ティア・グランツ「私、もう待つのはやめたの」
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13:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/04(土) 21:07:40.98 ID:DQhBkFB7O
「……浮いてる」

夜中、トイレがしたくなってルークが目を覚ますと、乗っていた陸艦が空中を飛んでいた。
ヴァンの陰謀を防いでから、早10年あまり。
飛晃艇の生産は加速して、その数は増えた。
けれど、軍艦を飛ばすなんて前代未聞である。
そのことに畏怖を覚えるよりも先に興奮を覚えるのはやはり男子に生まれた性なのか、チビルークは月夜に照らされる甲板に出てみた。

「風が気持ちいい……」
「お気に召しましたか?」

不意に背後から声をかけられて振り向くと。
マルクト空軍の青いマントをたなびかせて。
両手を背中で組み月光を眼鏡に反射させて表情が伺い知れないカーティス中将が佇んでいた。

「ま、まあまあだな」
「ルークならきっと気に入ったでしょうに」
「うぐっ……」

痛いところを突かれて何も言い返すことが出来ないチビルークに、ジェイドは冷たく告げた。

「あなたはルークのレプリカではない」

眼鏡の奥の赤い瞳は、やはり伺い知れない。

「オリジナルがレプリカの真似ごとをするなど、愚か以外のなにものでもありません」

そこまで言われては腹が立つ。いや、悔しい。

「だったら、俺は何のために生まれたんだ!」
「彼もそれを探していました」

そうだ。そしてレプリカ・ルークは見つけた。

「畜生。俺、惨めだな……レプリカを知るあんたたちなんかと、旅をするんじゃなかった」

彼らは皆、レプリカ・ルークの仲間であり、友だった。彼の居場所であり、存在理由である。
彼が羨ましかった。自分にもありのままの自分を肯定して受け入れてくれる友達が居たら。


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