35:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:12:55.87 ID:n4MKx+790
ただ、どこかで行き詰まったとき、人は今いる場所じゃなければどこでもいいからと、結局今いる場所からそう離れていないところをぐるぐると歩き回っていることが多い。うちの事務所だと、一ノ瀬志希――まで行くと本当に放浪癖だが、塩見周子や二宮飛鳥辺りはそんなプチ迷子とでも呼ぶべき癖を持っていることは記憶していた。
それでも、愛梨にもそんな癖があった、と、いうより、そこまで何か思い詰めていたこと自体が、初耳だった。
『それでは二曲目です、寒さも一気に吹き飛ばす、高槻やよいでゲンキトリッパー、お聴きください』
何年も担当してきたのだ。正直、そこにショックを受けなかったかと言われれば嘘になる。黙りこくった僕に代わって、続けて、と促すようにカーステレオは二通目のリクエストはがきを読み終えて、この場にはやけに場違いな、アップテンポなナンバーを流し始める。
『正直、私もなんでこんなことしてるのかなって思ったんですけど、海でも見たら忘れちゃうかなって思って、歩いてたんです』
そして、天海春香と出会った。
愛梨は掌に握りしめていた宝物を差し出すように、そう呟く。
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