつこく話しかけてくるんだろう。
どうして真っ直ぐにこちらを見て、何かを伝えようとしてくるのだろう。
いらない。何もいらない。
31:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:43:46.13 ID:emsexCaj0
彼女は私が走る姿を、いつもキラキラとした目で見つめた。
走り終える私に駆け寄って、お疲れ様、と笑顔で迎えてくれた。
いつも熱を込めて私に語る。
私も、あなたと一緒に果てが見たい。
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