72: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/18(日) 15:28:06.30 ID:BON9hvjh0
「それで……その子が証明だと?」
『はい。この子は絶対にトップアイドルになります。それが俺の証明です。……何も“持たざる者”の俺が言っても、説得力はないかもしれないですけれども』
「わはは、驚くほどぞっこんだな。なるほど……、なるほど……」
じっと、社長は彼女の顔を見た。いまいち状況を理解していない彼女は、少しばかり困惑しながら、
「ねえ、この人は……?」
と俺に問いかけてくる。
『新しくアイドルのプロダクションを立ち上げるらしい、社長だよ』
「らしいって……」
呆れたような表情で俺を見る彼女。あれ、そう言えば……。
「ところで君、彼女の名前は何というのかね?」
社長が俺に尋ねた。そう、それである。
『ええっと……』
今の今まで、俺は彼女の名前さえ知らなかったのだ。なんという事だろう、思わず頭を抱えそうになる。
「……ぷっ」
一つ、かわいらしい吹き出すような笑い声。俺の様子を見て、彼女も得心したらしい。そして、俺の代わりに、
「凛。渋谷、凛って言います。今までずっと、名前も聞かれませんでしたけど」
彼女――渋谷さんはちょっとばかり不満そうに名乗った。本当に申し訳ない、と思いつつも。その名前は良く彼女を表した、似合っている名前だ、と思った。
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