1:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/24(金) 20:21:03.82 ID:U3sL0+DQ0
「疲れました。今日は真に疲れましたね。こんなにも疲れたのはいつ以来でしょうか。しかし、これも求められる者の定めと言いますか」
先程から目の前に座る貴音は大袈裟に肩をさすったり、しきりに大きなため息をついたりしているのが、どこかにやにやと薄ら笑いを浮かべながら嘘くさい身振りで何かこちらから声を掛けて欲しそうにしているのである。何かそれが癪に障るので、いや、癪に障るというほど苛立つ云々は全くなくて、むしろそれが面白いから先程から気付かない振りというか、わざと流しているのであるが、依然として疲労がだの気疲れだの何だの分かりやすく呟いているのであった。
「響、わたくしは疲れました」
そうしてしばらく貴音のそれを内心どこかで笑いそうになりながら聞いていたのだけれど、痺れを切らしてというか何というか、名指しされてしまったのでは仕方ないので、返事をうってあげる事にした。
「どうしたのさ、さっきから」
「いえ、本日のお仕事は中々大変でありましたので」
「そっか」
「はい」
そうして、また自分はスマホに視線を戻すのであるが、ぺちと頭に手を置かれたので顔を戻せば、貴音が不満げな顔をしてこちらを見つめているのであった。
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/24(金) 20:22:33.84 ID:U3sL0+DQ0
「響」
「おつかれさま」
「違います」
3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/24(金) 20:24:01.94 ID:U3sL0+DQ0
とか言いつつすくりと立ち上がると、わざと声を張る様にして貴音は高らかに続けた。
「本日は雑誌の取材でした」
自分が答えるよりも先にこれぞ正にまんざらでもないという表情を浮かべながら貴音は辺りを見回し、さっきのそれよりも大きな声で本日は雑誌の取材でしたぁ、なんて事務所に響く様に言うものだから、それを聞きつけた何人かがこちらをみて顔を明るくしていた。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/24(金) 20:24:49.30 ID:U3sL0+DQ0
と、いうのが大体ひと月前の話。
そうして貴音はらんらんと今日は発売日ですよ!と妙な顔文字と共に連絡が来て、そういえばそんなのあったなと思いつつ事務所に来てみれば、まだ来てない様子なので、先にのんびりしていた春香と律子を捕まえて大した話をするわけでもなくのほほんと過ごしていた。
そのうちに、他何人も事務所にやって来て、その面々に続くようにしてにんまりとした顔をしながら、本屋のロゴが入った紙包みを両手に貴音がやって来るのであった。
「本当だ。この上なくご機嫌だね」
5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/24(金) 20:25:55.33 ID:U3sL0+DQ0
気付けば事務所に居た全員が雑誌を囲むように集まっていて、じっとそれを見つめているのだけれども、とうとう全てのページを捲り終わっちゃったものだから、あれ、とか、無いね、と口々に呟き始める面々のそれを聞こえない振りというか、半ば自分自身に言い聞かせる様に、違います、そんな事はありません、と貴音は呟きながら手当たり次第の頁を開いて探し続けた。
「目次は?」
はっ、と自分を見つめた貴音は巻頭にページを戻し、それを確認するのだけれど、そこにも四条貴音の文字は無いのでいよいよ妙な空気が色を濃くするわけだけども、春香辺りがあっ、と指差したのは今注目のアイドル達云々という見出しで、貴音はばっとその該当の頭頁を開いたけれども、ぱっと見貴音の事を言う文章は無いし、勿論写真も載っていない。
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