26: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:22:25.44 ID:wEzeH4cQ0
目を閉じれば、そこにさっきまでの光景が浮かんでくる。
客席いっぱいに広がった桃色の光たちが、さざ波のように優しく揺れている。
私が手を伸ばせば、それに応えるみたいに、たくさんの光が私に近づいてくる。
ステージの上から、サイリウムを振る一人一人の顔が見えて、胸がいっぱいになる。
27: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:23:39.97 ID:wEzeH4cQ0
「──やっぱり此処に居たんですね、このみさん」
「あら、プロデューサー。呼びに来てくれたの?」
28: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:24:12.23 ID:wEzeH4cQ0
彼から差し出されるままに、手紙の束を私は両手で受け取った。
一番上にあるのは、薄桃色をした便箋だった。
そこには、手書きで『765プロダクション 馬場このみさまへ』と書いてある。
29: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:25:05.98 ID:wEzeH4cQ0
◆
僕は、フロントに鍵を預けて、ホテルの外へ出た。
眩しい日差しに、思わず身が引き締まる。
30: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:25:59.61 ID:wEzeH4cQ0
彼女のことを知ったのは、ほんの一年くらい前。
学校の友人に誘われて、公演を観に行ったことがきっかけだった。
将来の進路の事で悩んでいた僕を掬い上げてくれたのが、彼女の『水中キャンディ』だった。
31: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:26:34.67 ID:wEzeH4cQ0
目の前には、大きな門扉が開かれていた。
そしてそのすぐ脇には、『二次試験 試験会場』と書かれた、白い看板が立っている。
僕は看板の前で立ち止まって、そっとイヤホンを外した。
32: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:27:15.49 ID:wEzeH4cQ0
◇
あの日から、何週間かが経った。
住み慣れたこの街を歩くと、少しずつ季節は移り変わっていることを実感した。
33: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:28:02.44 ID:wEzeH4cQ0
今日の定期公演では、開演前に握手会が設けられる事になっている。
765プロライブ劇場では、このような構成のイベントが、結構頻繁に行われる。
基本的には、当日の公演の出演者と同じメンバーが参加する。
僕はスタッフに携帯のメール画面を見せて、劇場の中に入った。
34: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:29:02.58 ID:wEzeH4cQ0
「──い、いつも応援しています!」
「ウフフ、ありがとう。お姉さんも頑張るわね♪」
35: ◆Kg/mN/l4wC1M
2021/03/19(金) 12:29:57.08 ID:wEzeH4cQ0
「私もね、みんなが振ってくれるサイリウムの光に、いつだって勇気をもらってるの。……だから、私からも言わせてほしい」
「いつも、ありがとう」
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