周子「だから、あたしが逢いに往く」
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21:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 19:29:51.10 ID:XnGtX3Tv0







 紗枝がそうして祖母の授業を受ている頃。
 都の外れにある寂れた神社、シューコと紗枝が出会った場所。
 そこにシューコの見知らぬ少女が一人、参道のど真ん中に白墨で大きな円を描いている。
 直径二間程度だろうか、鼻歌交じりに引かれた白線はそのまま大きな弧を描き

「あ、」

 鳥居の足にぶつかった。
 
「ん〜……まあいいや!」

 少女はそのまま鳥居の足元の側面に白墨を走らせ弧を伸ばしていく。
 あまり細かいことは気にしない性格のようだ。
 そうして弧が繋がり円となり、内円も完成し残すは呪文のみだ。
 そう、少女が描いているのは“陣”であった。
 
 陣も術の一部である。
 人が自らの力を頼りにその身から発する術と異なり、陣はそれを描いた場所から霊脈の力を借りて発現するもの。
 描くのに時間がかかったり欠けたら無効だったり移動ができない等の欠点があるが、
 力の出所は地下の霊脈なので本人は疲れることがなく大きな業を成せる利点があった。

 そんな陣をこの少女は神社の参道にでかでかと描いている。まったく、信仰心の欠片もあったものではない。
 シューコはこの状況をどうしたものかと頭を抱えていた。

 最初は珍しく人が来たので遠目に見つめて放っておいた。
 一通り歩き回った後に石畳にお絵描きか何か始めたのかと思いそれも放っておいた。

 今頃紗枝はどうしているだろうかと考えながら屋根の上で干し肉を頬張っていた矢先、少女が描いているものが単なる落書きではないと気づいた。
 被害が出るようなものでなければ落書きの延長のようなものなので気が向いた時にでも消そうかと考えた。
 だが、どんなものを描くかを上から眺めていたらそうも言っていられなくなった。

 あれはまずい。非情に面倒くさいことが起きる予感しかしない。いったい何が目的だ。
 牽制の一手を打つべくシューコは少女の背後に回り姿を現す。





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