樋口円香「──誠意を見せていただきましょうか」
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6:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:36:25.63 ID:YkNVrYJ6o

「おつかれさま、小糸。それにみんなも、レッスンおつかれさま」

「うん、おつかれさま。プロデューサーは疲れてるね」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:36:53.47 ID:YkNVrYJ6o

 雛菜が近寄ってきたと思うと、片腕にしがみつきながら、上目遣いに何かを主張してくる。
 しばらく困って、周囲に視線を向けると、円香は冷たい目で見ているし、透はいつも通り。小糸だけが困った様子を察したのか、「ひ、雛菜ちゃん!」と呼びかけていたが、雛菜は離れる様子も、何かを求める素振りもやめはしなかった。
 ど、どうしたらいいんだ?

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:37:26.25 ID:YkNVrYJ6o

「あ、ああ……そうか。そういうことか。うん、おつかれさま。今日もよく頑張ったな、雛菜」

「あはぁ〜〜♡ うんうん〜雛菜頑張ったよ〜」

以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:37:53.52 ID:YkNVrYJ6o

 ──────
 ────
 ──



10:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:38:22.85 ID:YkNVrYJ6o


 ……………………。

 このあいだから、円香がおかしい。何がどうおかしいのかと言われると具体的にこうだ、と言えるわけではないのだが、なんというか、おかしい。元気がないわけではない。かと言って逆に元気過ぎるわけでもない。表面的にはいつもの樋口円香だ。余計な対応をすればすげなくあしらわれ、冷たい目で見られる。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:38:51.25 ID:YkNVrYJ6o

 ヒュッと背筋が伸びる。そこでようやく意識が思考の内側から外側へと戻ってきた。事務所の入口には今まさに考えていた樋口円香が立っていた。円香は「ふぅ」、と呆れたように溜め息を吐きだしてから、「仕方ない人」、と呟きながらソファに腰を掛けた。ふわりと隣から甘ったるい匂いが届いた。
 それから左肩にふわふわの赤みを帯びた毛髪と、ほんの少しの体重がかかる。「もたれているわけではないです、少し置いているだけです。勘違いしないでください」、と円香が睨みを効かせてくるので、きっとそのとおりなんだろう。

「ああ、少し休憩し過ぎていたよ。ありがとう、円香」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:39:18.22 ID:YkNVrYJ6o

「それだけですか」

「それだけって?」

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:39:45.76 ID:YkNVrYJ6o

 円香はソファから立ち上がり、事務所から外へと向かった。
 ……こういうところだ。違和感というか、おかしいというか。円香のことがわからない。もちろん、元々円香のすべてを理解できているわけではなかったし、そんなことができるとも思っていない。それでも自分なりに理解しようとしてきて、最近ではやっと円香のことを少しだけわかってきたかもしれないと思っていたが、振り出しに戻った気分だった。
 少しでもわかってきた、なんて思っていたこと自体がそもそも俺の思い上がりだったのかもしれないけど。

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:40:19.73 ID:YkNVrYJ6o

 コトン、コトン。
 卓上にカップが二つ置かれた。円香がコーヒーを淹れてきてくれたようだ、ホットを買ってきてくれたのだろう、黒色のそれからは白い蒸気がユラユラと上っている。

「コーヒー、ブラックでしたよね」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:40:46.62 ID:YkNVrYJ6o

 う……失敗したな。今のは完全に、言葉の選択を誤った。礼儀だから言っただけ、なんて言われて良い気をする人間がいるはずもないというのに。

「──……そんなあからさまにへこんで、同情でも引きたいんですか。残念ですが、私はそれほど単純ではありません。

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage]
2020/08/02(日) 22:41:13.57 ID:YkNVrYJ6o

「大したことないですよ。ただ──あなたは少しだけ、私にてのひらを貸せば、それだけで十分ですから」



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