2: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:24:19.31 ID:BHjCA0Mo0
「ありがとう、店員さん。」
そう言って彼女は軽く微笑んだ。端整な顔にほんのりと柔らかさが加えられ、世の殆どの男性はこの笑顔に吸い込まれるんじゃないかと思うくらいの魔力があった。客観的には。
3: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:26:01.70 ID:BHjCA0Mo0
またピキッとこめかみの辺りがひきつる。そうなっては彼女の思うつぼだ。いつもいつもこうやって、この人は俺をからかってくる...。こちらも負けじと営業スマイルをマシマシにして返す。
「すみません、次のお客様のご注文が入っておりますので。」
4: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:27:42.15 ID:BHjCA0Mo0
「どうだった?デート申し込まれたりなんかした?」
厨房に戻った俺を、ニヤニヤしたマスターが出迎えてくれた。『隅子さん』の正体を知らないマスターは、彼女と俺の関係について大きな勘違いをしてしまっている。
5: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:28:52.05 ID:BHjCA0Mo0
「いやぁ、お話ししたいって言われただけです。仕事中って断りましたけど。」
そう言うと、マスターは少しつまらなさげに「ちえっ」とこぼした。コイバナ大好き女子じゃあるまいし、やめてくださいよ。
6: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:30:04.31 ID:BHjCA0Mo0
バイトからの帰り道、スマホのカレンダーを眺めて今月のシフトを確認する。頭の中で数字を積み上げて、そこに時給を掛ける...のは流石に暗算では無理だから、電卓アプリを立ち上げる。算出された数字を眺めていると、思わずはーっとため息が出た。
「あんだけ働いて...これだけしか稼げないのかぁ...。」
7: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:32:08.91 ID:BHjCA0Mo0
数日後、
午前の授業が終わり、昼休みに入る。待ってましたと言わんばかりに教室がざわつき、各々家から持参したお弁当を取り出す。
8: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:34:15.28 ID:BHjCA0Mo0
「えっと、冷蔵庫にあったもので作ったからそんなに期待しないでね。」
期待外れとがっかりされても困るので、そうワンクッション置いてハンデをかける。すると、オーディエンスから罵声が飛んできた。
9: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:35:48.52 ID:BHjCA0Mo0
「...負けた。」
その子の手元を見ると、唐揚げや根菜の煮物、レタスにパスタ、彩り豊かなお弁当があった。
10: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:37:16.01 ID:BHjCA0Mo0
「それにしても、お前本当に料理上手いよな。」
友人は、俺の弁当から盗んだピーマンの肉詰めを頬張りながらそう言った。俺もお返しに、そいつの弁当から盗んだ唐揚げを頬張りながら答える。
11: ◆uYNNmHkuwIgM[sage saga]
2020/06/12(金) 21:38:52.78 ID:BHjCA0Mo0
ホームルームも終わり、急いで教科書やノートを鞄につっこむ。教室を後にしようとしたとき、声をかけられた。
「陸、帰り暇?女子高の子たちとこの後カラオケに行くんだけど、お前も行く?」
66Res/58.05 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20