5: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:28:52.05 ID:BHjCA0Mo0
「いやぁ、お話ししたいって言われただけです。仕事中って断りましたけど。」
そう言うと、マスターは少しつまらなさげに「ちえっ」とこぼした。コイバナ大好き女子じゃあるまいし、やめてくださいよ。
6: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:30:04.31 ID:BHjCA0Mo0
バイトからの帰り道、スマホのカレンダーを眺めて今月のシフトを確認する。頭の中で数字を積み上げて、そこに時給を掛ける...のは流石に暗算では無理だから、電卓アプリを立ち上げる。算出された数字を眺めていると、思わずはーっとため息が出た。
「あんだけ働いて...これだけしか稼げないのかぁ...。」
7: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:32:08.91 ID:BHjCA0Mo0
数日後、
午前の授業が終わり、昼休みに入る。待ってましたと言わんばかりに教室がざわつき、各々家から持参したお弁当を取り出す。
8: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:34:15.28 ID:BHjCA0Mo0
「えっと、冷蔵庫にあったもので作ったからそんなに期待しないでね。」
期待外れとがっかりされても困るので、そうワンクッション置いてハンデをかける。すると、オーディエンスから罵声が飛んできた。
9: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:35:48.52 ID:BHjCA0Mo0
「...負けた。」
その子の手元を見ると、唐揚げや根菜の煮物、レタスにパスタ、彩り豊かなお弁当があった。
10: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:37:16.01 ID:BHjCA0Mo0
「それにしても、お前本当に料理上手いよな。」
友人は、俺の弁当から盗んだピーマンの肉詰めを頬張りながらそう言った。俺もお返しに、そいつの弁当から盗んだ唐揚げを頬張りながら答える。
11: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:38:52.78 ID:BHjCA0Mo0
ホームルームも終わり、急いで教科書やノートを鞄につっこむ。教室を後にしようとしたとき、声をかけられた。
「陸、帰り暇?女子高の子たちとこの後カラオケに行くんだけど、お前も行く?」
12: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:40:58.22 ID:BHjCA0Mo0
「よーし、次は陸の予定に合わせてセッティングするわ。」
「どういう子が好み?やっぱクール美人系?」
13: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:42:33.37 ID:BHjCA0Mo0
つかつかと早足で学校の最寄り駅まで向かいながら、さっきの友人の言葉を思い出す。確かに俺は何度かスカウトを受けたことがある。いかにも業界人な風貌の人に名刺を渡された。渡された名刺は、悪いと思いながら近くのゴミ箱に捨てた。持っておくと、心が揺らぎそうだったから。
確かに芸能界はお金はたくさん入ってくるんだと思う。俺はそれをよく知ってる。身をもって。だけど、それは俺が目指してるやり方じゃない。芸能界だけは選んではいけない。
14: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:44:37.73 ID:BHjCA0Mo0
「じゃあ陸君、今月のお給料。」
15: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:46:42.18 ID:BHjCA0Mo0
心配?この店は順調だってさっき言ったばかりなのに、心配することがあるんだろうか?
「高校生、青春真っ只中じゃないか。青春は一度きり、返ってこないんだよ。それをほとんど毎日こんなチンケな喫茶店に費やしていいのかなって?」
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