響「確かに気持ちは分かるのだけれど」
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3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/24(金) 20:24:01.94 ID:U3sL0+DQ0
とか言いつつすくりと立ち上がると、わざと声を張る様にして貴音は高らかに続けた。

「本日は雑誌の取材でした」

自分が答えるよりも先にこれぞ正にまんざらでもないという表情を浮かべながら貴音は辺りを見回し、さっきのそれよりも大きな声で本日は雑誌の取材でしたぁ、なんて事務所に響く様に言うものだから、それを聞きつけた何人かがこちらをみて顔を明るくしていた。

「やよい、わたくしは雑誌に載ります。表紙でしょうね。わたくしの顔が店頭に並ぶのです。あずさも楽しみにしていてください。小鳥、わたくしはやりました」

何だか選挙街宣の政治家みたいに手を振りながら一頻り面々に、すごいでしょう、羨ましいでしょうと触れ回ったのち、皆がすごいとかいつ出るのとか返してくれるものだから、本当に満足なんだなと思うのだけれど、目で弧を描きながら正面のソファーにしゃなりと座った。

にまにましているその顔はさておき、確かにこの弱小プロダクション、もとい駆け出しアイドル風情の自分達のを相手に、取材の仕事とは中々見どころがある雑誌というか、何というか。いや、偉そうに言うつもりは全くもって無いのだけれど、普段遊園地の小さなショーステージとか商店街とかが主戦場の自分達にとっては本当にありがたい話で、貴音の事とはいえ嬉しい話であるのも事実。

「ふふ、嫉妬が顔に浮き出ておりますよ」

嘘です。そんなささやかな気持ちももう吹き飛びました。頬をつんと突かれた辺りで、この浮かれタマネギをお祝いするとかそんな気分でも無くなりました。鬱陶しいことこの上ないと思うのは自分だけなのでしょうか。貴音の顔の奥向こうでは真が声を殺しながら笑っていたので、多分自分だけじゃ無い筈。

「ふぅ、わたくしもついにここまで登り詰めましたか。高みからの景色というのはこうも眺めがよく、おや、響が豆粒のように見えますね」

なんだそりゃ、とは口にはしなかったものの、自分の顔はしっかりと歪んでいたようで、そんな自分を見て貴音はあいどるは常に笑顔を云々と人差し指を立てながら言う貴音にはい、はい、と付き合ってあげるのであった。


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