ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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13:名無しNIPPER[saga]
2020/09/21(月) 20:31:09.22 ID:amUbMXcr0

 しどろもどろに言い訳を探していたが、幸い、師匠の気は直ぐに逸れた。もっとも、それが全くもって『幸い』でなかったことは、すぐに知れることとなったのだが。

「いえーーーい! アイム・ナンバー・ワーン! ガオーーー!」

 唐突に、そんな声――いや、咆哮が人ごみ溢れる空港内に響き渡る。

 反射的に自分と師匠はそちらへ目をやった。周囲の人間も同様だ。

 見れば、眩暈がするほど大勢の人でごった返している筈のロビーに、一か所だけ空白が出来ていた。

 その中心には二つの人影。ひとりは昏倒して床に突っ伏している中年の白人男性。

 そしてもうひとりは、あろうことかその男性の頭を踏みつけ、手に持った棒のようなものを掲げている20代半ばほどの女性だった。先ほどの咆哮も彼女のものらしい。

 遠巻きに見ている群衆の隙間から、状況を確認する。天下の往来でこの狼藉。どう考えても関わり合いにならない方がいい。

「師匠、早く離れましょう」

 相手を刺激しないように、小声で促して師匠の腕を引く。

 だが師匠は動こうとしなかった。怪訝に思って師匠の顔を見ると、「ファック……」と呟きながら目を覆っている。

「あの……どうしたんですか?」

「……信じがたいが、あの女性が踏みつけているのは、出迎えてくれるはずだった南米支部長のように見える」

「えっ」

 思わずぱっと振り返って、視線を女性に戻す。

 そうやって急に動いたのが不味かったのだろう。獲物の動きに反応する野生動物の様に、女性の瞳がこちらを捉えていた。

「おおっ、ユーが噂のエルメロイ三世ガオ!? メロイメローイ! ヘーイ、ナイストゥーミーチュー!」

 踏みつけていた支部長を放置して、こちらへずかずか歩いてい来る女性。モーゼの海割の如く、人ごみが彼女を避けるように道を開けた。

 逃げられない状況になったのを悟ったのか、師匠が溜息を吐きながら手を挙げて応じる。

「……U世だ。ロード・エルメロイU世。君は支部の関係者か?」

「NONO! 私は遺跡までの水先案内人! っていうかそっちが雇ったんだガオ?」

 妙な訛りのある英語で、妙な服を着た彼女が自己紹介をしてくる。

「ティグレ・ヤガーだガオ。お兄さんが依頼した人? じゃあそっちのお嬢ちゃんは?」

「あ、あの、内弟子のグレイです」

「グレイ! 灰! よーし、今日からお前シンデレラな! レッツ・プロデュース!」

「え? え?」

 どんな理屈でそうなったのかは一ミリも分からないが、彼女の中で自分をシンデレラと呼ぶことが決定したらしい。「よろしく、シンデレラ」と親しげに肩を叩いてくる。

 困った。どう返すべきだろうか。

 そんな風に思考を巡らしていると、答えを出す前に師匠が動いた。自分と彼女の間に割りいるように、ずいと一歩前に踏み出てくる。

「結構。では、ミズ・ヤガー。何故、そこで支部長が気絶しているのか説明して貰えるかね?」


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