十時愛梨「それが、愛でしょう」
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45:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:22:26.67 ID:n4MKx+790
「私、一番最初に言いました。私がトップアイドルになれば、プロデューサーさんはトッププロデューサーになるって、だから、トップを目指すって、プロデューサーさんといれば、トップアイドルになれると思うって」
「……ああ、覚えてるよ」
「それと、あの時言いました。大好きですって。だから、私のプロデューサーはプロデューサーさんだけです。そこに、代わりなんて絶対にいませんっ!」

 思えば、至らないことばかりだった。
 取り返しのつかない見落としをした。直視しなければいけないことから、目を逸らし続けていた。それだけじゃない。重ねてきた失敗や後悔の数を数えていけば、それはきっと果てしなくて、途方もないものになっていることだろう。
 それでも。それでも、愛梨が、僕で良かったと、そう言ってくれるのなら。

「……ありがとう。ああ、安心した……こんなに嬉しいことはないよ、愛梨」

 明日世界が滅ぶと思って生きている。
 僕について、誰かにそんな噂をされたことがあった。
 実際、僕は良かったことよりも間違ったことや後悔ばかりを、正しさに足りなかったことばかりを数えて生きてきたような人生を今まで送ってきたのだから、それはきっと間違いじゃない。

 それでも、きっとそのおかげで、絶対的な正しさなんてどこにもないように、間違いの全てが間違っているわけじゃないと、間違えてしまった選択肢の中にだっていくつも正しいこととか、いいこととか、そういうものがちゃんとあるんだと学ぶことができた。
 いいや、きっとそれを間違いと、過ちだと言い切って、捨ててしまうのが、間違っている。随分と長く、迂遠な道を辿って、ようやく理解することができたのだ。
 そして、それを教えてくれたのは愛梨に他ならない。
 そんな愛梨が、他の誰でもない僕を好きでいてくれると、僕であってよかったと言ってくれたのだ。これ以上の幸せなんて、この世のどこを探したって見つかるはずがないだろう。

「……行ってきます、プロデューサーさん。もう一度言いますよ……大好きですっ!」
「ああ、僕もだ! 行ってこい、愛梨!」

 万感の思いを、自分の中にあるだけの感謝を言葉に代えて、僕は最後の仕事として、きらめく舞台へと担当アイドルを送り出す。


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