高垣楓「あなたがいない」
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177: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:40:35.49 ID:itU6iUE10

「お帰りなさい」
「ただいま、帰りました」

 ちひろさんがマンションで、私の帰りを待ってくれていた。
 今日、彼女は振替の休みの日だというのに、私のために時間を作ってくれたのだ。

「せっかくのお休みなのに、ごめんなさい」
「いえいえ。こうして楓さんとの共同生活も、もう当たり前になってて、このほうが落ち着くんです」
「……ありがとう」

 そうだろうか。
 こんな手のかかる相手と一緒の生活なんて、苦しい以外の何物でもなかろうに。
 このところネガティブなことばかり、考えてしまう。

「さあ、夕食にしましょう。今日はお手伝い、お願いしますね?」
「……もちろん」

 そうしてまた、いつものようにふたりの食事。
 ちひろさんとこうしてふたりで過ごせることは、とてもありがたい。
 だが思う。彼女をこうして束縛してしまっている現状は、私たちふたりにとって不幸なことなのではないか、と。
 閉塞感。行き詰まり。
 そして、諦念。

 お風呂から上がって睡眠薬を取り出す。このルーティーンを行うようになって、どれくらい経ったろうか。
 薬のお世話になって一年以上経っているというのに、私は少しも良くならない。
 むしろ悪化しているように、思える。
 先生はよくなっていると言うけれど、それを実感することは、ない。
 私は、いつまで。

「……」




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