十時愛梨「それが、愛でしょう」
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36:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:13:52.55 ID:n4MKx+790
『春香さん、歌ってたんです。さっき流れた曲だったんですけど、なんでか私、ずっとそれに聴き入っちゃって』

 想像する。愛梨が紡いだ言葉から、夜の埠頭で歌う天海春香の姿を。
 生憎、どんな曲なのかはこのとき頭から抜け落ちてしまっていたけれど、それでも何となく様になっていると、そう思った。きっと、天海春香なら夜の公園だって、ボロボロのテントを背景にした芝生の上だって、どこだって自分のステージになる。
 悔しいけれど、何度かオーディションでぶつかったとき、そして歌番組で共演したときに、彼女の中にあるアイドルとしての魅力というべきものは嫌というほど見せつけられた。

 天海春香より歌が上手いアイドルは何人もいる。それこそ彼女と同じトップアイドルという名声を得ていない原石たちの中にだって、探せば見つかるかもしれない。
 そして、天海春香よりも上手く踊れるアイドルだって何人もいるし、好みは人によって違うから断言は出来ないけれど、天海春香より美人だと言わしめるアイドルだっているかもしれない。
 と、いうより、愛梨なら天海春香に勝るとも劣らないぐらい可愛いし美人なのだから前言撤回、ここにいる。
 それは流石に担当としての贔屓目が入りすぎているだろうかと小さく頭を振って、思考を整理する。

 結局のところ何が言いたいのかと問われれば、天海春香より一芸に秀でたアイドルはこの戦国時代の最中においてはそう珍しい存在ではないということだ。
 それでも、その誰もが、愛梨を含めて皆が皆、天海春香にはなり得ない。
 アイドルとは何かと訊かれたとき、多分それは強力な答えの一つだ。


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