34:emanon
2020/09/02(水) 00:01:41.71 ID:Ind2CwOR0
馬子「…いや、ここの壁だけ塗りが新しい。病室は他と同じなようだが、ん?なんだ?何を隠すために塗り替えたんだ?…壁の汚れ?違う。焼け跡か? これは?…使用禁止のコンセント…?」
先生「嗅ぎ回るのはそこまでにして下さい」
馬子「…。ごきげんよう」
35:emanon
2020/09/02(水) 00:04:55.08 ID:Ind2CwOR0
馬子「…そう。じゃあ聞くわ。ドナー提供者の名前は、秋野じゃないかしら?」
先生「…ほう」
僕「…馬子さん、っ、どういう事ですか?いや、どうして秋野の名前がここで出てくるんですか?」
36:emanon
2020/09/02(水) 09:43:58.79 ID:j7vhrqUQO
馬子「秋野千波が知り過ぎていた理由は、彼女の身内が、君の心臓移植の相手だったからだ。やけに親密過ぎるのも恐らく君のベッドと、近かったから」
僕「…僕の隣は橋本さんでしょうっ?」
馬子「橋本はこう言った筈だ。数日で移植の話が決まって緊急手術になったから。顔を合わせたのは数日だった。彼は、君の手術の数日前に入院して来た。裏を返せば、その前に誰かがいた、という事だろう?
37:名無しNIPPER
2020/09/02(水) 09:46:49.03 ID:j7vhrqUQO
先生「…なるほど、君の噂はかねがね聞いていたが…。もはや、ここまで分かっているのか。それならば、私の口から答えた方が早いですね。恐らく、君たちが話している幻覚の女性の正体は秋野茜、秋野千波の姉にあたり、君の心臓のドナー提供者です。………彼女は画家として有名でした。しかし交通事故で利き腕である右腕が動かなくなってしまった。後遺症の麻痺です。それ以降、秋野茜の体調は悪くなる一方でした。絵の才能を期待されていた分、日が経つに連れて描けなくなっていく、期待に応えられなくなってしまっていく。理想と現実のギャップに、秋野茜は相当のストレスを負っていたようです。病院側の診断でも、食事を摂取しなくなる拒食症や、睡眠薬、抗うつ剤の乱用など薬物依存症の前触れを確認できました。秋野茜が搬送されて来たのは、6月の上旬の事です。…君と秋野茜は隣同士のベッドになった訳ですが、まあ、お互い共通の話題があったのでしょう。非常に仲が良く見えましたよ」
僕「秋野、茜、さん…」
馬子「覚えていない?」
38:emanon
2020/09/02(水) 09:50:15.03 ID:j7vhrqUQO
馬子「あなたは心臓の病気が悪化し心臓移植が必要になった。だがドナー提供者を知ったあなたは心臓移植を拒んだ。だって移植をしてくれる相手は、あなたがこの病院に来てから最も心を許した人だったから。秋野茜から心臓移植を受ければ、もちろん彼女は死んでしまう。大切な人を、間接的に殺してしまう形となる。あなたは心臓移植を拒んだ。手術のため無理やり麻酔を打とうとする医者たちを遠ざける必要があった。とっさにあなたは武器を手にした。一番近くにある武器よ。ええ。例えば、林檎の皮を剥くために使う凶器とか…」
僕「果物ナイフ…」
馬子「そう。ナイフを振り回して牽制する。でも次第に追い詰められてしまう。あなたは何処まで行っても袋小路だという事に気が付いてしまう。逃げられない。逃げられないのならば、自[ピーーー]ればいい。自殺をすれば移植手術は中断だ。でも首を切って死ぬ方法は取れなかった。仮に一刺しで[ピーーー]なかった場合、ここは病院だ、直ぐに治療されてしまう。じゃあどうするか、あなたは手にした果物ナイフを刺し込んだ、コンセントに」
39:emanon
2020/09/02(水) 09:52:10.26 ID:j7vhrqUQO
僕「…僕は、ほんとうに、僕は、すべてを忘れてしまったんですね」
馬子「ええ。秋野茜という存在も、彼女の心臓が移植されたという事実も。あなたにとって、きっと秋野茜という存在が大き過ぎたんだわ。だから、感電と共に記憶を失う形になってしまった」
僕「秋野も、…秋野千波も全部知っていたという事ですか?」
40:emanon
2020/09/02(水) 09:53:33.64 ID:j7vhrqUQO
先生「良いんですか?彼を止めなくて?」
馬子「自分で自分の首を切る勇気がない子よ。自殺は選ばないわ」
先生「そうですか。素晴らしい推理でした。まさか、手首の怪我と、壁の焼け跡を結び付けるとは」
41:emanon
2020/09/02(水) 10:04:40.23 ID:+qXnnrD90
>>38
すみません。
馬子「あなたは心臓の病気が悪化し心臓移植が必要になった。だがドナー提供者を知ったあなたは心臓移植を拒んだ。だって移植をしてくれる相手は、あなたがこの病院に来てから最も心を許した人だったから。秋野茜から心臓移植を受ければ、もちろん彼女は死んでしまう。大切な人を、間接的に殺してしまう形となる。あなたは心臓移植を拒んだ。手術のため無理やり麻酔を打とうとする医者たちを遠ざける必要があった。とっさにあなたは武器を手にした。一番近くにある武器よ。ええ。例えば、林檎の皮を剥くために使う凶器とか…」
42:emanon
2020/09/02(水) 10:41:47.25 ID:+qXnnrD90
先生「……。一体、何を言い出すんですか、君は?」
馬子「本当は心臓移植なんてしてない。そうでしょう? 心臓の病気を患う少年、症状が悪化し移植が必要になる。偶然にも隣のベッドの女性が適合者。心臓移植は成功し、ハッピーエンド。…そんな偶然なんて、この世にはないのよ」
先生「…何が言いたいんですか?」
43:emanon
2020/09/02(水) 10:43:48.88 ID:+qXnnrD90
先生「ははは、ははは。愉快な推理ですね。…だが証拠がないぞ」
馬子「…証拠なんてないわ、別に。ただの想像に過ぎない。この殺人事件にこれ以上私が口を挟む事はない。彼はただ、幻覚の少女の正体を知りたがっていただけだから」
先生「…仮に、心臓移植がされなかった、心臓移植が作られた嘘で、まだ自分自身の心臓で生き続けているのが真実だとするならば。君はなぜ彼に真実を伝えない?」
44:emanon
2020/09/02(水) 10:45:22.05 ID:+qXnnrD90
〜病院・屋上〜
馬子「屋上にいたのね、探したわ」
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