高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「今日も、私とあなたとの時間を」
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95:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:02:55.86 ID:WDIZ97tn0
加蓮ちゃんが、メニューに手を伸ばそうとして、途中で引っ込めてしまいます。
「何か、飲みますか?」
「ううん、いい。そういう気分じゃない」
それからはずっと、机の真ん中の辺りを、ずっと見つめてばかり。

以下略 AAS



96:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:03:25.60 ID:WDIZ97tn0
加蓮「でも、いいんじゃない? 今更の話を何度したって。そこにある大事な物を、意地を張って見落としたり、捨てちゃったりするよりは、ずっと」

藍子「……加蓮ちゃん」

加蓮「私が聞いてあげる。……ほら、答え合わせ。何回やったっていいんだよ」
以下略 AAS



97:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:03:55.71 ID:WDIZ97tn0
加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」
以下略 AAS



98:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:04:25.67 ID:WDIZ97tn0
「何が不安なんだろうね、私」

加蓮ちゃんが、ぽつりと呟きました。

「アイドルとしてこんなに輝けて……夢だって叶って。ううん、やりたいことがどんどんできてさ。みんなも私のこと、見てくれて……それなのに、なんで不安なんだろうね」
以下略 AAS



99:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:04:55.57 ID:WDIZ97tn0
藍子「……」

藍子「…………」

藍子「…………………………」


100:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:05:26.45 ID:WDIZ97tn0
けれどその顔は、私が見たい顔ではありませんでした。

「ときどき、現実がぜんぶ嘘になってしまうような……そんな予感がして、ずっと拭えないの。ある時一瞬にして全部が終わっちゃうんじゃないかって」

ちいさな女の子が、お母さんとはぐれてしまって、探しているような顔。
以下略 AAS



101:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:05:55.80 ID:WDIZ97tn0
「加蓮ちゃん」

時計の音さえも静まり返る中、私が名前を呼ぶと、加蓮ちゃんはぴくりと肩を震わせました。

「大丈夫ですっ。……そうやって不安に思うことは、私にもありますから」
以下略 AAS



102:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:06:26.09 ID:WDIZ97tn0
「あ……」

加蓮ちゃんが、歯をぎゅっと食いしばります。謝ろうとするその口の動きを、手で制しました。

「……加蓮ちゃん。私は、加蓮ちゃんのことを知らなくて、分からなくて、加蓮ちゃんも、私のことを知らなくて、分からなくて……最初は、そうでしたよね」
以下略 AAS



103:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:06:57.18 ID:WDIZ97tn0
「そうですよね。そのお話でしたっ」
「……もう。忘れちゃってたの?」
「ふふ。つい」

いつの間にか、カフェに音が戻ってきていました。他のお客さんの話し声や、お皿の音。遠くから、じゅう、って音がして……いい匂いは、うぅ。お腹が鳴っちゃいそう。
以下略 AAS



104:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:07:26.17 ID:WDIZ97tn0
「加蓮ちゃんは……加蓮ちゃんのことを知らない人が、分かったようなことを言ったら、腹が立ってしまうかもしれませんね」
「いや、待って。あれホントに勢いっていうか藍子は知らない人じゃな、」
「加蓮ちゃん」
「ハイ」
「その時は、叫ぶ前に1度だけ落ち着きましょう。もし、それでも違うって思ったら、怒鳴るのではなくて、落ち着いて言いましょ? ほら、加蓮ちゃん。クールで、ミステリアスさんになるんですよね」
以下略 AAS



105:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:07:55.81 ID:WDIZ97tn0
藍子「…………っ。う、ぁ〜っ!」

加蓮「お疲れ様。……本当にありがとう、藍子」

藍子「なんだか疲れちゃいました……」
以下略 AAS



106:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:08:25.81 ID:WDIZ97tn0
加蓮「あのさ。もっかいだけ言っていい?」

加蓮「……ありがとう、藍子。いつも話を聞いてくれて、想いを受け止めてくれて」

藍子「どういたしまして。そして、私もっ。加蓮ちゃん、ありがとう。いつも一緒にいてくれて。お話を聞いてくれて♪」
以下略 AAS



107:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:08:55.80 ID:WDIZ97tn0
晩ご飯をここで食べようかな、とも思いましたけれど、今日はやめにします。
スマートフォンで、お母さんに連絡を……開いたら、たくさんのメールが来ています!
お母さん、ものすっごく怒ってるっ。
思わず助けを求めようとすると、加蓮ちゃんもげんなりとした顔をしていました。どうやら、お互い同じことが起きちゃってるみたい。

以下略 AAS



108:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:09:25.30 ID:WDIZ97tn0
加蓮「……ちなみに今も同じことが起きてたりするんだよね」

藍子「えっ? わ、7時! 外は、まだ明るいのに……」

加蓮「この時よりは夏に近付いたからかな。まっ、今日は遅くなるってあらかじめ言ってるからお母さんもうるさくは……」
以下略 AAS



109:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:09:55.17 ID:WDIZ97tn0
連絡をすると、もうなんだか今日が終わってしまったように、そして、さっきまでお話していたのが別の日の出来事のように、私も加蓮ちゃんも、ほとんど話さなくなりました。
加蓮ちゃんのお母さんが迎えに来た時も、静かすぎて、「加蓮が何かしちゃったの?」と言われてしまうくらい。
でも、加蓮ちゃんの顔を見て、それは違うんだって分かってくれたみたい。

加蓮ちゃんの家にお邪魔して、晩ご飯をいただいて、お風呂をお借りして……その間も、何もお話することはありませんでした。
以下略 AAS



110:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:10:25.70 ID:WDIZ97tn0
藍子「お母さん、そろそろ迎えに来て。加蓮ちゃんが泊まりたいって言っているけれど、いい? ……はい、送信っ♪」

藍子「あとは、最後のあいさつを書いたら完成です!」

加蓮「ふふっ。……たった1日しか使ってないのに、なんだかすごく時間をかけた気分」
以下略 AAS



111:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:10:55.67 ID:WDIZ97tn0
加蓮「伝わるよ。絶対に。だって藍子のファンだもん。きっとみんな優しくて、藍子の言葉を受け止めようって思ってくれるよ」

藍子「……加蓮ちゃん」

加蓮「んー?」
以下略 AAS



112:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:11:26.13 ID:WDIZ97tn0
――これが、私のある1日のことです。

もちろん、別の日には違うことがありました。
1人でお散歩する日もあれば、みなさんと一緒にお仕事に行ったり、未央ちゃんや茜ちゃんと遊んだり、学校でクラスメイトとお話したり。
もしかしたらその時のことも、いつかこうしてみなさんにお話する時が来るかもしれません。
以下略 AAS



113:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:11:55.58 ID:WDIZ97tn0


『今日も、私とあなたとの時間を』


以下略 AAS



114:名無しNIPPER[sage saga]
2020/05/10(日) 19:12:26.95 ID:WDIZ97tn0
【あとがき】
4年ほど前、第28.5話『北条加蓮と高森藍子が、静かなカフェテラスで』のあとがきで、
私は「加蓮と藍子が一緒にいるところを、ちょっとだけでも想像してほしいなって思います」と書きました。

あの時に比べて今、
以下略 AAS



115:名無しNIPPER[sage]
2020/05/12(火) 00:31:31.34 ID:/jhXamT20
普段から拝見しています
元々藍子Pでしたが、このシリーズをきっかけに加蓮Pにもなりました
加蓮に出会えたこと、本当に感謝致します


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