十時愛梨「それが、愛でしょう」
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44:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:21:26.35 ID:n4MKx+790
 きっと、奇跡と人はいうのかもしれない。
 いつだったか、路線を変えることになって、最後に臨むこととなった和装グラビアの撮影の時に愛梨が呟いていた一言が、はたと頭の片隅に零れて落ちる。

『何千年先も、みんなの心に残るような……そんなアイドルになりたいです』

 残念ながら、末永く、とは行かなかったけれど。
 きっと、十時愛梨の名前は歴史に刻まれた。彼女の歌が、天海春香に続く記念碑になった。

 だけどそれは奇跡でも何でもない。全て、愛梨が成し遂げた必然だ。
 舞台の幕が上がるまで、もう時間は残されていない。
 プロデューサーは、アイドルの一番最初のファンだと誰かが言った。実際に、僕もその通りだと思っている。
 だけど、一番の最初の、そして一番のファンであるはずなのに、そのステージを裏方から見守ることしか僕にはできない。当たり前だけれど、それが少しだけ今は歯がゆかった。

「愛梨」
「なんですか、プロデューサーさん?」
「僕は……君の力に、なれていたかな」

 きっと、愛梨は生まれながらのアイドルだった。その足でどこまでもいける強さを、そしてどこまでも飛んでいける、目には見えない天使の羽根を背中に負って生まれてきた。
 だからもしかしたら、隣にいるのは僕じゃなくてもよかったのかもしれない。それどころか、僕以外だった方が良かったことだってありえるかもしれない。
 そんな不安を一蹴するように、きつく握りしめた僕の両手にそっと、慈しむように柔らかな掌が触れる。


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