9: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:35:48.52 ID:BHjCA0Mo0
「...負けた。」
その子の手元を見ると、唐揚げや根菜の煮物、レタスにパスタ、彩り豊かなお弁当があった。
10: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:37:16.01 ID:BHjCA0Mo0
「それにしても、お前本当に料理上手いよな。」
友人は、俺の弁当から盗んだピーマンの肉詰めを頬張りながらそう言った。俺もお返しに、そいつの弁当から盗んだ唐揚げを頬張りながら答える。
11: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:38:52.78 ID:BHjCA0Mo0
ホームルームも終わり、急いで教科書やノートを鞄につっこむ。教室を後にしようとしたとき、声をかけられた。
「陸、帰り暇?女子高の子たちとこの後カラオケに行くんだけど、お前も行く?」
12: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:40:58.22 ID:BHjCA0Mo0
「よーし、次は陸の予定に合わせてセッティングするわ。」
「どういう子が好み?やっぱクール美人系?」
13: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:42:33.37 ID:BHjCA0Mo0
つかつかと早足で学校の最寄り駅まで向かいながら、さっきの友人の言葉を思い出す。確かに俺は何度かスカウトを受けたことがある。いかにも業界人な風貌の人に名刺を渡された。渡された名刺は、悪いと思いながら近くのゴミ箱に捨てた。持っておくと、心が揺らぎそうだったから。
確かに芸能界はお金はたくさん入ってくるんだと思う。俺はそれをよく知ってる。身をもって。だけど、それは俺が目指してるやり方じゃない。芸能界だけは選んではいけない。
14: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:44:37.73 ID:BHjCA0Mo0
「じゃあ陸君、今月のお給料。」
15: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:46:42.18 ID:BHjCA0Mo0
心配?この店は順調だってさっき言ったばかりなのに、心配することがあるんだろうか?
「高校生、青春真っ只中じゃないか。青春は一度きり、返ってこないんだよ。それをほとんど毎日こんなチンケな喫茶店に費やしていいのかなって?」
16: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:48:05.59 ID:BHjCA0Mo0
家の玄関の前まで来て、鞄の中から封筒を取り出す。貰った給料を早速引き落として、封筒は厚みを増した。これを見たら、みんなはどんな顔するだろう。期待に胸を膨らませて、玄関のノブを回す。
「ただいま。」
17: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:49:33.45 ID:BHjCA0Mo0
「いただきます。」
3人で声を合わせて食事を始める。ご飯に味噌汁、サラダに煮物、豚生姜焼き、今や日本中に名を知らぬものがいない大女優北沢志保の家の夕飯とは思えない、普通で平凡なメニューだ。
18: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:51:45.91 ID:BHjCA0Mo0
姉さんは俺のリアクションが気に入らなかったらしく、眉をひそめてジトーっと俺の顔を見る。
「なんか怪しい。」
19:名無しNIPPER
2020/06/12(金) 21:53:01.27 ID:BHjCA0Mo0
「いや、モテてないだろ?何を根拠に。」
全く、一般人平民アルバイト高校生な僕にちょっかいかけてくる女性は、今目の前にいる人とそっくりな『隅子さん』しか知らないんですけどね。ジトーっとした視線を投げ返すと、姉さんは不敵に笑った。
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