高垣楓「あなたがいない」
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174: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:39:00.96 ID:itU6iUE10

 緊張が止まらない私に、瑞樹さんがウインクを投げる。その仕草が、私にすっと入り込んできた。
 ああ、いつもの瑞樹さんだ。
 ようやく、緊張の糸が解ける。涙がこぼれそうになるけれど、私はそれをこらえ、瑞樹さんに言った。

「ありがとうございます……大丈夫、戻ってきました」
「そう。なら次で、決めちゃいましょうね」
「……はい」

 収録が再開し、今度はオーケーをもらう。どうにか復帰初仕事を無事、終えることに成功した。

「お疲れさまでした。緊張しました?」

 帰りの車で、プロデューサーが尋ねた。

「緊張もしましたけど、それより……申し訳ない気持ちで、いっぱいですね」

 私は窓の外、流れる景色をぼんやり見ている。

「大丈夫です。ぼちぼち、行きましょう」

 プロデューサーは、私を慰めた。
 道のりはまだ、険しい。




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