玉座の間にて
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25: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:28:22.83 ID:oNIrsuw50

「あ、あのハナタレには任せておけぬ」

祖母が、『ハナタレ』と呼ぶのは我が勇者一門の当主である大叔父上のことだ。
あの、老いてなお鍛え抜かれた体で、俺を含めた若衆をまとめてコテンパンに叩きのめす豪傑も祖母からすれば、いまだ頼りない弟というわけなのだろう。

「しかたねえなあ。魔王の下まで、俺が連れて行ってやるよ」

背を向け腰を屈めると、祖母は「借りは、いつか返すよ」と素直におぶさってきた。
「その前に、魔王に殺されちまうよ」。なんて言葉は、決して口に出せない。
たとえそれが、限りなく現実足り得る未来であったとしても。祖母は未だ、自身が真の《勇者》となることを諦めていないのだから。

「ゆくぞぉ!」


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