玉座の間にて
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17: ◆CItYBDS.l2
2021/02/03(水) 22:34:39.91 ID:MC1F9erq0

初めて聞く話であった。それに、魔王が倒れた今確かめようのない事実でもある。
しかし、魔王の下に送り込んだ戦士たちが勇者一党を除いて誰も戻らなかったことを思えば、その恐ろしさは真実なのであろう。

「そして、その子孫である貴殿もまたその栄華に授かったわけだ。
以下略 AAS



18: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/03(水) 22:35:20.36 ID:MC1F9erq0

「失礼。我が一門の話でした……。

―――そう。我らが先祖は、勇を示したからこそ『勇者』と称されたわけでございます。
それゆえに、その息子である二代目は自身が《勇者さま》と呼ばれること厭ったそうです。
以下略 AAS



19: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/03(水) 22:35:48.39 ID:MC1F9erq0

何ともまあ、優しく、生真面目な一族であろうか。
開祖の偉業を盾に、民を従えさせるのは至極自然なことであり。
事実、我が王家もまたそのようにして成り立ってきたというのに。

以下略 AAS



20: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/03(水) 22:36:20.47 ID:MC1F9erq0

なんと、あの血煙が舞い鼻をつく据えた匂いが漂う悍ましき戦場に女を出すとは。

勇者一門にとって、『勇者』の号はそれほどに重いものであったのか。これは、もはや執着。否、妄執といって過言ではない。

以下略 AAS



21:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/03(水) 22:36:48.43 ID:MC1F9erq0

「まさか。各々、自身の意思によるものにありますれば、誰一人として強いられてはおりませぬ。それに、当時の筆頭は私ではなく大叔父でありました」

肺腑より息が漏れる。なんとも、恐ろしい武の家であろうか。

以下略 AAS



22: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:26:51.81 ID:oNIrsuw50


息が切れる。これほど長い時間走り続けたのはいつ以来だろうか。
魔王城下の大合戦。王の呼びかけに参集した我ら一門は、その先駆けとばかりに魔物どもの大群へと突き進んだ。

以下略 AAS



23: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:27:28.36 ID:oNIrsuw50

ふと気づくと、百余名ほど居た我が一門はその数を半分に減らしながらも魔王城を背に肉壁と化していた魔物の軍団を貫いていた。

「これは好機である!」

以下略 AAS



24: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:27:56.52 ID:oNIrsuw50

抜き身の剣を杖代わり、よくぞここまでついてきたものだ。
よく見ると祖母の剣は、血と油に濡れている。驚くべきことに、その体たらくでも尚、祖母は幾体もの魔物を屠っていた。

「ああ、家宝の聖剣を杖がわりになんか使うから。ほら、切っ先が欠けちゃてるよ」
以下略 AAS



25: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:28:22.83 ID:oNIrsuw50

「あ、あのハナタレには任せておけぬ」

祖母が、『ハナタレ』と呼ぶのは我が勇者一門の当主である大叔父上のことだ。
あの、老いてなお鍛え抜かれた体で、俺を含めた若衆をまとめてコテンパンに叩きのめす豪傑も祖母からすれば、いまだ頼りない弟というわけなのだろう。
以下略 AAS



26: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:28:50.71 ID:oNIrsuw50

当主殿の号令に、再び歩みを進め魔王城へと突貫する。
だが、肩透かしもいいところ、我らは難なく入城を果たすことができた。それもそのはず、魔王城の城門は開け放たれ、その守り手すらも不在であったからだ。

妙だ、いくら総力戦と言っても本陣に兵を配置していないなんて在り得るのだろうか。
以下略 AAS



27: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:29:17.67 ID:oNIrsuw50

「それで―――なんだって。つまり奴らは馬鹿だってことか?」

「侮ってはいかんぞ、剣の腕、個の強さに関して、魔物は人間より遥かに上だ。しかし、奴らは集団行動がとれん。魔王も、それがわかっているからこそ奴らを陣形もとらせず城下の大平原にまとめて置いているのだろう」

以下略 AAS



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