ロード・エルメロイU世「最初からそれがお望みだろう、レディ?」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:30:11.76 ID:uimHEu7hO
「夜分に失礼。我が兄よ」
「……何の用だ」

魔術で気配と足音を消して義兄の執務室を訪れるのはもはや癖のようなもので、どれだけ迷惑がられてもやめるつもりはない。

「いや、なに。珍しい逸品を手に入れたので晩酌に付き合って貰おうと思ってね」

手に下げた酒瓶が見えるように持ち上げると、ようやく机上のレポートから視線を上げた義兄の目が見開かれた。

「それは、貴腐ワインか?」
「そうとも。我が兄も興味があると思ってね。その反応を見るに、どうやら私の推察は正しかったようだ。ようやく私も義妹として義兄の好みがわかるようになって嬉しいよ」
「別に好みというわけではないが……レディの誘いを断るのは礼儀に反する。今、グラスを用意する。そこにかけて待っていろ」
「ふふ。ああ、待つとも。酒瓶を持って消えたりしないからそう慌てることはないよ」

魔術講師として如何なる時にも沈着冷静たれと日頃から生徒に教えている彼は口調こそいつも通りではあるものの、グラスが仕舞ってある戸棚を開ける仕草は忙しなかった。

そんな義兄の慌てふためきぶりに満足しつつ、執務室に備えつけられたソファに腰を下ろして、私は自らの嗜虐心を満たした。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:33:34.97 ID:uimHEu7hO
「では、乾杯」
「有り難く、頂こう」

控え目に杯を掲げて、まずはひとくち。
豊潤な甘みが貴腐ワインの特徴である。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:37:11.57 ID:uimHEu7hO
「しかし、我が兄よ」
「む。なんだね、レディ」
「我が兄は些か欲が無さすぎる」

気持ち良さげに講義を続ける酔っ払いロード・エルメロイII世に付き合うのも義妹の役目かも知れないが、私はサディストである。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:38:52.95 ID:uimHEu7hO
「またそのようなことを……」
「おや、我が兄よ。酔いが醒めてしまったのではないか? ほら、もっとぐっといけ」
「そうはいくか! これ以上酔わされて好きにされてたまるか! そろそろ帰りたまえ!!」

流石に警戒されてしまったようで、グラスに手で蓋をしつつ帰宅を促す義兄に私は。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:42:00.50 ID:uimHEu7hO
「こうなったらヤケだ! じゃんじゃん持ってこい! いくらでも飲んでやる!!」
「よし、わかった。酒の貯蔵は充分だ」

ついに屈服した義兄にたらふく飲ませる。
先述した通り、ロード・エルメロイII世はあまり酒が強くないのですぐに酔い潰れた。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:45:04.30 ID:uimHEu7hO
「先生はやめてくれ。それは君だろう?」
「あ、ああ……すまない。つい、君にケイネス先生を重ねてしまって……」
「ウェイバー・ベルベットと先代エルメロイは不仲だったと聞いているが?」
「それでも私はたくさんのことを教わった。だから、恩師であることには変わりない」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:47:17.81 ID:uimHEu7hO
「ふふふ。本当に甘いな、我が兄は」
「ふん。なんとでも言え」
「私はエルメロイの次期当主だぞ? これが罠であると、どうして気づけない?」
「やはりそうか。だが、たとえ罠であったとしても泣いている義妹を放ってはおけない」

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:49:29.51 ID:uimHEu7hO
「いいねえその顔! その顔が見たかった!」
「レディ……君は、歪んでいる」
「フハハッ! そうとも! 私は歪んでいる! ああ、我が兄よ。私の愛しい愛しい、愚かなお兄様。お顔が青いですよ? 私はそのお顔が狂おしいほどに、見たかった……!!」

そう、全てはこの時のため。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:51:54.94 ID:uimHEu7hO
「お兄様。愚かなライネスに早く罰を……」
「本当ならば張り手のひとつでも振るい矯正するべきなのかも知れんが、それは私の性分ではない。君はそれを甘さと呼ぶだろうが、時と場合によってはそれが武器にもなる」

義兄は私を抱擁したまま離さない。
むしろより強く、抱きしめてきた。
以下略 AAS



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