高垣楓「あなたがいない」
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172: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:37:44.50 ID:itU6iUE10

 瑞樹さんとのデュオで、歌い慣れていたはずの曲。歌詞が出てこない。頭が真っ白になったのだ。

「す、すいません……大丈夫、です」
「ごめんなさい! 五分、休憩ください!」
以下略 AAS



173: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:38:34.46 ID:itU6iUE10

「……瑞樹、さん」
「大丈夫? 楓ちゃん」
「ごめんなさい……飛んでしまい、ました」
「いいのいいの、久しぶりだし。大丈夫だから」
以下略 AAS



174: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:39:00.96 ID:itU6iUE10

 緊張が止まらない私に、瑞樹さんがウインクを投げる。その仕草が、私にすっと入り込んできた。
 ああ、いつもの瑞樹さんだ。
 ようやく、緊張の糸が解ける。涙がこぼれそうになるけれど、私はそれをこらえ、瑞樹さんに言った。

以下略 AAS



175: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:39:28.39 ID:itU6iUE10

 私は、薬を飲む。

 オランザピンに変えて三か月。なかなか気持ちをコントロールするのが難しい。
 先日は部屋で大泣きをして、ちひろさんを困らせてしまった。
以下略 AAS



176: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:39:57.70 ID:itU6iUE10

 先生に、今のわたしを打ち明ける。
 ふたりの私がいること、感情の浮き沈みがまだ激しいこと、そのために心が、疲れてしまうこと。

「そうですね……高垣さんの今は、まだ過渡期なんだと思います」
以下略 AAS



177: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:40:35.49 ID:itU6iUE10

「お帰りなさい」
「ただいま、帰りました」

 ちひろさんがマンションで、私の帰りを待ってくれていた。
以下略 AAS



178: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:41:01.95 ID:itU6iUE10

 目の前にある、薬。白い粒をじっと見つめる。ふと悪魔が私に、ささやいた。

 これをたくさん飲んだら、目覚めないかしら。
 かつて私が、思いついたことだった。
以下略 AAS



179: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:41:30.30 ID:itU6iUE10

 いらない……こんな私。




180: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:41:59.01 ID:itU6iUE10

 ざらざらと、溜まっていたニトラゼパムとエチゾラムを出す。これを全部、飲んだら。

「楓さん!」

以下略 AAS



181: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:42:41.09 ID:itU6iUE10

 抱きしめたまま泣き続けるちひろさん。私は、深い後悔を覚えた。
 私は、ひどいことをした。
 こんなにもちひろさんや事務所のみんなが、私を支えてくれているというのに。
 私はなんて、おぞましいことを考えてしまったのだろう。それは決して、許されない、こと。
以下略 AAS



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