20:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:03:33.01 ID:2kLflUvfO
ギターを適当に床に転がして、彼女は僕の方を見た。
「お腹減ってるんだよね。なんか作ろうか?」
21:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:08:46.73 ID:2kLflUvfO
調理にそう時間はかからず、僕が待ちくたびれる前に彼女は料理を完成させた。
ダイニングテーブルに配膳されたのはシンプルな山盛りの牛丼で、
呼ばれて席に着くや否や、僕は一も二もなくがっついた。
22:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:10:47.24 ID:2kLflUvfO
フードファイターもかくやというスピードで飯を平らげて
膨れた腹をさする僕に向かい、
さて、と彼女は言った。
23:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:14:00.08 ID:2kLflUvfO
「身体で、というと」
僕はごくりと唾を飲んだ。
「エロい意味ですか」
24:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:17:56.56 ID:2kLflUvfO
「さて、わかりやすい取引を提示しよう」
彼女はどこからか一枚の紙を取り出して、僕に手渡した。
25:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:22:48.95 ID:2kLflUvfO
「なんつーか」と僕は言った。「俗っぽい」
俗で何が悪い、と彼女は憤った。
26:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:24:48.03 ID:2kLflUvfO
「意味がわからない」と僕は正直に言った。
「それが天使化現象の正体だって?
空を飛べると確信して、空を飛ぼうとすることが?」
27:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:27:22.64 ID:2kLflUvfO
「人がやがて人ならざるものに進化するなんて、
SFじゃあ定石の展開でしょ?
それが思った以上に唐突で急速だったってだけだよ」
28:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:30:19.71 ID:2kLflUvfO
そういうわけで、と言いながら彼女は僕の手元の紙を取り返す。
「私には残されたミッションが山ほどあるから、手伝いなさい。
なんか日々が充実してなさそうな鬱屈したツラをしているし、
29:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:32:20.40 ID:2kLflUvfO
帰ろうとする僕を、彼女は玄関まで見送った。
「そういえば、なんて呼べばいい?」と彼女が言った。
「君のこと。強盗君じゃあないんでしょう」
30:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:33:28.38 ID:2kLflUvfO
外に出て、壁に立てかけていたクロスバイクを反転させる。
「なあ少年」と、彼女が僕に話しかける。
「思うにね、私たちは幽霊なんだよ」
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