ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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14:名無しNIPPER[saga]
2020/09/21(月) 20:32:35.44 ID:amUbMXcr0

 その質問に、彼女は明確かつ簡潔に答えてきた。

「ヤガーって呼ぶなーーーーーーー!」

 スパァン! と、恐ろしいほど気持ちのいい音が響く。

 全く見えなかったが、それは彼女が手にしていた棒切れをフルスイングした音らしい。頭を一撃された師匠が、悲鳴も上げられずに昏倒して床に寝転がった。支部長と同じように。

「え、な、師匠!? な、なにを」 

「全く、人の名前は正しく呼ばなきゃダメだガオ。シンデレラもそう思うよね!」

「師匠! この状況で拙を独りにしないでください! 師匠!」

 ぺちぺちと懸命にほっぺたを叩くと、どうにか師匠は意識を取り戻したらしい。ファックファックと呻きながら、生まれたての子羊のように震えつつも起き上がってくれる。

「……な、なるほど、ホワイダニットは分かった。つまり、君の文化ではファミリーネームで呼ぶことが失礼に当たるのだな、ミズ・ティグレ」

「ティグレって呼ぶぬぁーーーーーーー!」

 再び快音が響き、師匠が本日二度目の失神に陥る。

 まさか師匠のホワイダニットが通じないなんて。頭を叩かれて朦朧としていた為か。いや、別に必殺技でも何でもないのは分かっているけれど。

「何なのか! イギリス人はみんなこうなのガオ!? へい、シンデレラ! 私の名前を呼んでみな!」

 そしてもう一度師匠に起きて貰おうとほっぺたを強めに叩いている最中、最悪なことに意味不明の矛先がこちらを向いた。

「え、えーと……」

「答えられぬというのなら、このバン・ブレードの錆びになって貰うガオ……そう、まさしく物語のシンデレラのようにな!」

「あれってそんなバイオレンスな話でしたっけ……!?」

 ともあれ、どうやら彼女は本気のようだった。或いは狂気か。その剣閃は単純な威力はともかく、鋭さに関していえば以前戦ったフェイカーのものに勝るとも劣らない。自分一人での強化効率では見切ることすらできないだろう。

 公衆の面前でアッドを変形させるわけにいかない以上、対抗手段は彼女の納得する答えを返すしかない。一本道でスフィンクスに遭遇した気分だ。

「え、あれって魔法使いによって復讐の手段を手に入れたシンデレラが、王家に反逆する話でガオ? 灰で目潰ししてからの必殺剣がバンクで――」

 ちょっと続きが気になることを言っているが、どうにか彼女の声を頭から締め出して適切な解答を考える。

 ティグレ、では駄目。ヤガー、でも駄目。

 思い浮かんだ答えはあるが、外せば気絶。ここは思案のしどころだ。


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